督促状とは、期限までに支払われなかった借金や税金の支払いを促す書類のことです。法的な効力はないため、支払いが難しいと「無視しておけば踏み倒せるのではないか」と考える方もいるのではないでしょうか。結論、督促状は無視してはいけません。
督促状を無視すると、下記のようなリスクがあります。
滞納しているもの |
無視した際にとられる措置 |
税金 |
・遅延損害金を請求される
・ブラックリストに登録される
・連帯保証人に督促状が届く
・裁判所から支払督促を受ける
・財産の差し押さえを受ける |
借金 |
・延滞税が加算される
・裁判所を通さずに差し押さえを受ける |
上記のように、無視すると遅延損害金が発生したり、法的手段に出る最終警告書類である催告書が届いて一括請求されたりする可能性があるため、なるべく早めの対処が必要です。
催告書も無視していると、裁判に発展して最悪の場合財産を差し押さえられるリスクもあります。そのため、支払いができるのであれば期限内に支払いを済ませなければなりません。
どうしても返済できない場合、税金であれば市区町村や国の相談窓口に問い合わせれば、分割や減免申請ができる可能性があります。
借金の場合も、債務整理をすれば借金の減額が可能です。ただし、ブラックリストに登録されてローンやクレジットカードの作成ができなくなるデメリットもあるため、本当に必要かよく考えて行わなければなりません。
本記事では、督促状について無視するとどうなるのかや届いた場合の適切な対処法について解説します。
借金の場合、弁護士に相談すれば債務整理が必要なのか、適切な対応方法をアドバイスしてもらえます。特にクレジットカードで作った借金の場合、過払い金が発生している可能性も高いです。
その場合も弁護士に相談すれば、過払い金の返金手続きもスムーズにできるので、督促状が届いて悩んでいる方は一度弁護士に相談することをおすすめします。
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督促状とは期限内に支払われなかった債務を請求する書類
督促状とは、期限内に支払われなかった債務の支払いを促すために送付する書類のことです。催促状を無視した場合に届くのが一般的で、期限内に支払わなかった場合はまず催促状が送付され、穏やかな表現で支払いを求められます。
しかし、催促状に従わず無視をした場合は督促状が届き、催促状よりも厳しい表現で支払いを促されます。督促状には支払いを強制する法的効力はなく、主に以下の内容が記載されています。
- 請求金額
- 支払い期限
- 以前の請求期限
- 振込先の銀行口座
督促状の内容に従って期限内に完済すれば、これ以上督促状が届くことはありません。
支払いを強制する法的効力はない
督促状には裁判所の判決や支払督促とは違い、支払いを強制する法的な効力はありません。あくまでも、債務者に未払いの事実を伝え、自主的な支払いを促す目的で送る書類です。
そのため、督促状に従わずに支払いを行わなくても、それを理由に持ち家や車などの財産の差し押さえを受けることはありません。
内容証明郵便で届いた場合は時効の完成を6ヶ月間阻止する
督促状では支払いを強制できないものの、内容証明郵便で送付された督促状には時効の完成を6ヶ月阻止する法的効力があります。
借金は、直近の支払い期日または最後の返済日から原則として5年経過すると、時効期間が満了となり、時効が完成すれば借金の返済義務が消滅します。
しかし、時効期間が経過している間に内容証明郵便で督促状が送られてきた場合は、督促状の到達から6ヶ月間は時効の完成が猶予されてしまいます。
時効の完成が猶予されている間は、時効期間が満了しても時効は完成せず、借金の返済義務は消滅しません。ただし、督促状によって時効の完成が猶予されるのは一度きりです。
時効の完成猶予中に再び督促状を送付し、時効の完成をさらに先延ばしにはできないため、届いた督促状が2通目だった場合は時効の進行は止まりません。
催促状・催告書・支払督促との違い
督促状以外にも、期限内に支払われなかった債務を請求する手段として下記の3つがあります。
以下の表では、それぞれの特徴についてまとめてみました。
|
催促状 |
督促状 |
催告書 |
支払督促 |
特徴 |
穏やかな表現で支払いを促す書類 |
「期日までに支払いがなければ法的措置を検討する」という文言で支払いを催促する書類 |
「これ以上支払いを無視すると法的措置に移行する」という最終警告として送られてくる書類 |
裁判所が債務者に対して支払いを命じる手続きの一環として送られる書類 |
届くタイミング |
督促状の前 |
催促状を無視した場合 |
督促状を何度送付しても債務者が支払いをしない場合 |
債権者が裁判所でス勝を起こした場合 |
警戒度 |
★ |
★★ |
★★★ |
★★★★ |
上記のように、時間が経つにつれて徐々に届く書類の重要性や警戒度は増していきます。特に支払督促は、債務者が支払督促を受けてから2週間以内に異議を申し立てなかった場合、債権者は直ちに強制執行の手続きが行えるようになります。
強制執行では、持ち家や車、貴金属などの財産が没収され、借金の返済に充てられる「財産の差し押さえ」が行われてしまうため、なるべく早めの対処が必要です。
借金の督促状を無視するとどうなる?
お金がなくて支払いができなくても、督促状は絶対に無視してはいけません。督促状を無視すると以下のようなことが起こり、状況がどんどん悪化してしまいます。
- 返事をするまで何度も電話や督促状が届く
- 遅延損害金を請求される
- ブラックリストに登録される
- 連帯保証人に督促状が届く
- 催告書で一括請求される
- 裁判所から支払督促を受ける
- 財産の差し押さえを受ける
ここからは、それぞれの出来事について1つずつ解説していきます。
返事をするまで何度も電話や督促状が届く
督促状を無視すると、返事があるまで何度も電話がきたり、督促状が届いたりします。一般的に、返済期日を過ぎてから1週間ほど経過すると、最初の督促状が届きます。
初期段階では比較的穏やかな表現で支払いを求められるケースが多いですが、返事をせずに無視を続けると何度も電話や督促状が届き、支払いを求める姿勢や表現も徐々に厳しくなっていくケースが多いです。
遅延損害金を請求される
借金を滞納すると、支払い期限から1ヶ月ほどで元金や利息に加えて遅延損害金も請求されるようになります。遅延損害金とは、決められた金額を支払い期日までに支払えなかった場合に発生する損害金です。
支払い期日の翌日から支払い完了日まで発生し続けるのが特徴で、上限金利は借入時の上限金利の1.46倍まで(20%を超える部分は無効)とされています。
利用区分 |
適用される法律 |
上限金利 |
・消費者金融や金融機関からの借り入れ
・クレジットカードのキャッシング利用分 |
利息制限法 |
年20% |
クレジットカードのショッピング利用分(一括払い・リボ払い) |
消費者契約法 |
年14.6% |
クレジットカードのショッピング利用分(2回払い・分割払い・ボーナス一括払い) |
割賦販売法 |
年3.0% |
支払いの滞納期間が長くなるほど遅延損害金も大きくなっていくので、放置するのは禁物です。
ブラックリストに登録される
支払いを滞納してから2ヶ月を超えると、信用情報機関に事故情報が登録(ブラックリストに登録)されます。ブラックリストに登録されている間は、以下のような影響を受けます。
- キャッシングやローンの新規契約ができない
- クレジットカードの作成・利用ができない
- クレジットカードに付帯するETCカードの作成・利用ができない
- 分割払い(割賦払い)が利用できない
- 保証人になることができない
- 賃貸物件の契約ができない場合がある
なお、信用情報機関に登録された事故情報は、完済してから最低でも5年経過しないと削除されません。一度ブラックリストに登録されるとその後の人生設計にも影響を与えるため、無視せず早めの対応を心がけましょう。
連帯保証人に督促状が届く
支払いを滞納してから2ヶ月ほど経過すると、連帯保証人にも督促状が届くようになります。連帯保証人は、債務者が返済できない場合に、債務者に代わって返済義務を負います。
連帯保証人は債務者と同等に扱われるため、債権者からの支払い請求は拒否できず、債務者と同じように返済をしなければなりません。支払いを滞納すると、連帯保証人になってくれた人にも多大な迷惑をかけてしまうので注意しましょう。
催告書で一括請求される
督促状を無視してから2ヶ月ほど経過すると、法的措置に移行する前の最終警告として催告書が届きます。催告書では、期限の利益の喪失を理由に元本や利息、遅延損害金を一括で支払うように求めてくることが多いです。
期限の利益とは、決められた期日までは支払いをしなくても良いという債務者の利益(権利)のことです。
期限の利益がある間は、債権者から突然一括請求を求められても、債務者は支払いを拒否できます。しかし、支払いを滞納して期限の利益が喪失すると、債権者からの一括請求を拒否できません。
催告書での期限までに一括請求に応じられなければ、実際に法的措置を取られる可能性が高いです。
裁判所から支払督促を受ける
催告書での期限までに支払いができなかった場合は、裁判所から特別送達で書類が送られてきます。裁判所から送られてくる書類は訴状か支払督促のどちらかですが、支払督促は裁判よりも手続きが簡単なので、先に支払督促で請求されるケースが多いです。
特別送達は受け取りを拒否しても受け取ったものとしてみなされるため、無視し続けても裁判所での手続きは進んでしまいます。
それでも無視を続けた場合、前述のように2週間経てば債権者は裁判を起こさなくても強制執行による財産の差し押さえが可能になります。
差し押さえを避けたい場合は、支払督促を受けてから2週間以内に異議を申し立てなければなりません。異議を申し立てると、通常の裁判へ自動的に移行します。
財産の差し押さえを受ける
支払督促や訴状が届いても適切な対応を取らなかった場合は、最終的に強制執行による財産の差し押さえが行われます。
強制執行による財産の差し押さえとは、返済をしない債務者の財産を強制的に回収し、滞納分の返済に充てる手続きのことです。差し押さえの対象となる主な財産は以下の通りです。
- 現金
- 預金債権
- 給与債権
- 有価証券(株券・債券など)
- 不動産
- 自動車
- 貴金属
- 高級ブランド品
ただし、66万円以下の現金や給与の4分の3に相当する部分、公的年金、日常生活や仕事に不可欠なものなど、法律で差し押さえが禁止されている財産は対象外です。差し押さえによって没収された財産は滞納分の支払いに充てられます。
税金の督促状を無視すると延滞税が加算される
税金の督促状を無視すると、納付期限の翌日から延滞税が加算されます。延滞税とは、納付期限までに税金を支払えなかった場合に、法定納期限の翌日から完納日までペナルティとして課される税金のことです。
国税を滞納した場合の延滞税の利率は以下の通りです。
- 納付期限から2ヶ月を経過する日まで:原則年7.3%
- 納付期限から2ヶ月を経過した以後:原則年14.6%
地方税を延滞した場合の延滞金の利率は以下の通りです。
- 納付期限から1ヶ月を経過する日まで:原則年7.3%
- 納付期限から1ヶ月を経過した以後:原則年14.6%
ただし、地方税の延滞金には特例措置が設けられており、令和3年1月1日以降の利率は以下のようになっています。
|
納付期限から1ヶ月を経過する日まで |
納付期限から1ヶ月を経過した以後 |
令和3年1月1日から令和3年12月31日 |
2.5% |
8.8% |
令和4年1月1日~令和6年12月31日 |
2.4% |
8.7% |
税金の滞納日数が長いほど延滞金もどんどん膨らんでしまうので、無視をせず速やかに対処しましょう。
差し押さえは裁判所を通さずに受ける可能性もある
通常、財産の差し押さえは支払督促や裁判といった裁判上の手続きを経てから行われます。しかし、税金を滞納した場合はこれらの手続きを経ずにいきなり差し押さえを受ける可能性が高いです。
国税徴収法や地方税法では、督促状を発してから10日以内に完納されなければ、滞納処分が行うことができると定められています。
滞納処分とは、税金を滞納している人の意思に関係なく、財産の差し押さえや換価を行い、滞納となっている税金に充てる一連の手続きのことです。
この滞納処分は、徴収職員が必要であると判断すれば裁判所の許可がなくても行えます。税金の督促状を無視すると、いきなり財産を差し押さえられてしまう可能性があるので注意しましょう。
督促状の支払いに対応できない場合の対処法
督促状が届いたものの、経済的な余裕がなく支払いにどうしても対応できない場合は以下の方法で対処しましょう。
- 税金の場合は国や市区町村へ相談
- 借金の場合は専門家へ
ここからは、それぞれの対処法について1つずつ解説していきます。
税金の場合は国や市区町村へ相談
滞納した税金を支払うのが難しければ、国や市区町村へ相談しましょう。
滞納した税金の種類 |
相談先 |
国税(相続税や贈与税など) |
所轄の税務署 |
地方税(住民税や固定資産税など) |
県税事務所、市区町村の窓口 |
国や市区町村に相談すれば、分割での支払いに対応してもらえる可能性が高いです。また、一定の条件を満たしている人なら、税金の減免や支払いの猶予制度が利用できる場合もあります。
各種税金の支払い義務は債務整理をしても免責されないため、経済的に苦しくても放置せず、必ず国や市区町村に相談して無理のない支払い計画を立てましょう。
借金の場合は専門家へ
滞納した借金を返済するのが難しければ、借金問題に強い弁護士に相談しましょう。経済的に借金の返済が困難であれば、債務整理を利用して借金の返済負担を減らせます。
債務整理には「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類あり、それぞれ下記のような特徴があります。
任意整理 |
個人再生 |
自己破産 |
裁判所を介さずに債権者と直接交渉を行い、将来の利息のカットや返済計画の見直しによって借金を返済しやすくする手続き |
裁判所に借金の返済が困難であることを認めてもらい、借金の元本を大幅に減額してもらう手続き |
裁判所に借金の返済が不可能であることを認めてもらい、すべての債務を免除してもらう手続き |
債務整理は手続きが複雑で、法律の専門的な知識や債権者との交渉力も必要になるため、弁護士に相談するのが一般的です。
カード会社からの督促なら過払い金がある可能性も
過払い金とは、利息制限法で定められた上限金利(年利20%)以上に支払いすぎた利息のことです。
2010年6月17日以前にカード会社から借り入れをしていた場合は、過払い金が発生している可能性があります。発生している場合、カード会社に請求することで過払い金の回収が可能です。
その際も、過払い金の有無や返金手続きなどを弁護士に依頼すれば、スムーズに手続きしてもらえます。少しでも負担を減らすために、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。
時効が成立するなら時効の援用をする
時効が成立する場合は、時効の援用を行うことで返済義務が消滅する可能性があります。時効の援用とは、時効の成立によって利益を受ける者が時効の成立を主張することです。
借金や税金を滞納した場合の時効期間は、直近の支払い期日または最後の返済日から5年ですが、単に5年経過しただけでは自動的に時効は成立しません。
5年経過してから債権者に対して時効の援用を行うことで初めて時効が成立します。時効の援用方法に法的な決まりはありませんが、口頭だと証拠が残らずトラブルになる恐れがあるため、送付日や内容が証拠として残る内容証明郵便で送付するのが一般的です。
ただし、時効期間の経過途中で催告や支払督促、裁判など「時効の更新」「時効の完成猶予」の事由が発生した場合は、時効の成立が先延ばしされてしまいます。
事由 |
時効の更新
(時効がリセットされる) |
時効の完成猶予
(時効の進行が止まる) |
債務の承認 |
〇
借金の存在を認めた時点で時効期間がリセットされる |
× |
催告(裁判所を介さずに債務の履行を求めること) |
× |
〇
催告を受けてから6ヶ月間は時効の完成が猶予される |
裁判上の請求(支払督促、訴訟、和解、調停など) |
〇
確定判決や判決と同一の効力を有する権利が確定した時点で時効期間がリセットされる |
〇
手続きが終了するまで時効の完成が猶予される |
仮差押え |
× |
〇
仮差押えが終了してから6ヶ月間は時効の完成が猶予される |
強制執行 |
〇
強制執行が終了した時点で時効期間がリセットされる |
〇
強制執行が終了するまで時効の完成が猶予される |
そのため、時効の援用を行う場合は、時効期間の起算日を正確に把握しておく必要があります。
また、時効援用の手続きを自分で行うと債権者と連絡をとる際に「債務の承認」に当たる発言をしてしまい、時効がリセットされてしまう可能性が高いです。そのため、時効援用手続き弁護士に依頼するのが安全でしょう。
まとめ
督促状には支払いを強制する法的効力はありませんが、無視を続けると法的措置を取られ、財産の差し押さえを受けるリスクがあります。
また、滞納が続くと遅延損害金も発生して借金も膨らみ、ブラックリストへの登録で日常生活にも支障をきたすため、督促状は絶対に無視してはいけません。滞納分を支払えるだけの余裕があれば期限内に支払うのがベストですが、支払いが困難であれば早めに弁護士に相談しましょう。
督促状に関するよくある質問
督促状の内容通りに払わなかった場合どうなりますか
督促状の内容通りに支払いをしなかった場合は、何回も督促の電話や書面が届きます。その後も無視を続けると催告書が届き、それも無視をすると法的な手続きに移行し、最終的には強制執行によって財産の差し押さえを受けることになります。
また、遅延損害金が発生して借金の返済額が膨らんだり、ブラックリストに登録されたりするため、支払いができなくても無視をせず適切に対処する必要があります。
督促の電話は一日何回ほどかかってきますか
督促の電話は、日本貸金業協会の規則で1日に3回までと決められています。4回以上の督促の電話は違法な取り立てに該当します。
督促状が詐欺の可能性はありますか?
借金自体にまったく身に覚えがなければ、裁判所や債権回収業者を名乗る詐欺業者から督促状が届いている可能性があります。
そのため、督促状が届いたら、まず請求内容が本物であるかどうか確認しましょう。ただし、聞いたことがない会社名であっても、実は正規の債権回収業者や保証会社であるケースもあるため、内容をよく確認するようにしてください。
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