期限の利益喪失に関する通知は主に「期限の利益喪失予告通知」と「期限の利益喪失通知」の2種類
住宅ローンなどを金融機関から借入した場合、ほとんどの人が分割払いで毎月返済するでしょう。
仮に月々の支払が何度か遅れてしまった場合、債権者から「期限の利益喪失」と書かれた通知が届くことがあります。
期限の利益喪失に関する通知は、債権者が独自に作成したもので、書式も郵送方法もさまざまです。
しかし、内容によって期限の利益喪失に関する通知は大きく以下の2種類に分けられます。
- 期限の利益喪失前の最終警告を表す「期限の利益喪失予告通知」
- 期限の利益を喪失したことを知らせる「期限の利益喪失通知」
以下の項目からそれぞれの通知について詳しく紹介します。
期限の利益喪失予告通知とは「期限の利益喪失前の最終警告」
送られてきた通知に以下のような内容が書かれていた場合、「期限の利益喪失予告通知」です。
【期限の利益喪失予告通知の例】
支払が遅れている分の元金や利息、遅延損害金などを●月●日までに支払ってください。それができなければ期限の利益を喪失します。
期限の利益喪失予告通知は、これ以上返済が遅れると債務者が期限の利益を喪失し、債権者から残金を一括で返済するよう求められることを知らせる債権者からの最終警告です。
期限の利益喪失予告通知を受け取った場合、記載されている期限までに返済できないと期限の利益を喪失し、残金を一括で返済するよう債権者から請求されるため注意しましょう。
期限の利益喪失通知とは「期限の利益を喪失したことを知らせる通知」
送られてきた通知に以下のような内容が書かれていた場合、送られてきた通知は「期限の利益喪失通知」です。
【期限の利益喪失通知の例】
あなたは既に期限の利益を喪失しているので、残金を一括で返済してください。それができなければ裁判を起こします。
期限の利益喪失通知は、最初に決めた契約どおりに返済してくれない債務者に対して、痺れを切らした債権者が、これ以上は返済を待てないとして残金の一括返済を求める通知です。
期限の利益喪失通知を受け取った場合、記載されている期限までに返済できないと、次の段階として債権者から裁判を起こされるケースも珍しくありません。
期限の利益喪失通知が届くとどうなる?
期限の利益喪失通知が届くのは、最初の契約どおりに月々分割で返済するのが厳しい状況に陥った時が多いです。
そのため、期限の利益喪失通知が届いたからといって、債権者の要求どおりに即座に一括返済できる人は少ないでしょう。
では、債権者からの一括請求に応じられなかった場合はどうなるのでしょうか?
次の項目から「期限の利益喪失通知が届いた後、何が起こるのか?」について、詳しくお伝えします。
銀行からの借入や住宅ローンなら代位弁済され、保証会社から一括請求される
銀行からの借入や住宅ローンなどの場合、銀行などは契約の際に保証会社との間に「保証委託契約」を結ぶのが一般的です。
この保証委託契約があることによって、万が一債務者が返済不可能な状態に陥った時、債務者に代わって保証会社が銀行などに借入残金の全額と利息、及び遅延損害金などを一括で返済することになります。これを「代位弁済」といいます。
代位弁済をすることによって保証会社は「求償権」を得ることになります。
求償権とは、立て替えた金額を返済するよう債務者に請求できる権利のことで、代位弁済がおこなわれると債務者は元々の債権者である銀行などに代わって保証会社から借金の返済を請求されます。
そのため支払の延滞が続くと、銀行などから送られてくる「期限の利益喪失通知」とは別に、保証会社が代位弁済した旨を知らせる「代位弁済通知」が保証会社から届くことが多いです。
代位弁済通知には、「保証会社が代位弁済をしたため、今後は保証会社に返済をしてください」といった内容が書かれています。
代位弁済がおこなわれた時点で債務者は既に期限の利益を喪失しているため、保証会社から一括返済を請求できる点に注意しましょう。
住宅ローンの場合、住宅が競売にかけられる
住宅ローンの支払いを滞納して期限の利益喪失通知や代位弁済通知が届いた場合、放置すると保証会社が裁判所に対して競売の申立てるのが一般的です。
保証会社が競売を申立てすると、裁判所から「競売開始決定通知」という書面が届き、最終的に自宅を強制的に売却されてしまいます。
競売によって自宅を売却された場合は早々に退去しなくてはならず、居座り続けて強制執行による退去などになった場合は、高額な費用を請求されることもあるので注意が必要です。
しかし、自宅が競売にかけられる前に任意売却すれば、競売よりも高値で売却できる可能性もあります。
また、任意売却の場合は引越期限を先送りできたり引越費用の一部を不動産業者が負担してくれる場合もあるため、期限の利益喪失通知や代位弁済通知が届いたらすぐに任意売却の準備に取りかかることをおすすめします。
ただし、任意売却には通常の不動産売却とは異なる専門的な知識が必要なため、任意売却を熟知している不動産業者に相談するとよいでしょう。
消費者金融からの借入やクレジットカード会社への支払なら債権譲渡や回収委託され、債権回収会社から一括請求される
消費者金融からの借入やクレジットカード会社への支払を滞納した場合、債権者が債権回収会社に債権を譲渡したり、債権回収会社に債権の回収を委託する場合があります。
この債権回収会社とは、債権者の代わりに借金の取立てをおこなう会社のことです。
元々の債権者が債権回収会社に債権の譲渡や回収委託をおこなうと、元々の債権者から送られてくる「期限の利益喪失通知」とは別に、債権回収会社から「債権譲渡通知」などが送られてきます。
債権譲渡通知には一般的に「元々の債権者から債権の譲渡または回収委託を受けました。今後は債権回収会社に返済をしてください」というような内容が書かれています。
また、債権の譲渡や回収委託がおこなわれた時点で債務者は既に期限の利益を喪失しているため、債権回収会社から一括返済を求められる場合が多いため注意が必要です。
債権回収会社についてさらに詳しく知りたい場合は、こちらの記事で紹介していますので参考にしてください。
一括請求に応じられない場合、訴訟を起こされ財産を差し押さえられる
債権者からの一括請求に応じない場合、次の段階として債権者から裁判を起こされる場合もあるため注意しましょう。
債権者から裁判を起こされた場合、裁判所から「支払督促」や「訴状」といった通知が届きます。
裁判所から通知が届いたのに何もせず放置すると、最終的に債権者は債務者名義の銀行口座や不動産などを差押えできるようになります。
そのため、裁判所から通知が届いたら一刻も早く対応することが何よりも大切です。
期限の利益を喪失した場合、信用情報に事故情報が掲載される
期限の利益を喪失した場合、その事実が信用情報に事故情報として登録されます。
信用情報に事故情報が載っていると、いわゆるブラックリストに載っている状態になり、カードの新規作成やローンの新規借入が難しくなります。
また、クレジットカード会社などは、途上与信といって定期的に会員の信用情報をチェックしているので、滞納をしていないクレジットカードまで利用停止や強制解約などになる恐れがあります。
期限の利益を喪失した場合、保証人にも期限の利益喪失通知が届く
期限の利益を喪失した場合、保証人が設定されていれば保証人にも期限の利益喪失を知らせる通知が届く恐れがあります。
もしその通知を債権者がしなかった場合、債権者は保証人に対して期限の利益喪失時から通知をするまでの間の遅延損害金を請求できないとされているからです。
民法では、主債務者(実際にお金を借りた人)が期限の利益を喪失した場合、債権者は保証人に対して期限の利益喪失を知った時から2ヶ月以内に、期限の利益を喪失した旨を通知しなければならないとされています。
期限の利益喪失通知が届いたら、弁護士や司法書士に相談して解決しよう
期限の利益喪失通知が届いた場合、債権者は債務者に対して残金の一括返済を求めることができる状況です。
そのため、債権者に対して自分で分割返済の交渉をしようとしても、取り合ってもらえず裁判に発展する危険性が高いと考えられます。
もし、分割返済に応じてもらえたとしても、完済するまで高額な利息も合わせて返済するよう要求されるケースが多いため注意が必要です。
また、長く滞納していた借金であれば、時効援用をすると借金を払わなくて済む可能性もあります。
ただ、債権者と連絡を取ってしまうと時効援用ができなくなる恐れもあるため、債権者に連絡する前に一度弁護士や司法書士に相談して、時効が成立しているか確認してもらうとよいでしょう。
弁護士や司法書士に依頼した場合の解決策、債務整理3つの方法
債権者からの要求どおりに一括での返済ができない場合は、次の段階として債権者から裁判を起こされるケースも珍しくありません。
借金の一括返済が難しいと感じた時は、一度弁護士や司法書士に相談してみるとよいでしょう。
ここでは、弁護士や司法書士に依頼した場合の債務整理と呼ばれる主な3つの解決策についてご紹介します。
任意整理 |
借金を無理なく払える金額で月々分割して返済できるように、弁護士や司法書士が業者と直接交渉する。 |
自己破産 |
裁判所を通しておこなう手続きで、一部の自由財産を除いて資産を全て手放す代わりに、借金の支払いを免除してもらう。 |
個人再生 |
裁判所を通しておこなう手続きで、原則として資産を手放さずに借金を最大1/10に圧縮し、3~5年で分割して完済を目指す。 |
任意整理についてさらに詳しく知りたい場合、こちらの記事で紹介していますので参考にしてください。
自己破産についてさらに詳しく知りたい場合、こちらの記事で紹介していますので参考にしてください。
個人再生についてさらに詳しく知りたい場合、こちらの記事で紹介していますので参考にしてください。
かなり前の借金なら時効援用で払わなくて済む場合もある
借金には時効があり、時効援用をすることで借金を払わなくて済むケースもあります。
ただし、長く滞納していた借金について、時効の成立直前になって債権者から期限の利益喪失通知が届いた場合には注意しましょう。
これは期限の利益喪失通知を見た債務者に「まだ期限の利益を喪失していなかったから時効は成立しないのでは?」と思わせるのが狙いです。
慌てた債務者が債権者に連絡したり、借金の一部を返済するよう仕向けて、時効が中断されるのを狙っているのです。
何年も連絡のなかった債権者から急に期限の利益喪失通知が届いた場合は、まずは時効の可能性を疑ってみましょう。
時効援用についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの関連記事で紹介していますので参考にしてください。
期限の利益喪失とは「債権者が債務者に対して残金一括請求する権利を得る」こと
債務者が決められた期限までに決められた額を返済していれば、債権者からいきなり一括返済を請求されない権利のことを「期限の利益」といいます。
債務者がこの権利を失うことを「期限の利益喪失」といい、期限の利益を喪失すると、債権者は債務者に対して残りの借金全額を一括で返済するよう請求できるようになります。
- なぜ債務者は期限の利益を喪失してしまうのか?
- 期限の利益を喪失するのはどのような場合か?
次の項目から詳しくお伝えします。
民法と契約書に定められた期限の利益喪失条項に債務者が期限の利益を喪失する条件が定められている
民法では、債務者が破産手続きを開始した時や、債務者が債権者の要求する担保を提供できない場合に、期限の利益を喪失すると定められています。
しかし、債務者が期限の利益を喪失する原因は民法ではなく、債権者が借入の際に債務者と締結する契約書における「期限の利益喪失条項」によるものが圧倒的に多いです。
「期限の利益喪失条項」とは、これに違反すると期限の利益を失うという取り決めのことで、期限の利益を失う条件に「分割払いの返済が遅れてしまった時」などの内容が含まれている場合は注意しましょう。
期限の利益喪失事由がある場合、債務者は期限の利益を喪失する
期限の利益喪失事由は、民法や借入の際に締結する契約書の期限の利益喪失条項に定められており、これに該当すると債務者は期限の利益を喪失するのです。
また期限の利益喪失事由は、以下の2つの種類に分けられます。
- 所定の事由が生じれば自動的に期限の利益が喪失する「当然喪失事由」
- 所定の事由が生じたことに加え、債務者に対して請求することによって期限の利益を喪失させることができる「請求喪失事由」
次の項目からそれぞれの事由について詳しく紹介します。
所定の事由が生じれば自動的に期限の利益が喪失する「当然喪失事由」
一般的には、その事由に該当したことが客観的に明確で、かつ一旦該当してしまうと回復が不可能な事由(自己破産手続きに入った場合など)については「当然喪失事由」とする場合が多いといえます。
当然喪失事由の代表的なものには以下のようなものがあります。
- 支払停止・支払不能に陥った時
- 自己破産・民事再生手続き開始の申立てがあった時
- 弁護士などへ債務整理を委任した時
- 手形交換所から不渡処分または取引停止処分を受けた時
- 債務者または保証人が第三者から差押え・仮差押え・仮処分を受けた時
- 住所変更の届出を怠るなど債務者の落ち度によって、債権者に債務者の所在が不明となった時
ただし、債権者によっては「住所変更の届出を怠るなど債務者の落ち度によって、債権者に債務者の所在が不明となった時」や「手形交換所から不渡処分または取引停止処分を受けた時」を請求喪失事由としている場合もあるため、必ずしもこの限りではありません。
所定の事由が生じたことに加え、債務者に対して請求することによって期限の利益を喪失させることができる「請求喪失事由」
一般的には、契約違反や抽象的な事由、その他債権者と債務者との間の信頼関係を損なう重大な事由が生じた時などについては「請求喪失事由」とする場合が多いです。
請求喪失事由の代表的なものには以下のようなものがあります。
- 分割払いの返済が遅れてしまった時
- 担保の目的物について差押、または競売手続の開始があった時
- 債務者が債権者との取引約定に違反した時
- その他、債務保全を必要とする相当の事由が生じた時
また、例えば消費者金融Aと銀行Bから借入をしている場合、消費者金融Aが銀行Bからの借入の保証会社になっていることも少なくありません。
仮に消費者金融Aからの借入を延滞して期限の利益を喪失した場合、消費者金融Aからの保証を受けられなくなるために消費者金融Aが保証している銀行Bからの借入についても一括返済を求められるというケースもあります。
銀行からの借入については、よく聞く消費者金融やクレジットカード会社が保証会社になっているケースが珍しくないため、あらかじめ保証委託契約を確認しておくとよいでしょう。
まとめ
期限の利益喪失通知が届くと、債務者は債権者に残金を一括返済するよう請求され、応じない場合は裁判によって財産を差押えられてしまう恐れがあります。
また、借入をしている銀行の口座に預金がある状態で期限の利益を喪失した場合、口座が凍結されて入出金ができなくなることも少なくありません。
銀行カードローンなどの契約では、債務者が期限の利益を喪失した時、口座に預けられている預金と相殺して借金を回収できる契約になっていることがあるためです。
給料の振込口座が凍結(出入金停止)されてしまえば、給料を受け取れないだけでなく口座が凍結されている事実を勤務先に知られてしまう恐れもあります。
このように、期限の利益喪失は生活に大きな影響を及ぼすため注意しなければなりません。
延滞が長引けば長引くほど自分の希望に沿った方法での解決が難しくなるので、支払が厳しい状況になったらできるだけ早く弁護士などの専門家へ相談しましょう。
期限の利益喪失のよくある質問
「期限の利益喪失通知」が届いたのですが、これは何ですか?
期限の利益喪失通知は、最初に決めた契約どおりに返済してくれない債務者に対して、債権者がこれ以上は返済を待てないとして残金の一括返済を求める通知です。
滞納していた住宅ローンに対して「期限の利益喪失通知」が届いたのですが、どうなりますか?
住宅ローン滞納の場合、保証会社があなたの代わりに金融機関へ住宅ローンを返済します。(代位弁済)そして、保証会社から肩代わりした分の借金を一括請求されるのが一般的です。
保証会社へ返済できない場合は、住宅が競売にかけられる可能性が高いです。
「期限の利益喪失通知」が届いたら、どうしたらよいでしょうか。
差押えまで時間がないと認識し、弁護士へ債務整理を依頼するとよいでしょう。
当サイトでは、債務整理に力を入れる弁護士を紹介しています。無料相談も可能なので、差押えに発展する前に問い合わせることをおすすめします。
STEP債務整理「債務整理に力を入れるおすすめの弁護士を紹介」
期限の利益喪失とは、どういう意味ですか?
期限の利益喪失とは、債権者が債務者に対して残金一括請求する権利を得ることです。債務者と債権者の間で、分割払いで契約していたにも関わらず、債務者が返済を怠ると契約書の内容に基づき債務者は期限の利益を喪失します。そうすると、債権者は債務者に対して残債の一括請求ができるのです。
「期限の利益喪失通知」が届いた後でも債務整理できますか?
はい、可能です。ただし、債権者が差押えに移行すると選択肢が狭まってしまうので、期限の利益喪失通知が届いたら、なるべく早く債務整理に力を入れる弁護士へ相談するとよいでしょう。
最短即日取立STOP!
一人で悩まずに士業にご相談を
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