借金を放置して裁判所の出頭命令も無視するととどうなる?
借金を放置し続けると、裁判所から出頭命令が届くことがあります。
それを無視するとどうなるか。まずは見ていきましょう。
給料・財産が差し押さえられる
借金を放置し出頭命令も無視するとどうなるか、結論からいうと、滞納分の回収のため、給料や財産が差し押さえられます。
出頭命令には口頭弁論期日が記載されており、期日に裁判所へ出頭すれば裁判所が債務者の言い分を聞いて公正に判断してくれます。
ただし、出頭命令を無視して裁判所へ出頭しなかった場合は、債権者の訴えに異議がないものとみなされ、債権者に有利な判決が下りてしまいます。
すなわち債権者は未回収の借金に代わり、債務者名義の給料や財産を差押える権利を得るということです。
したがって、借金放置による裁判所からの通知を無視し続けても、借金問題は何一つ改善しないままより深刻な状況になってしまいます。
強制執行で差し押さえの対象となるもの
借金問題に関する出頭命令を無視して差押えられる財産には、主に以下のようなものがあります。
法律によって財産の種類ごとに差押え可能な範囲が定められており、全額差押え可能なものもあれば、財産の一部しか差押えが認められていないものもあります。
次の項目から、財産の種類ごとに差押え可能な範囲について詳しく見ていきましょう。
給料
借金問題に関する出頭命令を無視した場合、最も差押えられる可能性が高い財産は給料です。
ただし、給与全額が差し押さえの対象になるのではなく、次のように給与額によって上限が設定されています。
- 手取り給与額が44万円以下:1/4までが差し押さえ対象
- 手取り給与額が44万円を超える:33万円を超える部分が全額差し押さえ対象
(裁判所HP「差押可能な給料の範囲」)
預貯金口座
銀行口座内の預貯金も、借金問題に関する出頭命令を無視した場合に、差押えられることの多い財産です。
銀行口座が差押えられると、口座内の預貯金は基本的に全額差押えられます。
ちなみに、公的年金や児童手当などは差押えが禁止されていますが、これらは受給権自体の差押えが禁止されているだけで、一度口座に入金されてしまえば預貯金とみなされます。
そのため、差押えられた銀行口座に公的年金や児童手当などが振込まれていた場合は、全額差押えられてしまうのです。
不動産
債務者が生活するうえで最低限必要な財産は差押禁止財産と呼ばれ、差押えの対象にしてはならないと法律で定められています。
そのため、自宅は差押えられないだろうと考える人もいますが、基本的に債務者名義の持ち家など不動産は差押えの対象です。
特別な事情があり、裁判所が認めた場合には差押えを免れることもありますが、債権者が希望する場合は売却処分され、借金の返済に充てられるのが一般的です。
生命保険
借金問題に関する出頭命令を無視した場合、生命保険の解約返戻金も差押えられることがあります。
公的年金などと違い、生命保険は差押禁止財産にはなりません。
そのため、積立式で解約返戻金が出るような生命保険に加入していると、差押えられた場合は強制解約となり、解約返戻金が借金の返済に充てられるのです。
その他債権者名義の財産
上記のほか、債務者名義の財産も差し押さえ対象です。財産が差し押さえられると競売で現金化され、債権が回収されます。
差し押さえの対象は「債務者本人名義の財産」だけなので、家族名義の財産は強制処分の対象外です。
たとえば、配偶者名義の自宅に妻である債務者が同居している一般的なケースでは、妻の借金について強制執行されたとしても旦那名義のマイホームが差し押さえの対象になることはありません。
他方で、家族名義の財産であったとしても、実質的には債務者自身の支出によって財物を購入していたといえる場合には差し押さえの対象になります。
たとえば、妻名義の自動車の購入資金を夫が出していた場合、夫の借金について強制執行が行われると、当該自動車は差し押さえられて競売にかけられます。
差し押さえにより派生的に生じる主なリスク
また、差し押さえが行われることで以下のようなリスクも派生的に生じます。
- 家族や会社に借金トラブルがバレる
- 口座が凍結される
家族や会社に借金トラブルがバレる
給与が差し押さえられると勤務先に借金滞納の事実や差し押さえられたことがバレてしまいます。
また、自宅の財産が差し押さえられることにより、同居家族がいる場合はその方に借金トラブルの事実がバレることも考えられます。
借金を隠したかった方にとって、これらのことは差押を受けるリスクになります。
口座が凍結される
銀行にある預貯金は差し押さえの対象です。債権者側は債務者の口座情報を取得できるので、預貯金を隠すことは不可能に近いです。
預貯金が差し押さえられるときは、口座残高から債権回収に必要な金額が振り替えられるだけなので、原則として銀行口座自体が凍結されるリスクはありません。
ただし、差し押さえ対象になった口座を開設している銀行との間でローン契約を締結している場合には、口座が凍結されるリスクが生じます。
なぜなら、当該口座が差し押さえられることが「期限の利益喪失事由」に該当するので、ローン残債を一括請求されるからです。
残高の一括請求に応じられなければその時点で銀行口座が凍結されるので、公共料金などの引き落としも不可になります。
ワンポイント解説
出頭命令を届いてないことにはできない
「裁判所からの出頭命令を受取拒否して、届いていないことにすればよいのでは」と考える人もいるかもしれませんが、借金問題に関する出頭命令は通常「特別送達」という郵送方法で送られてくるため、正当な理由なく受取拒否できません。
また、付郵便送達を利用すれば、出頭命令を債務者が受取らなくても配達完了扱いとみなされ、債務者なしで裁判を進めることも可能となります。
したがって、借金問題に関する出頭命令を無視しても裁判を止めることはできず、最終的に債権者に有利な判決が下り財産を差押えられることは免れません。
借金放置による差し押さえを回避する方法はあるのか?
借金を放置し、裁判所も無視すると最終的には差し押さえを受けることになりますが、これを防ぐ方法はないのでしょうか?
結論から言うと、以下2つの方法で差し押さえを止められる可能性は残っています。
1.差押え前に債務整理を行う
借金を放置し続けて裁判所からの呼び出しを無視しても、弁護士に債務整理を依頼すれば強制執行による差し押さえ手続きを回避できる可能性があります。
債務整理には、自己破産・個人再生・任意整理の3種類の手続きが用意されていますが、どの手続きを利用したとしても、強制執行を回避することができます。
ただ、債務整理手続きが自己破産・個人再生か、それとも任意整理かによって取り扱いが異なるので、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
- 自己破産
- 個人再生なら差し押さえを止められる
- 任意整理で裁判・差し押さえを止めるには弁護士の交渉力がポイント
自己破産・個人再生なら訴訟を止められる
自己破産とは、債務者が抱えている債務を原則としてすべて帳消しにできる債務整理手続きです。
また個人再生とは、債務総額に応じて債務を大幅に減額する債務整理手続きです。
自己破産と個人再生の場合、手続き開始の効果として、強制執行が自動的に失効します。
そのため債務者は、債権者による差し押さえ等のストレスから解放され、生活の再建に集中できるようになるでしょう。
任意整理で債権者と和解できれば差し押さえは止まる
任意整理とは、債権者と直接交渉をして返済計画を作り直す債務整理手続きです。
任意整理後は利息が発生せずに元本残債だけを返済すればよくなるので、債務者の返済負担が大幅に減少します。
ただし、任意整理はあくまでも債権者・債務者間の合意のうえで成り立つ手続きです。
つまり、任意整理をスタートしたからといって、訴訟や強制執行が確実に止まるわけでない点に注意が必要です。
もっとも、債務整理の経験が豊富な弁護士に任意整理を依頼すれば、債権者を交渉のテーブルに引き出せる可能性が高いです。
任意整理で裁判・差し押さえ手続きを回避するためには、借金問題の解決に力を入れる弁護士に依頼をして速やかに交渉を進めてもらいましょう。
2.裁判に出席し、債権者と和解する
また、裁判上で債権者と和解すれば差し押さを止められる可能性も残っています。
借金問題に関する出頭命令が届く状況なら、一括返済を求められている状況かと思いますが、それでも裁判上で今後借金を支払うことを約束すれば、また分割払いで払っていくことを条件に和解できる可能性もゼロではありません。
口頭弁論期日は裁判所が債務者の言い分を聞くために設けられており、きちんと出頭すれば裁判所が債権者との間に入って仲裁してくれます。
その結果、一括請求を分割払いに変更できることも多いのです。
裁判所からの呼び出しを無視すれば差押えが確定してしまいますが、出席すれば和解できる道も残されています。
ですので、裁判所からの呼び出しは無視せず、出席することが大変重要であると考えられます。
和解後の滞納は絶対にNG
口頭弁論期日に裁判所へ出頭し、裁判所を介して債権者と和解することを「裁判上の和解」といいます。
裁判上の和解では、裁判所書記官が和解内容を「和解調書」に記載します。
この和解調書があると、仮に債務者が和解後に返済を滞納した場合、債権者は裁判を起こすことなく債務者の財産を差押えできるようになるのです。
そのため、裁判上で和解した場合は、和解後の返済を絶対に滞納しないよう注意しましょう。
ちなみに、和解後は2回の滞納で財産差押えを受けるのが一般的です。
裁判の自己対応が難しい場合は法律事務所へ相談しよう
ここまで記事をお読みいただき、借金問題に関する出頭命令は無視できないことがご理解いただけたかと思います。
しかし、実際のところ裁判所を介した手続きに対して適切に対処するには、専門知識が欠かせません。
そのため、借金問題に関する出頭命令が届いた場合に、自力で対処するのは難しいでしょう。
届いた出頭命令に適切に対処し、確実に財産の差押えを回避するには、法律事務所へ相談するのがおすすめです。
法律事務所へ相談すれば、財産を差押えられる前に、債務者が無理なく払える金額で分割返済できるよう債権者と交渉してくれます。
また、裁判所を介した手続きが必要になった場合も、法律の専門家である弁護士がすべて代理でおこなってくれるので安心です。
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債務整理を依頼すれば借金の負担を減らせる
「出頭命令が届いてから法律事務所へ相談しても、もう手遅れでは」と考える人もいるかもしれません。
しかし、出頭命令が届いていても、すぐに法律事務所へ相談し債務整理を依頼すれば、借金問題は解決できます。
債務整理とは、利息や元金をカットし借金の返済総額を大幅に減らせる手続きの総称で、国が認めた借金の救済制度です。手続きが複雑で法律の専門知識を必要とするため、主に弁護士へ依頼しておこないます。
債務整理には主に3つの種類があり、債務者の状況に合わせて最適な方法を選択します。
任意整理 |
今後支払う予定の利息をカットや減額し、3~5年で分割返済する。 |
自己破産 |
20万以上の価値ある財産を手放す代わりに借金を全額免除してもらう。 |
個人再生 |
20万以上の価値ある財産を手放さずに借金を約1/5に圧縮し、3~5年で分割返済する。 |
上記の方法に加え、2010年6月18日以前から借入をしている人は、過払金が発生している可能性が高いので、過払金請求も同時におこないます。
また、5年以上滞納している場合、まずは時効が成立しており借金を無効にできる可能性がないか確認します。
このように、一言で債務整理といってもさまざまな解決方法の組合せがあり、弁護士が債務者一人ひとりの状況に合わせて最適な方法を選択してくれるのです。
早く確実に借金問題を解決したいなら、できるだけすぐに法律事務所へ相談することをおすすめします。
当サイトでは、全国対応&24時間無料相談できる法律事務所を紹介しているので、差押えを受ける前にぜひ利用してみてください。
債務整理を行うことで支払いの猶予期間ももらえる
また、債務整理を行うと、支払い猶予期間も与えられます。これは現在返済資金を用意できない人にとって大きなメリットになるのではないでしょうか。
例えば任意整理を行う場合は、弁護士や司法書士が債権者と交渉を行ってくれ、3〜5年の返済期間の中で、あなたが現実的に返済できそうな返済計画を立て直してくれます。
この交渉中は返済猶予期間が与えられるため、現状を立て直すことも可能なのです。
この支払い猶予期間をもらえることも、債務整理をおすすめしたい理由となります。
借金問題は放置せず、早めに対応を考えよう
借金問題は放置すればするほど事態は深刻になります。
どうしても返せないという状況でも、放置せず早めに債務整理を行えば、深刻度は和らげることが可能です。
ですので、放置せず早めに対応を考えることが大切です。
- 遅延損害金を最小限にできる
- ブラックリストを回避、または回復期間を早められる
遅延損害金を最小限にできる
弁護士に債務整理を依頼するのが早いほど、遅延損害金の負担を軽減できます。
遅延損害金とは、滞納日数に応じて日毎に発生するペナルティのことです。
家計状況がひっ迫すると返済期日までに支払いができないこともあるでしょう。
しかし、返済期日の翌日から遅延損害金が発生するので、返済額に遅延損害金を足した金額を支払わなければ延滞が解消されないという厳しい状態に追い込まれてしまいます。
借金放置による遅延損害金のペナルティが重くなるほど、生活再建のハードルが高くなります。
したがって、返済継続が難しくなった段階で、できるだけ早期に弁護士の力を借りましょう。
ブラックリストを回避、または回復期間を早められる
もし一括請求を受ける前であれば、まだブラックリストには載ってない可能性があります。すぐに返済をすれば、ブラックリストになることは避けられるでしょう。
また、いつまでも滞納をするより早めに債務整理を行なって完済したほうが、ブラックリストからの回復期間も早めることができます。
ブラックリストに登録されると、クレジットカードが使用不可になったり新規の借入れができなくなるなど、日常生活にいろいろな支障が生じます。
たとえば、出費を節約する・不用品を処分して返済資金を集める・家族や親族に融資を求めるなどの工夫をすれば延滞状況はすぐにでも解消できることもあるはずです。
財産などの強制執行という最大のペナルティを回避するために、できるだけ早期の段階で延滞状況の解消を目指しましょう。また、どうしても延滞を解消できないのなら、速やかに弁護士の力を借りて債務整理を実践してください。
【状況別】裁判所へ出頭できない場合の対処法
前述したように、借金問題に関する出頭命令を無視して裁判所へ出頭しないと、債権者に有利な判決が下り、財産を差押えられるのが一般的です。
しかし、さまざまな事情から口頭弁論期日に裁判所へ出頭できない人もいるでしょう。
- 裁判所が遠方で出頭する負担が大きい。
- 妊娠中などで移動自体が難しい。
- 認知症や知的障害などで債務者本人が出頭できない。
- 債務者本人が拘留中。
このような事情を抱える人でも、できる限り口頭弁論期日に参加できるよう、裁判所にはさまざまな制度が用意されています。
例えば、裁判所が遠方で出頭する負担が大きい場合は「移送申立て」をおこなうことで、管轄の裁判所を変更できる可能性があります。
また、妊娠中などで移動自体が難しい場合は「擬制陳述」や「電話会議システム」を活用することで、裁判所に行かずに手続きを完了させられる可能性もあるのです。
以下の記事では、さまざまな状況別に裁判所へ出頭できない場合の対処法について、詳しく解説しているのでぜひ参考にしてください
まとめ
借金を放置して裁判所を無視すると、やがては財産・給与などが差し押さえられて生活に支障が生じることになります。
滞納をしている後ろめたさから債権者・裁判所の連絡に応じにくい気持ちが芽生えるのはどの債務者も同じです。
しかし、だからといって放置を続けてしまうと、自分自身に降りかかるペナルティが大きくなるだけです。
したがって、支払督促や訴訟に発展する前に、返済継続が難しくなった段階で弁護士に債務整理を検討してもらいましょう。
借金問題は相談無料で対応してくれる弁護士も多いので、できるだけ早期に借金問題の解決に力を入れる弁護士に依頼をしてください。
借金を放置して裁判所からの連絡も無視したときのQ&A
借金の滞納を無視していると裁判所から支払督促が届きました。無視するとどうなりますか?
裁判所からの「支払督促」は、債権者が法的措置によって債権の回収に出たことを表します。仮執行宣言付きの支払督促を無視すると債権者が強制執行できるようになるので、債務者名義の財産や給与が差し押さえられてしまいます。
裁判所を無視したまま強制執行されるとどんなデメリットがありますか?
たとえば、給与が差し押さえられると会社に借金の事実・差し押さえされたことがバレます。信用がなくなるので会社に居づらくなるでしょう。また、自宅などの財産が競売にかけられると今までの生活拠点を失うことになります。家族にもバレて生活にも支障が生じるので、生活再建が難しくなるでしょう。
支払督促を受け取ったときにはどのような対処法をとるべきですか?
支払督促を放置したままでは強制執行に至ってしまうので、債務者側に主張すべきことがあるのなら2週間以内に異議申し立て書を提出してください。ただ、明らかに返済をしていない債務者自身に問題があることがはっきりしており、今後の返済可能性もない状況なら、すぐに弁護士に相談をして債務整理に踏み切ってもらいましょう。なぜなら、債務整理を利用すれば強制執行を回避できる可能性が高いからです。
裁判所から訴状が届きました。どうしたらよいですか?
記載されている口頭弁論期日の1週間前までに答弁書を裁判所へ提出しましょう。
その間に債権者へ一括返済をするか、難しければ弁護士へ債務整理の依頼をすることをおすすめします。
差押えが決まった場合、何が差押えられてしまうのですか?
主に給料や預金が対象となります。
それでも借金が回収できなければ、自宅や土地などの不動産や、自動車が差押えられることもあります。
最短即日取立STOP!
一人で悩まずに士業にご相談を
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