親の借金を子供が肩代わりする義務はない
親の借金を子供が肩代わりする義務はありません。
なぜなら、借金は借りた本人にのみ返済義務があるからです。
しかし、借金の連帯保証人になっている場合や、相続が発生した場合など例外もあります。
この項目では、親の借金を子供が肩代わりする義務がない根拠を解説し、肩代わりする必要があるケースについてもお伝えします。
借金は原則として本人にしか返済義務がない
借金は債権者と債務者との契約であり、家族だとしても債務者以外の人に返済義務がおよぶことはありません。取立てる行為も法律によって禁止されています。
七 債務者等以外の者に対し、債務者等に代わつて債務を弁済することを要求すること。
引用元:e-Govポータル「貸金業法第21条7」
そのため、親や債権者から借金の肩代わりを要求されても、支払わずに毅然とした態度で断るとよいでしょう。
それでも要求が続く場合の対処法については、のちの項目で解説していますので、参考にしてください。
任意で親の借金を肩代わりすることは可能
親の借金に対して子供に返済義務はありませんが、任意で肩代わりをすることは可能です。
その場合、肩代わりした分は子供から親への贈与とみなされて、親に「贈与税」が課せられるので注意しましょう。
贈与税は、年間の贈与額が110万円以下なら控除が受けられます。親の借金を肩代わりする場合は、上手く活用するとよいでしょう。
また、贈与でなく貸借であれば贈与税は課せられません。その場合は親子間であっても借用書を用意するなど、のちにトラブルとならないように準備することが大切です。
参照:国税庁ホームページ「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
場合によっては親の借金を肩代わりする必要がある
親の借金に対して、子供に返済義務がないのは前述したとおりです。
しかし、以下の場合は親の借金であっても肩代わりする必要があります。
- 親の借金の保証人・連帯保証人になっている
- 親が子供の身分証や実印を使って借金をした
- 遺産を相続してから3ヶ月以上が経過した
次の項目から、それぞれ詳しく解説していきます。
親の借金の保証人・連帯保証人になっている
まず、親の借金において子供が保証人や連帯保証人になっている場合です。
保証人や連帯保証人は、債務者が支払不能となったときに借金の残債を返済する義務を負います。
原則として任意で契約した保証人や連帯保証人は解除できず、債権者からの請求に応じなければなりません。
保証人と連帯保証人の違いや、契約の解除方法については以下の記事を参考にしてください。
親が子供の身分証や実印を使って借金をした
親が子供の名義で勝手に借金をした場合も、返済義務が発生する可能性があります。
親が子供の実印を持ち出して押印した場合などは、持ち出しを証明するのが難しく借用書が成立する可能性が高いのです。
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
引用元:e-Govポータル「民事訴訟法第228条4」
身分証や印鑑の持ち出しを証明できたり、債権者が子供の同意でない借金であることを知っていた場合は返済義務を解除できる可能性があります。
それらの証明には法的知識が必要となるため、まずは一度、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
相続の発生からら3ヶ月以上が経過した
相続発生から3ヶ月が経過すると、相続放棄や限定承認はできないのが原則です。
そのため、相続発生から3ヶ月が経過すると、親の借金に対する返済義務を免れることは難しいケースが多いです。
ただし、以下のような条件を満たせば、3ヶ月が経った後でも相続放棄ができる可能性があります。
- 借金の存在を知ってから3ヶ月以内である
- 借金の知らなかったことを客観的に証明できる
相続発生から3ヶ月後に相続放棄をしたい場合は、家庭裁判所に申述し認めてもらう必要があります。
その場合も、弁護士に相談して的確なアドバイスをもらうのがよいでしょう。
相続発生から3ヶ月以内の相続放棄については、のちの項目で詳しくお伝えしますので参考にしてください。
親の借金の肩代わりを回避する方法
親の借金に対して子供は返済義務を負いません。
しかし、親に肩代わりをしつこく要求されたり、肩代わりを無下に断りにくいということもあるでしょう。
また、親が亡くなった際に借金の事実が発覚することも珍しくありません。
そのような場合に、親の借金の肩代わりを回避する方法を次の項目から詳しく解説していきます。
親が健在なら債務整理をするよう説得する
親に借金の肩代わりをお願いされる場合、親が返済不能な状況に陥っているケースが多いです。
その場合は、親に債務整理をするように説得するのは肩代わりを回避できる1つの手段です。
債務整理とは、国に認められた借金減額の方法で以下の3つの方法があります。
- 任意整理・・・利息をカットして月々の返済額を減らす。
- 自己破産・・・一定以上の価値がある財産を処分して債務をすべてなくす。
- 個人再生・・・借金総額を大幅に圧縮する。
債務整理後は一定期間において借入ができなくなるため、親が新たな借金を増やしてしまうのを防ぐこともできます。
ただし、子供が親名義の借金を債務整理することはできず、必ず本人の同意が必要です。
債務整理について説明し、親に納得してもらうとよいでしょう。弁護士に間に入ってもらうのもおすすめです。
以下の記事で債務整理について詳しくお伝えしているので、参考にしてください。
5年以上前の借金なら時効の援用手続きをする
消費者金融やカードローン、銀行からの借金は5年で時効となります。
ただし、時効を成立させるには「時効の援用」手続きをしなければなりません。
時効の援用手続きは個人でもできますが、正しい知識をもとにおこなわないと「時効の中断事由」を発生させてしまう場合もあるので、弁護士へ依頼するのが確実です。
また、個人間や信用金庫、奨学金といった借金の時効は10年となっています。
※2020年4月以降の借入は個人間や信用金庫、奨学金も5年となっています。
親が亡くなった後に発覚した借金は相続放棄をする
亡くなった後に発覚した親の借金を肩代わりしたくない場合は、相続放棄をするとよいでしょう。
相続放棄は、相続が発生した日から3ヶ月以内におこなわなければなりません。
親の遺産における相続放棄は、以下の書類を揃えて親の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出します。
- 相続放棄の申述書
- 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
- 申述人(放棄する方)の戸籍謄本
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
相続放棄の申述書は、最高裁判所のページからダウンロードできます。
また、相続放棄では借金のようなマイナスの遺産だけでなく、不動産や預貯金、貴金属などすべての遺産を手放さなければなりません。
手元に残したい財産があったり、親の借金総額がわからない場合は次の項目で解説する「限定承認」をするとよいでしょう。
参照:最高裁判所ホームページ「相続の放棄の申述」
引き継ぎたい財産があれば限定承認をする
限定承認とは、相続したプラスの財産の範囲だけマイナスの財産も相続する制度です。
例えば、以下の状況であるとします。
・相続したい財産・・・100万円の価値がある腕時計
・親の借金・・・1,000万円
この場合、借金も100万円分相続することで、腕時計を相続できます。
また、後から追加で借金が発覚する可能性がある場合も限定承認は効果的です。
限定承認手続きをしてプラスの財産を相続すれば、その金額以上の借金を肩代わりすることにはなりません。万が一、後から借金が出てきたときのために、一定の期間は相続した財産は使わずに残しておくとよいでしょう。
限定承認は、相続人全員で相続が発生した日から3ヶ月以内に手続きする必要があります。
親が組んでいた住宅ローンは団体信用生命保険を適用させる
親が住宅ローンを残したまま亡くなってしまうケースもあるでしょう。
多くの場合、住宅ローンの主債務者は団体信用生命保険に加入しています。団体信用生命保険とは、住宅ローンの主債務者が返済中に死亡した場合に保険金で住宅ローンが完済される保険です。
そのため、親名義の住宅ローンについては団体信用生命保険を適用させるとよいでしょう。
団体信用生命保険に加入しておらず、プラスの財産や住宅を売却しても残債が残る場合は、相続放棄を検討するとよいかもしれません。
肩代わりした親の借金が支払えないときの対処法
連帯保証人や任意で親の借金を肩代わりしたけれど、自身も借金の返済が困難なケースもあると思います。
その場合、考えられる方法は大きく分けて以下の3つです。
- 支出を減らして収入を増やす
- 友人や親戚に金銭的援助をお願いする
- 弁護士に債務整理を依頼する
次の項目から、それぞれ詳しくお伝えします。
支出を減らして副業で収入を増やす
まず、支出を減らして借金の返済に充てられるお金を増やせないか検討してみましょう。
支出は以下の分類に分けると、無駄な支出がわかりやすいのでおすすめです。
- 消費・・・生活に必要な支出。家賃や水道光熱費、食費や交通費など。
- 投資・・・将来役に立つものへの支出。書籍代やセミナー代、株式投資や貯蓄など。
- 浪費・・・無駄な支出。ギャンブルや高価な買い物、必要以上に贅沢な外食など。
まずは浪費を減らすとよいでしょう。借金の返済が終わるまでは、投資を控えてもよいかもしれません。
また、なるべく自炊をするなど、消費も節約できる部分があるでしょう。
それでも返済が難しい場合は、副業で収入を増やすことを検討してみましょう。
単発や在宅で勤務が可能な仕事なら、本業とも両立しやすいのでおすすめです。
借金返済のための副業に関しては、以下の記事で詳しくお伝えしているので参考にしてください。
友人や親戚に金銭的援助をお願いする
友人や親戚に金銭的援助をお願いするのも1つの方法です。親の借金を肩代わりしている場合、金銭的援助を申し出てくれる親戚もいるかもしれません。
友人や親戚から金銭的援助を受ける場合は、受取る側に贈与税が課せられます。
また、贈与ではなく貸借の場合は、以下のことを記載した借用書を作成してのちのトラブルを防ぎましょう。
- 借りる金額
- 返済期限
- 利息
- 月々の返済額
- 借用書を作成した日付
- 借主、貸主双方の署名と捺印
個人間の借金に不安がある場合は、弁護士に依頼して立ちあってもらうとよいでしょう。
弁護士に債務整理を依頼する
友人や親戚からの金銭的援助は難しく、自力での返済も困難な場合は弁護士に債務整理を依頼するとよいでしょう。
債務整理では借金を確実に減らせる反面、以下のようなデメリットもあります。
- 債務整理後5~10年の間はクレジットカードを作れない
- 債務整理後5~10年の間はローンを組んでの買い物が難しい
- 自己破産の場合は家や車が差押えられる可能性が高い
他にも会社を経営している場合は、経営を続けることが難しかったりと人によってさまざまデメリットがあります。
しかし、借金問題は先延ばしにすればするほど解決が難しくなります。
自力での返済が困難だと感じたら、弁護士に相談して債務整理のデメリットもよく聞いたうえで判断するとよいでしょう。債務整理なら、確実に借金問題を解決できます。
当サイトでも紹介していますが、無料相談を受け付けている法律事務所も多数ありますので、まずは一度お気軽にお問い合わせください。
親の借金の肩代わりを債権者に求められたらどうする?
親の借金について、債権者から返済を求められることもあるかもしれません。
返済義務のない親の借金について、債権者が子供に取立てをするのは違法です。そのため、警察や弁護士へ相談するのがよいでしょう。
また、同意なく連帯保証人に設定されていた場合は、解除ができる可能性が高いです。債権者にその旨を伝えるとよいでしょう。
次の項目から、債権者から肩代わりを求められたときの対処法について、さらに詳しくお伝えします。
子供に肩代わりを求める債権者は闇金の可能性があるので弁護士へ相談する
前述したように、債務者以外へ取立てを要求するのは貸金業法で禁止されているので、通常の消費者金融やカード会社はおこないません。
しかし、債権者が闇金の場合は債務者以外にも返済を迫るケースが多々あります。
そのため、返済義務がない親の借金の肩代わりを債権者に要求されているのなら、相手が闇金の可能性が高いです。
闇金からの督促は無視しても解決せず、以下のような嫌がらせに発展する場合もあります。
- 昼夜問わず督促の電話がかかってくるようになる
- 勤務先にも督促の電話がかかってくる
- 家族にも督促がおよぶ
そのような事態になる前に、闇金問題に詳しい弁護士へ相談するとよいでしょう。
警察へも相談できますが、暴力行為などの被害がないと積極的に動いてくれないことも多く、弁護士へ依頼したほうが確実に解決できます。
警察へ相談する場合は、同時に弁護士へも相談できるように準備しておくとよいでしょう。
また、相手が闇金の場合は元金も含めて返済義務がありません。弁護士に依頼すると、以下のような闇金への対処も請け負ってもらえます。
- 取立てをやめるようにかけあってくれる
- 闇金に返済義務がないことを認めさせてくれる
- 支払ったお金の返還請求をしてくれる
親の借金の債権者が闇金かもしれないと思ったら、一度弁護士へ相談してみてはいかがでしょうか。
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同意のない連帯保証人設定は債権者に対して解除を求める
同意なく連帯保証人に設定されていた場合、債権者に対して解除を求めるとよいでしょう。
その際は、契約書の内容を確認し、自筆の署名や押印が親による虚偽の物であることを証明する必要があります。
前述したように、親が実印の持ち出しなどをしていると虚偽の証明が難しいケースも多いです。
そのような場合は弁護士へ依頼をし、法的措置も視野に入れた解決方法のアドバイスをもらうとよいでしょう。
まとめ
親の借金について、子供が肩代わりする義務は原則ありません。
しかし、以下の場合は肩代わりしなければならない可能性が高いので、注意が必要です。
- 親の借金の保証人・連帯保証人となっている
- 親が実印を持ち出して契約をしている
- 相続発生から3ヶ月以上が経過した
親が勝手に子供を連帯保証人に設定していたり、勝手な実印の持ち出しの場合は、自分の意思でないことを証明できれば返済義務がなくなる可能性があります。
ただし、自身に返済義務がないことを証明するには法的知識や調査が必要なため、困ったら弁護士へ相談するとよいでしょう。
また、任意で肩代わりした親の借金の返済が困難となったときも、借金問題に強い弁護士へ相談することで早期解決が図れます。
親の借金についてよくある質問
親が借金を返済できなくなった場合、子供に返済義務はあるんですか?
借金は債権者と債務者との契約であり、家族だとしても債務者以外の人に返済義務がおよぶことはありません。ただし、親の借金を相続していたり、親の借金の保証人・連帯保証人になっている場合は、返済義務があります。
親の借金について、子供に請求が来たらどうすればよいですか?
家族であっても、債務者以外に返済義務はないので、請求を受けても応じる必要はありません。ただし、親の借金を相続していたり、親の借金の保証人・連帯保証人になっている場合は、返済義務があるため親の借金を肩代わりしなければなりません。
親が借金を返済できず財産を差押えられることになったら、子供の持ち物も差押えられるのですか?
借金を滞納して財産を差押えられることになっても、債権者が差押えられるのは債務者の持ち物だけです。ただし、親の借金を相続していたり、親の借金の保証人・連帯保証人になっている場合は、子供に返済義務があるため財産を差押えられる恐れがあります。
親の死後、借金があると発覚した場合、どうすればよいですか?
亡くなった後に発覚した親の借金を肩代わりしたくない場合は、相続放棄をするとよいでしょう。ただし、相続放棄では借金のようなマイナスの遺産だけでなく、不動産や預貯金、貴金属などすべての遺産を手放さなければならないため注意してください。また、相続放棄は相続が発生した日から3ヶ月以内におこなわなければならないので、早めに家庭裁判所に申述し認めてもらいましょう。その場合、弁護士に相談して的確なアドバイスをもらうのがおすすめです。
親が子供の身分証や実印を使って子供の名義で借金をした場合、子供に返済義務はあるのですか?
親が子供の名義で勝手に借金をした場合も、返済義務が発生する可能性があります。ただし、身分証や印鑑の持ち出しを証明できたり、債権者が子供の同意でない借金であることを知っていた場合は返済義務を解除できる可能性があります。それらの証明には法的知識が必要となるため、まずは一度、弁護士に相談してください。
最短即日取立STOP!
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