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個人再生でやってはいけないこととは?失敗したときの対処法も解説

個人再生でやってはいけないこととは?失敗したときの対処法も解説

個人再生は、借金を5分の1~10分の1程度に減額し、生活を立て直すための手続きです。ただし、認可されるには一定のルールが存在し、守らなければ減額が認められません。また、返済中でも手続きが中止になったりする可能性があります。

令和5年度の個人再生数を司法統計年報で確認すると、総数9,367件のうち、成功率は約92%(再生手続終結8,637件)です。しかし、約8%にあたる730件が手続きに失敗しています。成功率が高い反面、個人再生を開始できなかった人がいるのも事実です。

また、個人再生は多くの方にとってなじみが薄いため、「手続きでやってはいけないことは何なのか?」「失敗したらどうなるのか?」など、不安や疑問を感じることでしょう。

まず、個人再生の手続き中は裁判所や債権者に対し、不適切な行動をとることが禁止されています。「うその申告をする」「借入れを増やし続ける」「返済を怠る」など信頼を失う行為は許されません。

それにより、手続きが廃止される危険性もでてきてしまいます。

また、ご自身の健康状態やご家庭の事情で、返済自体が苦しくなることもあるでしょう。その場合には返済計画を見直したり別の債務整理を行うなど、対処法も存在していますので、事前に確認しておくと安心です。

本記事では個人再生をご検討中の方へ、手続きを進めるなかで注意すべき行動を具体的にご紹介しています。

万が一、手続きに失敗した場合の対処法についてもご覧ください。

借金問題を解決するためにも、正しい知識を身につけ、個人再生の手続きをしましょう。

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個人再生の手続きでやってはいけないこととは?

個人再生の手続きでは、次の5つの行動をやってはいけません。

  1. 虚偽の申告をする
  2. 特定の債権者に優先して返済する
  3. 新たな借入れをする
  4. 書類や手続費用を期限内に提出・納付しない
  5. 履行テストを怠る

どれも債権者や裁判所の信頼を失う行為であり、手続きを成功させたいのであれば、あってはならない行動です。

それぞれの項目を詳しく解説していきます。

虚偽の申告をする

意図的に資産や収入を少なく申告したり、都合の悪い借入先を隠してはいけません。虚偽の内容を報告すると「誠実さに欠ける」という理由で手続き廃止の原因となります。

裁判所だけでなく、申立てを担当する弁護士にも虚偽の申告をしてはいけません。裁判所との間を取り持つ重要な役割を担っているため、信頼を失うような行為は避けるべきです。

仮に悪質な虚偽の申告をして発覚した場合、詐欺再生罪といった刑事責任を問われる可能性があります。罰則は10年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金またはその両方です。金銭的な制裁だけでなく、社会的信用を失うリスクも高まります。

裁判所や弁護士への申告は個人再生の認可を得るための大切なプロセスです。誠意を持って対応しましょう。

特定の債権者に優先して返済する

一部の債務者のみに優先して返金してはいけません。これは偏頗(へんぱ)弁済といい、禁止行為となっています。個人再生においては債務者への平等な返金が求められているため、不誠実な行動とみなされてしまうのです。

例として、家族や友人を優先して、返済するケースがあります。一般的に個人再生は銀行や賃金業者との間で行うため、身近な人物に対しての返金は問題ないと考える人が多いようです。しかし、この行為は偏頗弁済に該当します。

もし偏頗弁済をしてしまった場合は、その返済分だけ支払う能力があったと判断され、再生計画によって定められた返済総額が増額する可能性がでてきます。返済がより困難になることは、手続きの却下や廃止にもつながりかねません。

また、偏頗弁済は受けた債権者にも迷惑がかかります。「債権者平等の原則」のルールにのっとり、返済されたお金を破産管財人(債務者の財産を管理する人)に返還する必要がでてくるからです。

偏頗弁済で友人への返済を優先させたとしても、友人が受け取ったお金は手続きをして破産管財人に返すことになります。結果、身近な人に手間や時間をとらせてしまうのです。

新たな借入れをする

個人再生を行う前に、新たな借入をすることは不誠実な行為と判断され、申立てが棄却される可能性があります。また、個人再生の手続きでは借金総額が確定している必要がありますが、新たな借入れをすることで、総額が変動し、手続きがスムーズに進められません。

そもそも個人再生を申立てている段階で、債務者はすでに支払いが困難な状態です。それにもかかわらず、新たな借入れをする行為は「返金する気がない」と判断され、裁判所や債権者の信頼を失う結果にもつながります。

また、個人再生では、家計収支表という家計簿のような資料を提出する必要があります。新たな借入れにより支出が増えたことは、この資料からも発覚してしまうでしょう。

個人再生の検討を始めたら、新たな借入れは禁止行為です。

書類や手続費用を期限内に提出・納付しない

個人再生の手続きで裁判所に提出するのが「再生計画案」です。この計画案は、減額された借金の返済額や分割回数などを記載した重要な書類で、裁判所が指定する提出期限を守らなければいけません。

期限内に提出しないと、手続きのスケジュールが遅れるだけでなく、最悪の場合、手続きそのものが廃止される可能性もあります。作成には、申立書や債務者一覧表、収入や借金に関する証明書類が必要ですので、余裕をもって準備しましょう。

やむを得ない理由で提出が遅れるときは、裁判所に期限の延長を申請することも可能です。しかし、認められるかは裁判所の判断次第のため、不安な場合は早めに弁護士を通して相談する必要があります。

また、法的手続きを始めるにあたっては、予納金等の手続き費用(3万円程度)の納付も忘れてはいけません。こちらも期限内に納付をしないと手続き廃止のリスクがあります。

個人再生を確実に進めるために、期限や書類は早めに確認し、対応しましょう。

履行テストを怠る

個人再生の手続きで重要な「履行テスト」を怠ると、手続きが失敗に終わるリスクが高まります。

履行テストとは、再生計画で決められた返済額が無理なく実行可能かを事前に確認するテストで「積立トレーニング」とも呼ばれます。指定日までに決定した返済額を口座に振り込むという内容です。

このテストを怠ると、裁判所から「返済能力がない」または「返済意欲が低い」と判断され、再生計画が認可されないだけでなく、手続き自体も廃止される可能性があります。また不誠実な対応は債権者らの信頼も損ね、その後の計画が順調に進まなくなるでしょう。

履行テストの期間は裁判所により異なりますが、通常3ヶ月から6ヶ月程度です。もし、家庭の事情や健康問題で履行テストの継続が難しくなった場合は、すぐに弁護士に相談しましょう。事前に報告することで、裁判所に理解してもらえる可能性もあります。

何も言わずにテストを中止し、滞納することだけは絶対に避けるべきです。

個人再生の認可後にやってはいけないこととは?

個人再生は、減額された借金を最後まで返済することが前提の手続きです。そのため、手続き後は返済にあてるお金を確保する必要があります

以下の内容は個人再生の進行を妨げる行動ですので必ず確認しておきましょう。

  1. 返済の滞納をする
  2. 浪費をする
  3. 退職や転職をする

それぞれ、詳しく解説します。

返済の滞納をする

個人再生の認可後に返済を滞納すると「返済能力や意欲がない」と裁判所に判断される恐れがあります。これにより、再生計画が取り消され、減額された借金が元の金額に戻ってしまう可能性があるのです。結果、返済負担が再び大きくのしかかり、生活の再建も困難になるでしょう。

そもそも、個人再生は借金を減額する救済措置です。それを受けながらも、減額後の返済を怠る行為は裁判所や債権者から「不誠実な対応」とみなされます。まずは、計画的に返済することが大切です。

さらに、再生計画が取り消されると、借金が元に戻るだけでなく、手続きにかかった裁判費用や弁護士費用もそのまま残るので、経済的な負担が一層厳しくなります。

このような事態を避けるためにも、返済が難しくなった場合は早めに弁護士に相談することが重要です。状況を説明すれば、計画の変更や条件緩和などの対応が行われるかもしれません。

また、滞納してしまった場合は、債権者から問い合わせや督促が届くことがあります。1回の滞納ですぐに再生計画が中止される可能性は低いものの、繰り返し注意を受けると裁判所や債権者の信頼を失い、取り消しのリスクが高まります。

浪費をする

ギャンブル、ゲーム課金、FX、仮想通貨、株式投資などの浪費により、返済金を確保できなくなる恐れがあります。個人再生は、借金を軽減し生活を立て直すための手続きですが、その過程で生まれた経済的余裕を浪費に使ってしまうのは非常に危険です。

再生計画は、債務者の収入や生活費を考慮して決定されています。ギャンブルのような予定外の支出は計画外の浪費とみなされ、返済を達成する可能性が低いと判断されるのです。その結果、手続きの廃止や再生計画の不認可にもつながってしまいます。

なによりも、浪費グセにより、資金不足になることは必然的です。もし再生計画が続行されたとしてもその後の返済がより困難になるでしょう。

また、浪費が発覚すると、再生計画の条件が変更される可能性があります。例としてギャンブルで使用した金額が個人再生の減額対象から外され、追加返済を求められるケースです。

万が一浪費をしてしまった際は、すみやかに弁護士に相談してください。大きな問題になる前に適切な対応を心がけましょう。浪費を防ぎ、計画的な生活を送ることが、再生計画を成功させる鍵となります。

退職や転職をする

個人再生後の返済を計画通りに進めるためには、安定した収入が必要です。そのため、退職や収入が減少する転職は慎重に判断しましょう。

退職の場合、単に収入が途絶えるだけでなく、受け取る退職金が問題になることがあります。退職金は、個人再生の手続きにおいて「財産」として評価されるため、受け取ることで返済額が増額される可能性があるのです。

退職金を受け取るタイミングや裁判所の判断によっても内容は変わりますので、弁護士を通して詳細を確認しましょう。

また、個人再生の申立期間に転職すること自体は可能ですが、返済にあてられる給与が得られないのであれば、避けたほうが無難です。まずは安定した収入確保を目指しましょう。

さらに、転職先によっては研修期間などで一時的に収入が発生しないケースもあります。収入減によるリスクを負わないためにも、転職を検討する際は採用条件や給与について十分な確認が必要です。

個人再生でやってはいけないことをした場合は?

個人再生の開始後に禁止行為が見つかると、返済に関わる大きな変更が発生します。減額が認められなかったり一括返済を求められたりと、想定外の状況におちいるかもしれません。

また、個人再生が無効になることで、結果的に支払った費用がムダになります。どれもご自身にとって経済的負担が増すばかりでしょう。

さらに、内容が悪質と判断された場合は刑事罰が科されるケースもあります。大きな問題になるまえに、どんなトラブルが起こるのかを確認していきましょう。

個人再生が認められず借金が減額されない

個人再生の手続きが通らなかった場合、再生計画案は不認可となり、借金の減額が認められません。借金の減額を望むのであれば、個人再生の手続きを慎重に進め、きちんと再生計画をスタートさせることが大切です。

また、個人再生が認可されたとしても、再生計画に基づいた返済ができていなければ、手続きが取り消しになってしまいます。つまり、借金の減額制度が利用できないということです。

一括返済を求められる

個人再生で違反行為が発覚すると、これまでにかかった費用の一括返済を求められる可能性があります。

個人再生は債権者の同意を得たうえで進められる制度です。不適切な行動が明らかになると、債権者が信頼を失い、再生計画を無効化する請求を裁判所に求める場合があります。

主な返済内容は残債・利息・遅延損害金などです。

一括返済の要求は、通常の返済計画以上の負担を強いられるため、個人再生を進めるうえで大きなリスクとなります。

費用がムダになる

個人再生が認められなかった場合でも、裁判所への申立て費用や弁護士への報酬を支払う義務があります。

これは、借金が減額されないだけでなく、これまでの申立てに対する支出が増加し、費用がムダになっている状態です。ご自身にとっては金銭的負担が増すばかりでしょう。

自力で個人再生にチャレンジして失敗してしまうと、時間やお金などを予想外に使ってしまう恐れがあります。余計な費用をださないためにも、弁護士と連携をとりながら、手続きをしましょう。

刑事罰が科される可能性がある

個人再生を進めるなかで、一部のルールを守れない債務者には民事再生法に定められた刑事罰が課される場合があります

以下のような行為にご注意ください。

  • 財産の隠匿・損壊(民事再生法255条1項1号)
  • 財産の譲渡や債務の負担を仮装する(民事再生法255条1項2号)
  • 財産の価値を減損する(民事再生法255条1項3号)
  • 不利益な債務負担をする(民事再生法255条1項4号)
  • 偏頗(へんぱ)弁済(民事再生法256条)

民事再生法255条に違反した場合「詐欺再生罪」が立証されます。これは個人再生をする人が債権者に対して財産を隠す、内容に虚偽があるなどの一定の迷惑行為を行った場合に科される罰です。罰則は10年以下の懲役、1,000万円以下の罰金もしくはこれらの併科となります。

民事再生法256条の違反については「特定の債権者に対する担保の供与等の罪」が成立します。具体的にいうと、家族や友人など身近な人物にだけ借金を優先的に返済した場合に問われる罪です。5年以下の懲役、500万円以下の罰金またはその併科が求められます。

個人再生の申立てが失敗したときの対処法は?

個人再生の手続きがうまくいかなかった場合でも、再度申立てをすることは可能です。ただし、手続きが失敗した原因を自分だけで解決するには難しいことが多く、専門的な知識や経験が必要になる場合があります。

こうした場合は、個人再生に詳しい弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士に相談することで、疑問や不安を解消し、適切な解決方法が見つけられます。専門家のサポートを受けることで、再申立てが成功する可能性も高まるでしょう。

多くの人はつぎのような対処法に取り組んでいます。

申立てをやり直す

個人再生の手続きに失敗した場合でも、適切な準備をすれば再び申立てができます。

肝心なのは、知識や経験が豊富な弁護士に相談するという点です。これまでの失敗や経緯を精査し、改善方法を適切にアドバイスしてくれます。

また、再申立ての際には、ご自身での事前準備も重要です。裁判所に提出する住民票や財産の証明書など、必要書類を正確にそろえましょう。

さらに、これまでの行動を見直すことも必要です。虚偽の申告新たな借入れ浪費などのルール違反がなかったか、改めて振り返ってみてください。

申立てには分からないことや、不安な点も多いはずです。ひとりで抱え込まず、専門的な知識を持った弁護士に依頼することで、スムーズに手続きが進められるでしょう。

申立てが認可されたことがある場合は期間をあけて再申立てする

過去に債務整理をしている人は、再度申立てをする場合、一定期間をあけなければいけないケースがあります。

まず、個人再生には「小規模個人再生」「給与所得者等再生」の2種類がある点をご存じでしょうか?

小規模個人再生 給与所得者等再生
対象者 個人事業主※会社員も可能 会社員などの給与所得者
利用条件 ・借金額が5,000万円以下
・返済の見込みがある
・借金額が5,000万円以下
・返済の見込みがある
・過去7年以内に自己破産、
給与所得者等再生をしていない

弁済額 最低弁済額または清算価値の高い方 最低弁済額、清算価値、
可処分所得2年分のうち最も高い額
債務者の同意 必要 不要
メリット 減額が多くなる可能性が高い
給与所得者等再生よりも収入に関する条件が優しい
債権者の同意がいらない

※最低弁済額(減額後の返済額)
※清算価値(所有財産の合計額)
※可処分所得(収入から税金や社会保険料を差し引いたもの)

返済額が元の金額の5分の1~10分の1程度になることから、約9割の人が小規模個人再生を選択しています。令和4年度のデータでは小規模個人再生事件が8,982件に対して、給与所得者等再生事件は782件でした。
参考:最高裁判所事務総局「令和4年司法統計年報概要版 民事再生事件数」

また、表にもあるように、過去に自己破産または給与所得再生をしている人は、次の申立てができるまで7年間待つ必要があります。このルールにより、急ぎの場合は小規模個人再生を利用することになります。

それぞれ利用条件を理解したうえで、申立てのスケジュールを検討しましょう。

個人再生の認可後に返済できなくなったときの対処法は?

個人再生が認可され返済を開始していても、なんらかの事情で支払いの継続が難しくなるパターンもあるでしょう。

そんなときは、つぎの3つの申立てを検討してみることをご提案します。

  1. 再生計画の変更
  2. ハードシップ免責
  3. 自己破産

それぞれのメリットやデメリットを解説します。

再生計画の変更を申立てる

返済が滞納してしまった場合、裁判所に申立てることで返済期間を最長2年延長できます

返済期間が延長されると、返済額は変わらないものの、毎月の返済額の負担が少なくなるため、気持ちも楽になるはずです。

しかし、変更できるのは、やむを得な事由返済が著しく困難と判断された場合に限ります。簡単に再生計画を変えることはできません。

また、期間が2年間延長されるだけで、返済額はそのままという点を念頭においてください。住宅ローンをかかえている方はそちらの返済も同時に行うことになります。

やむを得ない事由があること

一般的に「やむを得ない事由」とは、再生計画を作成している段階で想像できなかった事柄であり、自分自身では制御できない内容を指します。

たとえば、勤務先の経営状況が変わり減給された、事故や病気により働けなくなった、家族が病気になり支出が増えた、などがその例です。

ギャンブルや自己都合の退職など、故意に招いた事情は認められません

再生計画の遂行が著しく困難であること

返済が少し苦しくなった程度ではなく、根本から返済額を見直さないと継続が不可能とみなされた場合に再生計画の変更が可能です。

直近の家計収支表や、減給された場合は給与明細など、財産状況がわかる資料を提出して、返済が困難であることを証明します。

また、再生計画を変更するうえでの、注意点も見ておきましょう。

返済総額を減らすことはできない

変更の申立てでは返済期間を延長することは可能ですが、返済総額をさらに減額することはできません。これは、1回目の再生計画で既に大幅な引き下げが行われているためです。

再生計画の延長は住宅ローンにまでは適用されない

住宅ローン特則を利用して、住宅ローンを残しながらほかの借金を返済している人は、返済期間が延長されたとしても、住宅ローンについては適用されません

再生計画での返済と住宅ローンの返済は別途でお考えてください。
※住宅ローン特則(住宅ローンを個人再生の減額対象から除外し、家を残したままその他の借金を整理できる仕組み)

ハードシップ免責を申立てる

返済不可能と判断された場合、ハードシップ免責を申立てられます。

ハードシップ免責とは一定の条件を満たす場合に限り、返済額が免除される制度です。

申立てに必要な条件は以下になります。

  • 再生計画の遂行が極めて困難であること
  • 債務者の責めに帰すことができない事由であること
  • 計画返済額の4分の3以上を返済していること
  • 債権者の一般の利益に反しないこと

ご自身の返済状況や生活環境によって、申立てが可能です。

また、ハードシップ免責は住宅ローンの返済や今後の債務整理にも影響があります。詳しく見ていきましょう。

再生計画の遂行が極めて困難であること

ハードシップ免責は「再生計画の変更をしても意味がない」と判断された人が対象です

返済が困難になった場合はまず計画を変更し、最大2年間の延長をとる方法で対処します。しかし、長期間にわたる無収入が確定している場合は、計画を変更したところで返済は難しいでしょう。

返済が極めて困難と判断された場合に利用されます。

債務者の責めに帰すことができない事由であること

「責めに帰すことができない事由」とは、生活するうえで防ぎようのないトラブルを指します。会社が倒産しリストラされた、病気により長期入院を余儀なくされている、など予測不能な事態です。

計画返済額の4分の3以上を返済していること

ハードシップ免責を利用するには、返済額の4分の3以上を支払っていることが条件です。この制度は、計画通りに返済を続けてきた場合に限り適用されます。

申立てが認められると、未払いの借金が免除される仕組みです。

債権者の一般の利益に反しないこと

個人再生において、返済額は債務者が所有するすべての財産(預金、住宅、車など)を上回る額でなければいけません。このルールを「清算価値保障の原則」といいます。

たとえば債務者が自己破産を選んだ場合、債務者の財産が処分され、その分が債権者に返済されます。しかし、ハードシップ免責が適用されると、返済額が減額されてしまうので、債権者にとっては不利益です。

債権者だけが損をしないよう、清算価値保障の原則を用いて返済額のバランスをとっています

さらに「住宅ローンの返済は免除されない」「7年間は再度の債務整理に支障をきたすことがある」という点をおさえておきましょう。

住宅ローンはハードシップ免責の対象外となります。住宅を残したいのであれば、その分の支払いを継続する必要があります。

そして、ハードシップ免責の許可がおりた場合、決定した日から7年間は自己破産および給与所得者等再生を利用できません。債務整理の手段が限定されることを念頭に置きましょう。

自己破産を申立てる

ハードシップ免責が認められない場合、最終的に検討するのが自己破産です。一定の条件を満たすことで返済義務がすべて免除されます(破産法252条1項)。

自己破産の申立てにはこちらの条件が必要になります。

  • 債務の支払いが不能状態であること
  • 債務が非免責債権でないこと
  • 免責不許可事由に該当しないこと

返済がどの程度不可能であるか、借金の内容、ご自身のこれまでの行動などをふまえて判断されます。

また、自己破産は金銭面以外にも影響が出ることを理解しておきましょう。

  • 保証人の返済義務
  • 事故情報の登録
  • 官報への記載
  • 職業・資格の制限
  • 破産管財人への郵便物の転送
  • 財産の処分

どれも自己破産後の生活に関わる内容ですので、ご確認ください。

債務の支払いが不能状態であること

返済ができない状況は借金額と収入のバランス、所有している財産額、家族構成などから総合的に判断されます

たとえば、収入がなく返済が難しいと申し出た場合でも、預貯金に余裕があれば自己破産は認められません。

債務が非免責債権でないこと

非免責債権とは税金、公共料金、社会保険料、養育費、慰謝料、損害賠償金などを指します。
これらの料金は、自己破産しても支払いが残ります。

よって、返済内容が非免責債権のみの場合は自己破産しても効果がありません

免責不許可事由に該当しないこと

免責不認可事由とは、自己破産が認められない理由を指します。身勝手な借金や、悪質な行動があった場合は許可がおりません

免責不認可事由といわれる、やってはいけない行動の例を見てみましょう。

  • 借金の理由が浪費やギャンブル
  • 裁判所に虚偽の説明をする
  • 返済不能状態にもかかわらず新たな借金をする
  • 債権者に見つからないよう財産を隠す
  • 虚偽の債権者名簿を提出する

また、自己破産をする際の注意点を確認する必要があります。

保証人が返済義務を負うことになる

自己破産をした場合、保証人に返済義務が生じます。自己破産は債務者の返済がなくなるだけで、保証人に一括請求が行われてしまうのです。

事故情報が登録される

「ブラックリストに載る」という表現をされることもありますが、信用情報機関に自己破産したことが登録されます

機関ごとに掲載期間は異なりますが、5年~7年程度残るのが一般的です。クレジットカードを作成できるのは事故情報が解除されたあとになります。

官報に記載される

官報とは国の法令や公示事項を国民に知らせるための機関紙です。

債権者一覧表にある人物には裁判所からの通知が送られますが、一覧表に名前が掲載されていない債権者は知る由がありません。最悪の場合、自己破産の手続きに参加できない可能性もでてきます。

債権者全員が返金を得られるように、自己破産をした人の名前が記載されているのです。

なお「インターネット版官報」というサイトで、直近30日間の情報は無料で閲覧できます。

職業・資格に制限がある

自己破産により一時的に制限を受ける職業の例をご紹介します。

  • 貸金業者の登録者
  • 生命保険外交員
  • 警備業者の責任者や警備員
  • 旅行業の登録
  • 弁護士
  • 司法書士
  • 社会保険労務士
  • 公認会計士
  • 税理士
  • 宅建建物取引士

登録を要する職業については、自己破産が決定すると登録が削除されてしまうため、一定の期間は仕事ができなくなります。

しかし、資格自体が取り消されるわけではないので「復権」できれば制限が解除されます
※復権(法令上、資格を喪失したり、停止されたりした者について、その資格を回復させること)

管財事件の場合は手続き中に郵便物が破産管財人に転送される

管財事件とは自己破産手続きの種類のひとつです。

通常、裁判所が選任する「破産管理人」という弁護士が、債務者の財産を管理・処分し、債権者への返済をします。その際、破産管理人が財産の状況を把握するために取り組むのが「破産者の郵便物の管理」です。クレジットカードの明細や税金の支払い状況まで、債務者の財産をきっちりと把握します

転送期間は破産手続き開始から終結までの約6ヶ月となっています。郵便物は申し出ることで返却が可能です。

高価な財産は処分される

自己破産手続きをすると、原則20万円以上の財産は処分されることになっています。これは財産を換価し、債権者に配当する理由からです。不動産や車、20万円を超える預貯金、有価証券類、生命保険の解約金などが該当します。

生活に必要な家財、家電、携帯電話などは高価なものでなければ換価対象になりません。

自己破産は条件やご自身の状況によって開始できない場合もあります。借金問題に詳しい弁護士に相談することで、安心して手続きができるでしょう。

まとめ

個人再生の手続きを進めるには、まず「やってはいけないこと」を明確に理解し、慎重に対応することが重要です。

改めてこの5点を認識しておきましょう。

虚偽の申告
資産や借入先を隠すと手続き廃止や刑事罰のリスクがあります。

特定の債権者への優先的な返済
家族や友人など、一定の人物への優先返済は「偏頗弁済」とみなされ、不誠実な申立てと判断されます。

新たな借入れ
身勝手に借金を増やすことで信頼を損ない、手続きの棄却につながる可能性があります。

書類や手続き費用の納期を守らない
規則違反により裁判所や債権者の信頼を失い、計画が遅れるリスクが高まります。

履行テストを怠る
返済能力や意欲が疑われると、手続きが順調に進みません。

個人再生の手続きをミスなく進めるためには、専門知識がないと難しい場合があります。大きなトラブルを避けるためにも、経験豊富な弁護士に依頼するのがおすすめです。

法律事務所によっては無料相談を実施しているので、不安な点や疑問を気軽に相談してみましょう。

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更新日 : 2024年12月16日
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