民事再生と個人再生の違いとは?

借金の返済が苦しく債務整理について調べていたところ、民事再生と個人再生という手続きがあると知りました。この2つは同じ手続きなんでしょうか?


民事再生と個人再生は同じ民事再生法で定められた手続きですが、厳密には違うものです。会社経営者や借金総額が5,000万円を超えるような人でなければ、個人再生を選択するのが一般的です。
そうなんですね。特別な事情がない限り、民事再生より個人再生を選ぶ方がよいということでしょうか?


そのとおりです。個人再生は民事再生に比べて、手続きが簡単だったり裁判所に納める予納金が少なくて済むなどのメリットがあります。そのため、どうしても個人再生が利用できない時だけ、民事再生を選ぶとよいでしょう。
個人再生と民事再生は、しばしば同じものだと誤解されますが、厳密には異なる手続きです。
民事再生は、主に会社経営者などが利用することを想定して設けられた手続きです。
これに対し個人再生は、個人でも利用しやすいように、民事再生の手続きを簡略化して予納金も安く抑えられています。
そのため、特に事情がない限りは、個人再生を選択するのがおすすめです。
ただし、借金総額に5,000万円以内という上限が設けられているなど、利用するには要件があるので注意してください。
個人再生の利用要件について詳しく知りたい場合は、法律事務所へ直接相談するのがおすすめです。
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- 「民事再生」と「個人再生」は何が違うのか分かる。
- 民事再生・個人再生に向いているのはどんな人か分かる。
- 自分が民事再生・個人再生どちらを選ぶべきかは、法律事務所へ直接相談するとよい。
「民事再生」と「個人再生」は何が違う?
民事再生と個人再生は、どちらも債務整理と呼ばれる合法的に借金の負担を減らす手続きの一つです。
個人再生のことを「個人民事再生」ということもあるため「民事再生と個人再生は同じもの」と考えている人もいるかもしれませんが、2つの手続きには明確な違いがあります。
次の項目から、民事再生と個人再生の主な違いについて、詳しくお伝えします。
手続きの利用対象が「個人・会社どちらも」か「個人のみ」か
民事再生と個人再生では、それぞれ「どのような人が手続きを利用できるのか」という対象が異なります。
もともと民事再生は、会社を経営していて会社名義で借金をしている人などを対象として設けられた手続きです。
そのため、個人で借金をしている人も利用できないわけではありませんが、手続きが複雑過ぎて利用しづらいというデメリットがありました。
そこで、民事再生を個人が利用しやすいよう、手続きを簡略化した個人再生という手続きが新たに設けられたのです。
よって、給与所得者や個人事業主などが個人として借金をしている場合には、基本的に個人再生を利用します。
予納金の金額
個人で借金をしている人が民事再生を利用しづらいもう一つの理由は、予納金の金額にあります。
予納金とは、民事再生や個人再生のような裁判所を介する手続きをおこなう際に、裁判所へ支払う手続費用のことです。
民事再生の場合、予納金の金額は借金総額によって以下のように変動します。(東京地方裁判所の場合)
借金総額 | 予納金 |
---|---|
5千万円未満 | 200万円 |
5千万円~1億円未満 | 300万円 |
1億円~5億円未満 | 400万円 |
5億円~10億円未満 | 500万円 |
10億円~50億円未満 | 600万円 |
50億円~100億円未満 | 700万円 |
100億円~250億円未満 | 900万円 |
250億円~500億円未満 | 1000万円 |
500億円~1000億円未満 | 1200万円 |
1000億円以上 | 1300万円 |
なお、住宅ローンのある家を残して手続きする場合(住宅資金特別条項を利用する場合)は、借金総額に住宅ローンの残債は含みません。
このように、民事再生の場合、借金総額5,000万円未満でも200万円の予納金がかかるのです。
一方で、個人再生ですが、東京地方裁判所の場合、個人再生をおこなう際は必ず再生委員が選任されます。
個人再生の予納金はこの再生委員への報酬が大部分を占めており、弁護士に依頼して手続きする場合は15万円、その他の場合は最低25万円程かかるのが一般的です。
借金総額に上限があるかどうか
前項の表からも分かるとおり、民事再生の場合は借金総額について、特に上限は設けられていません。
しかし、個人再生の場合は、借金総額が5000万円以下という上限が設けられています。
なお、住宅ローンのある家を残して手続きする場合(住宅資金特別条項を利用する場合)は、借金総額に住宅ローンの残債は含まれないので注意してください。
民事再生・個人再生に向いているのはどんな人?
前の項目では、民事再生と個人再生の違いについてお伝えしました。
今まで民事再生と個人再生の違いが曖昧だった人も、2つの手続きが明確に違うものであることをお分かりいただけたと思います。
手続内容の違いが分かったところで、次の項目から具体的にどんな人が民事再生・個人再生に向いているのか、詳しくみていきましょう。
民事再生に向いているのはどんな人?
民事再生に向いているのは、主に以下2つのうちどちらか、もしくは両方にあてはまる人です。
- 会社経営者
- 借金総額が5000万円を超えている人
次の項目から、詳しくお伝えします。
会社経営者
前述したとおり、民事再生はそもそも、会社を経営しており会社名義で借金をしている人などが利用することを想定して設けられています。
そのため、会社経営者で借金の返済負担により事業が立ち行かなくなっている人は、民事再生に向いているといえます。
民事再生によって借金の負担を軽減することで、会社の立て直しを図れるでしょう。
借金総額が5000万円を超えている人
前述したとおり、個人再生には借金総額が5000万円以下という上限が設けられています。
そのため、借金総額が5000万円を超えている場合は、民事再生を検討するとよいでしょう。
また、債務整理には他にも、自己破産や任意整理などの手続きもあるので、法律事務所へ一度相談して自分の状況に合った手続きを提案してもらうのがおすすめです。
個人再生に向いているのはどんな人?
個人再生に向いているのは、主に以下2つのうちどちらか、もしくは両方にあてはまる人です。
- 給与所得者や個人事業主
- 借金総額が5000万円以下の人
次の項目から、詳しくお伝えします。
給与所得者や個人事業主
個人再生の利用要件には「継続して安定した収入を得られること」というものがあります。
給与所得者、いわゆるサラリーマンで個人として借金をしている人は、勤務先から毎月決まった収入を得られるため個人再生に向いているといえます。
また、個人事業主の場合も「継続して安定した収入」が得られると認められれば、個人再生を利用できる可能性は十分あります。
自分の場合、個人再生の利用要件を満たしているか詳しく知りたい場合は、法律事務所へ直接相談するのがおすすめです。
当サイトでは無料相談できる法律事務所を紹介しているので、ぜひ気軽に相談してみてくださいね。
借金総額が5000万円以下の人
借金総額が5000万円以下であれば、個人再生における借金総額の上限に引っかかることもありません。
また、個人再生は民事再生に比べ、手続きが簡単で予納金の金額を抑えられるなどメリットも多い手続きです。
そのため、借金総額が5000万円以下の場合、まずは個人再生を検討するとよいでしょう。
民事再生とは?
民事再生とは、民事再生法に基づき会社をたたまないで再建していく再建型の倒産処理手続きです。
現在の経営者が経営権を保持したまま、借金を減額できるのが大きなメリットです。
さらに、民事再生は、以下の3つの方法に分かれます。
- 自力再建型・・・減額してもらった借金を自力で弁済していく
- スポンサー型・・・大企業などのスポンサーによる出資を得て再建を目指す
- 清算型・・・再生価値のある事業を譲渡し、得られた金額で借金を弁済する
民事再生は、任意整理に比べて借金の負担を大幅に減らせる可能性があります。
一方で、整理する債権者を選べないため、借金に担保などが設定されていると、担保になっているものを手放さなければなりません。
また、民事再生をすると、その情報が事故情報として信用情報に掲載されます。
金融機関は融資の際に必ず信用情報を確認し、事故情報が載っている人に融資することはありません。
そのため、事故情報が載っている間は、融資を受けず会社を経営していく必要があるのです。
実際には、個々の状況によって手続きができる条件などはさまざまなので、法律事務所に相談して自分に合ったアドバイスをもらうようにしてください。
民事再生についてさらに詳しく知りたい場合は、以下の記事も参考にしてください。
民事再生の費用
民事再生にかかる費用は、裁判所へ支払う予納金と、依頼先の法律事務所へ支払う弁護士費用の大きく2つに分かれます。
弁護士費用については、依頼する法律事務所や借金の金額によって大きく変わりますが、着手金だけでも300万円前後~かかることが多いようです。
つまり、予納金の金額と合わせると最低でも500万円程の費用が必要な計算になり、借金の金額が増えれば数千万円単位で費用がかかる場合もあります。
個人再生とは?
個人再生とは、民事再生法第13章「小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則」において定められている民事再生の手続きの一つです。
裁判所に再生計画案を提出し認可されることで、借金を最大1/10、概ね1/5まで減額して、3~5年間かけて分割返済します。
民事再生に比べて手続きが簡単で、予納金が安く抑えられるのが大きなメリットです。
また、個人再生は再生計画案の認可方法についてもメリットがあります。
民事再生の場合、再生計画案が認可されるには一定数以上の債権者から同意する旨を届け出てもらう必要があります。
届け出をしなかった債権者については、自動的に再生計画案に反対であるとみなされるのです。
これに対し個人再生の場合は、届け出をしなかった債権者は自動的に再生計画案に賛成であるとみなされます。
上記は2種類ある個人再生のうち「小規模個人再生」を選択した場合で「給与所得者等再生」を選択した場合は、そもそも再生計画案の認可に債権者の同意は必要ありません。
また、個人再生の場合も、民事再生と同様「整理する債権者を選べない」「信用情報に事故情報が掲載される」などのデメリットがあります。
個人再生についてさらに詳しく知りたい場合は、以下の記事も参考にしてください。
個人再生の費用
個人再生にかかる費用も、裁判所へ支払う予納金と、依頼先の法律事務所へ支払う弁護士費用の大きく2つに分かれます。
裁判所の運用によっては再生委員が選任されない場合もあり、それによって予納金の金額は大きく左右されます。
弁護士費用については依頼する法律事務所によって大きく異なりますが、予納金と合わせて35~80万円程が個人再生にかかる費用の一般的な相場です。
自分の場合「個人再生の費用がいくらかかるのか」「借金をどれくらい減額できるのか」詳しく知りたい場合は、無料相談を利用して法律事務所へ直接相談してみるとよいでしょう。
まとめ
個人再生は民事再生に比べて手続きが簡単で、予納金の金額も大幅に抑えられます。
そのため、まずは個人再生が利用できるか検討するのがおすすめです。
当サイトでは個人再生に詳しい法律事務所を紹介しています。
相談は無料なので、ぜひ気軽に利用してくださいね。
民事再生と個人再生のよくある質問
裁判所に再生計画案を提出し認可されることで、借金を最大1/10、概ね1/5まで減額して、3~5年間かけて分割返済する手続きです。自己破産のように借金がゼロにはなりませんが、資産や住宅ローン返済中の住宅を手元に残せるなどのメリットがあります。
民事再生法に基づき、会社をたたまないで再建していく再建型の倒産処理手続きです。会社経営者や借金総額が5,000万円を超える人を対象としています。
民事再生は主に会社経営者の利用を想定して設けられた手続きで、それを個人でも利用しやすくしたものが個人再生です。そのため予納金の金額や、借金総額に上限があるかどうかなどの違いがあります。
個人再生は民事再生に比べて手続きが簡単で、予納金を大幅に抑えられます。そのため、まずは個人再生を利用できるか検討するとよいでしょう。
個人再生は借金総額が5000万円を超えると利用できません。民事再生にそのような制限はありませんが、細かい利用要件があるので、詳しくは法律事務所へ直接相談しましょう。

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