個人再生のデメリット7つ
個人再生を行うと、信用情報にキズがつくなど、手続きと引き換えに生じるデメリットがあります。
また、費用が高く手間がかかるなど、任意整理や自己破産と比べた場合のデメリットもあります。
まずは、個人再生のデメリットを整理していきましょう。
- 信用情報にキズがつく(ブラックリストに載る)
- 返済中のものは引き上げられる可能性がある
- 費用が高い
- 裁判所手続きのため、手間がかかる
- 条件が厳しい
- 官報に掲載される
- 連帯保証人に請求が移行する
信用情報にキズがつく(ブラックリストに載る)
信用情報とは、個人の収入や住宅情報、借入履歴や返済履歴などをまとめた情報です。国に指定された信用情報機関が管理し、金融業者や信販会社等の貸付審査で利用されます。
信用情報のうち、個人再生をしたという履歴は「事故情報」と呼ばれ、事故情報が登録されることを一般的に「信用情報にキズがつく」または「ブラックリストに載る※」などと言います。
※上記の通り、ブラックリストという帳簿があるわけではなく、あくまで「信用情報に事故情報が登録されたこと」を意味する慣習的な表現。
信用情報にキズがつくと、金融業者やクレジットカード会社にとって「リスクの高い顧客」とみなされるため、貸付審査に通らなくなるなど、さまざまな影響が出てきます。
信用情報にキズがつくと受ける影響
信用情報にキズがつくと、次のような影響が発生します。
- ローンが組めなくなる
- クレジットカードが使えなくなる
- 賃貸審査で不利になることがある
- 保証人になれなくなる
- スマホ端末の分割払いができなくなる
現代社会では当たり前になっているサービスが使えなくなるので、不便に感じることも多いでしょう。
それぞれ詳しく解説していきます。
ローンが組めなくなる
ブラックリスト期間中は、新規のローンが組めなくなります。銀行から消費者金融まで、ほぼすべてのローンを利用できません。
例外としては、車を買うときのマイカーローンがあります。マイカーローンのうち、カーディーラーや中古車販売店が提供する「自社ローン」なら、保証人さえ用意すれば利用できる可能性があります。
なぜ自社ローンは利用できるの?
自社ローンがブラックリスト期間中に利用できるのは、カーディーラーや中古品販売店は信用情報機関に加盟しておらず、信用情報を調査できないためです。
ただし、各社独自の基準で審査を行っているため、ブラックリストに関係なく審査で落とされる場合があります。また、基本的に金利が高いのも注意点です。
自社ローン以外のローンは、用途・金額を問わず原則審査で落とされます。中には「ブラックOK」などと宣伝する業者もいますが、まず間違いなく違法な営業を行う闇金業者なので、関わらないようにしましょう。
クレジットカードが使えなくなる
ブラックリストになると、クレジットカードを利用できなくなります。現在使っているカードは強制的に解約され、新規発行も審査で落とされます。
個人再生の手続きから強制解約まで多少のタイムラグはありますが、その期間も決してクレジットカードを利用してはいけません。個人再生の手続き中にクレジットカードを使うと、「最初から返済する意思がなかった」とみなされ、詐欺罪に問われる可能性があるためです。
キャッシングとショッピング、どちらの用途で使っても問題になるので、個人再生をすると決めたらクレジットカードは決して使わないようにしましょう。
賃貸審査で不利になることがある
個人再生を行うと、賃貸物件の入居審査で不利になります。具体的には、信販系家賃保証会社の審査に落ちてしまいます。
信販系家賃保証会社とは?
家賃保証会社(賃貸物件において賃借人の連帯保証人を代行する会社)のうち、信販会社が事業を行っているもの。
信販系家賃保証会社は信用情報をチェックできるため、ブラックリスト期間中だと審査で弾かれてしまうのです。
近年は家賃保証会社の利用を必須にしている物件が多く、基本的にどの会社を使うかまで指定されています。指定されている家賃保証会社が信販系だった場合、その賃貸物件は諦めざるを得ないでしょう。
ただし、ブラックリスト期間中であることを伝えれば、信販系以外の家賃保証会社にしてもらえる場合があります。また、もともと家賃保証会社が不要な物件であれば、問題なく入居可能です。
ブラックリストだからといって賃貸審査に一切通らないということはないので、まずは不動産会社に相談してみましょう。
保証人になれなくなる
ブラックリストになっている人は、家族や知人がお金を借りるときの保証人になれなくなります。貸付審査では、保証人に対しても信用情報の審査が行われるためです。
保証人の役割は「主債務者が返済不能時に借金を肩代わりすること」ですが、ブラックリスト状態だと「返済能力が低い人」とみなされるため、保証人として認められないのです。
例外としては、賃貸借契約の連帯保証人が挙げられます。大家や不動産会社は信用情報をチェックできないため、ブラックリストになっていても連帯保証人になることが可能です※。
※信販系家賃保証会社が審査に介入している場合は除く。
スマホ端末の分割払いができなくなる
スマホ端末は分割払いで購入するのが当たり前になっていますが、これもブラックリストになると不可能となります。
スマホ端末の分割払いは、信販会社がキャリアに立て替え、購入後に分割で支払うという契約になっています。契約にあたって信販会社が信用情報を調査するため、ブラックリストだと審査に落ちてしまうのです。
回線契約自体は可能なので、スマホ端末を購入するときは一括で支払うか、中古ショップなどで別途購入することになります。
ブラックリスト期間は5~7年程度
ブラックリストが及ぼす影響について解説しましたが、これらの制限はどのくらいの期間続くのでしょうか?
事故情報の登録期間は信用情報機関によって異なりますが、おおむね5~7年程度で削除されます。
信用情報機関の種類と個人再生の登録期間
機関名 |
主な加盟業者 |
個人再生情報の登録期間 |
日本信用情報機構(JICC) |
消費者金融、銀行が中心 |
●契約日または貸付日が2019年9月30日以前→個人再生の申立てから5年以内 ●契約日または貸付日が2019年10月1日以降の登録→契約継続中および契約終了後5年以内(減額後の残債を完済してから5年以内) |
株式会社シー・アイ・シー(CIC) |
クレジットカード会社、消費者金融が中心 |
個人再生の登録なし |
全国銀行個人信用情報センター(KSC) |
銀行、信用金庫、信用組合が中心 |
個人再生の手続き開始(裁判所が個人再生を確定させた日)から7年を超えない期間 |
※個人再生に伴い滞納などがあれば、別途事故情報が登録される。
自分の事故情報が消えているか知りたいときは、各機関に問い合わせることで確認できます。
事故情報が消えても借入できないケースもある
信用情報機関の事故情報が消えていても、「社内ブラック」によってローンやクレジットカードの審査に落ちる場合があります。
社内ブラックとは、各社が自社保有の顧客情報に基づき、独自にブラックリスト扱いをしている状態です。信用情報機関とは関係なく、情報が残る期間は各社の方針によります。
個人再生を行ったときに取引していた会社は、基本的に社内ブラック状態になっているため、審査に落ちる可能性が高くなります。
ブラックリスト期間終了後、ローンやクレジットカードの審査を確実に通過したいのであれば、これまで取引経験のない会社を選びましょう。過去の顧客情報がない会社なら、社内ブラックの心配はありません。
返済中のものは引き上げられる可能性がある
ローン返済中の車など、ローンを完済してない高価なものがあるときは、個人再生をすると引き上げられてしまう恐れがあります。
これには、ローンで購入した商品の「所有権」が関係しています。ローン返済中の商品の所有権は、支払いが完了するまでローン会社にあります。債務者が本当の意味で商品を自分のものにできるのは、商品代金をすべて支払い終えたときです。
そのため、個人再生をするなどして返済が滞ると、ローン会社は所有権に基づいてローンで購入した商品を引きあげることが可能です。
引きあげられた商品は、売却処分され未払い分の支払いに充てられます。もし、未払い分の金額より引きあげられた商品の売却益が少なければ、差額分は個人再生の対象にしてもらうことになります。
なお、債務整理のうち、任意整理は対象とする債務を自分で選ぶことができます。言い換えれば、特定の債務を除外することが可能です。
一方、個人再生と自己破産は対象を選ぶことができません。原則全ての債務を対象にする必要があります。
たとえば、任意整理なら連帯保証人付きの債務を除外して迷惑をかけないようにできますが、個人再生はそれができないということになります。
【例外】住宅ローンのみ除外することが可能
「個人再生は原則全ての債務を対象にする」と解説しましたが、住宅ローンに限り、例外的に除外することができます。
住宅ローンを除外するためには、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)の利用が必要です
住宅資金特別条項(住宅ローン特則)とは?
住宅ローンなどの住宅貸付債権を、個人再生の減額から除外する制度。残した住宅ローンは再生計画に組み込み、今まで通り(もしくは返済スケジュールを調整して)返済を続ける。
自己破産だとマイホームも確実に差し押さえられますが、個人再生では住宅資金特別条項を使うことで差し押さえを回避し、マイホームを維持することが可能です。
費用が高い
個人再生は費用が高く、総額でおおむね30万~70万円ほどかかります。
債務整理の中で費用相場を比べると、自己破産よりは安いものの、任意整理よりは基本的に高くなります。
債務整理の費用目安
手続きの種類 |
費用相場 |
費用の内訳 |
任意整理 |
1社あたり4万円程度+減額報酬(減額幅の10%程度) |
・弁護士などへの報酬 |
自己破産 |
30万円程度~100万円程度 |
・弁護士などへの報酬 ・裁判所への手数料 |
個人再生 |
30万円程度~70万円程度 |
・弁護士などへの報酬 ・裁判所への手数料 |
具体的な内訳は、裁判所に支払う手数料(予納金)と、弁護士などに支払う報酬に分けられます。
【裁判所への手数料(予納金)】
- 収入印紙代(申立手数料として):1万円程度
- 官報掲載料:1万4,000円程度
- 郵便切手代:2,000~4,000円程度
- 個人再生委員の報酬※:15万~25万円程度
※個人再生委員会が選任される場合のみ。選任されるか否かは裁判所によって異なる。
【弁護士or司法書士の報酬】
- 弁護士の場合:50万~60万程度
- 司法書士の場合※:30万~40万円程度
※司法書士は弁護士より安く依頼できるが、1社あたり140万円以下の債務にしか対応できない。また、裁判所への同行もできないので注意。
なお、上記はおおまかな目安なので、実際に個人再生を検討するときは、弁護士・司法書士に見積もりを出してもらいましょう。事務所によっては、分割払いや立て替えの相談にも乗ってもらえます。
裁判所手続きのため、手間がかかる
個人再生は手続きが複雑で、場合によっては自己破産より手間がかかります。手続きのおおまかな流れは以下の通りです。
- 債務額の確認~書類の準備作成:1~3ヶ月程度
- 裁判所への申し立て~個人再生手続開始の決定:1ヶ月程度
- 再生計画の立案~裁判所の認可、返済開始:3~4ヶ月程度
上記の間に、個人再生委員との面談、債権の調査、債権者からの意見聴取もしくは書面決議など、さまざまな手続きが入ります。申し立てから個人再生による返済開始まで、おおむね6ヶ月程度かかるでしょう。
なお、司法書士に依頼した場合、代行してもらえるのは各種書類の準備・作成までです。裁判所への出頭も代行してもらいたい場合は、弁護士に依頼するようにしましょう。
条件が厳しい
個人再生をするためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。人によっては、この条件を満たせない場合もあるでしょう。
主な条件は以下の3つです。
- 債務額が5,000万円以下であること
- 安定した収入があること
- 債権者の同意が必要こと(小規模個人再生の場合)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
債務が5,000万円以下であること
個人再生ができるのは、法律で「債務が5,000万円以下であるとき」に限定されています。
個人である債務者のうち、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり、かつ、再生債権の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び再生手続開始前の罰金等の額を除く。)が五千万円を超えないものは、この節に規定する特則の適用を受ける再生手続(以下「小規模個人再生」という。)を行うことを求めることができる。
引用元:e-Govポータル「民事再生法 第221条第1項」
5,000万円を超える場合は、より手続きが難しく、主に法人が利用する「民事再生手続き」を行わなければいけません。
ただし、住宅ローン特則を利用する場合の住宅ローンと、担保付き債権が差し押さえで回収できる金額については、差し引いて判断します。
たとえば、債務総額が6,000万円で、そのうち住宅ローン残債が1,500万円、300万円の車を担保にしたローン残債が500万円あるとします。
この場合、「6,000万円-1,500万円-(500万円-300万円)=4,300万円」なので、個人再生を申し立てることが可能です。
なお、住宅ローン特則を利用しない場合、つまり住宅を手放す場合は、他の担保付き債権と同じように判断します。上記の例で住宅の担保価値が700万円だった場合、差し引き後は「6,000万円-(1,500万円-700万円)-(500万円-300万円)=5,100万円」となるので、個人再生はできなくなります。
安定した収入があること
大幅な減額ができるとはいえ、再生計画に基づき返済を行う必要があるため、本人に安定した収入が必要になります。
会社員として安定した収入があれば基本的に問題ありませんが、給与以外の収入で生活している場合、個人再生を受けられない可能性があります。
収入形態ごとの目安は以下の通りです。
個人再生における「安定した収入」の目安
収入の種類 |
個人再生を受けられる目安 |
正社員 |
基本的に問題なく受けられる。 |
個人事業主 |
3ヶ月に1回の割合で、再生計画に基づいて返済できる収入がある。 |
アルバイト |
雇用が相当期間継続しており、今後も継続して雇用される見込みがある。 |
年金受給者 |
老齢年金なら基本的に大丈夫だが、障害年金の場合は障害の程度などから個別に判断される。 |
債権者の同意が必要なこと(小規模個人再生の場合)
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があります。簡単にいえば、前者は通常の手続き、後者は簡易的な手続きです。
小規模個人再生の場合、再生計画の認可を受けるためには、債権者の過半数および負債額の過半数が同意しなければいけません。
たとえば、債権者が3社であれば、2社の同意が必要です(債権者の過半数)。
また、負債額が1,000万円だった場合、同意した債権者に対する負債額が、合計で500万円を超えている必要があります(負債額の過半数)。
給与所得者等再生であればこれらの条件はありませんが、小規模個人再生より減額幅が小さくなる可能性があるため、どちらを選ぶかは状況次第といえます。
官報に掲載される
個人再生を行うと、官報という国の機関紙に情報が掲載されます。つまり、個人再生を行った事実は公表されるということです。
掲載される具体的な内容は、次の通りです。
- 氏名
- 住所
- 個人再生の決定日
- 手続きの内容
- 管轄の裁判所
官報は県庁所在地の販売所で購入可能で、図書館・インターネットでも閲覧可能です。見ようと思えば誰でも見られるので、借金のことを誰にも知られたくない場合は大きなデメリットといえるでしょう。
ただし、官報に掲載されたからといって、周囲にバレるとは限りません。官報を普段から見るのは行政関係者や金融機関など限られた人達であり、閲覧目的も法制度に関する情報が中心です。
大半の人は官報の存在自体を知らないため、そこから借金がバレる可能性は低いと言えます。
連帯保証人に請求が移行する
連帯保証人付きの債務がある場合、個人再生をするとその連帯保証人に請求が移行します。連帯保証人は主債務者と同等の返済責任を負うため、請求を拒むことができません。
法的に問題ないとはいえ、連帯保証人に迷惑をかけることになり、関係性の悪化や何らかのトラブルになる恐れもあるでしょう。
なお、連帯保証人が負担するのは減額分のみですが、どのように返済を行うかでプロセスが変わります。
連帯保証人が一括返済を行う場合、支払うのは減額後の残債ではなく、元々あった残債全額です。主債務者は、減額された残債を連帯保証人に対して支払うことになります。
一方、連帯保証人が分割払いをする場合、主債務者の返済と同時進行で行われます。2つの返済が元々の残債額に達した時点で、返済は終了です。
たとえば、1,000万円の残債を個人再生で200万円まで減額したとします。
連帯保証人が一括返済をする場合、1,000万円を債権者に支払い、その後に主債務者から200万円を再生計画に基づいて返済してもらいます。
分割払いをする場合、連帯保証人の返済と、主債務者の返済を同時進行で行います。連帯保証人が800万円、主債務者が200万円を支払えば返済は完了です。
主債務者は減額された残債を支払うことに変わりありませんが、連帯保証人にとっては「自分が実際にいくら支払うか」という点で違いがあります。
個人再生を行うべき主なケース
債務整理の中で個人再生を選ぶべき主なケースは、次の3つです。
- 高額債務で大幅な減額が必要な場合
- 自己破産のデメリットを許容できない場合
- 自己破産ができなさそうな場合(免責不許可事由がある場合)
任意整理では生活を立て直せないものの、自己破産ができない・したくないときに選ぶのが基本です。
それぞれ詳しく解説していきます。
高額債務で大幅な減額が必要な場合
デメリットの少なさでいえば、ブラックリスト期間が短く、対象とする債務を自分で選ぶことができる任意整理が一番良いといえます。
しかし、任意整理で減らせるのは将来利息(これから支払うはずの利息)だけであり、元本は減りません。当然、個人再生より減額幅は少なくなります。
債務が高額だと任意整理では返済が楽にならない可能性があるため、個人再生で大幅に減額したほうがよいでしょう。
自己破産のデメリットを許容できない場合
減額幅だけを見れば、残債を全て帳消しにする自己破産が最大です。しかし、自己破産は減額効果が大きい分、デメリットも重いといえます。
自己破産にあって個人再生にないデメリットとしては、以下の2つが挙げられます。
- 財産がほぼ全て差し押さえられる(強制処分される)
- 手続き中に職業制限を受ける
それぞれ詳しく見ていきましょう。
家などの財産処分を避けたい
自己破産の場合、保有する財産がほぼ全て処分され、債権者への弁済に充てられます。
手元に残せる財産は、以下の通りごくわずかです。
- 99万円以下の現金
- 生活に最低限必要な家財
- 給与(手取り額の3/4かつ33万円まで)
- その他、裁判所が認めた最低限の財産
個人再生では先述した住宅ローン特則がある上、そもそも財産の強制処分自体がありません。原則的には、自由に財産を残せるといえます。
ただし、手元に残す財産が多いと、後述する清算価値保証原則によって減額幅が小さくなるので注意しましょう。
職業制限を避けたい
自己破産は、裁判所での手続き中(免責の許可決定が下りるまで)に一部の資格・職業を制限されます。
対象となる資格・職業のうち、主なものは以下の通りです。
ジャンル |
職業制限を受ける仕事・役職の具体例 |
士業系 |
弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士、弁理士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、宅地建物取扱士、通関士など |
公職系 |
人事院の人事官、教育委員会の教育委員、公正取引委員、公証人、人事院の人事官、都道府県の公安委員など |
団体役員系 |
商工会議所、日本銀行、信用金庫、金融商品取引業、労働派遣業など |
その他の仕事 |
警備員、生命保険募集人、質屋経営者、旅行業務取扱いの登録者・管理者、建築業経営者、廃棄物処理業者、調教師、騎手、風俗業管理者など |
免責の許可決定には長くて1年以上かかり、制限も同じ期間続きます。個人再生なら、このような制限はありません。
なお、自己破産による資格・職業制限を受けても、それが原因で解雇されると不当解雇になります。該当する資格・職業に就いている場合、事情を説明して配置替えなどの対応をしてもらうことになるでしょう。
より詳しい解説は、以下の関連記事も参考にしてください。
自己破産ができなさそうな場合(免責不許可事由がある場合)
自己破産には、免責が認められなくなる「免責不許可事由」があります。事由に該当すると、原則自己破産ができないというルールです。
具体的な項目は以下の通りです。
- 不当な破産財団価値減少行為(財産隠しや損壊など)
- 不当な債務負担行為(破産前提の借入など)
- 不当な偏頗為(特定の債権者を優先して返済するなど)
- 浪費または賭博その他の射幸行為(ギャンブルやFX、贅沢品の購入など)
- 詐術による信用取引(返済能力を偽って借入した場合など)
- 業務帳簿隠滅等の行為(業務や財産に関する書類の隠蔽・偽造など)
- 虚偽の債権者名簿提出行為(裁判所へ嘘の債権者名簿を提出すること)
- 調査協力義務違反行為(裁判所の調査に協力しないこと)
- 管財業務妨害行為(破産管財人などを不正に妨害すること)
- 7年以内の免責取得など(7年以内に自己破産や給与所得者等再生を認可されている場合)
個人再生には上記のような免責不許可事由がないため、自己破産ができないときの代替手段として利用するケースが多々あります。
ただし、免責不許可事由があるからといって、免責が一切許可されないわけではありません。「裁量免責」といって、裁判官の裁量で特別に許可を貰えるケースがあります。
裁量免責がもらえるかどうかは個別の状況によるため、まずは弁護士・司法書士に相談してみましょう。
個人再生の注意点|やってはいけないことは?
個人再生は借金の大幅な減額が可能な一方で、自己破産よりも生活上の制限が少なく、自己破産が難しい人にもおすすめできる債務整理方法といえます。
ただし、手続きをするうえで注意しなければならないこともたくさんあるので、よく確認してから手続きを開始するとよいでしょう。
個人再生をおこなううえでの注意点は、以下のとおりです。
- 虚偽の申告をしてはいけない
- 再生計画案の提出期限を守る
- 特定の債権者に優先して返済してはいけない
- 履行テストでしっかり返済する
- 隠れて借入を行ってはいけない
これらの注意点を守らないと、最悪の場合は個人再生の手続きが認められない恐れもあるので注意してください。
虚偽の申告をしてはいけない
個人再生の申立てをする際には、裁判所へ借入先や財産、収入額といった内容を記した書類の提出が必要です。
もし、これらの内容について虚偽の申告をすると、不当・不誠実な申立てとして、個人再生の申立てが認められなくなる恐れがあります。
意図的に一部の債権者だけ申告しないなど、虚位の申告をするのは絶対にやめましょう。また、意図的でなくても申告漏れなどがあると手続きの遅れなどに繋がる恐れがあるため、提出書類は入念にチェックしたうえで提出するようにしましょう。
再生計画案の提出期限を守る
個人再生では、再生計画案(どのくらい借金を減額し、どのように返済していくかの内容)を作成し、裁判所へ提出する必要があります。
この再生計画案の提出には、期限が定められています。
期限までに再生計画案を提出できなかった場合、個人再生の手続きが打ち切られてしまう恐れもあるので注意が必要です。
特定の債権者に優先して返済してはいけない
なかには「迷惑をかけたくない」として、友人や家族、仕事の取引先などからの借金だけはいままでどおり返済して、それ以外の借金を個人再生で減額しようと考える人もいるかもしれません。
しかし、特定の債権者にだけ優先的に返済することは「偏頗弁済」と呼ばれ、個人再生が認められなくなる原因となる恐れがあります。
偏頗弁済をしてしまうと、債権者の間に不平等が生まれてしまい、すべての債権者を平等に扱わなければならないという個人再生の原則に反するとされているからです。
個人再生の手続きをスムーズにおこなうためにも、特定の債権者にだけ優先的に返済すること(偏頗弁済)はやめましょう。
履行テストでしっかり返済する
履行テストとは、提出した再生計画案どおりの返済が本当に可能か確認する、返済の予行テストのようなものです。多くの裁判所が、個人再生の申立て後に履行テストを実施しています。
たとえば、個人再生後に毎月6万円ずつ返済していく計画なら、履行テストで実際に毎月6万円を支払いながら一定期間(3〜6ヶ月)生活するのです。
もし、履行テストの支払いが途中でできなくなってしまった場合は、裁判所に再生計画案を認めてもらえず、個人再生ができなくなってしまう可能性高いので注意してください。
隠れて借入を行ってはいけない
個人再生の手続き開始後に、生活が苦しくなり借入をして生活費を補填したいと考える人は少なくありません。
しかし、手続き開始後に借入をしてしまうと「最初から個人再生するつもりで借入をした」とみなされ、個人再生が認められない原因となる恐れがあります。
そのため、なかには隠れて借入をおこなおうとする人もいますが、隠れて借入をおこなったことが発覚すれば、当然裁判所からの心証が悪くなります。最悪の場合、個人再生手続きが無効になる恐れもあるので、隠れて借入をするのは絶対にやめましょう。
小規模個人再生と給与所得者等再生の違いについて
先述した通り、個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があります。
どちらも債務を大幅に減額できますが、要件や弁済額(減額後に返済しなければいけない金額)の決め方が異なるため、2つの違いを押さえておきましょう。
条件の違い
小規模個人再生の場合、先に解説した3つの条件があります。
- 債務が5,000万円以下であること
- 収入が安定していること
- 債権者の同意が必要こと
一方、給与所得者等再生では「債権者の同意」が不要となる代わりに、「給与などの定期収入があり、変動が少ないこと」が加わります。端的にいえば、個人事業主やアルバイトだと利用できないということです。
給与所得者は、どちらの手続きでも好きなほうを選ぶことが可能です。要するに、給与所得者のほうは手続きの選択肢が1つ増えると考えましょう。
給与所得者等再生は債権者の同意が必要なことから、手続き自体は簡単といえますが、次に解説する弁済額が高くなる傾向にあります。
弁済額を決めるときの違い
弁済額とは、減額後に返済していく債務額を指します。つまり、弁済額の決め方によって「どのくらい減額できるか」が変わるということです。
弁済額の決め方には3つの基準があり、この中から最も高額になるものが選ばれます。
- 最低弁済額
- 清算価値
- 可処分所得(給与所得者等再生のみ)
可処分所得が決め方に加わるかどうかが、小規模個人再生と給与所得者等再生の違いです。
それぞれどのような決め方なのか見ていきましょう。
最低弁済額
最低弁済額とは、財産がどれだけ少なくても必ず返済しなければいけない金額です。弁済額の最低ラインともいえます。
債務額に応じて、次のように定められています。
最低弁済額の金額
債務の総額 |
最低弁済額 |
100万円未満 |
全額 |
100~500万円未満 |
100万円 |
500~1,500万円未満 |
借金総額の1/5 |
1,500~3,000万円未満 |
300万円 |
3,000~5,000万円未満 |
借金総額の1/10 |
参照:e-Govポータル「民事再生法 231条2項3号、4号」
たとえば、債務額が1,000万円であれば、1/5である200万円が最低弁済額となります。
清算価値
清算価値とは、手元に残る財産を基準に弁済額を決める方法です。
先述した通り、個人再生には財産の強制処分がありません。しかし、財産を残すことで弁済額が減るのは、債権者に対して不公平ともいえます。
そこで、手元に残す財産の分だけ弁済額を高くし、債権者の損失を減らすという原則が考えられました。この原則を「清算価値保証原則」といいます。
清算価値は、保有する財産総額をもとに算出しますが、以下に挙げるものは対象から除外されるのが一般的です。
- 99万円までの現金
- 20万円以下の財産
- 生活に必要な家財道具
- 差し押さえが禁止されている財産など
管轄の裁判所によって計算方法や除外対象が異なるので、詳しくは弁護士・司法書士に相談しましょう。
可処分所得(給与所得者等再生のみ)
給与所得者等再生を行うときのみ、可処分所得で弁済額を決めることがあります。可処分所得とは、給与から税金や社会保険料を差し引いた金額(いわゆる手取り額)です。
具体的には「2年分の可処分所得」が基準となるので、たとえば手取りの年収が300万円の場合、600万円が弁済額になるということです。実際には「生活に最低限必要な費用」も差し引かれますが、この金額は自治体によって異なります。
債務額にもよりますが、可処分所得による決め方だと、大抵は他の決め方より高額になります。減額効果が小さくなってしまうため、給与所得者も小規模個人再生を選択するのが一般的です。
まとめ
個人再生は大幅な減額を見込めますが、それなりにデメリットも重くなります。とくに、ブラックリスト入りは生活にも大きな影響があるでしょう。
個人再生で後悔しないためには、債務整理のプロである弁護士・司法書士に相談し、メリットとデメリットをしっかりと把握してから実行することが大切です。
当サイトでも借金問題を専門としている弁護士・司法書士を紹介しているので、個人再生を行うときはぜひ参考にしてください。まずは無料相談を利用し、自分の状況に最適なアドバイスを聞いてみましょう。
個人再生のよくある質問
個人再生とはどのような手続きですか?
個人再生とは、裁判所に申し立て、借金を最大1/10まで減額できる手続きです。
個人再生のデメリットはなんですか?
任意整理(将来利息のカット)より減額効果が大きく、自己破産(残債の全額免除)よりデメリットが小さいことです。大幅な減額が必要なものの、自己破産ができない・したくないときにおすすめできます。
個人再生にはどのようなデメリットがありますか?
最長で約7年間程度ブラックリストになることや、官報への掲載、保証人のへの請求移行が挙げられます。特にブラックリスト期間中は、クレジットカードやローンが使えなくなるので、日常生活で不便に感じることも多いでしょう。
個人再生の費用相場や手続き期間はどのくらいですか?
費用はさまざまな条件で変わり、おおむね30万~70万円ほどかかります。手続き期間も個々のケースによりますが、依頼から和解成立までは半年程度が一般的です。
個人再生をするべきか悩んでいます。どこに相談したらよいですか?
個人再生の実績が豊富な法律事務所への相談をおすすめします。当サイトでも、無料相談可能な法律事務所を紹介しています。無料相談を利用して、あなたに合った借金の解決方法をアドバイスしてもらうとよいでしょう。→
STEP債務整理「債務整理に力を入れるおすすめの弁護士を紹介」
最短即日取立STOP!
一人で悩まずに士業にご相談を
- 北海道・東北
-
- 関東
-
- 東海
-
- 関西
-
- 北陸・甲信越
-
- 中国・四国
-
- 九州・沖縄
-