債務整理を途中でやめることはできるのか?
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債務整理を弁護士に依頼したんですが、取り消しをしたくなりました。債務整理は始めた後に撤回できるんですか?


債務整理を中断できるかどうかはタイミングによって異なります。任意整理の場合、既に債権相手と和解が成立した後は取り消しができません。手続きの途中であれば撤回はできますが、着手金は返還されないこと、作成した書類などの費用が請求される場合があることに注意しましょう。自己破産や個人再生の場合は裁判所に申し立てをする前であれば取り消しができますが、手続開始決定後はキャンセルできません。
そうなんですね。債務整理を始めたら督促の連絡が一切なくなったんですが、債務整理をやめたらまた督促が始まるんでしょうか。個人信用情報はどうなっているかも心配です。ブラックになっていたら、元に戻してもらえるんですか?


個人信用情報に登録された異動情報を取り消すには債権者に問い合わせなくてはいけませんが、長く延滞していることを理由に取消に応じないことがあります。また債務整理を中断すると、督促が再び本人へ行われるようになります。債務整理がなかったことになるので、返済期日から長く日数が経っていた場合は残高を一括で返済するよう要求されることもあります。
債務整理を始めたものの「支払いができるようになった」「ブラックになるのが怖くなった」「担当弁護士が自分に合わない」など、何らかの理由で債務整理を中断したくなることは珍しくありません。
債務整理の進行のタイミングにもよりますが、債務整理をキャンセルすることは可能です。ただし、原則として一度支払った着手金は戻ってきませんので注意してください。
この記事では、どのタイミングであればキャンセルができるのか、キャンセルをすることによって個人信用情報や督促、返済はどうなるのか等について解説します。
実際にキャンセルをするためにはどうすればいいのか、キャンセルをした後はどうなるのかについても具体的に説明をしていますので、債務整理の撤回を考えている方はぜひ参考にして下さい。
なお「担当弁護士が自分に合わない」ため別の弁護士に依頼し直すことを検討しているなら、当サイトで紹介している法律事務所の無料相談もぜひ利用してください。債務整理に強い法律事務所を紹介しています。
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- 債務整理は進行の度合いによってはキャンセルができる
- 債務整理を撤回すると本人への督促が再開し、残高の一括請求をされる恐れがある
- 個人信用情報に異動情報が登録されブラックになると撤回は難しい
- 一度支払った着手金は原則として返金されないことが多く、他の弁護士に依頼しなおす場合は再度着手金を支払う必要がある
債務整理を撤回できるかはタイミングによって異なる
一旦開始した債務整理を撤回できるかどうかは、債務整理の進み具合によって異なります。
任意整理の場合は手続きの途中であれば取消ができますが、和解が成立した後は取消ができません。また自己破産や個人再生の場合は裁判所で手続きを行いますので、裁判所の手続開始決定後は原則として取消ができなくなります。
具体的にどの段階であれば撤回ができるのか、また撤回するとどうなるのかについて詳しく解説をしていきます。
相談の段階であれば取り消しはいつでもできる
弁護士に相談をしている段階で、委任契約を結ぶ前であればいつでも取消が可能です。
ほとんどの法律事務所は無料相談を設けていますので、債務整理を検討している場合はまず無料相談を利用することが多いはずです。その段階で「別の人にしよう」と他の弁護士に改めて相談をしたり、相談をして「債務整理はしなくても大丈夫そう」と考えが変わったりするケースは少なくありません。
「無料相談を利用したのにキャンセルはしにくい」とお考えの方もいるかもしれませんが、弁護士に相談をするだけで問題が解決し、依頼をしないで終わる方も実際に多くいます。相談のキャンセルは後ろめたいことではありません。
債務整理依頼の直後(受任通知発送前)に取り消す場合
弁護士に依頼した後でも債務整理は取り消すことができます。債務整理を始めることが金融機関に通知される前であれば、個人信用情報に影響を与えずにキャンセルできます。
弁護士に債務整理を依頼すると、まずは利用している金融機関に弁護士が受任通知弁護士が債務者の代理人となって取引を行うことを示した書類のこと。(介入通知)を送ります。金融機関がこれを受け取ると信用情報機関に異動情報長期延滞や代位弁済、貸倒などのトラブルがあったという情報。他の金融機関に共有されるため、情報が消えるまではローンの契約ができなくなります。を登録し、いわゆるブラックと呼ばれる状態になります。
受任通知発送前に債務整理を撤回することができれば、債務整理が理由でブラックになることもありませんし、これまで通り返済を続けていくことができます。
受任通知発送後に取り消す場合
金融機関が受任通知を受け取ると、その旨を個人信用情報に異動情報として登録します。そのため受任通知が金融機関に発送されていた場合はブラックになっているということです。
日本には個人信用情報機関は3つあり、金融機関によってどれに加入しているかは異なります。しかしこれらの3つは相互ネットワークのCRINで提携をしていて、申告情報と異動情報を共有しています。
どれか一つでブラックになれば全ての情報がブラックになっていると考えましょう。
個人信用情報機関 | 日本信用情報機構 | 株式会社シー・アイ・シー | 全国銀行個人信用センター |
---|---|---|---|
略称 | JICC | CIC | KSC |
主な加入会社 | 貸金業者 クレジットカード会社 |
クレジットカード会社 | 銀行 |
手続きが進んだ後に取り消しをしたい場合
債務整理を行っている途中の場合、タイミングによっては取消ができないことがあります。裁判所で手続きを行う個人再生・自己破産の場合、裁判所に取消ができるかどうかの確認を行います。
任意整理は金融機関との交渉ですので、相手の貸金業者に取消ができるかどうか確認をしなくてはいけません。
和解成立後は取り消し不可
任意整理の場合、既に債権者と和解金融会社と交渉を行って返済する金額と回数を決め、互いに了承すること。が済んでいた場合は債務整理を取り消すことはできません。決められた返済金額と回数で返済を行っていくことになります。
一度決まった条件に納得ができない場合は再和解の交渉を行うことはできますが、任意整理そのものをなかったことにはできません。
自己破産・個人再生の場合は手続開始決定後は取り消し不可
個人再生・自己破産を開始するまでの手順は以下のようになっており、原則として4番目の手続開始決定前までであれば撤回は可能です。
- 弁護士や認定司法書士に依頼をし、各種書類の準備・作成
- 裁判へ個人再生/自己破産の申し立て
- 個人再生の場合、個人再生委員の選任・面談
- 個人再生手続開始決定/自己破産手続開始決定
申し立てから手続き開始決定までは一か月程度かかることがありますので、申し立て直後であれば取消ができることが多いです。しかし任意整理と比較するとデメリットが大きな手続きですので、申立をする前によく検討をすることをお勧めします。
また自己破産の開始決定前に差し押さえを受けていた場合、取消には裁判所の許可が必要となるため、取消ができないこともあります。
債務整理を途中で撤回できた事例
債務整理は手続きの進み具合によっては途中でも撤回できることが分かりました。
しかし「本当に撤回できるのか不安」「本当に撤回した人は居ないのでは?」と不安になる方もいるでしょう。そこで実際に債務整理を撤回した具体的な事例を3つ紹介します。
事例①相談の段階で取り消したAさん
借入金額 | 予定していた債務整理 | 取消理由 |
---|---|---|
3社300万円 | 任意整理 | 親族からお金を借りて返済したため |
弁護士や司法書士に任意整理の相談を行うと、3年~5年でどれくらいの金額で返済を行っていくことになるか、シミュレーションをしてもらうことができます。
Aさんは任意整理後5年かけて返済を行うというシミュレーションをしてもらいましたが、結果を見て「任意整理をしても返済が難しい」と判断し、親戚からお金を借りて返済に充てたそうです。
任意整理は取り消しましたが、その後過払い金請求を行い、60万ほどの借金を取り戻しているとのことです。
事例②受任通知の発送前に取消をしたBさん
借入金額 | 予定していた債務整理 | 取消理由 |
---|---|---|
1社1000万円 | 任意整理 | 弁護士が自分に合わなかったため |
債務整理は弁護士と相談を行いながら進めていきますが、弁護士も人間ですので、もしかすると「自分とは合わない」と感じることがあるかもしれません。
Bさんは担当となった弁護士が合わなかったため、手続きを取り消したとのこと。受任通知の発送前でしたので信用情報はブラックにはなりませんでした。
債務整理を始めたけれど弁護士を替えたい、と思っている方は以下の記事も併せて参考にしてみてください。
事例③自己破産手続き中に取消をしたCさん
借入金額 | 予定していた債務整理 | 取消理由 |
---|---|---|
3社220万円 | 自己破産 | 親族からお金を借りて返済したため |
自己破産手続きを弁護士に依頼していたCさんは、親族から援助があったため手続きを取り消すことにしたそうです。
既に弁護士に費用は支払っていましたが、着手金を除いたほとんどの金額が返金されました。
金融機関へ送った受任通知も取消になったため、信用情報はブラックにはならなかったとのこと。
自己破産を行うために弁護士と契約をした後でも、自己破産手続きの開始決定前であれば手続きの取り消しができます。
弁護士に費用を支払った後でも、着手金や書類作成費用を除いた金額は返金してもらえることが大半です。
債務整理の取り消しに関するよくある質問
債務整理の取消をしたい!と思った時に、想定されることが多い質問・疑問をまとめました。
- 撤回するには実際にどうすればいいの?
- ブラックになった個人信用情報は戻せる?
- 払ったお金は返してもらえる?キャンセル料は必要?
- 債務整理を撤回すると督促はまた始まる?返済はどうなる?
- 別の弁護士に依頼し直すことはできる?
実際に撤回をするには具体的にどのような行動を取ればいいのか、撤回後の弁護士費用の返還やブラックリストについて詳しく解説をしていきます。
撤回するには実際にどうすればいいの?
撤回をしたい時は、契約している弁護士・司法書士に「債務整理をやめたい」ということを伝えましょう。
撤回の理由を聞かれることになりますが、弁護士との話し合いで解決できそうなことであれば、正直に伝えると取消をせずに済むこともあります。例えば費用が高いと感じる場合、そのことを伝えれば見直しをしてもらえる可能性があります。
債権者や裁判所へは弁護士が連絡を行います。取消を行う際は弁護士から債権者に「辞任通知」が送られ、それが金融会社に到着した時点で債務整理が撤回されます。
ブラックになった個人信用情報は戻せる?
原則としてブラックになった個人情報は戻せません。一度登録をしたブラック情報を訂正できるのはその登録を行った会社だけですので、その会社が取消をしなければ情報が残ることになります。
信用情報機関の一つであるCICのホームページにも、情報については登録元、つまり金融機関に問い合わせをするよう記載されています。
開示された情報に心あたりがない場合は、登録元会社へお問合せください。
情報に誤りがあることが判明した場合には、登録元会社にて訂正・削除をいたします。引用元:CIC よくある質問
事故情報がどうなっているかを確認するには、自分の信用情報の開示請求を行いましょう。先述の通り信用情報機関は3つありますので、全ての機関の情報を確認することをおすすめします。
信用機関 | 請求方法 |
---|---|
日本信用情報機構 | スマホ・窓口・郵送 |
株式会社シー・アイ・シー | ネット・窓口・郵送 |
全国銀行個人信用センター | 郵送 |
弁護士からの「辞任通知」を受け取った時点で債権者が異動情報の取消を行っていればブラックではなくなるのですが、取消を行わない会社もあります。もし異動情報があり取消をしたい場合、その金融機関に交渉をしなくてはいけません。
債務整理をキャンセルした場合、弁護士が代理人になっていた期間は本人が延滞をしていたものとみなされます。そのため債務整理を取消しても「長期延滞」を理由にブラックを撤回してもらえないケースもあるのが実情です。
払ったお金は返してもらえる?キャンセル料は必要?
支払った金額の返還はキャンセルのタイミングや事務所の方針により異なります。弁護士に依頼をする際に払う着手金は依頼に取り掛かる費用として支払われるものですので、原則として返却は行わない事務所が多いです。
法律事務所には「キャンセル料」という概念はありませんので、債務整理のキャンセルを名目にした料金を請求されるケースは少ないです。しかし債務整理に関する書類の作成には知識だけでなく膨大な手間がかかるため、既に作成した書類の費用は請求されることがあります。
費用の返還については事務所によって扱いが異なるので一概には言えないのが現状です。委任契約を解除するときの清算については契約をしたときに交わした書類に記載がされているはずですので、債務整理のキャンセルを伝える前に確認をしておきましょう。
債務整理を撤回すると督促はまた始まる?返済はどうなる?
債務整理を撤回すると、債務整理を始める時に債権者に送付した「委任通知」がなかったことになります。返済を行う義務が本人に戻るため督促が再開します。
本来の返済期日から日数が経過していた場合、金融機関から残高を一括で支払うように請求される恐れもあります。支払いが長期間滞った場合、債権者側は残高を一括請求できるという権利があるためです。
一括請求に応じなかった場合は最終的に給与や財産を差し押さえられることになるため、新たに弁護士に依頼をし対処をしなくてはいけません。
別の弁護士に依頼し直すことはできる?
一度債務整理を取り消しした後、別の弁護士に依頼をし直すことはできます。前の弁護士との契約を解除した後に新しい弁護士と契約を行いましょう。
前の弁護士に着手金や書類作成費などを支払っていたとしても、弁護士を替えた場合は必要な費用をもう一度支払う必要があります。
また、前の弁護士と契約解除をする時点で新しい弁護士が決まっている場合、弁護士同士で業務の引継ぎを行ってもらえます。弁護士は他の弁護士が不利益になる行為を禁止されていますので、他の弁護士への引き継ぎも公正に行います。
弁護士は、信義に反して他の弁護士等を不利益に陥れてはならない。
「新しい弁護士のことを伝えるのはどうしても抵抗がある」という方は、契約解除の際に返却される書類を保存しておき、新しい弁護士に渡すことで新たな債務整理をスムーズに行えるようになります。
まとめ
債務整理を途中でやめることはできますが、手続きの状況によっては取り消しができません。個人信用情報がブラックになっている場合、それを後から訂正してもらうことは大変難しいです。また弁護士との契約を解除すると督促が再開され、返済期日からの経過日数によっては残高を一括で請求されることがあります。
新しい弁護士と契約し直すことはできますが、二重で弁護士費用を払うことになります。債務整理をやめることはデメリットが大きい行為であると言えます。
そのような事態を防ぐため、債務整理を依頼する弁護士は慎重に選ぶことをお勧めします。無料相談を活用し、自分が「この人なら任せられる」と思える弁護士を選びましょう。
債務整理をやめたい場合のよくある質問
債務整理はやめることができますが、手続きが進んでいると取り消しはできないケースもあります。任意整理の場合は和解が成立した後、自己破産や個人再生の場合は裁判所の手続開始決定後は、原則として取消ができなくなります。
受任通知が金融機関に到着していた場合は異動情報が登録されている可能性が高く、取消をしたい場合その金融機関に交渉をしなくてはいけません。債務整理を途中でやめた場合、弁護士が代理人になっていた期間は本人が延滞をしていたものとみなされるため、債務整理を取消しても「長期延滞」を理由にブラックを撤回してもらえないケースもあるのが実情です。
債務整理を取り消すと再び督促が始まり、延滞が長い場合は残高を一括請求される可能性があります。一括請求に応じなかった場合は最終的に給与や財産を差し押さえられることになるでしょう。
支払った金額の返還はキャンセルのタイミングや事務所の方針により異なります。弁護士に依頼をする際に払う着手金は依頼に取り掛かる費用として支払われるものですので、原則として返却は行わない事務所が多いです。また法律事務所には「キャンセル料」という概念はありませんので、債務整理のキャンセルを名目にした料金を請求されるケースは少ないです。委任契約を解除するときの清算については契約をしたときに交わした書類に記載がされているはずですので、債務整理のキャンセルを伝える前に確認をしておきましょう。
一度債務整理を取り消しした後、別の弁護士に依頼をし直すことはできます。前の弁護士との契約を解除した後に新しい弁護士と契約を行いましょう。当サイトでも債務整理に力を入れる法律事務所を紹介しているので、別の弁護士への依頼を検討中の場合はぜひ無料相談を利用してみてください。

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