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離婚後でも慰謝料の請求はできる?可能なケースや請求方法についても解説

離婚後でも慰謝料の請求はできる?可能なケースや請求方法についても解説

離婚する前に慰謝料の話し合いをしておらず、離婚後に慰謝料を請求できるのか不安になる方も少なくありません。

実際、DVやモラハラを受けて離婚した方などは、慰謝料について公平に話し合う機会はほとんどなく、離婚後落ち着いてから慰謝料を請求しようと考えている方もいます。

結論、離婚後でも慰謝料の請求は可能ですが、以下の点で慰謝料の請求が認められない場合があることに注意が必要です。

  • 慰謝料を請求する理由
  • 慰謝料を請求する理由についての証拠の有無
  • 離婚の前後で取り決めた内容
  • 請求するタイミング

具体的には、裁判では相手に法律上の不法行為責任が認められなければ慰謝料の請求は認められません。不法行為責任とは、故意(わざと)または過失(不注意)で他人の権利や利益を侵害した場合、生じた損害を賠償しなければならないという法律上の義務です。

性格が合わずに離婚するという理由だけで慰謝料は請求できず、離婚協議書に清算条項と呼ばれるたった1つの文章があるだけで本来請求できた慰謝料が請求できなくなることもあります。

また、離婚してから3年を経過して慰謝料を請求しても、時効を主張されると慰謝料の請求は認められません。
そこで本記事では、離婚後に慰謝料の請求をしようとする方のために、不法行為責任や消滅時効などについて詳しく解説します。

本記事で紹介する内容を知らなければ、請求できたのに請求できなくなることもありえます。ぜひ解説する内容を把握し、確実に慰謝料を支払ってもらえるように動いてください。

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離婚後でも慰謝料の請求が可能な理由

離婚後でも、慰謝料を請求すること自体は制限されていないため、請求できます。ただし、請求しても相手が支払わない場合は、一定期間内に、条件を満たしたうえで裁判で勝たなければ支払ってもらえません。

具体的には、相手が支払いに応じない場合、裁判で相手から消滅時効の完成が援用されず、相手に不法行為責任があると認められれば、慰謝料を請求して支払いを受けられます。

不法行為責任とは、民法第709条で定められた損害賠償責任です。慰謝料を支払わなければならない法律上の義務であり、裏を返すと慰謝料を請求できる法律上の権利と位置付けられます。

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用元 民法第709条|e-GOV法令検索

慰謝料とは、不法行為によって生じた精神的苦痛(損害)について支払わなければならない賠償金です。
消滅時効とは、請求できるにもかかわらず一定期間請求しない場合に、慰謝料を請求できる権利(不法行為による損害賠償請求権)などが消滅する制度です。

不法行為責任や消滅時効について、引き続き詳しく解説します。

離婚後に慰謝料を請求できる可能性があるケース

離婚後に慰謝料を請求できる可能性があるケースは、以下のようなケースです。

  • 離婚後に相手の不貞などを知った
  • 離婚原因が慰謝料を請求できる理由に該当する
  • 離婚時に慰謝料に関する取り決めをしていない
  • 離婚慰謝料の請求時効である3年を過ぎていない
  • 離婚原因を証明する証拠がある
  • 夫婦関係が破綻していない

仮に配偶者が不貞行為に及んだときは、3年の消滅時効が完成するまで、離婚後でも慰謝料を請求できます

しかし、性格の不一致だけでは慰謝料を請求できず、そもそも裁判では離婚自体が認められません。慰謝料を請求できる理由があっても、訴訟で相手が行為を認めない場合には証拠が必要などの条件にも注意が必要です。

離婚後の慰謝料請求で重要な問題について、それぞれ詳しく解説します。

離婚後に相手の不貞などを知った

離婚前はもちろん、離婚後に相手の不貞などを知った場合でも、慰謝料を請求できます。相手の不貞などをいつ知ったかは、請求に関してはほとんど問題になりません。

ただし、この場合は相手の不貞行為などを知らずに離婚しているため、「不貞行為のせいで婚姻関係が破綻して離婚せざるを得なくなった」と主張して慰謝料を請求することには矛盾がある点に注意が必要です。

このような場合には、過去に不貞行為をされていたこと自体で生じた精神的苦痛(損害)について、慰謝料の支払いを求める方法が考えられます。例えば、不貞行為で配偶者としての地位を侵害されて生じた精神的苦痛です。

離婚後に知った不貞行為は、婚姻関係破綻や離婚と関係がありません。

離婚後に初めて知った行為について慰謝料を請求する際は、上記のような注意点があるため、事前に弁護士に相談することをおすすめします。

もし離婚後に知った不貞行為について「不貞行為のせいで離婚せざるを得なくなった」として慰謝料を請求すると、「不貞行為と関係のない精神的苦痛(損害)について賠償する義務はない」と支払いを拒絶される可能性が高いといえるでしょう。

離婚原因が慰謝料を請求できる理由に該当する

相手の行為で婚姻関係が破綻して離婚せざるを得なくなったとして慰謝料を請求する場合、その理由として以下のようなものが必要です。

慰謝料を請求できる代表的な理由
(侵害行為)
侵害行為 概要
不貞行為 自由な意思で配偶者以外の異性と性的関係を結ぶこと
悪意の遺棄 正当な理由がないのに、同居・協力・扶助をしないこと
DV 肉体的・精神的な暴力をふるうこと
モラハラ 人格や尊厳を傷つけたり、嫌がらせをしたりすること

不貞行為は、一般的には肉体関係を伴う不倫のことです。肉体関係があっても、性暴力の被害にあった場合のように、自由な意思に基づかないものは不貞行為とはなりません。

悪意の遺棄とは、正当な理由もなく家を出たり、反対に家から追い出したり、生活費を渡さないなどの行為をいいます。親族の介護や転勤、傷病など正当な理由がある場合は、悪意の遺棄とはいえません。

性格や価値観が合わないという理由だけでは、慰謝料を請求できる理由にはならない点に注意が必要です。

不貞行為や悪意の遺棄、DV、モラハラ以外でも、慰謝料請求が認められる事実がある場合には、これによって生じた損害の賠償を請求できます。

最終的には裁判所が民法第709条の不法行為責任が成立するかどうかを法的に判断しますが、例えば、以下のような理由で慰謝料請求が認められる可能性があります。

      家庭を顧みない過度な宗教活動
      過度な借金
      過度なギャンブル依存
      長期間にわたるセックスレス

離婚時に慰謝料に関する取り決めをしていない

相手との話し合いや以下のような書面で、慰謝料を請求しない旨の合意がある場合は、慰謝料の請求が認められないケースがあります。

  • 離婚協議書・合意書(公正証書を含む)
  • 離婚調停の調書

特に、「相互に何らの債権債務がないことを確認する」や「慰謝料の請求権を放棄する」「慰謝料の請求権を行使しない」といった記載があるかどうかをチェックしてください。

債権債務がないと確認したのであれば、慰謝料請求権や慰謝料請求債務もないと確認したこととなり、その後に慰謝料を請求することはできないからです。

もっとも、相手から不貞行為を隠されていたなど取り決めの前提に問題がある場合は、詐欺(騙された)や錯誤(重要な勘違い)を理由に上記の取り決めを取り消せる場合があります。

一度取り決めた内容を取り消せるかどうかは話し合いの状況などによって異なるため、本ケースに該当する方は弁護士への相談をおすすめします。

離婚慰謝料の請求時効である3年を過ぎていない

元配偶者の行為で離婚せざるを得なくなったとして慰謝料の支払いを求める場合、その権利の消滅時効は離婚から3年で完成します。

モラハラや不貞行為自体による精神的苦痛(損害)の賠償を求める場合は、その損害を知った時から3年です。

慰謝料請求の消滅時効
慰謝料請求の内容 消滅時効
個別の不法行為についての慰謝料請求 その行為で精神的苦痛が発生した時から3年
離婚についての慰謝料請求 離婚から3年

相手から消滅時効が完成したと主張(援用)されると、訴訟では慰謝料請求権が認められません。消滅時効の完成を阻止する方法には以下の方法があるので、検討してください。

時効の完成を阻止する方法
方法 効果
慰謝料の支払義務を認めさせる 時効のカウントはゼロとなり、また新たに3年がカウントしなおす
内容証明郵便などで、相手に慰謝料の支払いを催告する その日から6ヶ月間は、時効が完成しない
慰謝料を請求する訴訟や調停、支払督促を申立てる 手続が終了するまでの間は、時効が完成しない

例えば、慰謝料を1万円だけでも支払ってほしいと催告をすると、その日から6ヶ月間は時効が完成しません。その後、相手が1万円だけ支払うと、慰謝料の支払義務を認めたことになるため、時効のカウントはその日からゼロにリセットされます。

催告による6ヶ月間の完成猶予は1回しか認められないため、催告後に相手が慰謝料の支払義務を認めない場合は、6ヶ月以内に支払督促や訴訟、調停といった裁判手続きを進めましょう。

離婚原因を証明する証拠がある

慰謝料を請求すること自体に、証拠は必要ありません。

しかし、相手が支払いに応じず訴訟を提起した際、相手が事実関係を認めない場合には証拠が必要です。裁判をするのは、本当に不貞行為があったかどうかは全く知らない第三者である裁判官だからです。

証拠の具体例を以下にまとめますが、紹介するものに限りません。

証拠の具体例
侵害行為 具体例
不貞行為 性的関係を結んだことを直接証明できる動画や写真、録音、調査報告書など。なければ性的関係を結んだと推測できるメールやSNS、カレンダーの予定、レシートなど。
悪意の遺棄 正当な理由なく同居・協力・扶助をしなかったことを証明できる住民票や不動産の売買契約書・賃貸借契約書、銀行の取引履歴、メールやSNSでのやり取りの履歴、日記など。
DV 暴力をふるったことを直接証明できる動画や録音など。なければ推測できる写真や診断書、警察等への相談記録、通院履歴など。
モラハラ モラハラがあったことを直接照明できる動画や録音など。なければ推測できるメールやSNSでのやり取りの履歴、機関への相談記録、日記、診断書、通院履歴など。

また、訴訟では後述するとおり婚姻関係が破綻した後の行為かどうかが問題となる場合があるため、撮影日時や調査日時、作成日、投稿日などを明らかにしなければなりません。

婚姻関係が破綻した後に元配偶者が異性とラブホテルに出入りしていた写真があっても、慰謝料の請求は認められません。

例示した証拠がなくても、本人や関係者の陳述(尋問)が証拠として有用な場合もあります。例えば、「XXXX年XX月XX日、YYさんが異性とラブホテルに入っていくところを見ました」という知人の裁判所での陳述が証拠です。

証拠にお悩みの方は、弁護士への相談をおすすめします。

夫婦関係が破綻していない

夫婦関係が破綻した後の不貞行為などは、慰謝料を請求できない場合があります。

民法第709条は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者」に損害賠償責任を負わせるものです。不貞行為は「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法律上保護される利益」を侵害する行為と解釈されていますが、破綻後はその権利または利益が既になくなっています。

婚姻関係破綻後の不貞行為は、婚姻関係にかかる権利・利益を侵害したとはいえないため、民法第709条の不法行為責任が成立しません。

もっとも、離婚届を出すまでの行為なら、「配偶者としての権利」を侵害されたと主張して慰謝料を請求するケースも考えられます。

また、婚姻関係が破綻していたから慰謝料を支払う義務はないと主張し、証拠を提出すべきなのは慰謝料を請求された側です。第三者である裁判官に婚姻関係が破綻していたと証明することは簡単ではありません。

夫婦関係が破綻していたか、その時期はいつかなどは、最終的には裁判で判断される内容です。裁判を見込んでいる方は、弁護士にご相談ください。

なお、不貞行為で夫婦関係が破綻しなければ、元配偶者の行為で婚姻関係が破綻し、離婚せざるを得なくなったとして精神的苦痛(損害)の賠償を請求することはできません。

破綻していなければ、婚姻関係破綻や離婚をやむなくされて精神的苦痛(損害)が発生したとはいえないからです。

離婚後に慰謝料を請求するときの流れ

離婚後、元配偶者に慰謝料を請求するときの流れは、以下のとおりです。

  1. 元配偶者と離婚慰謝料について話し合いを行う
  2. 話に応じてもらえない場合は調停を申し立てる
  3. 調停でも話し合いがまとまらないときは裁判を起こす

基本は話し合いですが、話し合いで解決できなければ、調停や訴訟といった裁判所の制度を利用して解決を目指せます。

1.元配偶者と離婚慰謝料について話し合いを行う

まずは、元配偶者に対して慰謝料の支払いを請求します。必ずしも対面で話し合う必要はなく、やり取りの手段はLINEやSNS、電話、手紙などで問題ありません。

ただし、最も望ましい方法は、慰謝料の支払いを請求する文書(慰謝料の請求書)を内容証明郵便で送付する方法です。

内容証明郵便とは、日本郵便が「いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を差し出したか」を証明する郵便サービスをいいます。

離婚して2年6ヶ月を過ぎたなど、時効の完成までの期間が6ヶ月を切っているときは、内容証明郵便で慰謝料の請求書を送付することがおすすめです。請求を催告した日から6ヶ月間は、時効が完成しません。

訴訟ではなく話し合いや調停であれば、請求する理由や証拠、時効を問わず、相手の同意さえあれば慰謝料を支払ってもらえます

後になって「そんなことは言っていない」「そんな同意はしていない」と主張されないよう、録音やスクリーンショットの撮影などでやり取りの内容を記録しましょう。

時効が完成している、証拠がないなど、裁判になると請求が認められない場合には、話し合いでの解決を目指す必要があります。

2.話に応じてもらえない場合は調停を申し立てる

話し合いそのものができなかったり、話し合いがまとまらなかったりする場合は、家庭裁判所に調停を申し立てる方法があります。

調停とは、調停委員が当事者の間に入って事情を聴き、資料などを提出しながら解決を図る制度です。離婚前なら夫婦関係調整(離婚)調停、離婚後なら慰謝料請求調停で慰謝料の話し合いができます。

調停の申立方法は、元配偶者の住所地を管轄する家庭裁判所か話し合いで決めた家庭裁判所に対して、戸籍全部事項証明書などを添えて、1,200円分の収入印紙を貼った申立書を提出します。その他、東京家庭裁判所の運用では1,240円分の郵便切手も必要です。

家庭裁判所によって必要な郵便切手や提出が必要な種類は異なるので、申し立てる前に確認してください。

また、調停で元配偶者と顔を合わせたくないときは、その旨も記載しておくと、調停室には交互に入室するなどの配慮もしてくれます。

調停の手続きは、訴訟と比べるとそれほど難しいものではありません。家庭裁判所で案内を受けながら申立てをすることもできます。

調停はあくまでも当事者の話し合いによる解決を目指す制度なので、調停委員を通じても相手が慰謝料の支払いに応じる気が全くなければ、調停で慰謝料の請求が認められるわけではありません。

離婚訴訟を提起する前には、調停前置主義に基づいて離婚調停が必要となりますが、離婚をするかしないかの意見が一致しているときは、調停をせずに慰謝料請求訴訟を提起できます。

3.調停でも話し合いがまとまらないときは裁判を起こす

調停でも話し合いがまとまらないときは、訴訟を提起して慰謝料の支払いを命じる判決の獲得を目指せます。

訴訟の提起は、裁判所に訴状を提出して行いますが、訴状にどのような内容を記載すればよいのかなど、難しい問題が多くあります。

訴状に不備があれば訴えが却下されたり、本来は請求できる慰謝料も認められなかったりする可能性もゼロではありません。

裁判に不安がある方は、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。

離婚後に慰謝料を請求された場合に取るべき方法

これまでは慰謝料を請求する側の視点で解説してきましたが、ここでは、離婚後に相手から慰謝料を請求された場合に取るべき方法を解説します。

結論は、以下のとおりです。

  • 請求内容を確認する
  • こじれそうな場合は離婚慰謝料の請求問題に強い弁護士に相談する

どのような点に注意すればよいかを含めて、詳しく解説します。

請求内容を確認する

慰謝料を請求されたら、まずは請求の内容を確認してください。具体的に確認すべき項目は以下のとおりです。

  • 消滅時効は完成していないか
  • 請求の理由や金額は法律上妥当か
  • 請求の理由について相手は証拠を持っているか

慰謝料を支払う確定的な意思がある場合は、分割払いや減額はできないかと相手に交渉を持ちかけてもよいでしょう。

しかし、支払条件の交渉をするなど安易に相手の請求を認めると、時効が完成していたり、請求の理由や金額が妥当ではなく、証拠がなかったりしても支払義務が生じてしまいます。

したがって、慰謝料を支払う確定的な意思がない場合は、請求に対して安易に回答することは避けてください。

お金がなくて払えない時の対処法やNG行動については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

こじれそうな場合は離婚慰謝料の請求問題に強い弁護士に相談する

離婚後に慰謝料を請求され、請求どおりに支払う意思と支払能力がある場合は問題ありません。しかし、以下のようにお考えの場合は、離婚慰謝料の請求問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。

  • 相手にも悪い点があるのに請求されている
  • 財産分与や養育費、面会交流、年金分割に不安がある
  • 慰謝料の金額が妥当かわからない
  • 少しでも減額したい
  • 相手と直接やり取りしたくない

相手にも非があると慰謝料を支払う必要がない場合もあるほか、慰謝料を支払っても財産分与を受けることができるといったケースもあります。

請求の内容が妥当かどうかなどの判断は、容易ではありません。できるかぎり早く弁護士に相談することで、より満足のいく解決につなげやすくなります。

離婚慰謝料の相場

離婚慰謝料の相場は、以下の表のとおりです。

離婚慰謝料の相場
離婚原因(侵害行為) 慰謝料の相場
不貞行為 100~500万円
DV・モラハラ 50~500万円
悪意の遺棄 50~300万円
セックスレス ~200万円

ただし、不貞行為でも100万円未満となるケースもあるので、示した相場は目安に過ぎません。約8割のケースで、慰謝料は300万円以下となっているとの統計も報告されています。

話し合いでは相場と関係なく金額を決められるほか、裁判でも個別具体的な事情に基づいて判断されます。

不貞行為(100~500万円)

自由な意思で配偶者以外の異性と性的関係を結ぶ不貞行為で婚姻関係が破綻した場合、慰謝料の相場は100~500万円です。

婚姻関係が破綻せず継続した場合は、破綻した場合と比べて精神的苦痛(損害)は小さいと考えられます。

そのほか、不貞行為が原因の慰謝料について金額に影響する要素は以下のとおりです。

  • 不貞行為の期間
  • 不貞行為の頻度
  • 不貞行為の態様
  • 婚姻期間の長さ
  • 不貞行為の結果(別居・離婚)

慰謝料が高額になるケースの代表例は、長年にわたって円満に築き上げてきた婚姻関係を長期間かつ高頻度の不貞行為によって破壊され、別居・離婚という重大な結果に至ったと認められるケースだといえます。

上記のようなケースでは、被害者となった配偶者に生じた精神的苦痛(損害)が甚大であることはほとんど疑いようがありません。

反対に、結婚して間もなく1日・1回きりの不貞行為が行われたが、結果的に同居を続けるなど婚姻関係が継続したケースでは、先ほどのケースと比べて慰謝料は低額になる可能性があります。

DV・モラハラ(50~500万円)

DVやモラハラの慰謝料の相場は、50~500万円と幅があります。慰謝料の金額に影響する要素は以下のとおりです。

  • DV・モラハラの期間
  • DV・モラハラの頻度
  • DV・モラハラの内容
  • 婚姻期間の長さ
  • DV・モラハラの結果(受傷の状況、別居・離婚)

DV・モラハラの慰謝料が高額になるケースの代表例は、不貞行為と同様に、長年にわたって円満に築き上げてきた婚姻関係を長期間かつ高頻度のDV・モラハラで破壊され、別居・離婚という重大な結果に至ったと認められるケースだといえます。

DVやモラハラはいずれも家庭内という閉ざされた環境で行われるものであり、裁判での証明は容易ではありません。特にモラハラは目に見えない暴力であり、証明は困難です。

動画の撮影や音声の録音などを残しておくと、慰謝料の請求が認められやすくなります。

悪意の遺棄(50~300万円)

悪意の遺棄の慰謝料の相場は、50~300万円ほどで、慰謝料の金額に影響する要素は以下のとおりです。

  • 婚姻期間が長い
  • 悪意の遺棄の期間が長い
  • 未成熟子がいる
  • 反省の態度が見られない

悪意の遺棄の慰謝料が高額になるケースは、未成熟子がいるのに長期間にわたって悪意の遺棄を行い、反省の態度も見られないケースだといえます。

セックスレス(~200万円)

婚姻しているにもかかわらず、何度も長期間にわたって性交渉を拒むセックスレスは、慰謝料の請求が認められる可能性があります。

セックスレスの慰謝料の相場は200万円以下で、以下のような要素が影響します。

  • 婚姻期間
  • セックスレスの期間
  • セックスレス解消のための行動の有無
  • 性交渉の拒絶の態様

セックスレスの慰謝料が高額になるケースは、性交渉をひどく拒絶している期間が長く、全く配偶者の要求に応えようとする気もないようなケースだといえます。

セックスレスで慰謝料を請求する場合は、数ヶ月程度の期間では認められないケースがある点に注意が必要です。

最終的には訴訟で判断されケースによって異なりますが、セックスレスの期間は1年以上あることが1つの目安といえます。

離婚時に請求できる慰謝料の相場について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

弁護士費用の相場

慰謝料を請求したり、されたりする場合、話し合いや調停で解決できるなら弁護士に依頼する必要性はそれほど高くありません。

しかし、相手が話し合いや調停で支払いに応じない場合、慰謝料の支払いを受けるためには訴訟の提起が必要です。

訴訟を弁護士に依頼するメリットは大きい反面、弁護士費用の負担が軽いわけではありません。

そこでここでは、弁護士費用がいくらかかるのか、相場を紹介します。

弁護士費用の相場
弁護士費用 相場
法律相談料 30分につき5,000円~
(初回無料の場合もある)
着手金 10万円~30万円程度
報酬金 勝訴した額の10~20%程度
日当 日額3万円~5万円程度
実費 1万円~3万円程度

法律相談料(初回無料・30分5,000円程度)

離婚や慰謝料について弁護士に相談する際は、30分につき5,000円程度の法律相談料がかかります。ただし、法律事務所や弁護士によっては初回相談に限り無料にしている場合もあります。

法律相談を経て実際に慰謝料請求について依頼をすると、相談料を実質無料にしてくれるケースもあるようです。

着手金(10万円〜30万円程度)

着手金とは、弁護士に事件を依頼したときに支払う費用です。弁護士に依頼する際の初期費用のようなもので、仮に敗訴しても返還されません。

着手金の算定方法は弁護士によって異なるものの、例えば示談(話し合い)からの依頼は10万円、調停からの依頼は20万円、訴訟からの依頼は30万円のように算定している弁護士もいます。

慰謝料に争いがある場合はさらに10万円、その他、離婚、財産分与、親権、面会交流に争いがある場合に着手金が加算されるケースもあります。

離婚に関連する法律問題について元配偶者と話し合いがまとまらないほど、着手金は高い傾向にあるといえるでしょう。

報酬金(受け取った金額の10%〜20%程度

報酬金とは、示談や訴訟の結果、成功した度合いに応じて終了した時に支払う費用です。弁護士によって異なりますが、決まった慰謝料の金額に対して10%~20%程度が報酬金の相場といえます。

報酬金は成功報酬なので、仮に慰謝料の請求が認められなかった場合は、原則として報酬金は発生しません。

ただし、示談で解決すると10万円、調停で解決すると20万円、訴訟で解決すると30万円のように、慰謝料の請求が認められなくても報酬金が発生する場合もあります。

報酬金の計算方法は、弁護士に依頼する前によく確認しましょう。

日当(1日あたり3万円〜5万円程度)

日当とは、遠方の裁判所への出廷など、弁護士の時間が拘束された場合に発生する費用です。

弁護士によって異なりますが、日当の相場は1日(往復4時間超え)だと3万円~5万円程度といわれています。半日(往復2時間超え4時間以下)では1万円~3万円ともいわれます。

離婚後の慰謝料請求について調停や訴訟を申し立てる裁判所は、原則として元配偶者の住所地を管轄する裁判所です。

離婚後、元配偶者と住んでいる地域が離れた場合には、弁護士を選ぶときに元配偶者の住所地に事務所がある弁護士を選ぶと日当を抑えられる可能性があります。

実費(事務手数料)(1万円〜3万円程度)

実費とは、弁護士が示談や調停、訴訟に対応するうえで実際にかかった費用です。以下のようなものが実費の内訳となります。

  • 内容証明郵便を送るときの郵便サービス料
  • 事務所以外で打ち合わせを行う場合の交通費・宿泊費
  • 調停や訴訟を申し立てるときの収入印紙代(申立ての手数料)
  • 調停や訴訟を申し立てるときの郵便切手代
  • 相手や裁判所に提出する書面の印刷費
  • 戸籍の証明書や住民票などの交付手数料
  • 登記事項証明書の交付手数料

慰謝料の金額や調停や訴訟における主張の状況などによりますが、実費の相場は1万円~3万円程度です。なお、上記の費用は仮に弁護士に依頼せずご自身で対応をする際にもかかります。

不倫の慰謝料を請求しようと考えている方は、ぜひ以下の記事で紹介している弁護士の選び方を実践してください。

離婚後に慰謝料以外にも請求できるお金

離婚後、慰謝料以外にも元配偶者に対して支払いを請求できる可能性があるものは、以下のとおりです。

  • 子どもの養育費
  • 財産分与のお金

上記のいずれについても、知らないままだと請求権を失う可能性があるため、ぜひ一度目を通してください。

なお、2026年5月までに施行が決まっている民法改正法(令和6年5月24日法律第33号)による変更点についても、簡単に紹介します。

子どもの養育費

養育費とは、子が経済的・社会的に自立するまでに必要な、子の監護や教育にかかる費用です。具体的には以下の費用が含まれます。

  • 子の衣食住にかかる生活費
  • 子の医療費
  • 子の教育費

本来は離婚するまでに父母が子どもの養育費の分担について定めますが、定めずに離婚しても、養育費の分担を請求することはできます。

養育費はいつまで支払うべきなのか、金額はどうすべきかなどは、父母である元夫婦が子の利益を最も優先して考慮したうえで定めなければなりません。

民法改正後は、離婚までに養育費について話し合いや取り決めがなくても、離婚の日から協議や審判で養育費が決まるか子が18歳になるまでのいずれか早いときまで、法定養育費というものを請求できるようになります(改正後民法第766条の3)。具体的な金額(算定方法)はまだ定まっていません。

なお、民法が改正されるまでに離婚した場合は、その後に民法が改正されても法定養育費は請求できない(令和6年5月24日民法改正法附則第3条第2項点に注意が必要です。この場合、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てることをおすすめします。

財産分与のお金

財産分与とは、夫婦が婚姻中に有していた実質共同の財産について、清算・分配を請求できる制度です。

財産分与の対象になるのは、夫婦が協力して取得したり、形成したりした財産で、代表的には預貯金や有価証券、自動車、不動産などが該当します。

婚姻中に取得した財産でも、一方が相続や贈与で取得したものや、婚姻前から持っていたものは、原則として財産分与の対象になりません。このような財産は、協力して取得・形成した財産とはいえないからです。

財産分与の方法は法律で具体的に決まっていないため、元夫婦が自由に決められます。

財産分与の請求をしても相手が応じないなど話し合いがまとまらない場合は、離婚から2年以内は家庭裁判所に財産分与をするかどうかや具体的な方法などを決めてもらうことも可能です。

民法改正後は、離婚から2年ではなく、5年以内なら家庭裁判所に財産分与の調停や審判を求めることができるようになります(改正後民法第768条第2項)。ただし、民法が改正されるまでに離婚した場合は、その後に民法が改正されても5年に伸びず2年のままです(令和6年5月24日民法改正法附則第4条)。

まとめ

離婚後でも、慰謝料を請求することに制限はありません。しかし、請求しても相手が支払いに応じずに訴訟を提起した場合は、相手に不法行為責任があることを証明できる証拠がなければ請求は認められません。

当事者間で債権債務がない、慰謝料を請求しないといった合意がある場合や、損害が発生してから3年間経過してしまった場合も同様です。

離婚後に慰謝料を請求する際は、相手の行為と賠償を請求する損害との関係に注意しなければなりません。例えば、不貞行為があったとは知らずに協議離婚したにもかかわらず、相手の不貞行為で離婚せざるを得なくなったという主張には矛盾があります。

離婚後の慰謝料請求は、どのような証拠が必要なのか、今ある証拠で慰謝料は請求できるのか、訴状ではどのように慰謝料を請求すべきなのかなど難しい問題が多く存在します。

養育費や財産分与を請求できる場合もあるので、後悔しないよう、一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。

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更新日 : 2025年01月09日
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