離婚後の親権者変更は可能だが調停の申し立てが必要
離婚後の親権者変更は可能です。
ただし、夫婦の話し合いのみで親権者を決められる離婚時とは異なり、親権者の変更は話し合いだけでは行えません。親権者の変更を希望するときは家庭裁判所に対して「親権者変更調停」を申し立てる必要があります。
なぜなら、親権者が変わることは、子どもの生活環境や人生にまで大きな影響を与える可能性があると考えられるためです。
そのため、たとえ離婚協議書で親権者変更のタイミングを定めていたとしても、調停の申し立てなしに親権者の変更はできません。
【親権者変更調停とは】
家庭裁判所に対して、親権者の変更を求める調停のこと。調停委員を介して親権者を決定した経緯や親権者の変更を希望する理由、今後の監護方針などについて話し合う。
ただし父母が合意すれば変更が認められるわけではなく、その後調査官によって調査が行われ、調査の結果変更が認められてはじめて調停が成立する。
調停で父母が合意できなかったときや、調査の結果変更が認められなかった場合、調停は不成立に終わります。その場合、手続きは自動的に「親権者変更審判」に移行し、家庭裁判所に判断が委ねられます。
【親権者変更審判とは】
当事者それぞれの主張や提出された資料などから家庭裁判所が総合的に判断し、申し立てどおりに親権者を変更するかどうかを決定する手続きのこと。
離婚後に親権者を調停の申し立てなしで変更できる場合がある
例外として、調停の申し立てをせず父母の話し合いだけで親権者を変更できる場合があります。
話し合いだけで変更できるケースは以下のとおりです。
- 離婚後に生まれた子どもを父親が親権者になる場合
- 子どもを認知した父親が親権者になる場合
通常、離婚後に生まれた子どもの親権者は母親になります。父母の合意のうえ父親が親権者になる場合、家庭裁判所の手続きは不要です。
また、未婚の女性が出産したケースでも親権者は母親になりますが、父親が認知し、父母が合意すれば親権者を父親に変更できます。この場合も家庭裁判所での手続きは必要ありません。
ただしどちらのケースでも、父母の間で合意できなければ通常どおり親権者変更の手続きが必要です。
離婚後に親権者変更が認められやすいケース
「親権者変更調停」を行っても、必ずしも主張が認められるとは限りません。しかし、中には親権者の変更が認められやすいケースもあります。
ここでは、変更が認められやすいケースについて解説します。
- 子どもが親権者から虐待や育児放棄(ネグレクト)を受けている
- 親権者が重篤な病気に罹患したり障害者になったりしたことで、子どもの監護が不可能になった
- 親権者が亡くなり、子どもを監護する人がいなくなった
- 15歳以上に成長した子どもから親権者の変更希望があった
- 親権者の海外転勤や家出などにより、子どもの監護が難しい状態になった
子どもが親権者から虐待や育児放棄による被害を受けている
子どもが親権者から虐待や育児放棄(ネグレクト)を受けているときは、親権者変更が認められる可能性が高いです。虐待や育児放棄が事実なら、少しでも早く子どもを現状から救い出し、健全な生活・育児が可能な環境に移すべきであるためです。
離婚時は子どもをしっかり養ってくれると信じて託し、託された側も親権者として子どもを養育していく意思があった場合でも、以下のような事情から虐待や育児放棄が起こる可能性はあります。
- 親権者に恋人ができ、子どもが邪魔になった
- 1人で子どもを育てていくことに疲れて育児をする気力がなくなった
親権者に恋人ができたことがきっかけで虐待・育児放棄に発展するケースは少なくありません。親権者が子どもに対して手を上げる場合もありますが、親権者の恋人から虐待されるケースもあります。
また、日々の疲れが育児放棄につながることもあります。
このような事情があると、子どもにとって適切な監護を受けているとはいえません。親権を希望する親が育児環境を整えられれば、親権者の変更が認められやすくなるでしょう。
親権者が重篤な病気を罹患・障害者になり監護が不可能になっている
親権者が重篤な病気に罹患したり障害者になったりといった事情で監護が不可能になった場合、親権者変更が認められる可能性が高いです。
たとえば、以下のようなケースが該当します。
- 親権者が重篤な病気に罹患し長期の入院が必要になった
- 親権者が精神疾患を患い、育児ができる状態ではなくなった
- 親権者が事故に遭い、重い障害が残ってしまった
このような場合、親権者がこれまでどおり子どもを養育することは難しく、子どもへの悪影響も大きくなることが予想されます。上記のような状態が長期的に続く可能性があるのなら、子どものためにも親権者の変更を検討すべきでしょう。
親権者が亡くなった
親権者が病気などによって亡くなった場合、親権者変更が認められやすくなります。親権者が亡くなる=子どもを監護する人がいなくなり、子どもの健やかな生活が守られなくなるためです。
ただし親権者が亡くなっても、他方の親に親権が自動的に移るわけではありません。まず「未成年後見人」が子どもの法的代理人として選任され、子どもの監護や財産管理を行います。
【未成年後見人とは】
親権者が亡くなったときなど、監護する人がいなくなった未成年者を保護するために選任される。未成年者の監護はもちろん、財産管理や法律行為も未成年者に代わって行う。
他方の親が親権者になることを希望するなら、「親権者変更の審判」を申し立てる必要があります。
申し立て先は「子どもの住所地を管轄する家庭裁判所」です。親権者が存命なら「調停」という選択肢もありますが、亡くなっている場合は話し合いができないため審判しかありません。
自分の死後、子どもの親権が他方の親に渡らないようにしたいときは、必ず遺言書で未成年後見人を指定しておきましょう。未成年後見人を指定しておけば、親権者の死後すぐに未成年後見人が就任します。
未成年後見人には、子どもの祖父母や叔父・叔母といった親族を指定するケースが一般的です。ふさわしい親族がいなければ、弁護士や司法書士などの専門家を指定する場合もあります。
未成年後見人に就任した人は市区町村役場に対し、就任から10日以内に「未成年後見人の届出」を行う必要があります。
15歳以上に成長した子どもから親権者の変更希望があった
15歳以上になった子どもから親権者の変更を希望されたときも、変更が認められる可能性があります。15歳以上になると「自分で物事を判断できる」と考えられ、意思を尊重してもらいやすくなるためです。
また、親権者は子どもの利益を優先して選ばれるべきであるため、子どもが15歳以上であれば、家庭裁判所も子ども本人にどうしたいかを必ず確認します。
しかし子どもの年齢が幼い場合、子どもの希望もある程度加味して判断されるものの、判断能力が不十分であるとして変更が認められない可能性があります。いくら子どもが親権者ではないほうの親と暮らしたいと言っても、認められるとは限らないことを念頭に置いておきましょう。
なお、親権者の変更が必要なのは18歳未満の未成年です。2022年4月から成人年齢が18歳に引き下げられたため、離婚時に18歳未満だった場合でも、現在18歳以上であれば親権者の変更は不要です。
親権者の海外転勤や家出などにより監護が難しい状態になっている
親権者の海外転勤や家出などで子どもの監護が難しくなった場合も、親権者の変更が認められやすい傾向にあります。養育状況の大きな変化が、子どもに悪影響を与える可能性があるためです。
海外転勤や家出のほかに、以下のようなケースも該当します。
- 頻繁に転勤が発生する
- 転職によって子どもの世話ができないほど多忙になった
ただし、転勤や転職の事実があれば必ず変更が認められるというわけではありません。「子どもに悪影響を及ぼす」と判断できる状況が必要です。
たとえば海外への転勤が決まっても、現地でも十分子どもの養育が可能であれば認められない場合があります。
離婚後に親権者変更が認められにくいケース
離婚後の親権者変更が認められやすいケースがある一方で、認められにくいケースもあります。
ここでは、親権者の変更が認められにくいケースについて解説します。
- 再婚を理由に子どもを他方の親に引き取ってもらいたい・親権者の再婚で子どもが放置されることが心配
- 「一刻も早く離婚したい」という思いから、離婚時に深く考えず親権を決めてしまった
- 親権者に子どもとの面会交流の約束を破られた
再婚するので子どもを他方の親に引き取ってもらいたい
離婚後、親権者が再婚する場合に、再婚相手を優先したいあまりに子どもを手放そうとするケースがありますが、再婚を理由とした親権者変更は認められにくいです。
なぜなら、親の勝手な都合でしかないためです。親の離婚によって生活環境が変わり、そのうえ今度は再婚するからと手放される子どものことを考えると、悪影響を与える可能性が高いといわざるを得ません。
親権者が再婚することを受け、「子どもが放置されないか不安だから」と他方の親が親権者の変更を申し立てる反対のパターンも認められにくい傾向にあります。
ただし、再婚がきっかけで虐待や育児放棄に遭うようになったなど、子どもにとって不利益が生じているときは認められる可能性があります。
一刻も早く離婚したくて離婚時に深く考えずに親権を決めてしまった
「一刻最早く離婚したい」という思いから、離婚時に深く考えず親権を決めてしまったケースも、親権変更が認められにくいケースの1つです。いい加減に決めた親権者でも、現時点で問題なく子どもを養育できているのであれば、親権者を変更する理由がないと考えられるためです。
現在の親権者が問題なく子どもを監護できており子どもも健やかに育っているなら、「子どもにとっては環境を変えないほうがよい」と判断される可能性があります。
いくら早く離婚したい事情があっても、親権については「あとからいくらでも変えられる」というものではないため、慎重に考える必要があるでしょう。
親権者に子どもの面会交流の約束を破られる
親権者に子どもとの面会交流の約束を破られたことから親権者変更を求めるケースもありますが、変更は認められにくいでしょう。
面会交流は子どもの権利であるため約束は守られるべきですが、重要なのは「子どもが適切な環境できちんとした生活を送れているか」です。子どもが問題なく監護されているなら、子どもにとっては現状のままでよいと判断される可能性が高いです。
虐待の事実を隠す目的で面会交流を拒否されているケースなら、変更が認められる可能性があります。ただし、「面会交流の約束を破られた」というだけで親権の変更が認められることは実際にはほとんどありません。
子どもと定期的に面会させてもらえることを条件に親権を譲った場合、約束が果たされなければ「話が違う」と思い親権者を変更したくなるかもしれません。しかしこのようなケースでは、親権者変更ではなく「面会交流調停」を申し立て、約束を守るよう主張するのがよいでしょう。
面会交流権については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
離婚後に親権者変更する方法・手順
離婚後に親権者を変更する方法・手順は以下のとおりです。
- 親権者変更調停の申し立て手続きを行う
- 調停委員を介して父母間での話し合いを開始する
- 調査官による調査が行われる
- 調停が不成立になった場合は親権者変更審判に移行する
- 親権者届変更の届出を出す
- 子どもの氏を変更する
流れに沿って解説します。
1.親権者変更調停の申し立て手続きを行う
まずは、「親権者変更調停の申し立て」をします。
申し立て先は以下のいずれかです。
- 相手方の住所地を管轄する家庭裁判所
- 当事者が合意した家庭裁判所
多くの場合、親権者ではないほうの親が申し立てます。しかし、親権者や子どもの祖父母でも申し立ては可能です。
申し立てに必要な書類と費用は以下のとおりです。
▼必要書類
申立書・申立書の写し
(各1通) |
必要項目をすべて埋める。写しは「呼出状」とともに相手方に送付される。 |
当事者目録(1通) |
当事者それぞれの本籍・住所・氏名などを記入する。 |
戸籍謄本
(各1通) |
申立人・相手方・未成年者それぞれの戸籍謄本を取得する。
※同じものは1通でよい |
▼費用
収入印紙 |
子ども1人につき1,200円分 |
連絡用の郵便切手 |
合計額や内訳は裁判所ごとに異なる場合があるため要確認。 |
参照:親権者変更調停|裁判所
申立書・当事者目録の様式は、裁判所のホームページからダウンロードできます。
申立書はすべての項目を埋め、相手方用にコピーを1通用意しましょう。裁判所から送付してもらえます。当事者目録にも当事者それぞれの情報を記入し、申立書と一緒に提出します。
戸籍謄本は、上記のとおり申立人・相手方・未成年者の分をそれぞれ用意する必要がありますが、同じものは1通あれば十分です。親権者と子どもは通常同じ戸籍に入っているため、親権者のものを1通添付すれば問題ありません。
また、申し立ての費用として、子ども1人につき1,200円分の収入印紙が必要です。たとえば親権者を変更したい子どもが2人いる場合、2,400円分の収入印紙を用意しなければなりません。
申立書の上部に収入印紙を貼り付けるスペースがあるため、購入した収入印紙はそのスペースに貼り付けます。割印はせず、そのまま提出しましょう。
郵便切手は、相手方に申立書を郵送する場合などに使用されます。切手の合計額や内訳は申立先の裁判所によって異なります。
たとえば東京家庭裁判所では、以下の種類と枚数が必要です。
合計額 |
内訳 |
1,022円 |
100円×2枚+84円×8枚+10円×14枚+2円×5枚 |
さらに、子どもが1人増えるごとに以下の金額が加算されます。
合計額 |
内訳 |
312円 |
100円×1枚+84円×2枚+10円×4枚+2円×2枚 |
参照:予納郵便切手一覧表(令和5年10月版)|東京家庭裁判所
そのほか、裁判所によっては「合意した裁判所」に申し立てる際「管轄合意書」を求められることや、追加の資料を請求されることもあります。
なお、親権者が行方不明・すでに亡くなっているなどで調停に出席できない場合、調停の申し立てはできません。その場合は、はじめから審判を申し立てる必要があります。
詳しくは「4.調停が不成立になった場合は親権者変更審判に移行する」で解説しています。ぜひチェックしてみてください。
2.調停委員を介して父母間での話し合いを開始する
親権者変更調停を申し立てたあと、調停期日が決定すると「呼出状」が郵送されます。相手方には呼出状+申立書の写しが送付されます。ケースにもよりますが、申し立てから呼出状が届くまでには2週間程度かかるのが一般的です。
調停期日当日は当事者がそれぞれ家庭裁判所に出向き、調停委員を介して以下のことを話し合ったり聞き取りが行われたりします。
- 離婚時に親権者をどのように決めたか
- 親権者を変更したい理由・事情
- 現在子どもがどのような状況・環境に置かれているか
- 親権者変更に対する父母の意思・意向
- 親権者変更に対する子どもの意思・希望
- 父母の生活状況・収入
- 親権者変更後の面会交流について
収入を証明するものや、子どもが育児放棄されていることを証明できるものなど、主張の裏付けとなる資料の提出を求められる場合があります。念のため、あらかじめ準備しておいたほうがよいでしょう。
1回の期日で合意に至らないときは第2回、3回と進みますが、話し合いを重ねても合意に至らなければ調停は成立せず、自動的に審判手続きへと移行します。
ただし父母で合意できたとしても、変更がそのまま認められるわけではありません。調停のあと調査官による調査が行われ、調査の結果次第で親権者変更が認められるかどうかが決まります。
調査官による調査についてはこのあと解説します。
なお、調停は平日に行われ、1回の期日にかかる時間は2時間程度です。
3.調査官による調査が行われる
調停期日とは別の日に、調査官による調査が行われます。
【調査官(家庭裁判所調査官)とは】
話し合いの内容や提出された資料を確認し、家庭訪問や子どもとの面談を行う家庭裁判所所属の職員。心理学や社会学、教育学といった専門的な知識を有する。
調査結果は裁判官・調停委員に報告され、変更を認めるかどうかの判断材料として重視される。
子どもとの面談で確認されるのは、主に家庭環境や子ども自身の希望です。そのほか、以下の点にも考慮しながら調査は進められます。
父母が合意しており、調査の結果親権者変更が相当であると認められれば、調停が成立します。調停が成立した場合については「5.親権者届変更の届出を出す」をご確認ください。
ただし、ケースによっては再度話し合いが設けられる場合もあります。
離婚後に親権を取り戻す場合の条件や方法については、以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてください。
4.調停が不成立になった場合は親権者変更審判に移行する
調停を経ても合意に至らず、調停が不成立になると「親権者変更審判」へと自動的に移行します。
一方、親権者が行方不明の場合やすでに死亡しているケースでは調停の申し立てができないため、はじめから家庭裁判所に対して審判を申し立てます。
親権者変更審判は、調停のような話し合いではなく「親権者変更を認めるかどうか」を裁判官が判断する手続きです。裁判官は、調査官が作成した「調査報告書」と「両親の主張内容」をもとに審判を下します。
とくに、裁判官は調査官の調査内容がまとめられた調査報告書を重視する傾向にあります。そのため親権者変更を求める側は、調停の時点で調査官に与える影響を考慮しながら話し合いに臨む必要があるでしょう。
調査官は、調停の場にも同席する場合があります。調停委員に対して食ってかかったり相手方を悪く言ったりなど、マイナスの印象を持たれるようなことは避けたほうが無難です。
審判で親権者変更が認められると、審判結果が記された「審判書」が送付されます。認められなかった場合は申し立てを却下され、審判書を受け取ってから14日で審判が確定します。
5.親権者変更の届出を出す
親権者変更が認められたら、「親権者変更の届出」を住所地の市区町村役場に提出する必要があります。「調停」で認められた場合と「審判」で認められたケースとでは、届出方法が少し異なるため注意しましょう。
ここでは、親権者変更の届出方法について解説します。
- 調停で認められた場合は「届出書+調停調書+戸籍謄本」が必要
- 審判で認められた場合は「届出書+審判書+審判確定証明書+戸籍謄本」が必要
調停で親権者変更が認められた場合の届出方法
調停で親権者変更が認められた場合、まず「調停調書」が自宅に届きます。親権者変更の届出は「調停成立日から10日以内」に行う必要があるため、調停調書が届いたら「調停成立日」を確認しましょう。
調停調書が届いた日から10日以内ではないことに注意が必要です。市区町村役場によって必要書類は異なりますが、多くの場合以下の書類が必要です。
必要書類については、念のため事前に確認しておくことをおすすめします。
審判で親権者変更が認められた場合の届出方法
審判によって親権者変更が認められた場合、判定確定後に「審判書」が届きます。
親権者変更の届出期限は、「審判確定日から10日以内」です。審判書が届いた日から10日以内ではないため、間違えないようにしましょう。
市区町村役場に届け出る際は、以下の書類を求められることが一般的です。
- 親権届出書
- 審判書
- 審判確定証明書
- 父母の戸籍謄本
必要書類は市区町村役場によって異なるため、念のため事前に確認しておきましょう。
6.子どもの氏を変更する
親権者変更のあと、子どもの戸籍や氏(苗字)も変更したいときは、「子の氏の変更許可の申し立て」を行う必要があります。親権者を変更しただけでは、子どもの戸籍や苗字は変わらないためです。
申立先や申立人、必要書類などは以下のとおりです。
申立先 |
子どもの住所地を管轄する家庭裁判所 |
申立人 |
子ども自身
※子どもが15歳未満ならその法定代理人 |
必要書類 |
・申立書
・子ども、父母の戸籍謄本(離婚の事項が記載されたもの)
※同じ書類は1通でよい |
費用 |
・子ども1人につき収入印紙800円分
・連絡用の郵便切手 |
参照:子の氏の変更許可|裁判所
申立人は子ども自身です。15歳未満であれば法定代理人が代わって申し立てますが、15歳以上なら子ども自身が申し立てる必要があります。
ただし、弁護士であれば子どもの年齢にかかわらず代理が可能です。
申立書の様式は、裁判所のホームページに掲載されています。子どもの年齢別に(「15歳以上の場合」・「15歳未満の場合」)それぞれ見本が用意されているため、見本を確認しながら記入するとよいでしょう。
また、子どもと父母の戸籍謄本も必要ですが、子どもは通常親権者の戸籍に入っているため父母のものをそれぞれ用意すれば問題ありません。
費用は子ども1人につき800円です。800円分の収入印紙を用意し、申立書上部にあるスペースに貼り付けましょう。
連絡用の郵便切手については、家庭裁判所によって合計額と内訳が異なります。
(例)東京家庭裁判所:84×3枚・10×3枚
管轄の家庭裁判所に確認することをおすすめします。
離婚後の親権者変更にかかる時間は1〜2カ月
親権者変更調停の申し立てから調停成立までにかかる時間は1〜2カ月程度です。
ただし「1〜2カ月程度」というのは、父母が親権者の変更に合意しておりスムーズに調停が成立した場合です。たとえばそれぞれの意見が対立し、合意に時間がかかった場合や調停期日を複数回設けたケースでは半年〜1年、対立が激しいとさらに時間がかかることもあります。
実際にどの程度かかるかはケースによって異なりますが、長期戦になる可能性があることを念頭に置いておく必要があるでしょう。
離婚後に親権者変更する場合に気をつけたいポイント
離婚後、親権者を変更する際に気をつけたいポイントは以下のとおりです。
- 調停では事実と異なることを伝えると信用してもらえなくなるため、偽らず真実を伝えるようにする
- 調査官の調査は裁判官の判断に大きな影響を与えるため、慎重に対応する必要がある
- 相手が親権者変更に反対しているなら、親権者変更に精通した弁護士に相談する
調停では真実を伝える
調停では偽りなく真実を伝えましょう。事実と異なることを伝えてしまうと話し合いの中で矛盾が生じ、調停委員や調査官から信用してもらえなくなるためです。
たとえば、以下のようなことはやめておいたほうが無難です。
- 健康状態が悪いにもかかわらず、健康であるかのように装う
- 経済的に問題がないように見せるため、収入を偽る
- 親権者変更を認めてもらうために、必要以上に相手方を悪く言う
もちろん「子どもが虐待されている」「学校に行かせてもらっていない」など、明らかに適切な監護を受けていないならその事実を伝える必要があります。
しかし、親権がほしいあまり真実を偽ると、かえって自分に不利になる可能性があるため注意が必要です。
なお、親権者変更で重視されるのは、「子どもにとってどちらの親と暮らすほうが幸せか」です。以下の条件を備え、調停委員や調査員から「親権者としてふさわしい」と思ってもらえるようにしましょう。
- 子どもに愛情を注いでいる
- 子どもが健全に生活できる環境が整っている
- 子どもを養っていけるだけの収入がある
- 親権を希望している親自身が心身ともに健康である
調査官の調査に注意を図る
調査官の調査に注意を図り、慎重に対応する必要があります。前述のとおり、調査官の調査は裁判官の判断に大きな影響を与えるためです。
調査官の調査では、子どもへの面談や家庭訪問、学校訪問などが行われ、「親がきちんと子どもの世話をしているか」という点を細かくチェックされます。
子どもが適切な環境で養育されていないと証明されれば、親権を獲得したい側は手続きを有利に進められます。
一方、子どもの親権を渡したくない側は、子どもが安心して暮らせる状態にしておかなければなりません。たとえば自宅がゴミ屋敷のような状態では、「子どもが安心して暮らせる環境」とは判断してもらえないでしょう。
ただし調停での話し合いと同様に、繕ったり偽ったりするとかえって印象が悪くなります。あくまでも実態を見てもらったうえで「きちんと子どもの世話をしている」「親権者にふさわしい」と判断されるよう、日頃から環境を整えておく必要があるでしょう。
相手が親権者変更に反対しているなら弁護を依頼する
相手方が親権者変更に反対している場合、親権者変更に精通している弁護士に相談しアドバイスをもらうとよいでしょう。
弁護士に相談するメリットは以下のとおりです。
- 調停委員に親権者変更への熱意が伝わり、高く評価してもらえる
- 必要書類の準備を任せられる
- 調停委員や裁判官、調査官とのやりとりがスムーズになる
- 相手方が弁護士をつけても不利になりにくい
弁護士に依頼する=それだけ子どもとの生活を強く望んでいるととらえられるため、調停委員からよい印象を持ってもらえる可能性があります。
必要書類の準備や、調停での対応を任せられるというメリットもあります。また、相手が弁護士をつけた場合、こちら側に弁護士がいなければ不利になるおそれがありますが、早い段階で弁護士に相談していればそういった心配をせずに済むでしょう。
依頼するとなればもちろん費用がかかり、弁護士に依頼したからといって必ずしも希望どおりになるとは限りません。しかし、弁護士に依頼することでより希望に沿った結果になる可能性が高くなります。
まとめ
離婚後の親権者変更について解説しました。
離婚後の親権者変更は可能です。
ただし、親権者の変更は子どもの生活環境や人生を左右する問題であると考えられるため、離婚時に親権者を決定するときのように父母の話し合いだけでは変更できません。
親権者を変更するためには、家庭裁判所に調停または審判を申し立てなければなりません。とはいえ、申し立てをすれば必ず認められるわけではなく、親権者変更が認められやすいケースとそうでないケースがあります。
また、調停では、「調停委員や裁判官に対して真実を伝える」「調査官の調査に注意する」といった点に気をつける必要があります。
相手方が親権者変更に反対しているなら、弁護士への依頼がおすすめです。まずは無料相談を活用し、アドバイスしてもらうとよいでしょう。
弁護士に依頼することで、親権者変更にかける想いが調停委員に伝わるほか、必要書類の準備や手続きがスムーズになります。
離婚後に親権者変更に関するよくある質問
監護者の変更ができると聞いたのですが本当ですか?
本当です。
監護者の変更は、父母の合意があれば離婚前・離婚後にかかわらず家庭裁判所を通さず行えます。
合意できなければ、家庭裁判所に「監護権者変更の調停」または「審判」を申し立てます。
なお、「親権」とは、「身上監護権」と「財産管理権」をあわせたものです。
【身上監護権(監護権)とは】
子どもに対して行える以下の権利のこと。
・身分行為の代理権:子どもが身分行為を行う際の同意権・代理権
・居所指定権:子どもの済む場所を指定する権利
・懲戒権:子どもをしつける権利
・職業許可権:子どもが就こうとしている職業を許可する権利
【財産管理権とは】
子どもの財産を管理し、その財産について法律行為を子どもの代わりに行う権利のこと。
身上監護権は親権に含まれるため、親権者が監護権を持つのが基本です。
しかし、親権者と監護者を分けて設定することも可能です。この場合の親権者は法定代理人として財産管理などを行い、監護者は子どもの身の回りの世話や教育を行います。
親権と監護権の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
親権者変更審判の確定証明書の発行方法を教えてください
親権者変更審判の確定証明書は、以下の手順で発行します。
- 家庭裁判所で申請用紙をもらう
- 必要事項を記入する
- 150円分の収入印紙を用意する
- 審判を申し立てた家庭裁判所に提出する
申請用紙は家庭裁判所に備え付けられています。
申請方法は直接でも郵送でもどちらでも構いません。郵送の場合は返信用の切手も添えましょう。
親権者変更審判で却下されましたが、親権を諦められません
どうしても親権を諦められない場合、
審判書を受け取ってから2週間以内なら「不服申し立て(即時抗告)」が可能です。申立先は審判を申し立てた家庭裁判所です。
不服申し立てをすると、高等裁判所で再審査が行われます。ただし不服申し立てをしたからといって、必ずしも結果が覆るとは限らない点に注意しましょう。
また、審判で却下されたあと、2週間を過ぎると審判は確定します。審判が確定すると不服申し立てはできません。審判結果に納得いかないときは、早めに申し立てるようにしましょう。
そのほか、時間を置いてから再度申し立てるのも1つの手段です。今回は却下されたとしても、子どもを養育しやすい環境を整えたり安定した収入を得られるようにしたりなど、親権者にふさわしいと判断されるよう工夫することで今後認められるようになる可能性があります。
親権者の再婚相手と子どもが養子縁組した後でも親権変更できる?
親権者の再婚相手と子どもが養子縁組した場合、親権変更はできません。養子縁組すると親権者と再婚相手の共同親権になるためです。
親権者を変更できるのは「単独親権」の場合であり、共同親権になると親権の変更ができなくなります。養子縁組後、子どもが親権者や再婚相手から虐待を受けたり育児放棄をされたりした場合は、以下の手続きを行う必要があります。
親権停止審判 |
親権の行使が子どもの利益を害する場合に、2年以内に限って親権を行えないようにする手続き |
親権喪失審判 |
親権の行使が子どもの利益を著しく害する場合に、親権を失わせる手続き |
いずれも、子どもの親族や児童相談所の所長、子ども本人が家庭裁判所に対して申し立てます。
2026年に施行される「共同親権」はすでに離婚していても対象になる?
2026年までの施行が決定している
「共同親権」は、2026年以前に離婚したケースにも適用されます。
【共同親権とは】
離婚後に、父母のうちどちらかではなく双方が親権を持つこと。
現行法では、離婚後は父母のうちどちらかが親権者となる「単独親権」しか認められていないが、共同親権導入についての民法改正案が2024年5月に参院本会議で可決・成立した。これにより、施行後は離婚時に「単独親権」か「共同親権」かを選択できるようになる。
ただしすでに離婚している場合、自動的に共同親権にはならないため、単独親権から共同親権に変更したいなら家庭裁判所への申し立てが必要です。
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