アコムがよく利用する裁判手続き「支払督促」とは?
アコムに対する返済を滞納していると、「支払督促」を申し立てられることがあります。
「支払督促」という手続きは、通常の訴訟と何が違うのか一見してわかりにくいでしょう。
しかし、支払督促申立書が届いたら放置は厳禁です。支払督促を無視してしまうと、最短で1ヵ月程度で財産差し押さえを受けてしまう可能性もあるのです。
支払督促とは、簡単な訴訟
支払督促とは、訴訟より簡単に差押えの権利を得られる裁判手続きです。債権者が支払督促を申し立てると、簡易裁判所の書記官は書類に不備がなければ、申立人である債権者の主張のみにもとづいて、相手方(債務者)に支払いを命じる決定を出します。
支払督促は債権者にとって以下のメリットがあります。
- 書類審査のみで、簡易裁判所の書記官権限で決定が出る
- インターネットから申し立てられる
- 手数料として納める収入印紙の額が通常訴訟の半額
- 証拠の提出が不要
令和2年の司法統計では、簡易裁判所の年間取扱事件数737,131件のうち、235,362件、30%以上が支払督促事件です。
(参考:第1-2表 事件の種類と新受 件数の推移-最高,全高等・地方・簡易裁判所)
支払督促事件の対象は金銭債権の請求のみになりますが、申し立てる債権者側としては非常に簡単・便利な手続きです。
特に多くの滞納者を抱える貸金業者などにとっては利用しやすい裁判手続きです。
支払督促手続きの流れ
支払督促手続きは、以下のような流れで進みます。
- 金銭債権をもつ債権者が相手の住所地を管轄する簡易裁判所の書記官に対して申し立てる
- 書類に不備がなければ、担当書記官が債務者に「支払督促発付」
- 債務者が支払督促を受領して2週間以内に「異議申し立て書」を提出しなければ、申立人は「仮執行宣言の申立書」を裁判所に提出
- 簡易裁判所の書記官が「仮執行宣言付支払督促」を債務者に送付
- 2週間以内に債務者から異議申し立てがなければ債権者は強制執行の申立てができる
引用:
簡易裁判所の「支払督促」手続をご存じですか? | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン
異議申し立てをすると通常訴訟に移行
債務者側は、支払督促状を受け取ったときおよび仮執行宣言の申立書を受け取ったときの2回、異議申し立ての機会があります。
債務者から異議申し立てが出ると、裁判の舞台は通常訴訟に移行します。債務額が140万円以下なら簡易裁判所、それ以上なら地方裁判所で、今後は通常訴訟として審理がおこなわれることとなります。
ただし、2回ある異議申し立てのチャンスを逃すと、審理されることなく相手の主張通りの決定が出てしまう可能性があります。
相手が強制執行の権利を得るのをできるだけ先延ばしするために、異議申立てを提出しなければなりません。
アコムの裁判を無視して決定(判決)が出てしまったら、どうなる?
「アコムから督促を受けようと、裁判を申し立てられようと、支払うお金がないのだから仕方がない」
諦めて放置してしまうのは大変危険です。裁判所から訴状や支払督促が届いたにもかかわらずそれでも無視し続けると、給料差し押さえや、最悪の場合罰金や刑事罰を受ける可能性すらあるのです。
アコムから強制執行の申し立てをされる
「仮執行宣言付支払督促」の決定が出たら、それをもとに、アコムは強制執行を申し立てられます。
2回とも異議申し立てを出さなければ、最短1ヵ月程度で相手に財産差し押さえの権利を与えてしまうでしょう。
支払督促は具体的な審理はなされないため、書類審査のみで支払決定が出てしまいます。支払金額として確定するのは、元本プラス返済日までの遅延損害金全額です。
この間も支払いを怠っている状態が続いているため、遅延損害金は加算されていることに注意しましょう。
<支払いが確定する額>
①元金
②支払督促申立て日までの確定利息
③支払督促送達日の翌日から完済日までの遅延損害金
給料差し押さえを受ける
アコムが差押え先の財産として狙うのはあなたの「給料」です。
アコムと契約する際に、債務者は勤務先と年収を記載しているため、アコムは勤務先を把握しているからです。契約時と勤務先が変わっていなければ、差押え財産として真っ先に給料が狙われるでしょう。
給料差押えを受けると、毎月手取りの4分の1が給料から差し引かれてしまいます。毎月の給料やボーナスのうち、手取り額の4分の1にあたる金額が、会社から直接アコムに送金されることになります。
例えば、手取り20万円なら5万円がアコムに支払われ、残りの15万円があなたに給料として振り込まれます。
給料差し押さえを受けると、当然会社に借金滞納がバレてしまうというデメリットもあります。
<給料差し押さえ>
①手取り額の4分の1
手取りが20万円の場合、5万円が差し押さえられる
②手取り額が44万円を超えるときは、33万円を差し引いた残りの額
手取り額が50万円の場合、17万円が差し押さえられる
差し押さえが空振りに終わっても財産開示請求の可能性あり
アコムと契約したときと勤務先が変わっていて、差し押さえが空振りに終わっても安心はできません。
差し押さえが空振りに終わると、アコムは裁判所に財産開示手続きを申し立てることができるからです。
「知れている財産に対する強制執行をおこなっても金銭の完全な弁済を得られない」とき、債権者は裁判所に対し、財産開示手続きを申し立てることができます。
(民事執行法第197条1項2号および2項2号)
ワンポイント解説
以下のような場合に、債権者は財産開示請求を申し立てることができます。
✔強制執行をしても完全な弁済を受けられなかった事実がある
✔既に知っている財産では完全な弁済が受けられない可能性がある
申立てがあると、裁判所は財産開示期日を指定して債務者を出頭させ、自分の財産の情報を開示させることができます。
懲役または罰金の罰則を受ける
2020年4月より施行された改正民事執行法により、財産開示期日の出頭を無視した債務者に対する罰則が強化されました。
- 改正前:債務者が出頭しなくても30万円以下の過料
- 改正後:債務者が出頭しなかった場合、6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金
懲役刑が追加され、また罰金の金額が上がったことで、債務者の「逃げ得」が許されにくくなりました。
アコムから訴状・申立書が届いたときの対処法
アコムから訴状や支払督促の申立書が届いたら、以下のように対処しましょう。
- 消滅時効期間を過ぎていないか、最終取引日を確認する
- 弁護士や司法書士に債務整理の相談をする
ただし、時効期間が過ぎているかどうかは、自分で判断するのは危険です。基本的には通知が届いたら一人で対応せず、専門家に相談することをおすすめします。
まずは時効になっていないか確認する
アコムから支払督促の申立書が届いたら、まずは最終取引日から時効期間が過ぎていないかを確認しましょう。
最終取引日から5年以上経過していれば、債務は時効期間を過ぎている可能性があるからです。これを「消滅時効」といいます。
貸金業者の債権は、以下のいずれか早い方を過ぎることにより消滅時効期間が経過します。
- 権利を行使することができることを知った時から5年
- 権利を行使することができるときから10年
弁護士・司法書士に債務整理の相談をする
裁判所から通知が届いたら、まずは弁護士や司法書士に債務整理の相談をしましょう。
時効期間が経過しているかどうかは、自分では判断しづらいこともあり、自分で時効援用通知を提出したとしても、相手から反論されてしまう可能性もあります。
専門家に相談し、事件を受任してもらうことで、時効の判断だけでなく、今後の債権者との交渉も任せることができます。
裁判になったら自力で交渉は不可能
訴訟や支払督促を申し立てられたら、自力で反論していくことはほぼ不可能です。
支払っていない事実は変わらないので、相手の請求の正当性は弁護士でも覆すことができないでしょう。
ただし、弁護士なら、アコムと訴訟外で交渉して任意で和解し、訴訟を取り下げてもらうことは可能です。
弁護士がアコムと任意整理の交渉をし、一括請求を分割にしてもらうこともできるでしょう。アコムとしても、一括で支払えずに破産されるよりも分割で着実に回収できる方がいいからです。
訴訟はともかく、支払督促は最短1ヵ月程度で決着してしまいます。裁判所からの通知を受け取ったら、なるべく早く弁護士に相談しましょう。
債務整理のメリット
債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産の3つの手段があり、それぞれの債務状況・収入状況によって選択すべき手段もことなります。
それぞれの手段のメリットは以下のとおりです。
- 任意整理なら弁護士が任意に債権者と交渉し、今まで発生した遅延損害金や将来利息をカットした金額で和解できるので、返済負担が軽減できる
- 個人再生は裁判所に申し立てることで、元金を5分の1~10分の1程度まで減額できる
- 自己破産は自分の財産と引き換えに、裁判所から債務の全額免除を受けられる
債務整理のデメリット
反対に、債務整理には以下のようなデメリットもあります。
- 信用情報にキズがつき、5年から10年程度新規の借り入れ、カードの発行、使用などができない(申し込んでも審査が通らない)
- 任意整理、個人再生は確実に分割払いができるだけの継続・安定した収入が必要
- 誰かに知られてしまう可能性は否定できない
- 自己破産では自分の財産を手放す必要がある
- 自己破産には一定の職業制限がある
弁護士よりそれぞれのメリット、デメリットの説明を受けたうえで、どの手段を選択すべきかを相談しましょう。
判決や決定が出る前に相談を!
判決や支払督促の決定が出る前に弁護士に相談しましょう。
アコムが判決や仮執行宣言付支払督促を得てしまったら、あなたの財産を差し押さえられる権利が発生してしまうからです。差し押さえになったら弁護士でも交渉が難しくなります。
アコムは差し押さえ財産から債権を回収ができるので、わざわざ利息や損害金をカットしてまで和解するメリットはないでしょう。
アコムから裁判を申し立てられた債務が時効になっている場合について
裁判手続きになったとしても、必ずしも支払い義務がある債務だとはいえません。アコムとの取引から5年以上経過していれば、「消滅時効を援用」して支払い義務を免れることができます。
ただし、単に5年が経過しただけで、自動的に債務が免除されるわけではありません。
時効期間が経過しただけでは相手の請求権は消えない
時効期間が経過すればアコムの請求権が自動的に消えるわけではありません。時効は債務者の「逃げ得」を目的とした制度ではないからです。
時効とは、「権利の上に眠るものは保護しない」という法律の主旨による制度です。つまり、債権があるにも関わらず何年も請求を怠っている債権者はもはや法律で保護するに値しないということです。
ただし、時効は債務者の債務からの解放を目的としているわけではないため、債務者は時効期間が経過しただけでは支払い義務は消えません。
相手の請求権を時効にするには「時効の援用」を通知し、時効経過により返済義務がないことを告知しなければなりません。
時効期間が経過していても訴訟提起→差し押さえは可能
時効期間が経過しただけでは支払い義務は消えないため、債権者は、時効期間が過ぎていても訴訟を提起し、判決をとったうえで差押えすることも可能です。
時効は債務者を保護する制度ではないため、時効援用しない限り債務者は支払い義務があるからです。
時効期間を過ぎている債権についてアコムが支払督促を申立て、あなたがそれを無視して時効を主張しなかった場合、例え時効期間が経過していても、裁判所はあなたに対して支払うよう命じる決定を下します。
アコムはその決定をもって、あなたの給料を差し押さえることができます。
裁判所の決定が出ると時効は更新されるため、例え差押えが不奏功に終わっても、アコムには10年先まであなたの財産を差し押さえる権利があります。
貸金業者の時効は最終取引日から5年
貸金業者から借りたお金は、最終取引日から5年以上借り入れ、返済をしていなければ時効期間が過ぎます。
ただし、アコムのような消費者金融が、時効期間が経過するのを許すことは考えにくいでしょう。
- 訴訟提起や支払督促で判決や決定をとって時効を延ばす
- サービサーなどに債権を譲渡する
アコム自身か、アコムから債権を譲渡されたサービサーによって、裁判手続きに持ち込まれるでしょう。
時効を援用する方法
「消滅時効援用通知書」をアコムに送ることで、時効援用ができます。
時効援用は口頭でも可能ですが、証拠を残すために内容証明郵便で送るのが一般的です。内容証明郵便は裁判になった時に強い証拠能力があるからです。
仮に時効援用後に訴訟提起されても、内容証明郵便を証拠として支払い義務を否定することができるでしょう。
<消滅時効援用通知書に記載する内容>
・自分の名前
・現住所(契約時から変更になっている場合は旧住所も併記する)
・アコムの会員番号(契約番号)
・借入残高
・消滅時効となった日付
・最終取引日から5年以上経過し、消滅時効期間が過ぎていること
・この書面で消滅時効を援用すること
まとめ
アコムから訴訟や支払督促を申し立てられ、裁判所から呼び出し状を受けたら、無視することは厳禁です。裁判所から届く通知は、今までの督促状とは違います。すぐに弁護士に相談しましょう。
無視をして判決や決定が確定してしまうと、以下のようなデメリットがあります。
- 給料などの財産差し押さえを受ける
- 元金に確定利息、支払日までの遅延損害金がアコムの債権として確定してしまう
- 例え時効期間を経過してしまっていても、時効援用が主張できなくなる
- 弁護士でも交渉が難しくなる
2020年からは民事執行法が改正され、債務者の逃げ得が許されにくくなりました。確定判決などの債務名義をとられたら、差し押さえを回避することは難しいでしょう。
最終取引日から5年経過していれば時効期間が過ぎています。しかし、何らかの理由で時効完成が妨げられている可能性もあります。
裁判手続きになったら、自分だけで対応するのは難しいでしょう。一人で悩んでいる間にも、手続きは進んでしまいます。
一人で悩まず、弁護士や司法書士に相談すれば、一人で立ち向かうよりもよい結果が得られるはずです。
アコムの裁判手続きを無視する前に知りたいリスク
裁判所から支払督促を申し立てられました。支払督促とは何ですか?普通の督促状とはちがうのですか?
支払督促は、通常の訴訟手続きを簡略化した手続きです。費用も訴訟の半額で済み、ネットで手続きをすることもできるため、貸金業者はこの支払督促を多用します。
債権者が管轄の簡易裁判所に支払督促を申し立てると、裁判所書記官が書面のみを審査し、決定を出します。
決定は債務者に送達され、債務者がそれに対して2週間以内に異議を申し立てれば通常訴訟に移行します。しかし、無視すれば債権者から「仮執行宣言の申し立て」を受けます。
それでも2週間以内に異議を申し立てないと、債権者に強制執行の権利を与えてしまいます。
支払督促は手続きも簡単で費用負担も少なく、最短で1ヵ月程度で権利が確定するため、申立てを受けたら無視せず、すぐに専門家に相談しましょう。
アコムに裁判を起こされて、判決を受けました。でも、アコムと契約した時から転職しているので、給料差し押さえは免れるでしょうか
転職して契約当時から就業先が変わっている場合、1回目の強制執行は免れるでしょう。ただし、1度強制執行を空振りすると、「財産開示手続き」を申し立てることができます。
財産開示手続きを申し立てられると、債務者は裁判所から呼び出しを受け、自分の財産について正直に回答しなければなりません。
出頭を拒絶すると、6ヵ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金に処せられる可能性もあります。
アコムに裁判を起こされたのですが、取引があったのはかなり以前です。時効になっているか確かめるにはどうしたらいいでしょうか?
貸金業者の債権は、最後の取引日から5年経過していれば、「消滅時効を援用」して支払いを拒絶することができます。
ただし、時効期間が本当に過ぎているかどうかは、自分で正しく判断することは難しいでしょう。
まずは専門家に相談し、もし時効になっているとしたら、代理人として「時効援用通知」を内容証明郵便にて送ってもらいましょう。
最短即日取立STOP!
一人で悩まずに士業にご相談を
- 北海道・東北
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