催告書と督促状の違い
借金を滞納しているとき、債権者から郵送される取り立て書面の内容には常に注意しなければいけません。債権者からの取り立ての状況から、債務者が現在置かれている状況の危機レベルを判断することができるからです。
そこで、債権者から郵送される「督促状」「催告書」とはどのようなものなのか、両者の違いについて具体的に見ていきましょう。
【督促状と催告書の違い】
|
督促状 |
催告書 |
送付時期 |
滞納日数の短い段階
(数日後~2ヶ月程度) |
滞納日数の長い段階
(2ヶ月頃~) |
郵便の種類 |
普通郵便 |
内容証明郵便 |
遅延損害金額 |
少額であるのが一般的 |
高額になるのが一般的 |
法的措置の予告 |
なし |
あり |
催告書と督促状の違いを端的にまとめれば、「記載されている内容」「送付までの期間」「郵送方法」が挙げられます。
ここからは、催告書と督促状の違いとしてこれらについて解説していきます。
催告書と督促状の違い①:記載されている内容
催告書と督促状の違いとしては、記載されている内容が挙げられます。
|
記載されている内容の例
|
催告書
|
・宛先
・これまでの請求履歴・具体的な日時
・今回の請求額(遅延損害金を含む)
・支払い期限・支払い方法・連絡先
|
督促状
|
・宛先
・表題(タイトルが明示されて警告文としての意味合いが強くなります)
・今回の請求額(遅延損害金を含む)
・支払い期限・支払い方法・連絡先
・期限までに支払いがない場合に法的措置に踏み切る旨の警告文
|
催告書と督促状はどちらも支払いを求める内容が記載されている書面です。しかし、催告書には法的措置に踏み切る旨も記載されており、督促状よりも緊急度が高いともいえます。
催告書と督促状の違い②:滞納から送付されるまでの期間
催告書と督促状の違いとしては、滞納から送付されるまでの期間が挙げられます。
督促状は、延滞日数が短い段階で債権者から郵送される取り立て書面です。あくまで目安ですが、滞納数日後~滞納2か月程度で督促状は送付されます。
一方、催告書は、延滞日数が長くなった債務者に郵送される取り立て書面であり、督促状の次のステージとして郵送されます。そのため、督促状が届いた後も滞納が続いている場合に催告書は送付されるのです。
つまり、督促状で取り立てをしても反応がなかった「悪質な債務者」に対して厳しい警告の意味を込めて催告状は通知されるものです。
催告書と督促状の違い③:郵送方法
催告書と督促状の違いとしては、郵送方法が挙げられます。
督促状の場合、一般的な郵送物と同じように普通郵便で送付されます。一方、催告状は内容証明郵便で送付されます。
内容証明郵便とは、「いつ・誰が、誰に・どのような内容の文書を送ったのか」を公的に証明できる郵便のことです。内容証明郵便は通常の取引や日常生活では使われない郵便であり、普通郵便よりも債務者に本気度やプレッシャーを与える目的もあると考えられます。
つまり、催告状は督促状よりも緊急度が高い場合に送付され、法的措置が取られてしまう手前に送られる書面ともいえます。
催告書や督促状が届いた際には架空請求ではないかを確認しておくべき
近年、金融機関や債権回収会社を名乗った悪質業者が、架空の債権を請求する詐欺・架空請求被害が急増しています。架空請求であれば催告書や督促状に記載された内容通りに支払いを行う必要はありません。
「催告書や督促状が届いたけど身に覚えがない」のような場合には、まず架空請求ではないかを考えるようにしましょう。
なお、債権回収会社は法務大臣の許可を得ていなければ営業できないため、許可の有無で詐欺・架空請求かどうか見分けることも可能です。
正規の債権回収会社は、法務省の公式ホームページ内の「債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧」に掲載されています。
催告書が届いたら無視するのは絶対にNG!放置した場合に生じるリスク
架空請求の場合は除きますが、金融機関や債権回収会社から催告書が届いた際には、絶対に無視をしないようにしましょう。前述した通り、催告書は督促状よりも緊急度が高い場合に送付される書面であり、言い換えれば「法的措置がとられる一歩手前の状態」とも言えるためです。
また、催告書が届いてもなお滞納が続く場合には、下記のようなリスクも生じてしまいます。
- 借金の残債を一括請求される
- 最終的には財産が差し押さえられる
それでは、それぞれのリスクについて具体的に見ていきましょう。
ワンポイント解説
催告書が届いた段階ではいわゆるブラックリスト入りになっていると考えられる
借金の滞納がつづくと信用情報に滞納の情報が登録されます。そして、長期延滞となった場合には、いわゆる「ブラックリスト入り」の状態になると一般的にはいわれています。
催告書が届いた場合、すでに長期延滞が起きていると予測されます。そのため、催告書が届いた段階ではいわゆるブラックリスト入りになっていると考えられるのです。
ブラックリスト入りになると、クレジットカードやローンなどの審査に通りづらくなってしまい、滞納が続けば続くほどその期間は長期化します。
ブラック状態を少しでも早く解消するためにも、催告書が届いた場合には滞納を解消するための対策を講じるようにしてください。
借金の残債を一括請求される
催告書を無視してしまうと、後に借金の残債を一括請求されてしまいます。
残債の一括返済を求められる理由は、それまで債務者に与えられていた「期限の利益」を喪失するためです。期限の利益を喪失すると、ふたたび分割払いをすることができなくなってしまいます。
たとえば、「あと1ヶ月だけ待ってもらえば延滞分のお金を支払える」という状況でも、催告書を無視したために先に残債を一括請求されてしまうと、延滞分の支払いだけでは滞納状況を解消できなくなります。催告書を無視したばかりに、分割払いを継続するチャンス自体を失ってしまう可能性があるのです。
したがって、生活再建の選択肢をできるだけ広く残しておくために、残債の一括返済を求められる前に債権者に連絡をして、返済方法・返済時期を再交渉する・少なくとも「返済意思があること」を示しておくのがポイントです。
ワンポイント解説
債務者のなかには、「催告書の中身を確認し忘れていた間に残債の一括返済を求められていた」という人もいるかもしれません。この場合、数週間以内に裁判所から強制執行手続きの開始に向けた支払督促などの書面が届くことになるので時間の猶予は限られています。
債権者に直接連絡をしても支払いを待ってもらえない可能性が高いので、すみやかに弁護士まで相談するのが得策です。
最終的には財産が差し押さえられる
催告書で指定された支払い期日までにお金を用意できず、しかも、債権者に対して一切連絡もしないままの状態がつづくと、最終的には強制執行が実行されて、債務者の財産・給与などが差し押さえられます。
強制執行に至るまでのステップは次の通りです。「ある日いきなり執行官が自宅に来て財産などが差し押さえられる」というわけではありませんが、悠長に構えている余裕はありません。
- ①(債権者から)督促状の郵送
- ②(債権者から)催告書の郵送
- ③(債権者から)残債の一括請求
- ④(裁判所から)支払督促・訴状
- ⑤(裁判所から)仮執行宣言付支払督促
- ⑥強制執行の実行
強制執行では、未払いの借金を回収できるだけの財産・給与が差し押さえの対象になります。たとえば、強制執行の対象になる財産は次の通りです。
強制執行の対象 |
デメリット |
預金口座 |
・預金残高不足で他の支払い(公共料金など)に影響が出る
・預金口座が凍結するリスクが発生する |
給与 |
・給与の1/4が差し押さえ(手取り44万円以上なら33万円を超える部分全額)
・会社が強制執行手続きに巻き込まれるので迷惑がかかる可能性がある |
財産 |
・マイホーム、自動車、自宅内の動産は価値が20万円以上のものが原則すべて対象
・同居家族に迷惑がかかってしまう可能性がある |
また、債権者側が法的措置に踏み出してしまうと、強制執行を回避して生活再建を目指すまでのハードルが高くなるため、債権者から催告書が郵送された今のうちに債務整理などの方法に着手することを強くおすすめします。
催告書が届いたら滞納を解消するための対策を講じる
債権者からの催告書を無視すると回復し難いリスクが発生するおそれがあるため、これらのリスクが現実になる前に至急対策に踏み出さなければいけません。
そのため、催告書が届いたら滞納を解消するための対策を講じるようにしてみてください。
- 滞納を解消するためにお金を用意する
- 債権者に分割払いの相談を行う
それでは、それぞれの対処法について具体的に見ていきましょう。
①滞納を解消するためにお金を用意する
催告書で指定された期限までにお金を用意できれば、その時点で滞納は解消できます。
たとえば次のような方法で、残債を一括請求されたなら全額を、未払い分の請求だけなら滞納分を用意してください。
- 家族・知人に融資を頼む
- 生命保険の解約返戻金を返済に充てる
- 不用品などを処分する
- 単発アルバイトなどで収入を増やす
自力で滞納を解消するときのポイントは、生活に支障が出ない範囲での努力でお金を用意できるかを見極めることです。生活費を無理に切り詰めて滞納分の支払いを済ませたところで、翌月以降の借金生活に支障が出るのが明らかだからです。
ふたたび滞納が発生すると、「延滞癖のある悪質な債務者」として、以前よりも厳しい取り立てが行われるリスクさえ生じかねません。
したがって、自力完済を目指すのは、「健全な生活と返済を両立し続けられる」という確証がある場合だけにしておきましょう。
滞納を解消するために他社から借り入れをしてはいけない
「催告書・督促状で指定された期限までにお金を用意しなければいけない」という気持ちの焦りが生じたとしても、他社からの借金に頼るのはやめましょう。他社からの借り入れで一時的に延滞を解消できたとしても、翌月からは追加融資分の返済がスタートするだけだからです。
借金問題を解決するにあたって、「借金返済のために借金を繰り返す」という考え方は危険です。多重債務状態におちいって破綻するのが目に見えています。
したがって、自力でお金を調達できない限りは、自力完済を目指すのはやめましょう。
闇金や違法取引に手を出してはいけない
催告書を受け取った人のなかには、すでにブラックリスト入りになっており、消費者金融などの貸金業者から融資を受けるのが難しい人もいるかもしれません。
「誰にも手助けしてもらえない」という孤独な状況に追いこまれると、自分に手を差し伸べてくれる存在は頼りがいがあるような錯覚を覚えることもあるかもしれません。
ただし、ブラックリストに登録された債務者に積極的に融資をするような業者は闇金の可能性が高いので関わってはいけません。また、SNSの個人間融資や口座売買などの合法性に疑いのある取引も危険です。
たとえば、闇金や違法取引と関わりをもってしまうと、次のようなリスクが発生します。
- ①違法な利息を請求される
- ②違法な取り立て行為を受けて危害が及ぶ
- ③個人情報が転売されて闇金の餌食にされる
- ④債務者自身が刑事訴追されるおそれが生じる
「楽をしてお金を手に入れられる」「誰も知らない裏技がある」などの甘い誘惑はすべて嘘だと考えて、騙されないようにしましょう。
債権者に分割払いの相談を行う
催告書が届いたときにするべきことは、債権者に連絡をして分割払いの相談を行うことです。
もちろん、すでに残債の一括返済を求められている場合には分割交渉は簡単ではありません。
とはいえ、まだ残債の一括請求を受けていない段階なら、催告書が届いた段階ですみやかに債権者に連絡をすれば、分割払いの継続を認めてもらえる可能性はあります。
分割払いの継続を希望する場合には、次のポイントを押さえて交渉を進めるのがおすすめです。
- ①返済が遅れていることを丁寧に詫びる
- ②今後の返済計画・返済可能性について具体的に説明する
- ③「返済の意思」を明確に示す
催告書を郵送してくるということは、近い将来債権者が法的措置に踏み出すことが想定される状況です。
ひとまず分割払いを継続できることを許可してもらえれば、その間に家計を整えるなどの時間稼ぎをすることができます。
返済が滞っている段階で債権者に連絡するのは気が進まないかもしれませんが、債権者側の強硬手段に対抗するためにも、まずは勇気をもって催告書記載の問い合わせ先までご連絡ください。
ワンポイント解説
「返済意思を示すこと」は刑事訴追回避にも役立つ
「約束通りに返済しない・取り立ても無視する」という債務者は、「最初から返済するつもりがないのに借金をした」とみなされるおそれがあります。
これは詐欺罪に該当し得るため、刑事訴追されるリスクが生じます。少なくとも返済の意思があることさえ示しておけば、詐欺罪の立件は回避できるでしょう。
催告書の期限が過ぎたときにも連絡しよう
債務者のなかには、「催告書を開封したときには指定期日を過ぎてしまった」という場合もあるかもしれません。
もちろん、指定期日を過ぎている時点でリスクはかなり増大してしまっていますが、今からでも債権者に連絡を入れることは無駄ではありません。
返済意思があることを示して誠意を見せれば、債権者が法的措置に踏み出すタイミングを遅らせられる可能性も考えられます。
催告書や督促状が届いても返済の見込みがないなら債務整理を視野に入れて弁護士に相談する
督促状・催告書が届いた段階で、すでに借金返済が完全に行き詰っているという場合もあるでしょう。
どうしても借金を返済できる見込みがない場合・これ以上返済を継続する気力がわかない場合には、債務整理の利用をご検討ください。
債務整理とは、国が認めた借金減免制度のことです。合法的に借金問題を改善して生活再建を目指すことができます。
次のように、債務整理には自己破産・個人再生・任意整理の3つの手続きが用意されており、それぞれ特徴が異なるため、自分の生活再建に適した手続きを弁護士に選択してもらいましょう。
債務整理手続き |
特徴 |
自己破産 |
・現在無職の債務者でも借金の免責を狙える
・債務者名義の財産が処分される
・ギャンブルが原因の借金など、債務者の状況次第では手続きが複雑になる
・職業制限や移動制限など、手続き中に不利益が生じる |
個人再生 |
・借金元本を減額したうえで3年の分割払いに切り替えられる
・住宅ローンの特則を利用すれば、住宅ローンの担保権が実行されずに済む
・裁判所の手続きが複雑 |
任意整理 |
・一般的には将来利息をカットしたうえで分割払いを認めてもらえる
・裁判所を利用せずにスムーズに手続きを進められる
・元本自体は減額されない点に注意が必要 |
また、債務整理を弁護士に依頼すれば、自分に適した手続きを選択してもらえるだけではなく、次の3つのメリットも享受できます。
- 債務整理を依頼すれば督促状・催告書の送付が止まる
- 税金などの他の支払いも含めたトラブルの解決につながる
- 借金問題は無料で弁護士に相談できる
それでは、弁護士に借金問題を相談するメリットについて、具体的に見ていきましょう。
債務整理を依頼すれば督促状・催告書の送付が止まる
債務整理を依頼すれば、督促状・催告書の送付がストップします。弁護士が債権者に送付する受任通知には、債権者の取り立てを止める効果があるからです。
お金が用意できない状況で繰り返される債権者からの督促はストレスになるものです。
受任通知の送付によって取り立てのストレスから解放されれば、精神的に安定した環境のなかで今後の生活再建のために準備を進められるでしょう。
税金などの他の支払いも含めたトラブルの解決につながる
弁護士に相談できるのは借金問題だけではありません。弁護士は、税金の滞納分も含めて、根本的なところから債務者の生活再建の手助けをしてくれます。
たとえば、税金の滞納分は非免責債権に該当するので自己破産を利用しても免責されません。借金総額に占める未払い税金額の割合が高ければ自己破産をするメリットは小さいため、任意整理・個人再生の道を模索してくれるでしょう。
また、借金の滞納とは異なり、税金の未払いが発生すると、いつ財産などに対して滞納処分が実行されるか分からない危険な状態です。滞納処分を回避するには行政機関と交渉をする必要がありますが、弁護士は行政等との交渉方法について具体的なアドバイスをしてくれます。
借金問題を抱えている債務者は、税金や年金保険料などの支払いにも苦労をしていることが多いです。借金問題に強い弁護士なら、今までの経験・ノウハウから適切な生活再建方法を示してくれるので、安心して相談できるでしょう。
借金問題は無料で弁護士に相談できる
借金問題を弁護士に相談するとき、相談料がいくら必要なのか不安に感じる債務者は多いでしょう。
借金問題に強い弁護士なら、相談は無料で対応してくれることが多いです。また、債務整理費用の分割払いや法テラスなどにも対応してくれることもあります。
したがって、「お金がないから相談もできない」と諦める必要はないので、専門家の力を頼ることも検討してみてください。
まとめ
催告書は督促状とは状況が違います。
比較的延滞日数の浅い段階で郵送される督促状とは異なり、催告書は深刻な延滞状況にある債務者に通知されるものです。法的措置が予告されているにもかかわらず無視すると、近い将来、強制執行が実行されて財産・給与などが差し押さえられてしまうでしょう。
つまり、催告書を受け取った債務者には時間が残されていないということです。自力で延滞を解消できないのなら、すみやかに弁護士に債務整理を相談してください。
借金問題はかならずといっていいほど解決できます。解決に向けて動き出すのが早いほどスムーズに手続きを進められるので、まずは弁護士までお問い合わせください。
催告書と督促状についてよくある質問
催告書と督促状の違いは何ですか?
催告書は延滞日数が長期化した悪質な債務者に郵送される取り立て書面のこと、督促状は延滞日数の浅い段階で郵送される取り立て書面のことです。催告書は内容証明郵便で送付されることが多く、将来的な法的措置が警告されます。
債権者から催告書が届いた場合、どうすれば良いのでしょうか?
催告書が届いたら、なるべく早めに滞納分を支払いましょう。滞納分を支払えないと、裁判所に申し立てられて財産を差押えられる恐れがあります。
催告書が届いた後、すぐに滞納分を支払えば、とくに問題はありませんか?
催告書が届いてすぐに支払いをおこなえば、差押えなど法的手段を取られるケースは少ないでしょう。ただし、過去にも滞納を繰り返しているなど、個々の事情によっては残債の一括返済を請求される恐れもあります。
万が一、差押えをされてしまうとどうなるのでしょうか?
万が一差押えを実行されると、現金や家・車・株式などの資産を手放す必要があります。また、給料も毎月1/4を完済まで差押えられ続けます。
催告書の請求額を払えない場合、なにか対応策はありますか?
返済ができない場合は、弁護士に相談して債務整理をおこないましょう。債務整理をすれば、借金の減額・免除や、支払督促のストップができます。→
【相談無料】厳選された「債務整理に力を入れる弁護士」はこちら
最短即日取立STOP!
一人で悩まずに士業にご相談を
- 北海道・東北
-
- 関東
-
- 東海
-
- 関西
-
- 北陸・甲信越
-
- 中国・四国
-
- 九州・沖縄
-