奨学金を利用している人のなかには、返済遅延を起こしたために一括請求がきた人もいるかもしれません。その場合、「奨学金の一括請求が払えないときはどうしたらいいのか」のように考えることでしょう。
奨学金の一括請求がきた場合、今までのように分割で返済をすることは原則認められません。そのため、一括請求がきた場合には、奨学金の残債を一括で支払う必要があります。
一括請求の費用が払えない場合、「資金を工面して残債を一括で支払う」「返還の猶予や免除の制度を利用する」といった対処を取るようにしてみてください。
なお、奨学金の一括請求が払えないからといって、放置をするのは絶対にやめましょう。放置をすると、連帯保証人に一括での支払いの請求がいくうえに、最終的には法的措置をとられて財産が差し押さえられることになりかねません。
当記事では、奨学金の一括請求が払えないときの対処法とともに、滞納のリスクや返済できない時の最終手段も解説していきます。奨学金の一括請求が払えない場合には参考にしてみてください。
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奨学金の一括請求がきたら分割返済は原則できない
奨学金の一括請求が来た場合、今までのように分割で返済することは原則できません。一括請求がきたということは、「期限の利益」を喪失している状態であり、契約書上でも一括返済が義務付けられています。
返還期限が到来していない分を含め、返還未済額の全額、利息および延滞金を返還していただきます。
引用元 日本学生支援機構「機関保障」
「期限の利益」を簡単に説明すると、借金の返済を分割で行える利益のことです。期限の利益は、問題なく返済を続けていれば守られることになりますが、返済遅延のような契約の違反行為を行うことで喪失してしまいます。
期限の利益が喪失してしまうと、分割返済が認められなくなります。そのため、奨学金で返済遅延などを起こすと、一括請求がくるケースがあるのです。
奨学金の一括請求を無視することには様々なリスクがある!一括請求からの流れは?
奨学金の一括請求がきた人のなかには、請求額を用意するのが難しい人もいることでしょう。その場合、奨学金の一括請求を放置・無視することを考えるかもしれません。
しかし、奨学金の一括請求を無視することには様々なリスクがあるため、絶対に避けてください。
ここからは、奨学金の一括請求を無視するリスクを解説していきます。一括請求がきてから流れとともに解説していくため、奨学金の一括請求がきた場合には可能な限り早く対策を講じておきましょう。
- 連帯保証人にも一括請求される
- 裁判所から「支払督促」が送られてくる
- 仮執行宣言付きの支払督促が送られてくる
- 強制執行となり財産が差し押さえられる
①連帯保証人にも一括請求される
奨学金を借りるときには必ず連帯保証人を設定しなければいけませんが、多くの方が両親のどちらかを選ばれているのではないでしょうか。この場合、奨学金を借りた本人が返済をしないと、連帯保証人に支払い請求がいくため注意してください。
ワンポイント解説
連帯保証人は主債務者と同じく抗弁権がない
連帯保証人はただの「保証人」とは異なり、債務不履行後に日本学生支援機構から請求があった場合、基本的に無条件で全額の支払義務を負うことになります。返済を断ることもできなければ、「主債務者に請求してください」と言うこともできません。
機関保証のときは「日本国際支援協会」が代位弁済を行う
保証人を立てずに機関保証で奨学金を借りた場合、返済遅延が起きると代位弁済が行われます。代位返済とは、返済遅延が起きた場合に、保証会社などの第三者が代わりに返済をする制度のことです。
そして、奨学金で代位弁済となった場合、保障機関である「日本国際教育支援協会」から一括請求がきます。
代位弁済がなされた場合、(公財)日本国際教育支援協会から、代位弁済額の一括請求を行います。
引用元 日本学生支援機構「機関保障」
親などが連帯保証人になっている場合であれば、立て替えてもらった金額の返済が必要でもある程度の融通が効くと思われます。しかし、保障機関であればそうはいかないため注意が必要です。
②裁判所から「支払督促」が送られてくる
奨学金の一括請求を放置していると、いずれ法的措置がとられます。この場合、まずは債権者が裁判所に支払督促を申し立て、それが受理されれば裁判所から「支払督促申立書」が特別送達で送られてきます。
特別送達とは、支払督促を受け取ったことを証明するための送達方法のことです。仮に、書類を確認せずに処分してしまったとしても、あなたが支払督促を受け取ったものとみなして手続きが進められます。
支払督促申立書には、奨学金の一括請求に関する情報が記載されています。「督促異議申立書」も同封されており、受け取りから2週間以内であれば異議申し立てを行えます。
異議申し立てをしなければ、法的措置が次の段階に進む流れです。
③仮執行宣言付きの支払督促が送られてくる
支払督促の時点で異議申し立てをしなければ、次は裁判所から「仮執行宣言付きの支払督促」が送られてきます。
この書類には、「このタイミングで異議申し立てがなければ、すぐにでも強制執行を実行できる」という意味合いがあります。仮執行宣言付きの支払督促が届いた後は2週間以内に裁判所に出向けば異議申し立てができますが、期限を過ぎると債権者は強制執行ができる状態になります。
言い換えれば、差し押さえを回避するには、このタイミングが最後となります。
④強制執行となり財産が差し押さえられる
仮執行宣言付きの支払督促に異議申し立てをしなければ、最終的に強制執行となり財産が差し押さえられます。実際、平成26年度で320件、平成27年度で498件の強制執行を実行されています。
参考:日本学生支援機構「返還業務の状況(平成27年度)P5」
強制執行が始まって真っ先に差し押さえられるのは「預貯金」です。その次にあなたの「給与」が差し押さえられるでしょう。「換金性の高いものから順番に差し押さえられる」と考えておいてください。
また、預貯金を差し押さえられることによって、銀行口座が一時的に凍結します。差し押さえの解消があるまでは口座を利用できないケースもあり、「公共料金の引き落としができない」「給料を受け取れない」といった事態に陥る恐れもあります。
なお、差し押さえの最中であっても銀行口座の開設は可能です。改めて開設した口座を引き落とし先に変更するなど、煩わしい手続きは増えますが、各種支払いが滞ればさらに最悪の事態に陥るのでかならず行いましょう。
ワンポイント解説
給与のうち差し押さえられる金額について
給与の差し押さえは、1か月あたり手取り額の1/4までと定められています。たとえば、手取り額20万円であれば5万円を上限に差し押さえが可能。また、手取り給料が44万円を超えているときは、33万円を超えた額すべてを差し押さえ可能です。
奨学金の一括請求による差し押さえを回避する方法
奨学金の一括請求を放置すれば、いずれ法的措置をとられて、場合によっては財産を差し押さえられます。放置すればするほどリスクは大きくなるため、奨学金の一括請求がきた場合には可能な限り早く対策を講じるのが大切です。
奨学金の一括請求による差し押さえを回避する方法には、下記が挙げられます。
- 資金を工面して残債を一括で支払う
- 返還の猶予や免除の制度を利用する
ここからは、奨学金の一括請求による差し押さえを回避する方法をそれぞれ解説していきます。
資金を工面して残債を一括で支払う
請求期限までに奨学金の残債を一括で返済できれば、強制執行は回避できます。そのため、請求期限までに請求されている金額を工面する方法が差し押さえ回避の対策の1つになります。
たとえば、自宅にある不用品などを売却して資金を工面することなどが有効な資金確保の方法となります。
ただし、絶対に行ってはならないのが、消費者金融や闇金などからの新たな借入です。現在返済が滞っている状況で新たな借金を行うと、新たな借金トラブルを招くだけでなく、最終的には自己破産しか選択肢が残されていない、といった状況に陥ることも考えられます。
もし残債の一括請求が難しい場合は、弁護士や司法書士に相談して、後述する「債務整理」を行うことを検討してみてください。
返還の猶予・免除・減額の制度を利用する
奨学金の制度には、返済の猶予・免除・減額を認めてもらえる制度もあります。これらの制度を利用することで、奨学金の一括請求がきている状態を解消できる可能性があります。
奨学金の返済に関する制度については、日本学生支援機構「返済が難しくなった場合」のページから確認できます。
奨学金の一括請求による差し押さえを回避したい場合、自身の状況で利用できる制度がないかを確認してみてください。
奨学金の一括請求が払えないなら最終手段として債務整理を検討する
奨学金の一括請求がきており、請求額を払える状態ではないうえに回避のための対策を講じれない場合、最終手段として債務整理を検討してみてください。
債務整理とは、借金問題を解決するための手続きのことです。インターネットでは「国が認めた借金救済措置」などと呼ばれており、奨学金も債務整理の対象となります。
債務整理を行うことで、以下のメリットが得られます。
- 強制執行(給与や財産の差し押さえ)を回避できること
- 一般的には分割での返済が認められること
- 残債の減額ができること(もしくはゼロにできること)
- 取り立てや返済を一時的にストップできること
債務整理には、「任意整理」「個人再生」「自己破産」の手続きがあり、いずれも特徴が異なります。
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概要
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任意整理
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債権者と交渉をして、返済条件を見直してもらうための手続き。利息や遅延損害金のカットが認められるのが一般的。
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個人再生
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借金を1/5〜1/10程度に減額するための手続き。裁判所を通した手続きが必要。
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自己破産
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借金を帳消しにするための手続き。裁判所を通した手続きが必要。
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※各手続きの名称をタップ・クリックすることで、詳しく解説しているページを確認できます。
たとえば、任意整理は債権者と交渉をして返済条件を見直すための手続きです。一般的には元金のみを分割で返済していくことになるため、任意整理をすれば一括請求がきていても奨学金の分割返済が例外的に認められる可能性もあります。
ただし、債務整理をすると、いわゆる「ブラックリスト入り」になるデメリットがあります。最長で5年〜7年の間はクレジットカードやローンの審査に通りづらくなり、今後の生活に悪影響を及ぼすこともあるため、債務整理をする場合には慎重な判断が重要です。
法律事務所では、初回のみ30分無料相談に対応しているのが一般的です。自身の状況で債務整理をするべきかを検討するためにも、まずは弁護士や司法書士に相談するのがよいでしょう。
まとめ
通常、奨学金の返済は分割で行いますが、返済遅延が起きた場合には一括請求がくるケースがあります。その場合には奨学金の残債を一括で支払わなければならず、分割返済は基本的に認められません。
そして、一括請求が払えないからといって支払いを放置してしまうと、最終的には強制執行となり財産の差し押さえに発展します。
ほかにも滞納のリスクはあるため、「資金を工面して残債を一括で支払う」「返還の猶予や免除の制度を利用する」といった回避の対処法をとっておくようにしましょう。
なお、借金返済ができない時の最終手段として債務整理という方法があります。「手続きをするといわゆるブラックリスト入りになる」などのデメリットはありますが、奨学金の減額・免除が認められるため、どうしても奨学金の返済ができない場合には検討してみるのもよいでしょう。
奨学金一括請求に関するQ&A
奨学金をどうしても返済できないときは電話をすれば待ってもらったり分割を認めてもらえたりしますか?
一括請求が来ている現在、電話をかけたところで相談に乗ってもらえる可能性は極めて低いです。しかし、誠心誠意対応することで支払猶予や再分割を認めてもらえる可能性も残っています。まずは、日本学生支援機構へ相談してください。
現在差し押さえが始まっているのですが、止める方法はありますか?
差し押さえが始まっていたとしても、債務整理をすることで止められる可能性があります。
奨学金は債務整理の対象になりますか?
奨学金は借金ですので、債務整理の対象になります。ただし個人再生の場合は残債が減額される代わりに減額分が連帯保証人へ請求されてしまいます。また、自己破産は残債が無くなる代わりに残債全額が連帯保証人へ請求されてしまいます。請求された残債または減額分を連帯保証人が一括返済できない場合は、連帯保証人も債務者同様に債務整理が必要です。
奨学金は何ヶ月滞納するとやばいのでしょうか?
やばい基準が明確に断言できませんが、一般的に3か月の遅延で「ブラックリスト入り」になると言われています。そのため、「3か月の滞納でブラックリスト入りとなる可能性がある」と考えておいても良いでしょう。
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