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2025年06月現在

自己破産した人の体験談!自己破産を検討している人のための完全ガイド

借金問題で自己破産をするしかないと考えているものの、「自己破産をした人の末路は悲惨」「自己破産をしたら人生の終わり」と聞いて自己破産に躊躇している方も多いのではないでしょうか。

たしかに、自己破産をすると差し押さえ禁止財産を除き、原則20万円以上の価値がある本人名義の財産は没収されます。

しかし、借金の返済義務は全額免除されるため、生活を立て直すための選択肢の一つとして検討されるケースもあります。

さらに、自己破産は手続きの開始が決定すると、借金の取り立てが法的に止まり、給与や口座の差し押さえといった強制執行も中断されるのが原則です。

そのため、精神的な負担の軽減につながり、自己破産後の生活はそれまでの借金苦の生活よりもずっと楽なものになる可能性があります。

実際、当サイトが自己破産を経験した20〜60代以上の男女29名に行ったアンケートでは、約8割の方が「後悔していない」と回答していました。

また、自己破産後の生活についても、多くの方が「楽になった」と感じている結果が出ています。もちろん、自己破産にはデメリットも存在しますが、必要以上に恐れるのではなく、制度の仕組みを正しく知ったうえで、冷静に判断することが大切です。

本記事では、自己破産を検討しているものの不安で前に進めないという方に向け、実際に自己破産をした人の体験談や自己破産のデメリット、よくある誤解について解説していきます。

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250万円の借金を自己破産した人の体験談

まずは、250万円の借金を自己破産した女性の体験談をご紹介します。

項目 体験談を語っていただいた方の情報
借入額 250万円
年齢 28歳
性別 女性
収入 300万円

うつ病と借金で限界に。生活を立て直すため自己破産を決意

正社員として働きながら生活を続けていましたが、上司からのパワハラが原因でうつ病を患って退職してしまい、収入が途絶えてしまいました。

元々浪費癖があって貯金もほとんどなかったため、生活費や治療費を補うために消費者金融からの借り入れやリボ払いを利用するように。その後はパートで働き始め、うつ病の治療を続けながら借金の返済を続けていました。

しかし、正社員で働いていたころよりも収入が下がったため、返済のための借金を繰り返す自転車操業状態に陥ってしまい、最終的には250万円まで借金が膨らんでしまいました。

それからうつ病も悪化してパートも続けるのが困難になり、このままでは生活が立ち行かなくなると判断したため、弁護士に相談して自己破産することを決断しました。

自転車操業とは
「収入よりも支出が上回っており、資金繰りをまわすために常に別所からの借金で次の支払いを補っている状態。

書類準備は大変だったが、自己破産で心に余裕が戻った

自己破産中は、うつ病を患って体調がすぐれない中で必要な書類を準備するのに苦労しました。

しかし、自己破産を弁護士さんに依頼してから借金の督促や返済に追われることがなくなったため、自己破産前よりも精神的にはだいぶ楽になりました。

自己破産が転機に。生活保護と治療で立て直しへ

自己破産後は生活保護の受給が認められ、生活保護費で生活しながらうつ病の治療に専念しています。自己破産前はうつ病と借金問題で心身共に限界を迎えており、一時は自殺を考えるほど苦しかったです。

しかし、自己破産によって借金に追われる生活から解放されたことで、精神的にもだいぶ楽になりました。うつ病も治療の甲斐あって、徐々にですが快方に向かっています。今では最悪のケースを選択せず、自己破産をして本当に良かったと思っています。

無理に抱え込まず、自己破産で再出発する道もある

借金を抱えていて生活が立ち行かなくなっている方は、自己破産も視野に入れて早めに弁護士に相談した方がいいと思います。

私は自己破産にネガティブなイメージを持っており、当初は無理をしてでも自力で完済することを目指していましたが、うつ病の症状や生活は苦しくなる一方で、最後の方は人生を終わらせることも本気で思っていました。

しかし、思い切って自己破産を決断した結果、生活保護でなんとか生活を送っている状況ではあるものの、借金から解放されてうつ病も徐々に回復しており、人生に希望を見いだせるようになりました。

今では最悪の選択をせず、自己破産をして本当に良かったと思っています。

200万円の借金を自己破産した人の体験談

次に、200万円の借金を自己破産した女性の体験談をご紹介します。

項目 体験談を語っていただいた方の情報
借入額 200万円
年齢 36歳
性別 女性
収入 170万円

離婚と収入減で返済が限界に。子どもを守るため自己破産を決断

生活費や子供の教育費を工面するため、複数の消費者金融から借り入れをしていました。

しばらくは返済を続けていましたが、夫との離婚がきっかけで自分の収入だけでは借金の返済を続けるのが困難になりました。

当初は任意整理を希望していましたが、弁護士に相談した結果、子供を育てながらこれ以上借金を返済し続けるのは困難ということで自己破産を選択しました。

任意整理とは
借金の返済が難しくなったときに、将来の利息や遅延損害金のカット、毎月の返済額や返済期間の見直しについて、裁判所を通さずに貸金業者と直接交渉する手続き。

弁護士や司法書士などの専門家に依頼して手続きを進めるのが一般的で、元本を大きく減額することは難しいものの、利息の免除などによって月々の返済負担を軽減できる可能性がある。

借金の不安から解放される一方、手続きと生活面には苦労も

自己破産を申し立てた後は、借金の督促や返済がストップしたことで仕事や子育てに集中できるようになり、精神的にも楽になりました。

自己破産中は、仕事や子育てに追われる中で手続きを行ったり、自己破産に必要な費用を用意したりするのが大変でした。

また、クレジットカードが強制解約されてしまったため、現金のみで生活費をやりくりするのに苦労しました。

返済のない日常に変わり、家族との時間にも笑顔が戻った

自己破産後は借金の返済に充てていたお金がそのまま使えるようになったため、自分の収入だけでもなんとか生活をやりくりしていけるようになりました。

また、借金の返済に追われるストレスや不安がなくなったことで気持ちにも余裕が生まれ、今では私も子供も笑顔で過ごすことが増えたような気がします。

ブラックリスト入りによってクレジットカードが使えなくなる、スマホの機種代の分割払いができなくなるといった不便はあるものの、個人的には借金問題が解決したというメリットの方が大きかったです。

自己破産は悪いことじゃない。人生を立て直す一歩

自己破産は借金で生活が立ち行かなくなった方が新たな人生の再スタートを切るための手段であり、自己破産を選択するのは決して悪いことではありません。

私も当初は自己破産をすることに抵抗があり、決意するまでかなり悩みましたが、借金の重圧から解放されてなんとか生活を立て直すことができたため、結果的に自己破産をしてよかったと思っています。

借金がどうしても返済できずに悩んでいる方は、早めに弁護士に相談して自己破産することも検討してみてください。

1,150万円の借金を自己破産した人の体験談

最後に、1,150万円の借金を自己破産した男性の体験談をご紹介します。

項目 体験談を語っていただいた方の情報
借入額 1,150万円
年齢 45歳
性別 男性
収入 600万円

投資の失敗で多重債務に。立て直すため自己破産へ

自分の収入だけでは将来に不安を感じていたため、資産を増やすために株の信用取引を始めました。

投資を始めたころは相場環境も良く、連続して利益を出すことができていましたが、信用取引を始めてから一年後に相場の暴落に巻き込まれてしまいました。

多額の評価損を抱えてしまい、証券会社からも追加の証拠金の入金を求められましたが、全額入金できるだけの余力がなかったため、証拠金を入金するために複数の消費者金融から借金をしてしまいました。

しかし、その後も相場は荒れて最終的には必要な証拠金を入金できず、強制決済によって損失が確定し、多額の借金を背負うことになってしまいました。

しばらくは自分の給料で返済を続けていましたが、やがて自力での返済が困難になってしまったため、自己破産することを決意しました。

大変な8ヶ月だったが、借金の不安はなくなった

自己破産は管財事件となり、手続きが終わるまでに8ヶ月程度かかりました。手続き中は借金の経緯や事情を細かく説明したり、仕事をしながら手続きに必要な書類を準備したりするのに苦労しました。

しかし、自己破産を申し立てたことで毎月の返済から解放され、気持ちも前向きになることができました。

管財事件とは
自己破産の手続きのうち、破産者が本人名義で原則20万円以上の価値がある財産を所有していた場合、または借金の免責が許可されない「免責不許可事由」があると裁判所が判断した場合に選ばれる手続きの形式。

裁判所から選任された「破産管財人」が就任し、破産者の財産を調査・管理・処分し、債権者への配当や免責調査などを行う。

自己破産が転機に。仕事も家庭も立ち直るきっかけに

自己破産前は多額の借金を抱えて生活が苦しく、仕事にも集中できませんでした。しかし、自己破産後は借金問題が解決したことで仕事にも集中できるようになり、生活も立て直すことができました。

妻とも一時は離婚危機にありましたが、自己破産後は夫婦関係も改善でき、なんとか離婚危機を乗り越えることができました。

一人で抱え込まず、まずは誰かに話すことから始めてほしい

返済が困難になるほどの借金を抱えている場合は、早めに信頼できる人や弁護士に相談することが大切です。借金問題は一人で抱え込むと精神的な負担も重く、状況は悪化する一方です。

私も家族や弁護士に相談するまでに時間がかかりましたが、相談したことで本当に気持ちが楽になりましたし、自己破産後は人生の再スタートを切ることができました。

弁護士はお堅いイメージがあるかもしれませんが、親身になって相談に乗ってもらえるので、前向きな気持ちで新たな一歩を踏み出してみましょう。

実際に自己破産をした29人へのアンケート

当サイトでは、実際に自己破産した経験がある29人を対象としたアンケート調査を実施しました。ここからは、「自己破産をして後悔はありますか?」「自己破産後の生活は楽になりましたか?」と質問した際のアンケート結果をそれぞれご紹介します。

自己破産をして後悔はありますか?

実際に自己破産した経験がある29人に「自己破産をして後悔はありますか?」と聞いたところ、以下のような回答が得られました。

後悔した 6人
後悔していない 23人

調査方法:インターネット
調査日:2025年5月
調査対象対象:自己破産の経験がある男女20~60代

自己破産を経験した人の多くは自己破産に後悔しておらず、自己破産をしてよかったと回答しています。借金の重圧から解放され、生活を立て直すきっかけになったと感じている人が多い結果ともいえるでしょう。

なお、自己破産をして後悔した人に対してその理由を聞いてみたところ、以下のような回答が得られました。

・自己破産して良かった部分もありましたが、いつかどこかで家族に知られてしまうのではないかという思いは消えないから。
・ローンがすぐに組むことができなかったから。
・ブラックリストに載ったから。

自己破産を経験した人の多くが「後悔していない」と答えている一方で、一定の不安や制約を感じている声もあります。

特に、家族や周囲に知られてしまうことへの不安、ブラックリスト入りによる影響などが、後悔につながっているようです。

自己破産は誰にでも当てはまる解決策ではありません。そのため、本当に自己破産する必要があるのか冷静に状況を整理し、専門家にも相談したうえで判断することが大切です。

自己破産後の生活は楽になりましたか?

実際に自己破産した経験がある29人に「自己破産後の生活は楽になりましたか?」と聞いたところ、以下のような回答が得られました。

苦しくなった 1人
楽になった 23人
変わらない 5人

調査方法:インターネット
調査日:2025年5月
調査対象対象:自己破産の経験がある男女20~60代

自己破産を経験した人の多くは、借金の返済から解放されたことで自己破産後の生活が楽になったと回答しています。しかし、中には「自己破産前と変わらない」「生活が苦しくなった」と回答した人もいました。

たとえば、安定した収入があり、住居や生活基盤を整えられた場合は、借金返済の負担から解放されることで精神的にも生活面でも楽になる可能性があります。

自己破産によって返済義務がなくなるため、生活再建に集中できる環境が整えば、前向きな一歩を踏み出しやすくなるでしょう。

一方で、すべての人が「自己破産してよかった」と感じているわけではありません。「自己破産前と変わらない」「むしろ生活が苦しくなった」と感じる方には、次のような背景があると考えられます。

  • 失業中など収入が不安定で、自己破産後も生活費の確保に苦労している
  • ローンやクレジットカードが使えず、不便さを感じている
  • 保証人に迷惑をかけてしまい、心理的負担を感じている
  • 家族や周囲の理解が得られず、精神的に孤立している
  • 自己破産手続きにかかった弁護士費用・予納金の支払いが負担になっている

このように、自己破産の効果やその後の生活の感じ方は人それぞれであり、状況によって大きく異なります。

自己破産を検討する際は、現在の収入や周囲のサポート体制に加え、自己破産の手続き費用などさまざまな状況も踏まえ、冷静に判断することが大切です。

自己破産をした人の末路はどうなる?自己破産のデメリットとともに解説

自己破産をした人のその後の生活は、多くの人が思っているほど悲惨なものではありません。ただし、自己破産には借金がゼロになる代わりに以下のようなデメリットもいくつか存在します。

  • 一定の価値がある財産を手放さなければならない
  • 自己破産をしたことが官報に掲載される
  • いわゆるブラックリスト入りになる
  • 一部の職業や資格が制限される
  • 連帯保証人に一括返済が請求される
  • 一時的に引っ越しが制限される可能性がある

上記のようなデメリットがあることから、インターネット上やSNSなどでは「自己破産をした人は悲惨」「人生が終わる」といったマイナスな表現で語られていると考えられます。

しかし、これらの影響はすべての人に深刻な形で現れるわけではなく、生活基盤や収入状況、周囲のサポートによって感じ方も異なります。ここからは、それぞれのデメリットについて具体的に見ていきましょう。

一定の価値がある財産を手放さなければならない

自己破産の手続きでは、債務者に原則20万円以上の本人名義の財産がある場合、「管財事件」として扱われることがあります。

管財事件とは、裁判所が破産管財人を選任し、その人物が破産者の財産を管理・売却して債権者に配当する手続きです。詳しくはこちらで解説しています。

自己破産が管財事件で処理される場合、差し押さえ禁止財産を除いて20万円以上の価値がある財産は、原則としてすべて手放さなければなりません。差し押さえ禁止財産とは、債務者の最低限度の生活を守るために、法律で差し押さえが禁止されている財産のことです。

下記は、差し押さえの対象となる財産と差し押さえが禁止されている財産についてまとめました。

差し押さえの対象 差し押さえ禁止財産
・差し押さえ禁止財産に該当しない
・20万円以上の価値がある
・債務者名義
・99万円以下の現金(預金でない)
・家具家電
・20万円未満の財産
・新得財産
・記以外にないと生活に困る自由財産

実際に、先ほどのアンケート結果を見ると、差し押さえられた財産について下記のような結果が見られました。

実際に差し押さえられた財産 人数
8
3
家電 2
クレジットカード 3
お金 4
不動産 1
特になし 12

※複数差し押さえられたケースもあります

調査方法:インターネット
調査日:2025年5月
調査対象対象:自己破産の経験がある男女20~60代

手放した財産は破産財団に組み入れられ、換価(現金化)された上で債権者への配当に回されます。没収の対象となる財産の基準は裁判所によって異なりますが、多くの裁判所で20万円基準を採用しているため、原則として20万円以上の財産は没収の対象です。

現金なら99万円までであれば手元に残すことが認められていますが、そのお金が銀行口座に入っている場合は注意が必要です。

口座にある現金は「預金」として扱われ、たとえ99万円以内であっても、破産手続きの中で全額没収されてしまう可能性があります。

特に、借り入れがある銀行の口座にお金を残していると、銀行側がその預金を回収しようとして口座を凍結することがあります。

このような事態を避けるためにも、必要な現金は事前に引き出しておくなど、早めの対応を心がけることが大切です。自己破産を検討している方は、弁護士などの専門家に相談しながら準備を進めると安心です。

自己破産をしたことが官報に掲載される

自己破産をすると、「官報」という国が発行している機関紙に破産者の氏名や住所が掲載されます。官報に掲載されるタイミングは、原則として破産手続開始決定時と免責許可決定時の2回です。

簡単に言えば、「裁判所が自己破産の手続きの開始を認めたとき」と「借金を帳消しにする許可が下りたとき」の2回、官報に名前が載る仕組みです。官報は一般公開されていて誰でも閲覧できるため、官報を通じて自己破産をした事実が周囲の人にバレる可能性があります。

ただし、実際に官報を日常的にチェックしているのは、下記のような職業についているごく一部に限られています。

  • 役所の税務担当課
  • 金融機関
  • 信用情報機関
  • 不動産業者

一般の個人は、官報を日常的にチェックしている人は極めて少ないため、官報を通じて自己破産をした事実がバレるケースは非常にまれといえるでしょう。

いわゆるブラックリスト入りになる

自己破産をすると、信用情報機関が管理する信用情報に、自己破産したという履歴が登録され、いわゆるブラックリスト入りの状態になります。信用情報には、金融取引の履歴が記録されており、クレジットカード会社やローン会社が、申込者の返済能力を審査するのに使用します。

ブラックリスト入りの状態になっている間は、審査の際に「返済能力に不安がある」と判断される可能性があるため、クレジットカードや各種ローンの審査に通りづらくなってしまうのです。

  • クレジットカードの利用がしづらくなる
  • 各種ローンの審査に通りづらくなる
  • 信販系の保証会社を通した賃貸物件の契約が難しくなる
  • スマートフォンの割賦払いの審査に通りづらくなる
  • 第三者の保証人・連帯保証人になるのが難しい

先ほどのアンケートで、「自己破産の手続き後に、クレカや借入の申込をしたことがありますか?」という質問に「はい」と答えた人に対し、申し込み結果について聞いたところ、下記のような結果になりました。

自己破産後のクレカや借入の申込結果 人数
審査に通った 3人
審査に落ちた 4人

申し込みをした7名中3名が通る結果と、一見「自己破産後でも審査に通るケースがある」と感じるかもしれません。しかし、審査に通った3人はいずれも自己破産から時間が経過しており、すでに信用情報機関でのブラックリストの履歴が削除されていた可能性もあります。

自己破産の履歴が残る期間は最長5~7年で、ブラックリストの登録期間や起算点は、信用情報機関によって異なります。

信用情報機関 事故情報の登録期間
日本信用情報機構(JICC) 免責許可決定が確定してから最長5年
シー・アイ・シー(CIC) 免責許可決定が確定してから最長5年
全国銀行個人信用情報センター(KSC) 破産手続開始決定が出されてから最長7年

クレジットカードやローン申し込んだ時点で信用情報から履歴が抹消されていれば、自己破産が原因で審査に落ちることはありません。

今回のアンケートでは、5〜7年以上経過しているかどうかの指定はしていないため、自己破産直後の人に絞れば審査に落ちた人の割合はさらに高いと予想されます。そのため、自己破産後の審査は通りにくくなると考えるのが無難です。

日常的にクレジットカードを利用している方や、今後ローンを組んで住宅や車を購入する予定がある方は、ブラックリスト入りによって大きな影響を受ける可能性があるので注意が必要です。

一部の職業や資格が制限される

自己破産の手続き中は、一部の職業や資格が制限されます。これは、社会的信用が求められる職業や、他人の財産を取り扱う業務に就く人に対して、安心して任せられる人物を確保するために決められています。

以下のように制限の対象となる仕事や役職に就いている場合は、自己破産の手続きが終了するまで仕事ができなくなったり、役職を解任されたりすることになります。

ジャンル 職業制限を受ける職業・資格
士業系 弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士、弁理士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、宅地建物取引士、中小企業診断士、通関士など
公職系 人事院の人事官、教育委員会の教育委員、公正取引委員、公証人、固定資産評価員など
団体企業の役員 日本銀行、信用金庫、商工会議所、金融商品取引業、労働派遣業などの役員
会社法上の役員 取締役、執行役員、監査役など
その他 警備業者の責任者や警備員、貸金業者の登録者、生命・損害保険募集人、証券外務員、旅行業務取扱の登録者や管理者、質屋を営む者など

自己破産の手続きが終了すれば、これらの職業や資格の制限は解除されます。

弁護士や司法書士などの資格は手続きが終了するまで登録が取り消されますが、取得した資格そのものが消滅するわけではないため、再度試験を受ける必要はありません。

自己破産の手続きにかかる期間は、申立てから免責決定までで6か月〜1年程度が目安です。ただし、債権者数や事件の種類などさまざまな要因によっては、1年以上かかるケースもあります。

そのため、「◯か月で必ず終わる」とは限らず、あくまで目安として捉えておくことが大切です。

自己破産の手続きにかかる期間は事件種類で異なる

自己破産には下記3種類の事件があり、それぞれが適用されやすい状況や期間、費用が異なります。

項目 同時廃止事件 少額管財事件 管財事件
概要 自己破産の手続きを開始すると同時に、
破産事件が廃止となる手続き
管財事件よりも手続き負担が
軽減された手続きのこと
破産者が一定額以上の財産や資産を
保有している場合に選択される手続き
費用の目安 裁判所費用:1〜3万円程度
弁護士・司法書士費用:20~40万円
裁判所費用:20万円程度
弁護士・司法書士費用:30~50万円
裁判所費用:50万円以上
弁護士・司法書士費用:50~80万円
目安の期間 3〜6か月程度 6~8か月程度 7か月~1年程度
適用されやすい状況 ・自己破産にかかる費用を支払うのが難しい
・財産の総額が20万円よりも少ない
・借金をした理由がギャンブルや浪費などではない
・弁護士に自己破産を依頼している
・資産総額が20〜50万円以下である
・換価できる財産がない、または少ない
・借金をした理由がギャンブルや浪費などである
・不動産のような一定額以上の価値がある
財産を所有している
・自己破産に至った理由が会社の倒産である
・借金をした理由がギャンブルや浪費などである
財産調査や換価処分の有無 なし あり あり
破産管財人の有無 なし あり あり

もっとも手続きが簡易なのは「同時廃止事件」です。これは、申立人に換価できる財産がほとんどなく、調査の必要がない場合に適用されるため、破産手続きの開始と同時に事件が終了します。

あくまでも目安ですが、期間も3〜6か月と比較的短く、破産管財人も選任されないため、費用も抑えられます。一方、「少額管財事件」「管財事件」は、破産者に一定以上の財産がある、もしくは借金の原因に問題があるなどの理由で、破産管財人が選任される場合に適用されるのが一般的です。

破産管財人は、破産者の財産を調査・管理し、必要に応じて売却して債権者に配当します。そのため、書類の準備や調査期間が長くなり、通常よりも手続きに時間がかかるのが特徴です。

また、借金の理由がギャンブルや浪費だった場合は、原則として免責が認められない「免責不許可事由」に該当しますが、誠実に対応することで「裁量免責」として免責が下りる可能性もあります。

ただしその場合は、財産の詳細な調査や事情聴取が必要となるため、少額管財事件や管財事件として扱われ、手続きに時間を要します。つまり、自己破産の手続きにかかる期間は、破産者の財産状況や借金の原因、調査の必要性などによって決まるのです。

手続きを急ぎたい場合や費用を抑えたい場合は、「同時廃止事件」の適用が望ましいですが、これはあくまで本人の状況によって裁判所が判断するため、自分で選べるものではありません。早めに弁護士へ相談し、自分に適した手続きの流れと期間の目安を把握しておくことが大切です。

連帯保証人に一括返済が請求される

連帯保証人が設定されている借金を抱えたまま自己破産をした場合は、連帯保証人が債権者からの一括請求を受けることになります。自己破産は、あくまでも破産者本人の返済義務が免除されるだけで、連帯保証人の返済義務はそのまま残ります。

連帯保証人は主債務者と同等の責任を負っているため、債権者から一括請求を受けた場合は必ず応じなければなりません。連帯保証人が設定されている借金を抱えたまま自己破産すると、連帯保証人に多大な迷惑をかけることになるため、連帯保証人への影響も考慮したうえで自己破産するかどうか検討するようにしましょう。

一時的に引っ越しが制限される可能性がある

自己破産をしても、引っ越しは原則として可能です。ただし、自己破産が管財事件となった場合、破産手続開始決定が出されてから免責許可決定が確定するまでの間は、破産管財人の同意と裁判所の許可を得る必要があります。

引っ越しが制限されている間に無断で引っ越しをした場合は、免責不許可事由にあたるとして免責が認められない可能性もあります。そのため、引っ越しを検討している場合は必ず事前に破産管財人に相談し、必要に応じて裁判所の許可を得るようにしましょう。

自己破産したらその後はどうなる?意外と知らない自己破産の誤解

自己破産については「家族に迷惑がかかる」「一生ローンが組めない」といった声を耳にすることもあります。しかし、こうした情報の中には、下記のように自己破産に関する正しい知識がないがゆえの誤解も多く含まれています。

  • 自己破産をしても全財産を失うわけではない
  • 自己破産が原因で会社をクビになることはない
  • 自己破産したことが戸籍に載ることはない
  • 自己破産すると海外に行けなくなることはない
  • 自己破産をすると家族や親族、友人などに必ずバレるとは限らない
  • 自己破産が原因で住んでいる賃貸物件を追われることはない

ここからは、それぞれのよくある誤解について1つずつ詳しく解説していきます。

自己破産をしても全財産を失うわけではない

「自己破産をするとすべての財産を没収される」という情報を見かけることがありますが、これは正確ではありません。実際には、原則として20万円以上の価値がある本人名義の財産が没収の対象となるため、それ以外の財産は手元に残すことが可能です。

こうした誤解が生まれるのは、没収の対象となる財産の条件が十分に理解されていないためだと考えられます。

自己破産後も所有が認められている「自由財産」は、以下のように分類されます。

項目 概要
99万円以下の現金 現金とは手持ちの紙幣や硬貨を指すため、
金融機関の預貯金は現金に含まれない
紙幣・硬貨
差押禁止財産 債務者の最低限度の生活を守るために、
法律で差し押さえが禁止されている財産
・衣類や家具家電
・生活に必要な一ヶ月分の食料や燃料
・業務や学業に欠かせない器具や道具
・仏像や位牌、礼拝・祭祀に欠かせないもの
・実印や生活、仕事で必要な印鑑 など
新得財産 破産手続開始決定後に取得した財産のこと ・給料
・ボーナス など
自由財産の拡張が認められた財産 差押禁止財産以外で、
生活必需品であると認められた財産
・残高が20万円以下の預貯金
・見込額が20万円以下の生命保険解約返戻金
・処分見込額が20万円以下の自動車
破産財団から放棄された財産 破産財団から換価処分する価値がないと判断されて、
債務者の元に戻ってきた財産
・再建築不可や山奥にあるなど、
訳ありで買い手がつかないような土地
・解約に費用がかかる少額の預貯金など

自己破産で没収の対象となるのは、破産手続開始が決定した時点で所有している財産のみです。そのため、破産手続開始決定後に振り込まれた給料や購入した自動車など、新得財産に該当するものは一切没収されません。

ただし自由財産については、該当する財産であっても拡張する財産をすべての総額が、原則20万円以下でなければなりません。複数の財産を保有している場合は、各財産の価値を合算して判断されるため、1つひとつの財産が20万円以下であっても、合計額が20万円を超える場合は自由財産として認められない可能性があります。

自由財産の拡張を希望する場合は、あらかじめ資産総額を確認し、必要に応じて裁判所へ申立てを行うことが大切です。

また、処分・換金が困難な財産や換金すると費用倒れになる恐れがある財産は、破産管財人の判断により「破産財団から放棄される」ことがあります。たとえば、以下のような財産が放棄の対象になることがあり、放棄された財産は自由財産として扱われ、自己破産後も手元に残すことが可能です。

  • 年式が古く、売却しても価値がつかない家電や家具
  • 再建築不可や山奥にあるなど、訳ありで買い手がつかない土地
  • 一般的な中古市場では取引されにくい趣味用品
  • 写真アルバムや思い出の品など、市場価値のない私物
  • 運搬や処理に手間がかかる大型の不要物

ただし、上記の財産も「破産財団に報告された上で放棄されたもの」に限られます。価値がないと思って黙っていた財産が後から発覚すると、免責許可に不利に働くおそれもあります。

そのため、どんなに些細な財産であっても、まずは破産管財人に正しく申告することが重要です。

自由財産の拡張とは?手元に残せる財産を増やすための制度

自由財産の拡張とは、本来であれば没収されるはずの財産について、「生活に必要である」と裁判所に認められた場合に、例外的に手元に残すことができる制度です。

たとえば、以下のようなケースでは、20万円の価値を超える財産であっても、自由財産の拡張が認められる可能性があります。

拡張が認められる財産 状況
20万円を超える預貯金 収入や支出状況から見て拡張の必要性がある場合
20万円を超える車 通勤に不可欠で公共交通機関の代替手段がない場合
20万円を超える生命保険の解約返戻金 家族の保障として必要と認められる場合

拡張が認められるには、自由財産拡張の申立書を通じて財産の内容と生活への必要性を説明する必要があります。

裁判所は「その財産が生活に不可欠か」「処分することで生活に支障が出るか」を判断基準にし、破産者の生活状況・家族構成・就業状況なども加味して総合的に判断します。

なお、自由財産の拡張は「無条件で認められる」わけではありません。どうしても残したい財産がある場合は、申立て前に弁護士に相談して戦略的に準備するのがよいでしょう

自己破産が原因で会社をクビになることはない

「自己破産をすると会社をクビになる」という話を見聞きすることがありますが、これは誤解です。こういった誤解が生まれる背景には、「信用を失う」「ブラックリストに載る」といった自己破産に対する漠然としたネガティブイメージが影響していると考えられます。

しかし自己破産は、あくまで個人の経済的な再出発を支援するための法的手続きであり、業務遂行能力や職場の秩序に直接的な悪影響を及ぼすものではありません。

労働契約法第16条でも、解雇について「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合」でなければ無効と定められています。

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
引用元 労働契約法 | e-Gov 法令検索

したがって、自己破産そのものを「解雇に値する客観的に合理的な理由」とすることは、認められないのが一般的です。そのため、自己破産によって会社をクビになることは基本的にありません。

ただし、自己破産によって制限を受ける資格・職業に就いている場合は、下記のような影響を受ける可能性があるので注意が必要です。

  • 自己破産の手続きが終わるまで一時的に仕事ができなくなる
  • 自己破産後に役職を解任される
  • 配置転換・異動を命じられる

自己破産したことが戸籍に載ることはない

「自己破産をすると戸籍に傷がつく」といった情報がインターネット上などで見られることがありますが、これは誤解です。

戸籍には、出生や婚姻、死亡などの身分事項しか記載されないため、自己破産の事実が記載されることは法律上ありませんし、住民票にも同様に破産歴が記されることはありません。

こうした誤解が広がっている背景には、「官報に掲載される」「破産者名簿に記載される可能性がある」といった自己破産に関する情報が混同されていることがあると考えられます。

しかし、戸籍や住民票は公的な身分証明書であっても、自己破産と直接関係するものではないため、これらの書類を通じて自己破産の事実が他人に知られることはありません。

家族や勤務先に破産がバレることを過度に心配する必要はないでしょう。

破産者名簿に記載される可能性はある

免責許可決定が下りなかった場合や免責取消決定が確定した場合は、裁判所から本籍地の市区町村に自己破産したことが通知され、破産者名簿に記載される可能性があります。

破産者名簿は戸籍とはまったく別のもので、戸籍謄本や住民票には一切反映されません。一般に公開されているものではないため、閲覧できるのは役所の担当者などごく限られた人のみです。

記載中は、破産者名簿に記載されている間は、破産者ではないことを証明する「身分証明書」が取得が制限されます。しかし、免責許可決定後は破産者名簿から抹消されるため、永久に記載されるわけではありません。

破産者ではないことを証明する身分証明書を取得できるのも、破産者本人または本人の委任を受けた代理人のみなのです。そのため、破産者名簿を通じて自己破産をした事実が家族や勤務先などにバレることは基本的にありません。

自己破産すると海外に行けなくなることはない

自己破産をしても、旅行や出張、移住などで海外に行くことは可能です。自己破産によってパスポートが失効したり、パスポートに自己破産した事実が記載されたりすることもありません。

「自己破産すると海外渡航ができなくなる」といった誤解が見られるのは、破産手続きの種類や進行中の制限に関する情報が正しく伝わっていないことが原因と考えられます。

たとえば、自己破産の中でも「同時廃止事件」に該当する場合は、破産手続きの開始と同時に事件が終了するため、海外渡航に制限はありません。

一方、管財事件となった場合、破産手続開始決定が出されてから免責許可決定が確定するまでの間は海外への渡航が制限されます。これは、債権者との連絡が取れなくなることで、手続きの進行に支障が出る可能性があるためと考えられています。

この間に海外へ渡航する場合は、破産管財人からの同意と裁判所からの許可を得なければなりません。つまり、自己破産を理由に海外渡航が一律に禁止されるわけではなく、手続きの進行状況によって条件が異なるという点を理解しておくことが重要です。

自己破産をすると家族や親族、友人などに必ずバレるとは限らない

「自己破産をすると、家族や周囲の人に必ずバレる」という情報も一部で見られますが、これは誤解です。

たしかに、破産手続きにはいくつかの書類のやり取りや調査が伴うため、情報が漏れるリスクはゼロではありません。

しかし、「すべての人が必ずバレる」というイメージが広まった背景には、家族に知られたケースがメディアで過度に取り上げられたことや、手続きに関する具体的な流れが正確に理解されていないことが影響していると考えられます。

実際には、以下の条件にすべて該当する場合、自己破産の事実を他人に知られずに手続きを進められる可能性があります。

  • 同居家族がいない
  • 同居家族に収入がない
  • 家族や親族、友人、勤務先などからお金を借りていない
  • 家族や親族が借金やローンの連帯保証人になっていない
  • 自己破産によって制限を受ける資格・職業に就いていない

上記のようなケースでは、書類のやりとりや手続きの進行が自分だけで完結できるため、周囲に知られるリスクは非常に低くなります。

一方で、以下のような事情がある場合には、自己破産の事実が家族や関係者に知られてしまう可能性が高まります。

  • 自宅に届いた弁護士からの書類を見られる
  • 手続き上、同居家族の収入証明や財産に関する資料の提出が必要になる
  • 持ち家や車などの家族と共用している財産が没収された
  • 家族や親族が借金やローンの連帯保証人になっている
  • 自己破産によって制限を受ける資格・職業に就いている

とくに同居家族がいる場合は、書類の送付や財産処分といった手続きの中で隠し通すことが難しいケースもあります。

また、制限対象の資格職に就いている場合は、勤務先への報告が必要となるため、そこから自己破産が知られてしまうこともあるでしょう。

このように、自己破産が周囲に知られるかどうかは、生活環境や職業、借金の状況によって大きく異なります。不安がある方は、事前に弁護士へ相談し、自分のケースではどの程度のプライバシーが守られるかを確認しておくと安心です。

自己破産が原因で住んでいる賃貸物件を追われることはない

「自己破産をすると今の住まいからも追い出される」といった誤解は、自己破産という言葉に対するネガティブなイメージや、「すべてを失う」という極端な認識から生まれていると考えられます。

しかし、法律上は自己破産だけを理由に住居を失うことはなく、実際には家賃を適切に支払い続けている限り、賃貸契約が解除されることはありません。

なぜなら、借地借家法第28条により、貸主が賃貸借契約を解除または更新を拒否するには「正当な事由」が必要とされているためです。

第二十八条
建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
引用元 借地借家法 | e-Gov 法令検索

この「正当事由」には、家賃の長期滞納や物件の著しい損壊、迷惑行為など、貸主と借主の信頼関係を損なうような客観的事情が必要です。自己破産は、借金の返済ができなくなったことを理由に裁判所の判断で行われるものであり、違法行為ではありません。

また、家賃をきちんと支払っている限り、貸主との信頼関係は維持されていると判断されやすくなるため、自己破産そのものが契約解除や更新拒否の根拠になることは少ないでしょう。

そのため、自己破産をした後も同じ賃貸物件に住み続けられますし、契約更新も拒否されることはありません。ただし、家賃を滞納している場合は、前述した契約を解除するための正当な事由に当たるため、賃貸契約が解除されて強制退去となる可能性があります。

そのため、自己破産後も今の住居に住み続けたい場合は、申立て前に家賃の滞納を解消しておくのが理想です。その際、特定の債権者だけに優先して支払うと、「偏頗(へんぱ)弁済」と見なされることがあり、場合によっては免責不許可事由に該当するおそれもあります。

とはいえ、家賃は住居確保に必要な生活費であるため、実務上は滞納分の支払いが必ずしも偏頗弁済にあたるとは限りません。裁判所や破産管財人の判断によっては、日常生活の継続に必要な支出として認められることもあります。

そのため滞納がある場合、家族や友人などに家賃の滞納分を一時的に立て替えてもらい、偏頗弁済のリスクを避けるのが望ましいでしょう。

自己破産を検討している場合に知っておくべきこと

自己破産を検討する際に知っておくべきこととして、下記の3つが挙げられます。

  • 借金の理由によっては自己破産が認められないことがある
  • 自己破産では免除されない債務がある
  • 自己破産にもある程度のお金が必要

上記のポイントを事前に理解しておかないと、「自己破産すればすべての借金が帳消しになる」といった誤解を抱いたまま手続きを進めてしまう可能性があります。

特に、後になって免責が認められなかったり、残債が想定以上に残ったりすると後悔するリスクがあるでしょう。

正しい知識をもとに判断を下すためにも、自己破産の限界や注意点をきちんと押さえておくことが大切です。

借金の理由によっては自己破産が認められないことがある

破産法では、借金の返済義務が免除されない原因・事情である「免責不許可事由」が設けられています。借金をした理由などが以下の事由当てはまると、原則免責は認められません

  • ギャンブルや浪費、投機的な取引(先物取引・FXなど)によって多額の借金を抱えた場合
  • 故意に財産を隠匿・破壊したり、他人に贈与したりした場合
  • 特定の債権者にだけ借金を返済したり、財産を担保として差し出したりした場合
  • 信用取引で購入した商品を直ちに換金した場合
  • 自己破産の1年以内に詐術を使って新たに借金したり、信用取引を行ったりした場合
  • 財産目録や債権者一覧に虚偽の記載をした場合
  • 裁判所に対する説明を拒絶したり、虚偽の説明をしたりした場合
  • 前回の自己破産で免責許可決定が確定した日から7年経過していない場合

ただし、免責不許可事由に該当したからといって、必ずしも免責が認められないわけではありません。破産者本人の反省の態度や手続きに対する誠実な協力姿勢などを総合的に判断し、裁判所の裁量によって免責が認められる「裁量免責」が適用されることもあります。

そのため、免責不許可事由に心当たりがある場合でも、あきらめる必要はありません。大切なのは、破産手続きにおいて虚偽の報告をせず、裁判所や破産管財人に対して真摯に対応することです。

また、免責を確実に得るためには、早い段階で弁護士に相談し、的確なアドバイスを受けながら準備を進めることが非常に重要です。

専門家のサポートを受けながら誠実に対応すれば、免責不許可事由があったとしても、再スタートの可能性を閉ざさずに済む可能性があるでしょう。

自己破産では免除されない債務がある

自己破産をすれば、すべての借金が帳消しになると思われがちですが、非免責債権と呼ばれる一部の債務は、自己破産をしても免除されません。そのため、非免責債権が残っていると、破産手続後も支払い義務が続きます。

自己破産を検討する前に、どの債務が対象外になるのかを正しく理解しておくことが大切です。

税金や罰金などの公的な債権 ・税金
・年金
・健康保険料
・介護保険料
・下水道料金
・罰金、科料、追徴金、過料
※電気代やガス代、上水道代は免責の対象
不法行為に基づく損害賠償請求権 非免責債権に該当するかは、その行為が「悪意」「故意または重大な過失」といえるかどうかで決まる。

【悪意で加えた不法行為】
・窃盗や詐欺
・業務上の横領
・ネットでの過剰な誹謗中傷
・暴力によって肉体的に損害を与える行為
・モラハラやいじめによって精神的に損害を与える行為

【故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為】
運転中に起こした交通事故によって人を死傷させる行為

養育費や婚姻費用などに関する請求権 夫婦間の協力義務や婚姻費用分担義務、扶養義務や子の監護義務を前提に生じる請求権が該当する。
個人事業主や経営者が支払う給与や預かり金の請求権
(個人で事業をしている人を想定)
・従業員への給料
・退職金
・預り金(積立金など)
債権者名簿に記載しなかった債権 わざと、または過失によって「債権者名簿」に記載しなかった債権は非免責債権になる。

上記に該当する債務は、自己破産をしても原則免除されません。たとえ支払いが困難であっても支払い義務が自然に消えることはなく、放置すると強制執行の対象となることもあります。

とくに注意が必要なのは、自己破産の申立て時点で残っている債務が非免責債権のみだった場合です。自己破産をしても、生活再建につながらないという事態に陥る可能性があります。

そのため、自己破産を検討している段階で、免責されない債務の有無や金額について事前に把握し、弁護士に相談のうえで最適な対応を取ることが重要です。

自己破産にもある程度のお金が必要

自己破産をするにはある程度のお金を用意する必要があります。自己破産にかかる費用は手続きの種類や自身の状況によって異なりますが、一般的には30万~100万円程度が相場といわれています。

自己破産の費用は、事件によって異なります。大きく分けて「裁判所に支払う費用」「弁護士費用」の2種類あり、それぞれの一般的な相場は以下の通りです。

項目 同時廃止事件 少額管財事件 管財事件
裁判所費用の目安 1〜3万円程度 20万円程度 50万円以上
弁護士・司法書士費用の目安 20~40万円 30~50万円 50~80万円

自己破産の費用は一括払いが原則ですが、弁護士事務所によっては弁護士費用の後払いや分割払いに対応してくれる場合もあります。また、収入や資産が乏しい場合は法テラスの民事法律扶助制度を利用して、法テラスに弁護士費用を立て替えてもらい、後で分割返済していくことも可能です。

自己破産を検討している方へのアドバイス

これまで自己破産のデメリットやよくある誤解、自己破産後の生活などについて解説してきましたが、それでも自己破産に対する不安が拭えないという方も多いことでしょう。

そこで今回は、そんな方々に向けて自己破産の検討に前向きになれるアドバイスを送りたいと思います。

  • 自己破産は「破滅」ではなく「再スタート」
  • 自己破産は無責任ではなく、責任を取る行為
  • インターネットのニセ情報には注意
  • 自己破産後の生活は今より明るい

では、それぞれ詳しく見ていきましょう。

自己破産は「破滅」ではなく「再スタート」

自己破産は人生の破滅ではなく、借金をゼロにして新たな人生を再スタートするための手続きです。自己破産をすると、下記のようなデメリットはありますが、今後の人生が破滅するほどの大きなデメリットではありません。

  • 一定の価値がある財産を手放さなければならない
  • 自己破産をしたことが官報に掲載される
  • いわゆるブラックリスト入りになる
  • 一部の職業や資格が制限される
  • 連帯保証人に一括返済が請求される
  • 一時的に引っ越しが制限される可能性がある

自己破産後も生活や仕事に必要な財産の所有は認められていますし、自己破産を理由に会社をクビになることはありません。制限がかかる職業や資格でも、手続きが終われば仕事に復帰できますし、自己破産を理由に就職や転職などで不利益を被ることもありません。

そのため、自己破産を選択すれば、深刻な借金問題を抱えていても再起の道を見出せるでしょう。

自己破産は無責任ではなく、責任を取る行為

自己破産は、借金から逃げるための手段ではなく、返済が困難な現実を受け止めたうえで、財産を手放す覚悟を持って責任を果たすための法的な手続きです。

返済の見込みが立たないまま借金を放置してしまうと、債権者にとっても回収の手間や費用がかさむだけでなく、不当な資産処分による損失などのリスクが生じてしまいます。

そうした意味でも、きちんと自己破産という制度を利用して債務を整理することは債権者に対しても誠実な対応といえるでしょう。つまり自己破産とは、ただ借金を帳消しにするものではありません。

自分の状況に正面から向き合い法的なルールのもとで清算し、新たな生活を始めるための前向きな選択肢なのです。

インターネットのニセ情報には注意​​​​

インターネット上には、自己破産に関するニセ情報が多く出回っています。

  • 自己破産をするようなやつは人間のクズ
  • 自己破産したら就職で不利になる
  • 自己破産したら一生結婚ができない
  • 家族もろとも路頭に迷う

これらの情報はすべて真実ではありません。このような間違った情報に惑わされて自己破産を躊躇してしまうと、生活が苦しくなったり、債権者に強制執行されて自己破産時よりも多くの財産を奪われたりとさらに状況が悪化してしまう恐れがあります。

自己破産について不安点や疑問点があれば、無責任なインターネットのニセ情報に惑わされず、弁護士や司法書士などの法律の専門家に直接相談するようにしましょう。

自己破産後の生活は今より明るい

自己破産後の生活は破滅するどころか、むしろ借金問題で苦しんでいる今よりもずっと明るいものになる可能性があります。

多少の不便は強いられるものの、毎月の返済分を生活費に充てられるようになるため、自己破産前と比べれば生活が楽になる可能性があります。

また、借金の返済に追われるストレスからも解放されるため、精神的にも安定した生活を送れるようになるでしょう。

まとめ

自己破産は借金が免除されるという強力なメリットがある一方で、財産の処分、クレジットカードやローンなどの利用制限、一定の職業や資格の制限など、手続き中や手続き後の生活に影響を与えるデメリットもいくつか存在します。しかし、自己破産をしても人生が破滅するほどの生活を強いられることはありません。

自己破産によるデメリットの影響で多少の不便は強いられるものの、手続き後に必要な財産は手元に残しておけますし、ほぼ普通の生活を送ることができます。自己破産は、借金を清算して人生の再スタートを切るために設けられた手続きであり、これを活用するのは何ら恥ずかしいことではありません。

借金を返済できずに困っている場合や自己破産を検討している場合は、早めに弁護士や司法書士などの専門家に相談してみましょう。

自己破産に対するQ&A

自己破産をすると、全ての財産を失ってしまいますか?

自己破産で失うのは20万円以上の預貯金や保険解約返戻金、車、自分名義の不動産など、大きな財産のみです。
99万円相当の財産は自由財産として手元に残すことができます。
また、破産開始決定後に発生した収入などは、自由に使うことができます。

自己破産すると、友人や会社の同僚にバレてしまいますか?

自己破産をしても、友人や会社の同僚にバレる可能性は少ないでしょう。ただし、同居している家族には隠せない可能性があります。引っ越しを伴う場合もありますし、場合によっては配偶者の給与明細などが必要になります。

家族でも、遠く離れて扶養関係がなければバレる可能性は低いといえるでしょう。

自己破産をすれば全ての借金がチャラになりますか?

自己破産をしても、税金や保険料、養育費や慰謝料、損害賠償金など、免除されない債務もあります。
これらの債務は、例え滞納しても貸金業者ほどしつこい請求をしてこないので後回しにしがちですが、自己破産でも免除されません。

免責できない債務ばかりだと、自己破産をしても債務免除されないため意味がない場合もあるので、注意が必要です。

自己破産をすると何ができなくなるのですか?

自己破産をすると、手続きが終わるまでの間は一部の職業・資格に制限がかかるほか、原則20万円以上の価値がある本人名義の財産は手放さなければなりません。

また、信用情報に事故情報として登録されるため、最長5~年7の間はクレジットカードの作成やローンの審査に通りにくくなります。

自己破産の記録は一生残るのでしょうか?

いいえ、自己破産の記録が一生残ることはありません。
信用情報機関への登録は以下の期間が目安です

  • JICC/CIC:免責許可決定から最長5年
  • KSC:破産手続開始決定から最長7年

これらの期間が経過すると、いわゆる「ブラックリスト」状態は解消されます。

自己破産後はいつからスマホや携帯電話の分割購入ができますか?

一般的には、自己破産の記録が信用情報機関から消える5〜7年後には、審査の通りづらさも解消される可能性があります。 それまでは一括払いでの購入を検討するとよいでしょう。

自己破産をしてよかったことにはどんなものがありますか?

実際に自己破産を経験した人からは、下記のような声が寄せられています。

  • 借金の取り立てが止まり、精神的に楽になった
  • 毎月の返済がなくなり、生活を立て直す余裕ができた
  • うつや不安などの精神的症状が回復した
  • 家族や子どもとの関係が改善された

一時的な不便さはあるものの、「人生の再出発ができた」という前向きな意見が多数を占めています。

自己破産をしても免責されないことはありますか?

はい、あります。浪費やギャンブル、財産の隠匿など、免責不許可事由に該当する行為がある場合、免責が認められない可能性があります。

ただし、実務上は「裁量免責」により、事情を考慮して免責が認められるケースも少なくありません。 不安な場合は、事前に弁護士へ相談し、該当の可能性について確認しておくと安心です。

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更新日 : 2025年06月30日
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