実家暮らしで自己破産をバレずに行える可能性は?
「実家暮らしでも家族にバレずに自己破産を利用したい」「実家暮らしで自己破産を利用すると家族に迷惑がかかるか不安」など、自己破産で返済義務を帳消しにしたい反面、同居家族への影響等を考えて慎重になってしまう債務者は少なくありません。
債務整理のなかでも、自己破産は「借金返済義務の免責」という強力なメリットが手に入る点で魅力的な手続きですが、その代償として特有のデメリット・制限事項が発生するため、申し立て前に状況を整理しなければ想定外の負担を強いられる可能性があります。
そこで、実家暮らしの債務者が自己破産をする場合の注意点や、家族にバレずに自己破産するための工夫などについて具体的に見ていきましょう。
家族にバレずに自己破産は難しい【その理由3つ】
そもそも、実家暮らしの状態で自己破産すると家族にバレる可能性が高いということをご理解ください。
なぜなら、自己破産は次のような制度的特徴がある債務整理手続きだからです。
- ①自己破産は裁判所を利用する手続き
- ②自己破産は債務者名義の財産が換価処分される手続き
- ③自己破産特有の制限事項が多い手続き
①裁判所を利用する手続きだから
自己破産は裁判所を利用する手続きです。任意整理のように裁判所を利用せず債権者との直接交渉で柔軟に手続きを進めることができません。
裁判所からの郵便物は債務者が所在する実家宛に届きます。また、債務者が本当に厳しい生活状況に追い込まれているかを確認するために同居家族の収入証明資料の提出を求められたりもするでしょう。
このように、破産手続き・免責手続きが厳格に進められるため、実家で同居中の家族に知られずに手続きを進めるのは困難だと考えられます。
②債務者名義の財産が処分されるから
自己破産をすれば「借金返済義務の免責」という強力なメリットが手に入りますが、その代償として「債務者名義の財産が処分される」というデメリットを受け入れなければいけません。借金返済義務だけを一方的に消滅させるだけでは債権者の利益が不当に害されるので、債務者の財産を現金に換えて(換価処分)債権者に配当する必要があると考えられているからです。
換価処分の対象になる債務者名義の財産の範囲を知るためには、「自己破産の処分対象外の財産(=自由財産)を確認するのがポイントです。次に列挙される財産は自己破産後も手元に残せますが、これら以外はすべて手放さなければいけません。
- 破産手続き開始決定後に取得した財産(=新得財産)
- 法律上差し押さえが禁止されている財産(=差し押さえ禁止財産)
- 個別事情を考慮して裁判所が手元に残すことを許可した財産(=自由財産の拡張)
- 破産管財人が放棄した財産
- 99万円以下の現金
分かりやすく表現すると、「自己破産後の生活を送るために最低限必要な財産」だけが手元に残せるということ。マイホーム・マイカー・贅沢品などはすべて自己破産で取り上げられてしまいます。
なお、個人の自己破産の場合には執行官・破産管財人などが自宅にやってきて資産調査をすることは考えにくいですが、不自然に動産がなくなっていると同居家族に知られざるを得ません。
※自由財産の範囲・換価処分の範囲については、「自己破産すると財産が差し押さえられる?処分されない財産(自由財産)についても詳しく解説」で詳しく解説しているので、あわせてご参照ください。
③破産手続き中の制限事項が多いから
自己破産手続き中は、個人再生・任意整理には見られない特有の制限事項が発生します。これらが原因で同居家族に自己破産がバレる可能性があります。
- 債務者本人宛の郵便物が破産管財人に転送される
- 引越し・移動に裁判所の許可が必要になる
- 職業制限の対象になると仕事ができない
※自己破産特有の制限事項については、「自己破産するとどうなる?申請中の生活で制限がかかるものとやってはいけないことを詳しく解説」で詳しく解説しているので、あわせてご参照ください。
破産手続き中の郵便物管理制限
まず、破産手続き中は、債務者宛の郵便物は破産管財人の元に届きます(同居家族宛の郵便物は通常通り実家に届きます)。
手紙・ハガキ・定形郵便物・定形外郵便物・レターパックなど、ほとんどすべての債務者宛の郵便物が不自然なほどに実家には届かなくなるので、同居家族に疑われる可能性を避けられないでしょう。
※郵便物の管理制限については、「自己破産で郵便物の受け取り制限を受ける!「郵便物」の定義と債務者の権利について」で詳しく解説しているので、あわせてご参照ください。
破産手続き中の移動制限
次に、破産手続き中は、裁判所の許可がなければ引越し・旅行・出張ができません。特に、単純な娯楽目的の旅行は許可されない可能性が高いです。
破産手続き中に旅行の誘いを断ることがあれば不信感のきっかけになりかねないでしょう。
※移動制限については、「自己破産してもパスポートは取れる?海外旅行など制限を受けることはあるのか?」で詳しく解説しているので、あわせてご参照ください。
復権するまでの資格制限
また、免責許可確定によって復権するまでは職業制限が生じる場合があります。士業・警備員など、職業制限の対象になると通常通りに仕事ができなくなりますし、その結果、収入が減少・ゼロになるリスクも生じかねません。
仕事に行かないことを不審に思われると自己破産がバレるリスクが高まります。
※移動制限については、「自己破産すると職業制限がかかる仕事は?復権するまでの期間と合わせて解説」で詳しく解説しているので、あわせてご参照ください。
稀にバレずにできる可能性もある
手続きの性質上、実家暮らしだと家族にバレる可能性が高い自己破産ですが、次の事情があれば例外的に家族に内緒で自己破産する余地が残されています。
- ①家族と同居していない場合
- ②実家で家族と同居中でも家計が別々の場合
- ③実家で家族と同居中でも自宅・自動車などが家族名義の場合
- ④家族が連帯保証人の借金が存在しない場合
- ⑤家族からお金を借りていない場合
なお、「①~⑤のいずれか1つに該当すれば自己破産を内緒にできる」というわけではありません。基本的には「①~⑤のすべての状況が揃っていてはじめて実家暮らしでも家族にバレずに自己破産できる」という関係にあるとご理解ください。
※家族に内緒で自己破産できるケースについては、「自己破産は家族に内緒でできる?家族にバレるケースと手続の際の注意点を詳しく解説」で詳しく解説しているので、あわせてご参照ください。
①家族と同居していない場合
債務者本人が家族と同居していない場合には、親などにバレずに自己破産をやり遂げやすいといえるでしょう。
なぜなら、裁判所から届く郵便物を家族に見られる心配もなければ、換価処分で財産を手放したことを知られる機会もないからです。
裁判所は債務者の現住所以外の場所に書類を発送することはありません。また、悪質な債権者でない限り、自己破産をした報復のような形で別住所の実家に督促等を実施することも考えにくいです。
②実家で家族と同居中でも家計が別々の場合
実家暮らしで家族と同居中でも、親世帯と家計が別々の状態なら自己破産がバレるリスクを軽減できます。なぜなら、世帯分離をしているケースでは、同居家族の必要書類の提出を求められない可能性があるからです。
一般的に、実家暮らしで家計を共にしている場合には、債務者の生活状況を把握するために収入がある家族全員分の収入証明資料の提出が求められます。
ただ、家計が別々の場合には債務者の暮らしぶりを把握する際に他の家族の収入を知る必要がありません。
したがって、「同じ不動産に居住しているだけで生活実態は別世帯」という状況であれば、書類関係をきっかけに実家の家族に自己破産を知られるリスクは軽減できるでしょう。なお、財産処分等が原因で自己破産がバレる可能性は否定できないため、「家計が別だから絶対にバレない」というわけではない点にご注意ください。
ワンポイント解説
同居家族の必要書類は裁判所によって運用が異なる
同居家族の収入証明資料を提出する必要があるか否かは裁判所ごとに運用が異なります。たとえば、同居家族の収入証明書等が標準資料として提出を求められる場合、裁判所の指示があるまで提出する必要がない場合、「家族に隠したい」などの事情を説明すれば提出が免除される場合など、多様な状況です。したがって、実家暮らしの債務者が自己破産を利用する際には、弁護士・司法書士に提出書類の範囲を確認して家族バレのリスクを事前に推し量るべきでしょう。
③実家で家族と同居中でも自宅・自動車などが家族名義の場合
自己破産で免責を狙うには債務者名義の財産が処分されますが、「処分対象になる債務者名義の財産がほとんど存在しない状況で、かつ、マイホーム・マイカーなどの主要財産が家族名義のケース」であれば、実家暮らしでも財産処分を知られずに済むので自己破産を内緒にしやすいでしょう。
なぜなら、財産処分のペナルティを受けるのは自己破産の恩恵を受ける債務者個人だけなので、家族名義の財産には換価処分の効力は及ばないからです(なお、不動産を債務者本人・家族で共有名義の場合には持分が処分対象になるので家族に内緒にすることはできません)。
ただし、財産処分を免れる目的で債務者から家族に名義変更をしてはいけません。なぜなら、免責不許可事由の1つである「財産隠し」に該当するため免責許可が得られにくくなるだけではなく、詐欺破産罪に抵触して刑事罰を科される可能性もあるからです。
(免責許可の決定の要件等)
第252条1項 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
1号 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
(詐欺破産罪)
第265条1項 破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者(相続財産の破産にあっては相続財産、信託財産の破産にあっては信託財産。次項において同じ。)について破産手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第四号に掲げる行為の相手方となった者も、破産手続開始の決定が確定したときは、同様とする。
1号 債務者の財産(相続財産の破産にあっては相続財産に属する財産、信託財産の破産にあっては信託財産に属する財産。以下この条において同じ。)を隠匿し、又は損壊する行為
2号 債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為
3号 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
4号 債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為
2項 前項に規定するもののほか、債務者について破産手続開始の決定がされ、又は保全管理命令が発せられたことを認識しながら、債権者を害する目的で、破産管財人の承諾その他の正当な理由がなく、その債務者の財産を取得し、又は第三者に取得させた者も、同項と同様とする。
引用元:破産法
④家族が連帯保証人の借金が存在しない場合
自己破産ではすべての借金が整理対象です。家族が連帯保証人になっていたり担保を提供している借金が存在すると、主債務者が自己破産に踏み出したタイミングで連帯保証人・担保提供者である家族が残債を一括請求されるという仕組みになっています。
つまり、債務者が抱えている借金のなかに家族が連帯保証人になっているものが存在しなければ、家族が残債の一括返済を求められることがないのでバレる心配はありません。
⑤家族からお金を借りていない場合
家族間でのお金の貸し借りも自己破産の対象です。債務者本人が黙って自己破産を申し立てたとしても、借金関係が調査されて家族から借金していることを秘密にできません。すると、債権者である家族の元に裁判所から通知が届くことになるので自己破産がバレてしまうでしょう。
つまり、家族から借金をしていない状況であれば、自己破産がバレるリスクを軽減できると考えられます。
なお、自己破産申立て前・破産手続き中に債権者である家族にだけ優先的に借金を返済すると免責不許可事由である「偏頗弁済」に該当する結果、免責許可が得られにくくなる点にご注意ください。
(免責許可の決定の要件等)
第252条1項3号 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
引用元:破産法
※免責不許可事由については、「免責不許可事由に該当すると自己破産が認められない?該当するケースと対処法を解説」で詳しく解説しています。あわせてご参考ください。
自己破産同居の家族にバレる典型的ケース
家族にバレずに自己破産を利用したいと希望するのなら、同居家族にバレる典型的なパターンを把握しておくことが重要です。
特に、破産手続き中に生じるものだけではなく、自己破産後の生活にも家族バレのリスクが存在するということを覚えておきましょう。
①借金問題が複雑で管財事件として扱われる場合
自己破産を申し立てると、管財事件・ 同時廃止事件のいずれかの事件類型に振り分けられて手続きが進められます。
管財事件に振り分けられると次のようなリスクに晒されるため、家族にバレる可能性が高まるでしょう。
- 破産手続きが省略されないので免責までに時間がかかる
- 破産管財人の報酬として高額の予納金を用意しなければいけない
- 破産手続き中の制限事項が生じる
- 財産処分を回避しにくい状況にある
管財事件・同時廃止事件のどちらに振り分けられるかについて債務者側が希望を出すことはできません。客観的な状況から裁判所が判断するため、管財事件に振り分けられる見込みの場合には自己破産が同居家族にバレる可能性が高まると覚悟しましょう。
※管財事件・同時廃止事件については、「自己破産の管財事件・少額管財事件・同時廃止事件とは?手続きの違いや決定基準について詳しく解説!」で詳しく解説しています。あわせてご参考ください。
②家族や親族から借金をしている場合
親・兄弟・親族などから借金をしている場合には自己破産が確実にバレます。なぜなら、債務者が自己破産を申し立てた段階で、裁判所からすべての債権者に対して「破産手続開始通知書」が郵送されるからです(普通郵便)。
家族間でのお金の貸し借りであったとしても、親は消費者金融などと同じ「債権者」という立場です。自己破産はすべての借金問題を清算する手続きなので、「家族の借金だけは別」と柔軟な対応は許されません。
家族に対する借金だけを優先的に返済すれば「偏頗弁済」と扱われますし、破産手続申立ての段階で「家族からの借金」を提出資料に記載しないと「虚偽申告」に該当するため、免責許可を受けられなくなってしまいます。
したがって、家族から借金をしている場合に、確実に免責許可獲得を目指すのなら、自己破産のことを家族に正直に告げるしかないでしょう。
③借金を滞納して自己破産のタイミングが遅れた場合
「家族にバレるか不安だ」などの理由で債務整理に踏み出すタイミングが遅れると、借金の滞納状況が深刻化して家族にバレるリスクが生じます。
なぜなら、消費者金融などの貸金業者からの借金を滞納すると、次のような滞納ペナルティが科されるからです。
- 携帯電話に何度も取り立ての電話がかかってくる
- 実家に督促状・催告書などの郵便物が送付される
- 実家の固定電話に督促電話がかかってきたり、自宅に担当者が直接訪問してくる
- 強制執行が実行されて財産・給料・預貯金などが差し押さえられる
消費者金融や債権回収会社は、貸金業のプロであると同時に借金回収の専門業者でもあります。滞納状況が深刻化するほど取り立て態様も厳しくなるため、家族にバレるだけではなく不安を与えることになるでしょう。
特に、「強制執行」という最終段階になると、自己破産における財産処分よりも厳しい範囲で差し押さえが実施される可能性が高いです。つまり、「自己破産の財産処分が嫌だ」と考えて借金問題を放置しても、いずれは自己破産と同レベルの処分制限を与えられかねないということです(しかも、借金問題自体は解決しません)。
したがって、自己破産を選択するか否かは別問題として、債務整理に踏み出すタイミングはできるだけ早い方が良いと考えられます。家族バレの心配なども多いとは思いますが、弁護士・司法書士に相談をしてリスクを軽減しながら手続きを進めてもらいましょう。
④同居している親の収入証明書の提出を求められる場合
実家暮らしの場合、自己破産手続きにおいて同居家族関係の書類の提出が求められる可能性が高いです。
なぜなら、破産手続きの開始決定の要件として、「支払い不能であること」「債務超過であること」が求められているため、債務者の生活実態を詳しく調査する必要があるからです。
たとえば、親が働いていて高い収入を得ている場合には「親の源泉徴収票・課税証明書・給与明細」の提出が求められます。また、親が年金を受給している場合には「年金受給証明書」が必要です。さらに、家賃や光熱費などの支払いを家族が負担しているのなら、領収書・振込用紙が必要になることもあります。「家計収支表(家計簿)」の作成に家族の協力が不可欠なこともあるでしょう。
このような家族名義の書類を債務者本人が勝手に用意するのは不可能に近いです。また、家族にバレるのを嫌っていい加減な書類を作成・提出すると免責不許可事由に該当するリスクも避けられません。
したがって、債務者本人が同居家族と別家計で暮らしているような特殊なケースではない限り、提出書類の関係で自己破産を打ち明けざるを得ないと覚えておきましょう。
※自己破産手続きの提出書類については、「自己破産手続の必要書類にはどんなものがある?書類によっては周囲にバレるリスクも」で詳しく解説しています。あわせてご参考ください。
⑤20万円以上の財産を所有している場合
先ほど紹介したように、自己破産を利用する場合には債務者名義の主要財産の処分を免れられません。
たとえば、ローン完済済みのマイカーであったとしても、その段階における市場価格が20万円以上なら処分対象です。また、実家が債務者名義の場合、競売手続きにかけられるので退去を避けられません。同居家族含めて引越しをする必要があるため、家族に内緒にするのは難しいでしょう。
⑥自己破産後に闇金から郵便物が届いた場合
自己破産後に闇金から郵便物が届く可能性があるので、何かしらの金銭トラブルを抱えていることが同居家族にバレる可能性があります。
まず、自己破産を利用すると、破産手続き開始決定時・免責許可決定時の2回官報に氏名・住所などの個人情報が掲載されるということを押さえましょう。
官報とは国が発行している機関紙のこと。債務者が自己破産したことによって債権者が不当に利益を害することがないように、自己破産情報が官報に掲載されて広く国民に周知されます。
そして、闇金のなかには、官報に掲載された破産者の情報をチェックして自宅に郵便物を送付するという営業手法を取る業者が少なくありません。実家に不審な郵便物が届くと家族に疑念を抱かれるきっかけになるでしょう。
※自己破産の官報掲載については、「自己破産者が掲載される官報とは?官報掲載により周囲にバレるリスクがあるのかを解説」で詳しく解説しています。あわせてご参考ください。
ワンポイント解説
官報を家族に見られる可能性は低い
建前上、官報は「国民への周知」を目的とするものですが、実際に官報を定期的に読んでいる人はほとんどいませんし、毎日の膨大な掲載量から債務者の自己破産情報が見つかる可能性は極めて低いでしょう。また、官報掲載情報は公開日から30日を経過するとネットで無料検索できなくなるため、官報経由で家族に自己破産がバレる心配はないと考えて差し支えありません。
⑦ブラックリストに登録されたことで親に怪しまれた場合
自己破産に限らず、個人再生・任意整理を利用した場合には、信用情報機関に事故情報が登録されます(登録期間は、自己破産・個人再生が約10年、任意整理が約5年です)。
すると、いわゆる「ブラックリスト入り」になり、日常生活に次のような制限事項が生じるために家族に借金トラブルを抱えていたことがバレる可能性が高いです。
- クレジットカードが使えなくなる(現在発行中のカードは強制解約・新規発行は審査落ち)
- 住宅ローンなどの審査に通らない
- 子どもの奨学金借り入れ時に連帯保証人・保証人資格が認められない
- 携帯電話の割賦販売に影響が出る(端末代金を分割払いにできない)
- 賃貸物件の入居・更新審査に影響が出る(信販系の家賃保証会社付き物件)
たとえば、債務者名義で発行したクレジットカードが使えなくなるので、当然家族カードも使用不可になります。同居家族に家族カードを渡している場合には、クレジットカードを手放すことを不審に思われるでしょう。
また、マイホームなどの購入を検討する際にも、債務者名義だけではローン審査に通らない公算が大きいので、家族への説明に窮する可能性があります。
このように、債務整理後はブラックリストによる制限事項が日常生活に生じるので、「債務整理を利用したからひと安心」と油断するのではなく、ブラックリスト情報が抹消されるまでの約5年~10年間は慎重に生活するべきでしょう。
※ブラックリスト登録期間中に発生するデメリットへ適切な対策を実践すれば家族バレのリスクを大幅に軽減できる可能性があります。これらの対処法については、「債務整理と信用情報機関の関係は?ブラックリストに載った場合のデメリットと対処法を解説」で詳しく解説しています。あわせてご参考ください。
家族にバレずに自己破産をするためにできる工夫
実家暮らしの自己破産は同居家族にバレる「可能性が高い」ですが、「絶対にバレる」というわけではありません。ここまで紹介したように、債務者の状況次第では実家暮らしでも内緒で自己破産による免責を狙うことは不可能ではないでしょう。
そして、内緒で自己破産を狙える可能性がある場合には、弁護士・司法書士に依頼をしたうえで、少しでも家族にバレるリスクを軽減するために工夫を凝らしてもらうのがポイントです。
①弁護士に依頼をして自己破産手続きを代理してもらう
次のように、自己破産利用時に弁護士の力を頼れば実家の同居家族にバレるリスクを大幅に軽減できます。
- 破産手続きの進行を代理してくれる
- 裁判所・債権者からの郵便物はすべて法律事務所宛に届く
- 少額管財事件を使えるので免責許可決定までの期間を短縮できる(費用負担も軽減)
特に重要なポイントは、「少額管財事件」を利用できるという点です。
少額管財事件とは、管財事件に振り分けられる事情が存在したとしても、弁護士が代理人に就いていることで破産手続きを簡略化できる事件類型のことです。本来破産管財人が担当する調査等を弁護士が代わりに処理するため、スムーズなスケジューリングで免責許可を目指せます。
なお、同じく法律の専門家である司法書士に依頼をしても少額管財事件は使えません。同時廃止事件に分類されるシンプルな自己破産なら債務者本人だけで手続きを進めるのも間違いではありませんが、管財事件に振り分けられる可能性が高いのなら、かならず弁護士に依頼をして少額管財事件の枠組みで家族にバレるリスクを軽減させましょう。
②弁護士・司法書士に依頼をして債権者からの取り立てを即時停止する
弁護士・司法書士に自己破産を依頼すれば、債権者からの取り立てがきっかけで実家の同居家族に借金の存在がバレるのを回避できます。
債務者からの依頼を受けた専門家が最初にする仕事は、「債権者に受任通知を送付すること」です。受任通知には債権者のすべての督促行為を禁止する効果があります(貸金業法第21条1項9号)。
つまり、弁護士・司法書士に自己破産を依頼するだけで、自宅に督促状等が郵送されることもなくなりますし、債権者から電話がかかってくる恐怖に怯える必要もありません。家族にバレる心配がひとまずなくなるので、自己破産手続きの進行のみに集中しやすくなるでしょう。
※受任通知については、「債務整理をすると借金の督促が止まるって本当?受任通知の効力について解説」で詳しく解説しています。あわせてご参考ください。
③自己破産以外の選択肢も柔軟に検討する
弁護士・司法書士に依頼する最大のメリットが、自己破産以外の選択肢も視野に入れて借金問題解決方法を検討してくれる点だといえるでしょう。
「借金問題を解決したい」「家族にバレたくない」という2つの希望を叶える手段は自己破産だけではありません。
確かに、自己破産の「借金返済義務の帳消し」は魅力的です。ただ、自己破産は「家族にバレたくない」という希望と両立させるのは難しいものですし、個人再生・任意整理でも借金問題の解決は可能(しかも、実家の同居家族にバレるリスクを軽減できる)だということを忘れてはいけません。
手続き |
借金減額効果 |
家族にバレるリスク |
自己破産 |
大きい
(借金返済義務の免責) |
大きい |
個人再生 |
中程度
(借金元本の減額) |
中~大 |
任意整理 |
比較的小さい
(将来利息のカット) |
小さい |
まず、個人再生は借金総額に応じて元本自体を減額することが可能な債務整理手続きです(最大1/10)。自己破産のような財産処分・各種制限事項も生じないため、家族にバレるリスクを大幅に軽減できるでしょう。ただし、裁判所における手続きが自己破産以上に長期化するリスクがある点にはご注意ください。
次に、任意整理は将来利息をカットして元本のみの分割払い計画を作り直す債務整理手続きです。自己破産・個人再生に比べると借金減額効果は弱いですが、債務者を苦しめる諸悪の根源である「厳しい利息負担」から解放されるだけでも実質的な減額効果は相当強いと考えられます(最終的な返済負担総額は約1/2になることも)。裁判所を利用する必要もないため手続きが短期間で終了するのも魅力的です。
そして、債務者の状況次第では、個人再生・任意整理で借金返済状況を改善して家族にバレるリスクを回避するのが最適なこともあるはずです。特に、毎月安定して給与を得ている状況なら、個人再生・任意整理後の分割払い生活を送ることも不可能ではないでしょう。
弁護士・司法書士は、債務者の状況・希望を総合的に考慮し、どの手続きが生活再建に役立つかを丁寧に判断してくれます。債務整理実績豊富な専門家は多様なノウハウを有しているので、借金問題が深刻化する前にご相談ください。
実家暮らしで自己破産をすると家族に迷惑はかかるのか?
実家暮らしの債務者が自己破産を検討するときには、「家族にバレるか不安」というのと同じように、「家族に迷惑をかけたくない」という気持ちを抱くでしょう。
そこで、実家暮らしの状況で自己破産を利用した場合に家族に生じるデメリットがあるのか、ある場合にはどのようにして対処するのかについて見ていきましょう。
原則、家族に迷惑はかからない【その理由3つ】
まず、実家暮らしであろうとなかろうと、原則として債務者本人が自己破産を利用しても家族に迷惑がかかることはありません。
その理由は次の3点です。
- ①家族の収入と債務者本人の借金問題は無関係だから
- ②債務者本人が自己破産しても家族名義の財産は処分されないから
- ③債務者本人の借金問題は家族に法的な影響を及ぼすものではないから
①家族の収入と債務者本人の借金問題は無関係だから
債務者の親がどれだけ高収入だったとしても、借金の返済義務を負担するのは債務者本人だけです。家族が返済義務を負担することはありません。
それに、消費者金融などの貸金業者は債務者の親に代わりに返済を求めることを禁止されています。
悪質な貸金業者や闇金のなかには家族にも取り立てを実施するケースがありますが、これは貸金業法に抵触する違法行為なので、身に危険が迫っているのなら警察に通報をする、また、家族への督促を止めるように弁護士・司法書士に相談すれば解決するでしょう。
②債務者本人が自己破産しても家族名義の実家が差し押さえられることはないから
債務者の家族がどれだけ高額な資産を保有していたとしても、借金返済義務を負担しない以上、家族名義の財産が財産処分の対象になることはありません。
また、実家暮らしの債務者が借金を滞納しつづけても家族名義の自宅が差し押さえられることはないです。
ただし、債務者本人の借金を担保保証するために家族名義の自宅に抵当権を設定しているような状況では、自己破産の申し立てによって自宅が処分されるリスクが生じる点にご注意ください。
③家族が連帯保証人でない限り債務者本人の借金では迷惑がかからないから
債務者本人が自己破産をしても、連帯保証人になっていない限り、家族には直接的な影響は一切発生しません。
たとえば、自己破産を利用した債務者本人の信用情報にはキズがつきますが、家族の信用情報はホワイトのまま。また、家族の仕事に影響が出るはずもなく、転職時に不利に働くようなこともないです。
さらに、親が自己破産しても外部に知られる可能性は極めて低いため、子どもの結婚に支障が出ることもありません。もちろん、自己破産を利用した債務者本人の結婚にも一切法的問題が生じないのは言うまでもないでしょう。
※自己破産と結婚の関係については、「自己破産は結婚にも影響する?生活上の制限と自己破産がバレるかどうかを解説!」で詳しく解説しています。あわせてご参考ください。
例外的に家族に迷惑をかけるケース2つ
原則として債務者本人の借金問題が同居家族に迷惑がかかることはありませんが、次の2つのケースは例外的に家族に迷惑が生じる可能性が高い点に注意が必要です。
- ①家族が借金の連帯保証人になっているケース
- ②債務者名義の自宅に家族と同居しているケース
①家族が借金の連帯保証人になっている場合
家族が連帯保証人になっている借金が存在ある状況で自己破産を利用すると、連帯保証人である家族が返済負担を強いられます。
連帯保証人には、「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」が認められません。つまり、主債務者が契約通りに返済しない状況になったとき、債権者から残債を一括請求されると拒絶できないということです。
連帯保証人である家族が残債の一括請求に応じられないと、家族の信用情報にキズがつき、最終的には家族名義の財産・給料・預貯金が差し押さえられることになります。
※連帯保証人の地位については、「連帯保証人は一括請求を断れない?分割返済は可能?請求された場合の正しい対処法を解説」で詳しく解説しています。あわせてご参考ください。
②債務者名義の自宅に家族と同居している場合
自己破産をすると債務者名義の自宅が競売手続きにかけられるため、同居家族も生活拠点を奪われます。
「マイホームが奪われてしまった」という喪失感だけではなく、引越し・転校などの現実的な負担も避けられません。
賃貸物件でも債務者名義なら同居家族に迷惑がかかる可能性がある
自己破産の処分対象は「債務者本人の財産」だけなので、賃貸物件に居住中の場合には、自己破産の財産処分で直接的に生活拠点が奪われるということはありません。
ただし、自己破産後にブラックリストに登録されることが原因で、賃貸物件に居住中でも次のような観点で家族にも生活拠点を奪われかねないというリスクが生じるおそれがあります。
- 信販系の家賃保証会社付き物件の場合には、更新審査に通らず転居を強いられる可能性がゼロではない
- 家賃の支払い方法がクレジットカード限定の場合には賃料が払えなくなる
もちろん、賃借人の地位は借地借家法で強く保障されているので契約違反が発生していない状況でいきなり強制退去を迫られる可能性はありませんが、ブラックリスト登録等が原因で賃料未払いが発生すると退去リスクが高まるのでご注意ください。
迷惑をかけたくない場合に考えられる対策
どうしても借金返済生活を終了させたいのなら、家族を説得してでも自己破産を選択するのも選択肢のひとつです。
ただ、自己破産によるデメリットは想像以上に重いもの。家族が説得できない場合や、どうしても家族に借金の存在を打ち明けられない場合には、家族への迷惑を避けるための対処法を検討しましょう。
①家族が連帯保証人なら他の借金について任意整理を利用する
家族が連帯保証人になっている借金が存在する場合には、他の借金について任意整理を利用する方法が効果的です。
他の借金について任意整理を利用すれば、当該借金について将来利息をカットして元本のみの3年程度の分割払い計画を作り直せます。家族が連帯保証人の借金については契約通りの返済をつづけなければいけませんが、他の借金についての返済負担が大幅に軽減されているため、任意整理前よりは返済状況を改善できるでしょう。
たとえば、家族が奨学金の保証人になっている場合、賃貸物件の賃料を滞納していて家族が保証人になっている場合などに有効な手段です。
ただし、任意整理交渉でまとまった和解条件次第では、最終的な返済負担総額は軽減されるものの、毎月の返済額自体は増えるというケースが少なくありません。かならず弁護士・司法書士に相談をして、完済まで継続可能な和解条件を引き出してもらいましょう。
ワンポイント解説
家族と一緒に債務整理を利用するのも選択肢のひとつ
家族が連帯保証人になっている状況において他の借金について任意整理を利用するだけでは返済状況の抜本的な解決が見込めない場合には、債務者本人・家族が一緒に債務整理に踏み出すのも選択肢のひとつです。家族共々信用情報にキズがつくなどの制限が生じますが、主債務者・連帯保証人の返済義務を同時に軽減できる点でメリットがあります。ただし、複数人の返済義務について債務整理を利用する場合にはタイミング・手続き進行に慎重な判断を要するため、かならず専門家のサポートを受けましょう。
②債務者名義の自宅に家族と同居しているなら個人再生・任意整理を利用する
自宅の処分を免れたいのなら、個人再生・任意整理を利用する方法がおすすめです。
なぜなら、個人再生・任意整理には「財産処分」のデメリットは存在しませんし、個人再生の住宅ローン特則を利用すれば、住宅ローン返済中のマイホームでも手元に残せるからです。
※個人再生の住宅ローン特則については、「個人再生の「住宅ローン特則」なら債務整理をしながら自宅は守れるって本当?」で詳しく解説しています。あわせてご参考ください。
【注意!】自己破産前に離婚で財産を守るのはリスクが高い
自己破産の財産処分でマイホーム・自動車などが処分されるのを避けるために、離婚という方法を選択するケースが散見されます。
これは、離婚時には配偶者に財産分与をすることが認められているため、自己破産前に離婚をして配偶者に財産を移転し、債務者本人は所有財産がほとんどなくなった状態で自己破産を利用すれば、財産処分を受けることなく借金返済義務が免責され、マイホームなどの財産を守れるという考えに基づくものです。
しかし、このような手法は危険なので安易に手を出すべきではありません。なぜなら、離婚による財産分与が「財産隠し」とみなされると自己破産の免責不許可事由に該当するために免責許可決定を得られない可能性が生じるからです。
また、財産処分を免れる目的ではないとしても、自己破産直前に離婚をして債務者本人から配偶者に財産が移転している履歴が存在するだけで破産手続きに支障が生じるリスクも避けられません。
したがって、自己破産と離婚を同時期に検討している場合には、かならず弁護士・司法書士に相談をしてタイミングを見計らってください。
まとめ
実家暮らしの債務者が自己破産をするとき、家族に内緒にできるのは「家族が連帯保証人になっていない・家族と家計が別・自宅の名義が債務者にはない」などの特別な事情が存在する場面のみ。基本的に自己破産は内緒にしにくい手続きだと理解したうえで、弁護士に家族バレを防ぐ最大限の努力をしてもらうべきでしょう。
そもそも、自己破産を検討中の債務者が最優先に考えるべきなのは、「同居家族への迷惑を避けつつ適切な手続きで借金問題を解決すること」。債務整理のタイミングが遅れるほど生活再建は困難になりますし、手続き選択を疎かにすると家族にもデメリットが生じるからです。
債務整理実績の豊富な専門家に相談すれば、債務者の状況を総合的に考慮して適切な方法を検討し、慎重に手続きを進めてくれます。これ以上借金問題が深刻化する前にご相談ください。
実家暮らしの債務者が自己破産するときのQ&A
実家暮らしでも家族に内緒で自己破産することは可能ですか?
債務者本人がどこで生活していても自己破産をすること自体は可能です。ただし、自己破産は財産処分や手続き中の制限事項が多いため、家族に内緒にするのは難しいものだと理解しましょう。どうしても家族にバレずに自己破産を成功させたいのなら、弁護士に依頼をして慎重に手続きを代理してもらうしかありません。
実家暮らしで自己破産をすると、どのようなタイミングで家族にバレますか?
たとえば、債務者名義の財産が処分されるので、所有財産が多いほど同居家族にバレる可能性は高まります。また、家族の収入証明資料の提出を求められた場合には、家族の協力なくして書類を用意するのは難しいでしょう。さらに、無事に免責許可決定が確定したとしても、その後債務者の信用情報にキズがついて日常生活に多様な制限事項が生じるため、家族に内緒にするのは簡単ではありません。「家族に内緒にしたい」という希望を叶えるのは不可能ではないですが、かなりハードルが高い課題だとご理解ください。
実家暮らしで自己破産をすると家族に迷惑がかかりますか?
借金問題は債務者個人の問題なので、原則として家族に迷惑はかかりません。ただし、現在同居中の自宅が債務者名義なら財産処分を免れられないので家族も引越しを強いられます。また、借金のなかに家族が連帯保証人になっているものがあると、債務者本人に代わって家族が残債の一括返済義務を負担するため、債権者からの請求に応じられないと強制執行等のリスクに晒されます。任意整理・個人再生を視野に入れさえすれば家族への迷惑を回避できるので、弁護士・司法書士のアドバイスを参考にしてください。
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