公務員だからといって債務整理手続きの選択に制限はかからない
法律などで「公務員は債務整理ができない」のような制限はされていないため、公務員であっても債務整理を行えます。債務整理には「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類がありますが、公務員だからといって手続きの選択に制限はかかりません。
各手続きには異なる特徴があるため、債務整理を検討している公務員の方は、自身の状況にあった手続きを選択するようにしてみてください。
- 任意整理:利息のカットなどを債権者に交渉する手続き
- 個人再生:借金自体を1/5〜1/10までに減額する手続き
- 自己破産:借金を帳消しにする手続き
任意整理は利息のカットなどを債権者に交渉する手続き
任意整理とは、弁護士や司法書士から利息のカットなどを債権者に交渉してもらう手続きのことです。任意整理をすれば、消費者金融などの貸金業者から課される高利率の利息負担から逃れられます。
たとえば、現在借金総額500万円(年利率15%)を抱えている場合、任意整理しなければ完済までに次のような利息負担を強いられます。
毎月の返済額 |
利息負担総額 |
支払い総額 |
返済期間 |
10万円 |
2,895,537円 |
7,895,537円 |
79回 |
12万円 |
2,106,927円 |
7,106,927円 |
60回 |
15万円 |
1,508,492円 |
6,508,492円 |
44回 |
任意整理をすれば、利息発生総額を0円に抑えたうえで、元本のみの分割払い計画を作り直せます。返済期間の短縮化・支払い負担総額の減額によって、効率的に生活再建を目指せるでしょう。
ただし、たとえば任意整理で3年完済の分割払い計画で和解契約が成立した場合、毎月の返済額は約14万円となります。任意整理前の毎月の返済額よりも月々の負担が増えるリスクがあるのでご注意ください。
個人再生は借金自体を1/5〜1/10までに減額する手続き
個人再生とは、借金自体を1/5〜1/10までに減額できる手続きのことです。個人再生をすれば、消費者金融などの借金元本自体を減額して原則3年の分割払い計画を作り直せます。
次のように、住宅ローンを除く借金総額に応じて元本減額率が定められています。
借金総額(住宅ローンを除く) |
減額割合(=最低弁済額) |
100万円未満 |
借金全額(減額なし) |
100万円~500万円未満 |
100万円に減額 |
500万円~1,500万円未満 |
1/5に圧縮 |
1,500万円~3000万円未満 |
300万円に減額 |
3,000万円~5,000万円 |
1/10に圧縮 |
たとえば、消費者金融から総額500万円の借金を抱えている公務員が個人再生をした場合、減額率は1/5なので借金返済総額を100万円に減額できます。さらに、3年の分割払い計画を作り直せるので、毎月の返済額は約3万円で収まります。
「自己破産のデメリットを回避したい」「公務員という立場が原因で借金総額が高額になってしまったので任意整理以上の減額効果が欲しい」と希望する場合には、個人再生で借金問題解決を目指すべきでしょう。
なお、個人再生は複雑な手続きになるので、スムーズな手続き進行を希望するのなら弁護士・司法書士に依頼することをおすすめします。
自己破産は借金を帳消しにする手続き
自己破産をすれば、消費者金融などからの借金返済義務を帳消しにできます。そのため、自己破産は「今すぐに借金返済生活を終わらせたい」と希望する場合におすすめの債務整理手続きだといえるでしょう。
ただし、借金返済義務の免責というメリットを手にするためには、相応のデメリットに耐えなければいけません。自己破産をすると次のようなデメリットを避けられないので、メリット・デメリットを天秤にかけて、自己破産を利用するべきかご判断ください。
- 債務者名義の財産が処分される
- 破産手続き中は職業制限が生じる可能性がある
- 破産手続き中は移動制限が生じる(出張のたびに裁判所の許可が必要になる)
- 破産手続き中は郵便物を自分で管理できなくなる
- 自動車税や罰金、慰謝料などは免責の対象外になる
公務員が債務整理をしても基本的に家族や仕事に影響することはない
借金問題に悩む公務員の方の中には「債務整理を行うと家族や職場にバレたり、処分を受けたりするのではないか?」と考えて債務整理をおこなうことを躊躇している人もいるでしょう。
しかし、公務員が債務整理をしても、原則として家族や職場にバレることはありません。
ただし、例外として共済組合から借入をしている場合や、自己破産により職業制限を受ける職種に就いている場合は注意が必要です。選択する債務整理の方法によっては職場にバレたり、いままでどおりに仕事を続けられなかったりするリスクがあります。
この項目では「公務員が債務整理を行うと職場にバレたり、処分を受けることはあるか?」について詳しく解説します。
原則的に公務員が債務整理をしても職場にバレることはない
債務整理を利用しても職場にバレる可能性は低いです。借金問題はあくまで債務者と債権者の問題であるため、裁判所や債権者から第三者へ通知が行くことは基本的にないからです。
むしろ、次のように、公務員が借金問題を放置して債務整理に踏み出すタイミングが遅れるほど、職場に借金問題を抱えていることがバレる可能性が高まる点にご注意ください。
- 債権者が職場に電話連絡・訪問による取り立てを実施する(携帯電話への連絡がつかない場合に限り)
- 滞納期間が長期化して給料が差し押さえられると国・自治体が強制執行手続きに巻き込まれる
そのため、「債務整理をすると職場にバレるか不安」ではなく、「債務整理を利用しないと職場に借金問題がバレる可能性が高まる」と考え方を切り替えて、借金問題と真正面から向き合うべきだと考えられます。
債務整理が公務員の処分につながることもない
公務員が債務整理を利用しても懲戒処分(戒告・減給・停職・免職)を科されません。
公務員に対して懲戒処分を科す場合には、国家公務員法・地方公務員法に定められている懲戒事由に該当する事実が存在しなければいけません。しかし、「借金問題を抱えていること」「債務整理を利用したこと」は法定の懲戒事由には該当しないと考えられています。
公務員が懲戒処分を受けるのは次の場合に限られます。
(懲戒の場合)
第82条1項 職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
1号 この法律若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第五条第三項の規定に基づく訓令及び同条第四項の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合
2号 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
3号 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
引用元:国家公務員法
(懲戒)
第29条1項 職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
1号 この法律若しくは第五十七条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
2号 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
3号 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
引用元:地方公務員法
懲戒処分の対象になる例には、横領や贈収賄などの職務に関連した犯罪行為・痴漢や飲酒運転などの公務員としての信用を失墜させるような犯罪行為・パワハラやセクハラなどの非行行為・副業禁止規定違反などが挙げられます。
つまり、個人的な借金問題は、公務員としての職務・仕事遂行能力には無関係の出来事と考えられているので、懲戒処分の対象にはなり得ないのです。
債務整理をしても「公務員」という身分を奪われることはないので、この点については安心して借金問題解決に踏み出してみてください。
債務整理が家族に直接的な影響を与えることはない
債務整理を検討している公務員の方の中には、「家族に影響があるのでは?」などと考えている人もいるかもしれません。
結論、債務整理は債権者との手続きであるため、第三者である家族に直接的な影響はありません。そのため、債務整理が原因で家族の進学や就職などに悪影響が出ることはありません。
しかし、債務整理には債権者自身へのリスクがあります。そのリスクが影響して、間接的に家族との生活に影響が出る可能性はあります。
具体的には、下記のような影響が考えられます。
- 自己破産によって自動車や持ち家が処分され、生活に影響が出る
- いわゆるブラックリスト入りとなるため、自身名義ではクレカやローンの審査に通りづらくなる
- 奨学金などの保証人になれない可能性がある
債務整理をする場合には、自身におき得るリスクだけでなく、それによって家族との生活に影響が出る可能性があることまで十分に理解しておくことが大切です。
債務整理のデメリットについては、「そもそも債務整理自体にはデメリットがある」の見出しで詳しく解説しているため、債務整理を検討している公務員の場合には参考にしてみてください。
公務員であるがゆえに特別起こり得る債務整理のリスク
公務員であったとしても、借金問題を抱えているのなら債務整理で返済状況の改善を検討するべきです。ただし、債務整理をする際には、公務員という職業柄、特別に起こり得るリスクがあることを十分に理解しておきましょう。
- 共済組合からの借金を債務整理対象に含めると職場にバレる可能性がある
- 特別職の公務員が自己破産すると資格制限を受けるリスクが生じる
- 任意整理交渉ではボーナス払いを求められる可能性が高い
- 自己破産の場合は退職金の一部を現金で納める必要がある
それでは、公務員であるがゆえに特別起こり得る債務整理のリスクについて、それぞれ具体的に見ていきましょう。
共済組合からの借金を債務整理対象に含めると職場にバレる可能性がある
公務員の場合、福利厚生の一環として共済組合による貸付け制度を利用できます。
「金融機関からの融資よりも比較的低金利で借りられる」「連帯保証人の提供不要」「給料からの天引き方式で返済できる」「信用情報にかかわらず融資を受けられる」など、公務員にとってメリットが大きいため、債務整理を検討している公務員の多くは共済貸付けを利用していることでしょう。
このような状況のとき、共済貸付けを債務整理の対象に含めてしまうと職場に借金トラブルを抱えていることがバレる可能性が高いため注意が必要です。
もちろん、共済貸付けを債務整理の対象に含めて職場に借金バレをしても処分等には至りません。とはいえ、社会的信用が失墜するのを避けたいのなら債務整理時に次のポイントを押さえましょう。
- 全債務が整理対象になる自己破産・個人再生は避ける
- 共済貸付け以外の借金について任意整理を実施する
このように、任意整理なら柔軟に返済計画を作り直せる反面、公務員であることから厳しい和解条件を提示されるおそれが高いため、和解交渉は計画性をもって丁寧に進めなければいけません。
弁護士・司法書士に依頼すれば債務者の希望をできるだけ反映した和解計画案作成に尽力してくれるので、共済貸付けを利用している場合にはかならず専門家の力を借りましょう。
特別職の公務員が自己破産すると資格制限を受けるリスクが生じる
公務員が「自己破産」による借金問題解決を希望する際には、資格制限を受ける可能性がある点に注意が必要です。
次のような役職に就いている公務員は、自己破産の手続き開始から免責の許可が決定するまでの間は仕事ができなくなります。
- 人事官
- 各種委員会(公正取引委員会・公害等調整委員会など)の委員長・委員
- 各種公庫(環境衛生金融公庫・住宅金融支援機構など)の役員
- 公証人役場の公証人
- 簡易郵便局局長
自己破産による職業制限を受けるのは、特殊な役職に就いている場合に限られます。つまり、一般の公務員は自己破産を申し立てても普段と変わらずに仕事をすることができるということです。
また、資格制限が生じる期間は、自己破産手続きがスタートしてから免責許可決定が確定して復権するまでの数か月間です。特別職の公務員が自己破産をしたからといって一生元の仕事ができなくなるわけではないのでご安心ください。
⚪︎自己破産で免責許可決定が得られなくても復権は可能
特別職の公務員が自己破産をした場合には、「免責許可決定の確定によって復権し、職業制限が解ける」という流れとなりますが、
免責不許可事由(財産隠し・深刻な浪費が原因)が存在する場合には免責許可が得られない可能性があります。
この場合には、自己破産における免責許可決定で復権を狙うことはできませんが、①借金を完済する・②個人再生に切り替えて「当然復権」を狙う・③任意整理に切り替えて「申し立てによる復権」を狙う・④10年経過による「当然復権」に期待する、という方法でふたたび公務員の特別職に復帰することができます。
仕事の状況などと照らし合わせて手続きを選択する必要があるので、特別職公務員として仕事をしている場合には、かならず弁護士・司法書士に相談しましょう。
任意整理交渉ではボーナス払いを求められる可能性が高い
公務員が「任意整理」による借金問題解決を狙う場合には、債権者との間で進める和解交渉に注意が必要です。
「公務員」という安定した職業に債権者が注目して、ボーナス払い・短期間での分割払いなどの厳しい条件を突きつけられる可能性が高いからです。
任意整理におけるボーナス払いとは、毎月の通常返済額に加算して、ボーナス月は追加で支払いを求められる返済方法のことを指します。ボーナス払いを強いられると手元に残るお金が減るため、「家計がひっ迫する」「住宅ローンの返済スケジュールに影響が出る」などの支障が生じます。
そのため、公務員ができるだけ負担を軽減しながら任意整理をするには、任意整理交渉に慣れた弁護士・司法書士に依頼をして有利な和解条件を引き出すのが得策です。
債務者個人だけで任意整理交渉を実施すると実践不可能な返済スケジュールを求められて生活再建を達成できないリスクがあるのでご注意ください。
自己破産の場合は退職金の一部を現金で納める必要がある
公務員が「自己破産」での解決を希望する場合には、退職金の一部を現金で納める必要がある点に注意しましょう。
まず、押さえる必要があるのは、自己破産で免責を狙うためには、債務者名義の財産などを処分しなければいけないという点。新得財産・差し押さえ禁止財産・99万円以下の現金などの「自由財産」だけは手元に残すことができますが、自由財産に含まれない財産は処分対象とされます。
そして、解雇処分などを受けない限り、公務員は高額の退職金を受け取ることが確約された職業です。つまり、退職金債権も債務者が所有している財産であると考えられるため、次の範囲において自己破産の際には換価処分を免れられないということです。
- ①退職時期が未定の場合:自己破産時点における退職金見込み金額の1/8が換価処分対象
- ②自己破産中に退職予定・自己破産前に退職済みで退職金受け取り前の場合:退職金の1/4が換価処分の対象
- ③すでに退職金を受け取っている場合:家計に流入したとみなされ、99万円以上の現金・20万円以上が全額処分対象
特に注意を要するのが、現段階において退職予定はなく、向こう数十年は公務員として勤務する予定があるケースです。
この場合には、現段階における退職金見込み金額の1/8が換価処分対象に含まれますし、自己破産手続き中に1/8相当額のお金を裁判所に支払わなければいけないからです。
つまり、公務員が自己破産をする際には、破産手続き中に退職金見込み額の1/4~1/8に相当する金額を自力で調達しなければいけないということです。
裁判所によっては分割払いを認めてくれるケースもありますが、退職金債権の1/4~1/8相当額を払えないという状況にもなりかねないでしょう。このような場合には自己破産を諦めざるを得ないため、柔軟に個人再生・任意整理を検討する必要があります。
このように、公務員が自己破産を希望する場合には乗り越えるべきハードルが少なくないので、かならず弁護士・司法書士に相談のうえ、現実的な生活再建方法を選択しましょう。
⚪︎職場にバレずに退職金見込額証明書を発行する方法とは?
自己破産選択時には財産調査のために裁判所へ「退職金見込額証明書」を提出しなければいけません。ただし、
職場に「自己破産するので退職金見込額証明書を出してください」とは素直に言いにくいものでしょう。
職場にバレずに退職金見込額証明書を貰うためには、①ファイナンシャルプランナーの相談に必要・②住宅ローン審査で必要・③親族が受ける融資の連帯保証人審査に活用したい、などの回答が役立ちます。
なお、就業規則に退職金についての詳細な規定が存在する場合には、就業規則のコピーを退職金見込額証明書に代用できる場合があるので、専門家までご相談ください。
そもそも債務整理自体にはデメリットがある
そもそもですが、債務整理をすること自体には様々なデメリットがあります。公務員である場合にも下記のようなデメリットがあるため、債務整理の前にはこれらを十分に理解しておきましょう。
- 債務整理後はいわゆる「ブラックリスト入り」の状態になる
- 債務整理したことが間接的に家族や職場にバレてしまうリスクはある
- 個人再生や自己破産の場合は官報に自分の情報が掲載される
債務整理後はいわゆる「ブラックリスト入り」の状態になる
債務者の職業が公務員であるか否かにかかわらず、債務整理を利用した後は信用情報機関に事故情報が登録されます。これは、「ブラックリスト入り」と言われるものです。
ブラックリストに登録されると、債務者の日常生活には次のようなデメリットが生じます。
- ①現在発行中のクレジットカードがすべて強制解約される(ETCカードなどの付帯サービスも利用不可)
- ②新規のクレジットカード発行が難しくなる
- ③新規でローンを組みづらくなる
- ④スマートフォンの端末代金の分割払いが難しくなる(一括購入なら可能。また、回線契約自体も問題ない)
- ⑤子どもの奨学金借入時に機関保証制度を強いられる(親の連帯保証人資格が認められない)
- ⑥賃貸物件の入居審査・更新審査に悪影響が出る(信販系の家賃保証会社付き物件のみ)
ただし、債務整理を原因とする事故情報は、任意整理の場合には最長5年、自己破産・個人再生の場合には最長7年で抹消されます。つまり、これらの期間が経過すればブラックリスト情報は抹消されるので、信用回復して事故情報登録前の状態に戻るということです。
そもそも、借金を2ヶ月以上延滞すると、「長期延滞」を理由にブラックリストに登録されてしまいます。公務員が背負う高額の借金を自力完済できないのであれば、遅かれ早かれ信用情報にキズがつくのは間違いないので、ブラックリスト入りは避けられない問題でしょう。
そのため、借金の自力完済が難しいのなら、今の段階で債務整理に切り替えて、信用回復の時期を前倒しする方が賢明といえます。弁護士・司法書士に相談すれば、ブラックリスト登録期間中のデメリット克服方法などについても具体的なアドバイスが得られるので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
債務整理したことが間接的に家族や職場にバレてしまうリスクはある
前述したように、債務整理はあくまで債権者との問題であるため、弁護士や裁判所からその事実を第三者に伝えることは原則ありません。ただし、自己破産をしたことが間接的に家族や勤務先に知られる可能性はあります。
具体的には、下記のようなケースが該当します。
- 債務整理に関する郵送物をみられる
- 自己破産によって財産を差し押さえられて家族に不審に思われた
- 給料が差し押さえられて、通知書が勤務先に届いた場合
債務整理に関する郵送物をみられたり、自己破産によって財産が処分されたりすると、家族に不審に思われてしまいます。その結果、債務整理したことを伝えなければならない状況になるため、家族に債務整理したことを隠すことはできません。
なお、依頼者の状況によりますが、借金問題を抱えていると給料が差し押さえられるケースがあります。その場合、勤務先に破産の通知書が郵送されるため、債務整理をしたことは隠せません。
個人再生や自己破産の場合は官報に自分の情報が掲載される
債務整理のうち、自己破産・個人再生を選択した場合には、氏名・住所などが官報に掲載されます。そのため、官報に情報が掲載されることによって、全国に対して債務者情報が発信される状態になります。
とはいえ、次の理由により、官報掲載によって家族・職場に借金問題がバレる可能性は極めて低いと考えられます。
- 官報を購読している人はほとんど存在しない
- そもそも官報の存在を知っている人も少ない
- 官報の閲覧方法は限定的(図書館・インターネット・販売所で購入のみ)
- Webで官報を無料閲覧できるのは発行日から30日以内
- 官報掲載情報はインターネット検索でヒットしない仕様になっている
そもそも、官報に情報が掲載されるのは、金融機関などの債権者が情報にアクセスしやすいようにするためであって、全国民に周知することを目的としているわけではありません。
公務員が自己破産・個人再生を利用して官報に掲載されたとしても、職場に借金問題がバレることは考えにくいので、過度に不安を覚えずに債務整理に踏み出すべきでしょう。
公務員の方が債務整理を行った実際の事例
「公務員が債務整理を行っても仕事には何の問題も生じない」とはいっても、実際に債務整理に踏み出すには勇気が要ることでしょう。
そこで、実際に債務整理に踏み出した公務員の事例を参考に、債務整理で借金問題をどれだけ改善できるかの具体的なイメージを掴みましょう。
借金総額1,100万円を個人再生で解決したAさんの例(40代男性・公務員)
Aさんは、趣味の品物をカード決済する頻度が高く、カードローンなどの借入を頼っているうちに借金総額が1,100万円に。
パートナーの月収を合わせると世帯月収が毎月約40万円あること、十数年前に購入したマンション(住宅ローン返済中)を手放したくないという希望から、住宅ローン特則を利用できる個人再生で借金問題解決に成功しました。
Aさんが実施した個人再生の概要は次の通りです。
- 個人再生によって借金総額1,100万円を220万円に減額(利息負担も免除)
- 減額後の220万円について3年の分割払い計画を作成(1ヶ月の返済額約6万円)
- マイホームの返済計画をリスケジュールして家計に余裕を作れた
- 自己破産を利用するとマイホーム処分を免れられないので個人再生を選択
- 借金総額が高額なので任意整理を断念
40代男性公務員の場合、所有財産が多く、借金総額も高額になるケースが少なくありません。
個人再生なら借金総額を大幅に減額したうえで財産処分も免れられるので、Aさんの状況には適した生活再建方法だったと考えられます。
引用:弁護士法人名古屋総合法律事務所
借金総額1,000万円を任意整理で解決したBさんの例(50代男性・公務員)
公務員ということで高額の住宅ローン審査に通ったBさんですが、想像以上に毎月のローン代金が家計を圧迫するようになったため、銀行・消費者金融からの借入を頼る機会が増えてしまいました。
借金総額が1,000万円に至ったことで個人再生を検討しましたが、住宅ローン特則の要件を充たさず断念。自己破産を利用するとマイホームの処分を免れられませんが、「マイホームを手放したくない」という希望を最優先にするために任意整理での解決を目指すことになりました。
Bさんが実施した任意整理の概要は次の通りです。
- 任意整理で将来利息をカット。元本のみの分割払い計画を作成。
- 毎月の返済額14万円・返済期間6年で和解契約成立(公務員であるため長期間の和解契約締結が可能)
- 個人再生の住宅ローン特則を利用できない状況でマイホームを手元に残すなら任意整理しか選択肢が残されていなかった
本来、任意整理では30か月〜36か月程度の返済計画を作成するのが一般的です。つまり、総額1,000万円の借金問題について任意整理を選択した場合には、毎月約30万円の分割払いを求められる可能性が高いということです。
ただし、Bさんの場合には、「公務員」という安定した職業であることが幸いし、通常では交渉がまとまりにくい和解契約案を成立させることができました。
そのため、公務員であることは借金総額が膨れ上がるリスクを抱える一方で、公務員以外の債務者よりも幅広い選択肢から債務整理手続きを検討しやすいというメリットも存在するので、すみやかに弁護士・司法書士にご相談のうえ、希望を叶えやすい債務整理手続きを提案してもらいましょう。
引用:みお綜合法律事務所
公務員が債務整理するなら弁護士・司法書士に相談しよう
公務員が債務整理で借金問題の解決を目指すなら、弁護士・司法書士への相談を検討しておきましょう。
もちろん、債務整理は債務者自身だけでも利用できますし、専門家を頼らなければ相談料・着手金・成功報酬などの費用を節約できます。
ただし、公務員が債務整理する際には注意点が少なくありませんし、弁護士・司法書士に依頼することには次の3つのメリットがあることを見落とすべきではないでしょう。
- 公務員としての事情を考慮して適切な債務整理手続きを選択してくれる
- 弁護士・司法書士に債務整理を依頼すれば債権者からの取り立てが即時停止する
- 弁護士・司法書士に債務整理を依頼すれば滞納ペナルティの深刻化を回避できる
それでは、公務員が債務整理利用時に弁護士・司法書士へ相談する3つのメリットについて、それぞれ具体的に見ていきましょう。
弁護士・司法書士は状況に適した債務整理手続きを選択してくれる
弁護士・司法書士に相談すれば、公務員として置かれた立場・現在の借金状況・今後の世帯状況などを総合的に考慮して、自分にぴったりの債務整理手続きを選択してくれます。
ここまで紹介したように、債務整理には自己破産・個人再生・任意整理の3種類の手続きが存在します。どの手続きを利用しても公務員の抱える返済状況を抜本的に見直すことができますが、自分に適した手続きでなければ効果的な生活再建が実現しない可能性もあります。
そのため、専門家による丁寧なヒアリング・手続き選択は不可欠といえるでしょう。
各手続きの特徴は次の通りです。弁護士・司法書士に相談する前に情報を整理しておけば、ご自身の希望を伝えやすいでしょう。
手続きの種類 |
手続きの概要 |
減額効果 |
任意整理 |
・裁判所を利用せずに債権者と直接交渉する手続き
・家族、職場に知られずに手続きを進めやすい
・公務員相手だと債権者から厳しい和解条件を突きつけられるリスクあり
・共済貸付けを除外、連帯保証人付きを対象外にするなど、自由度の高い返済計画を組める |
・借金の将来利息をカットできる
・最終的な返済負担総額を1/2程度に圧縮できる可能性あり
・残債の一括請求後でも3年程度の分割払い計画を作成できる |
自己破産 |
・裁判所を利用する手続き
・すべての借金が整理対象になる
・財産処分、職業制限、移動制限などの自己破産特有のデメリットが多い
・免責不許可事由、非免責債権などの手続き上の注意事項も多い |
・借金返済義務の免責を狙える |
個人再生 |
・裁判所を利用する手続き
・住宅ローン特則でマイホームを手元に残せる(自己破産のデメリットを回避できる)
・裁判所における手続きが複雑 |
・住宅ローンを除く借金総額次第で元本減額率が異なる(最大1/10まで圧縮可能)
・残債の一括請求後でも原則3年の分割払い計画に引き直せる(最長5年まで) |
弁護士・司法書士に債務整理を依頼すれば債権者からの取り立てが停止する
弁護士・司法書士に債務整理を依頼すれば、その時点で債権者からのすべての取り立てが停止します。これは、専門家が債権者に送付する受任通知に債権者の取り立てを禁止する効力があるからです(貸金業法第21条1項9号)。
債権者からの取り立てが停止するということは、以下のようなリスクから解放されることを意味します。
- 自宅に届く督促状・催告書などが原因で家族に借金トラブルがバレるのを回避できる
- 頻繁にかかってくる携帯電話への督促電話を家族に不審に思われなくなる
- 回収担当者が自宅訪問をして家族が不安を感じるのを防げる
- 職場への問い合わせ・訪問を予防できるので、職場に迷惑をかけずに済む
債権者による督促行為は、債務者本人だけではなく家族・職場に迷惑が生じ得るものです。
専門家に債務整理を依頼すればその時点で取り立てストレスから解放されるので、債務整理準備・生活再建に集中しやすくなるでしょう。
⚪︎専門家への依頼によって返済自体も一時的にストップする
弁護士・司法書士に債務整理を依頼すれば、依頼時〜債務整理手続き終了時までの間、毎月継続していた返済自体をする必要がなくなります。したがって、毎月高額な返済を継続していた公務員ほど、その分を債務整理費用・生活費に回しやすくなるでしょう。
弁護士・司法書士に債務整理を依頼すれば借金滞納ペナルティの深刻化を回避できる
借金総額が高額になる傾向にある公務員ほど、借金滞納時のペナルティが厳しい内容になる可能性が高いので、早期に弁護士・司法書士に相談をして適切な債務整理手続きに踏み出すべきでしょう。
債務整理利用前に滞納問題を抱えてしまうと、延滞日数に応じて次のようなペナルティが段階的に生じます。
- 【滞納翌日~】日割りで遅延損害金が発生する(年利率20%)
- 【滞納翌日~】厳しい取り立てがスタートする
- 【滞納2ヶ月~3ヶ月頃】信用情報にキズがつく
- 【滞納2ヶ月~3ヶ月】期限の利益を喪失して残債を一括請求される(自力完済が不可能になる段階)
- 【滞納3ヶ月以降】強制執行により財産等が処分されるリスクが高まる
したがって、現段階で借金の滞納が生じているか否かにかかわらず、借金総額を自力完済するのが難しいと判断できる状況なら、滞納ペナルティが重くなる前に債務整理を視野に入れるべきだと考えられます。
弁護士・司法書士に相談すれば、「債務整理を利用しなければどうなるか」についても具体的なイメージを伝えてもらえるので、将来的な展望を抱きにくい債務者はすみやかにヒアリングを実施してもらいましょう。
まとめ
公務員は安定した職業と社会的に評価されているため、比較的ローン審査などに通りやすいです。そのため、公務員ほど収入の範囲内で返済できる限度を超えた借金を抱えるリスクがあり、滞納時のペナルティも深刻になる傾向があります。
公務員でも債務整理で借金問題解決を目指せます。そして、公務員が債務整理をしたとしても、家族や仕事に直接的な影響が生じることは原則ありません。
ただし、公務員が債務整理をする際には、任意整理交渉の進め方・共済貸付けとの関係など、注意を払うべきポイントが多数存在します。
そのため、公務員が債務整理を実施する場合には、弁護士・司法書士に相談をして慎重に手続きを進めるべきです。
公務員の債務整理に強い専門家なら、公務員が抱える事情を丁寧に斟酌してスムーズに手続きを進めてくれるので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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公務員の債務整理に関するQ&A
公務員でも債務整理できますか?債務整理をすると処分を受けますか?
公務員の懲戒事由に「借金問題を抱えていること」「債務整理を利用したこと」は掲げられていないので、公務員でも仕事に影響なく債務整理を実施することができます。ただし、特定の公務員が自己破産を利用した場合にのみ「職業制限」のリスクが生じるので、職業制限対象の役職に就いている場合には手続き選択にご注意ください。
債務整理をすると住宅ローンで購入した家はどうなりますか?
自己破産の場合、財産を手放さなければならないため、住宅ローンで購入した家も処分の対象となります。しかし、任意整理や個人再生の場合は財産処分が必要ないため、住宅ローンで購入した家を手放す必要は原則ありません。
公務員におすすめの債務整理手続きはどれですか?
借金を抱えている公務員にとって適切な手続きは異なります。たとえば、「どのようなデメリットを被ったとしても借金問題解決を最優先にしたい」のなら自己破産が適切でしょうし、「マイホームを手放したくない」のなら個人再生・任意整理を検討するべきでしょう。また、「共済貸付けを債務整理対象に含めたくない」のなら任意整理を選択せざるを得ませんし、「マイホームを残しながら高額になった借金元本自体を減額したい」のなら個人再生がおすすめです。このように、債務整理手続き選択時には、自分の状況・希望などの諸要素を総合考慮する必要があるので、弁護士・司法書士からのヒアリングが不可欠だと考えられます。
公務員が任意整理を利用するときの注意点はありますか?
任意整理は柔軟に和解契約を作り直せるという点で魅力的な債務整理手続きですが、債務者が「公務員」という安定した身分に就いている場合には、債権者から「ボーナス払い」「短期間での完済計画」を求められる可能性が高いです。したがって、債権者からの要望を受け入れるだけでは厳しい和解内容になるおそれがあるため、少しでも有利な条件で和解案をまとめるには交渉実績豊富な専門家のアドバイスが不可欠でしょう。
債務整理経験者でも公務員になれますか?
過去に債務整理を経験していることは公務員資格の取得・採用の妨げにはならないのでご安心ください。なぜなら、公務員の欠格事由は法律で定められており「借金問題を抱えていること」「債務整理の経験があること」は公務員の欠格事由には該当しないと考えられるからです。
債務整理をすると住宅ローンで購入した家はどうなりますか?
自己破産の場合、財産を手放さなければならないため、住宅ローンで購入した家も処分の対象となります。しかし、任意整理や個人再生の場合は財産処分が必要ないため、住宅ローンで購入した家を手放す必要は原則ありません。
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