車のローン滞納による一括請求を放置すると車が没収される
車のローン滞納による一括請求を放置してしまうと、最終的にはそのローンで購入した車が没収されてしまいます。
車のローンを滞納すると、借入先である金融機関は貸し倒れを避けるために、貸した金額を回収するための手続きをとります。その方法の1つが一括請求であり、これが放置されると金融機関は他の方法で貸した金額を回収するのです。
なお、詳しくは「車のローンで一括請求を放置し続けるのはNG!滞納のリスクは?」の見出しで後述しますが、車のローン滞納を放置し続けると最終的には車や持ち家といった財産が差し押さえられます。
車のローン滞納の一括請求がきた場合、放置をすることなく問題を解決するための対策を取るようにしましょう。
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車が引き上げられるまでの流れは所有権留保の有無で変わる
前述したように、車のローン滞納による一括請求を放置すると、車が引き上げられてしまいます。そして、車が引き上げられるまでの流れは、所有権留保の有無によって変わります。
所有権留保特約とは、ローン返済の担保とするため、返済期間中は購入した目的物の所有権が売主側に残るという契約内容のことです。
ここからは、所有権留保特約があるかどうかに応じた車が引き上げられるまでの流れについて解説していきます。
ワンポイント解説
車のローンに所有権留保特約が付いているか確認する方法とは?
ローン契約書・車検証を確認すれば、ローン契約に所有権留保特約が付されているかをすぐに確認できます。特約が存在する場合、契約書内に所有権留保条項が記載されていますし、車検証の所有者名義人は販売店・ローン会社に設定されているはずです。なお、一般的には、ディーラー系ローンは所有権留保特約あり、銀行系ローンは所有権留保特約なしの傾向が強いです。
所有権留保付きの車はいつ引き上げられてもおかしくない
所有権留保特約がある場合、車のローンを完済してようやく車の購入者に完全な所有権が移転することになります。ローン返済中であれば、その車の所有権は形式上借入先にあると言えるのです。
形式上とはいえ借入先に所有権が残っているのであれば、所有権留保付きの車はいつ引き上げられてもおかしくないとも言えます。
なお、所有権留保付きの車の場合、ローンを滞納してから車が引き上げられるまでの流れは次の通りです。
- ハガキ・電話による取り立て(滞納翌日~)
- 督促状による取り立て(滞納2週間程度~)
- 内容証明郵便による残額の一括請求(滞納2ヶ月~3ヶ月程度)
- 残額の一括請求と同時に車両引き上げの連絡(車両引渡請求書)が届く。担当者から電話でも確認連絡あり(滞納2ヶ月~3ヶ月程度)
- 車両の引き上げ実施。車両引渡同意書・売却同意書などにサインを求められる(所定の期日)
- 引き上げられた車両の売却価格が判明する。ローン残債に不足する場合は残額を請求される(売却額の通知)
車のローンに所有権留保特約が付いていても強制的に引き上げられることはない
カーローンの残債を一括請求されると所有権留保に基づいて車両が引き上げられることになりますが、ローン会社に所有権があるからといって購入者の意に反して車両が強制的に引き上げられることはありません。
車を現在使用している購入者側には占有が認められ、占有を奪うには法的な手続きが必要だからです。
たとえば、車の所有権をもっていたとしても不法侵入・窃盗罪等に問われるリスクがあるため、ローン会社が駐車場に駐車している車を勝手にレッカー移動することはありません。
したがって、所有権留保特約付きの車が引き上げられる際には、車両引渡同意書・売却同意書などの書類にサインを求められ、購入者側の同意を得られてはじめて引き上げ手続きがスタートすることになります。
車の引き上げを拒絶しても裁判手続きで処分されることになる
車両の引き上げには購入者の同意が必要ですが、車両引渡同意書などに同意をしなくても車両を手元に留め置くことができるのは一時的なものでしかありません。
最終的には裁判所に対して担保実行の申立てが行われ、申立てが認められれば、強制的に車を引き上げられてしまうからです。
つまり、車のローンを滞納して残債の一括請求を受けた今、引き上げ手続きに対して無理に抵抗しても時間稼ぎにしかならないということです。
引き上げを求められる状況を作り出した根本原因である「ローン残債の滞納」に対応しなければ借金問題は解決しません。そのためには、早急に資金繰りに奔走する・各種債務整理のなかで引き上げを回避するための手立てを取るなどの積極的な対策が求められます。
「残債の一括請求を分割払いに切り替えたい」「車は手元に残したい」といった希望を実現するためにも、早期に弁護士に適切な選択肢を提案してもらいましょう。
ワンポイント解説
ローン滞納時の裁判には勝ち目がない
所有権留保特約付きの車のローンを滞納した状態でローン会社などの債権者から訴訟を提起されると勝ち目がありません。車の引き上げを防ぐために分割払いによる和解を目指そうにも、債務者側の提案は受け入れられないでしょう。
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所有権留保なしの車は強制執行で処分される
銀行系のカーローンなどを利用して自動車を購入した場合には、車両に所有権留保特約が付いていないのが一般的です。
所有権留保特約が付いていない場合、車の所有権は自身にあるため、特約がついている場合のようにすぐさま車が引き上げられるとは言えません。しかし、一括請求を放置し続けて、強制執行による差し押さえとなれば、原則的には車を処分する必要があります。
所有権留保特約が付いていない車のローンを滞納してから一括請求・車の処分までは次の流れをたどることになります。
- 普通郵便・電話での取り立て(督促状の送付など)
- 内容証明郵便で残債の一括請求
- 強制執行の予告
- 差し押さえの実行
所有権留保特約が付いていない車両の引き上げには、かならず裁判手続きが求められます。そして、残債の一括請求を受けた状態では、近い将来、強制執行手続きに進むことはほぼ確実と言えます。
もっとも、実際に強制執行に着手される前なら、債務整理を用いることで残債の一括請求や車の処分を防げるので、弁護士へ相談してみましょう。
車のローン残債を一括請求されたときの対処法
車のローン残債を一括請求されるのは、それまで債務者に認められていた期限の利益を喪失するからです。
ローン会社の契約約款には期限の利益喪失条項が記載されており、どのような事情があれば残債を一括請求されるかが事前に取り決められています。長期延滞は期限の利益喪失条項に抵触するため、車のローン滞納者は残債の一括請求に応じなければいけません。
残債の一括請求に応じる義務がある以上、これ以上滞納をつづけると法的措置によって債権回収が行われるリスクが高まります。仮に自動車を引き上げられたとしても、車両の売却価格でカーローン残債全額を充当できなければ不足額についての支払い義務が残った状態になるだけです。
したがって、自動車のローンを滞納して残債を一括請求された場合には、すみやかに下記のような対策を検討してみてください。
- ローン会社に分割払いを再交渉する
- 車のローン滞納を解消するために費用を用意する<
それでは、各対処法について具体的に見ていきましょう。
ローン会社に分割払いを再交渉する
自動車のローンを滞納して残債の一括請求をされた場合の対処法には、再度分割払いに切り替えてもらえるようにカーローン会社と再交渉する方法が挙げられます。
滞納状況にあるか否かにかかわらず、借金・ローンの返済方法は当事者間で決定できます。残債の一括請求後であったとしても、債権者であるカーローン会社側が分割払いを認めてくれさえすれば、再び分割払いに切り替えることは可能だということです。
とはいえ、特にディーラーが提携している信託会社・クレジットカード会社・保証会社のカーローンの場合には、債務者側が期限の利益を喪失した後は分割交渉に応じてくれるケースが少ないです。
自身で交渉しても分割が難しいのであれば、弁護士に依頼することも視野に入れておきましょう。
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急な収入減で車のローンを払えないとしても基本的には猶予されない
何らかの理由により、急に仕事を解雇・収入が減少したために自動車のローンを滞納しているという人も少なくはないでしょう。
しかし、収入の減少はあくまでも債務者側の事情であり、債権者が債務不履行による不利益を甘受すべき理由にはなりません。
したがって、急な収入減で滞納がつづき、結果として残債を一括請求されたとしても、支払い猶予には期待できないとご理解ください。
車のローンの滞納が消滅時効でなくなるのを期待してはいけない
車のローンの返済義務は、5年〜10年で消滅時効が成立します。
しかし、カーローンの残債の一括請求について消滅時効の完成を期待するのは現実的ではありません。ローン会社は消滅時効の完成前に裁判上の請求・支払督促などの具体的な措置によって債権回収に踏み出すのが一般的だからです。
また、消滅時効が完成するまでは延滞期間分の遅延損害金が発生するので、消滅時効の完成を期待して滞納を続けていると、ローン残債に遅延損害金を加えた金額について返済義務を負うことになります。
したがって、自動車のローンを滞納して残債の一括請求をされた場合には、消滅時効の完成を期待するのではなく、できるだけ早期に債務整理などの現実的な対策をとるべきだと言えるでしょう。
車のローン滞納を解消するために費用を用意する
自動車のローンを滞納して残債の一括請求をされた場合の対処法には、素直に残債の一括請求に応じることが挙げられます。
とはいえ、毎月のローン返済さえ難しい状況ですから、積極的に工夫をしなければ残債の一括請求までにお金を用意するのは簡単ではないでしょう。たとえば次のような方法が考えられるので実践できそうなものをご検討ください。
- 自宅にある不用品を処分する
- 友人・知人・連帯保証人に融資してもらう
- 日雇いのアルバイト等で臨時収入を得る
これらの方法でローン残債を用意できるなら、ローン返済生活を終わらせられるだけではなく、自動車も今まで通り使えるようになります。また、残債の一部額しか用意できないとしても、分割交渉や債務整理後の分割払いを楽にするのにも役立つはずです。
車のローンで一括請求を放置し続けるのはNG!滞納のリスクは?
車のローンで一括請求がきている場合、「支払えないなら放置しても変わらないだろう」のように考えている人もいるかもしれません。
しかし、車のローンの一括請求を放置するのは、絶対にやめましょう。前述したようにローンで購入した車が引き上げられるリスクもありますが、他にも下記のようなリスクがあるためです。
- 遅延損害金の負担が日々重くなる
- 債権者(ローン会社・債権回収会社)からの取り立てが繰り返される
- いわゆる「ブラックリスト入り」の状態になる
- 最終的には車を含めた財産が差し押さえられる
一括請求を放置すると、借金生活から抜け出すためのハードル自体が高くなってしまいます。車のローンの一括請求がきている場合、すみやかに対策を講じて問題を解決するようにしてみてください。
遅延損害金の負担が日々重くなる
自動車のローン残債の一括請求を無視しつづけると、滞納日数に応じて遅延損害金が発生します。遅延損害金は毎月の返済額に加えて支払いが必要なため、延滞日数がのびるほど完済が遠のくことを意味します。
遅延損害金の問題点は、年利率20%程度の高利率で【ローン残債 × 遅延損害金年利率 ÷ 365日 × 滞納日数】の計算式に基づいて算出される点です。
たとえば、カーローンの残債が300万円の状態では、延滞日数に応じて次のような金額の遅延損害金が発生します。
- 滞納1日:300万円 × 20% ÷ 365日 × 延滞1日 = 約1,644円
- 滞納1週間:300万円 × 20% ÷ 365日 × 延滞7日 = 約11,507円
- 滞納1ヶ月:300万円 × 20% ÷ 365日 × 延滞30日 = 約49,315円
- 滞納2ヶ月:300万円 × 20% ÷ 365日 × 延滞60日 = 約98,630円
- 滞納6ヶ月:300万円 × 20% ÷ 365日 × 延滞180日 = 約295,890円
もちろんカーローンの残債次第にはなりますが、残債の一括請求をされた時点ですでに約10万円、実際に強制執行で差し押さえられる頃には数十万円の遅延損害金が発生することも少なくはありません。
消費者金融などからの借入とは異なり、高額になるリスクが高いのがカーローンの滞納です。長期延滞は債務者をより深刻な経済状況に追いこむリスクがあるので、できるだけ早期に延滞を解消するか債務整理を利用することによって遅延損害金の発生を回避するのがポイントです。
債権者(ローン会社・債権回収会社)からの取り立てが繰り返される
車のローン残債の一括請求を無視した状態がつづくと、債権者側から何度も督促が繰り返されることになります。
特に、債権回収会社などがローン会社に代位弁済をした場合には、債権回収を専門に取り扱う機関が取り立て業務を行います。その場合には、精神的にも追い込まれてしまう可能性があります。
また、連帯保証人がいる場合には連帯保証人が督促を受けることになるので、身内との人間関係に亀裂が入る可能性もあります。
残債の一括請求に応じられるだけのお金を用意できる人は多くないでしょう。しかし、債権者からの連絡を無視したままでは、想像しているよりも早いタイミングで強制執行に着手される可能性が高くなります。
したがって、請求に応じられるだけの金銭的な余裕がないとしても、債権者側からの督促を無視するのではなく、その都度丁寧に電話対応をして、返済意思があることを見せましょう。
いわゆる「ブラックリスト入り」の状態になる
車のローン残債の返済に遅れると、いわゆる「ブラックリスト入り」になるリスクがあります。一般的には、一括請求が来た時点でブラックリスト入りになるとも言われています。
前提として、クレジットカードやローンなどの審査に通りづらくなる状態を「ブラックリスト入り」と言われていますが、そのような存在があるとは明言されていません。あくまで、信用情報として返済能力を疑われるような情報が登録されている状態をブラックと言います。
信用情報には、延滞している日数も登録されます。そのため、延滞している日数が長期化すればするほど信用情報にその情報が残ってしまい、いわゆる「ブラック状態」も長引いてしまうのです。
なお、ブラックリストに登録されると、下記のようなデメリットが生じます。
- 新規の借り入れ・ローン契約が難しい(別のカーローンへの借り換えも同様)
- クレジットカード・ETCカードが作成しづらくなる
- 賃貸物件の入居審査に通りにくくなる
- 子どもの奨学金の保証人になれない可能性がある
- 携帯電話・スマホの端末代金の分割払いが難しくなる
ブラックリスト入りになれば、ローンの審査に通りづらくなります。そのため、車が引き上げられた後に新たに車を購入しようとしても、一括現金払いを強いられる可能性があるのです。
最終的には車を含めた財産が差し押さえられる
カーローン残債の一括請求を無視したままでは、最終的に債務者の財産が差し押さえられる形で債権の回収が行われます。
処分対象になるのはローンを滞納した自動車だけではありません。どの財産が差し押さえ対象になるかを決めるのは債権者ですが、一般的には次のものが強制執行の対象とされます。
- 給与
- 預金
- 債務者名義の財産(土地・建物・自動車・その他債務者の生活に最低限必要とは認められない財物)
たとえば、給与が差し押さえられると会社に借金のことがバレます。また、自宅に執行官などが訪れることによって家族にも隠し通すのは難しくなるでしょう。
強制執行の段階まで進んでしまうと、もはや執行前の状態には戻すことができなくなるので、債権者側が法的措置に踏み出す前に債務整理などの方法で残債の一括請求に対抗するしかありません。時間の余裕はほとんどない状態なので、できるだけすみやかに弁護士に適切な選択肢を提案してもらいましょう。
車のローンの一括請求に応じられないけど車を残したいなら弁護士に相談する
車のローンを滞納して一括請求された場合には、ローン残債が高額になるリスクがあるうえに、車を引き上げられる可能性もあります。そのため、債務者の希望を叶えるためには早期に弁護士に相談するのがポイントとなります。
弁護士は経済的に困窮している債務者の希望を最大限実現するために力を尽くしてくれる存在です。「車を引き上げられないこと」を最優先に考えているなら、それを達成するために最適な方法を選択してくれます。
そもそも、車のローンを滞納している状況でマイカーを手元に残すためには、債務者の状況ごとに適切な選択肢は異なります。
たとえば、所有権留保特約付きの車のローンを滞納している場合には、他の借金について任意整理を実行して家計に余裕を作って残債の一括請求に対応する手段が考えられます。あるいは、個人再生を申し立てたうえで、別除権協定を締結して担保実行を防ぐのもひとつの方法でしょう。
また、自己破産を申し立てる場合でも、自由財産として車の処分を回避する道が残されています。
このように、「車を手元に残したい」という希望を実現するだけでも、債務者に与えられた選択肢は幅広いものです。どのような形での生活再建を目指したいかなども考慮してもらいながら、弁護士に適切な方法を選択してもらいましょう。
車のローン滞納の相談は無料で対応してくれる弁護士が多い
車のローン滞納はもちろんのこと、借金問題全般の相談は無料で対応してくれる弁護士が多いです。
経済的に疲弊している債務者のなかには、高額なイメージの相談料を心配して依頼を躊躇する例が少なくありません。
しかし実際には、本当に助けが必要な人たちが「生活再建のきっかけさえ掴めない」という事態におちいらないために、相談無料で対応してくれる弁護士もいるので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
車のローンの返済が苦しいなら債務整理を検討する
自動車ローンを滞納しており、返済できる状態ではないのであれば、債務整理を検討してみてください。
債務整理とは、債権者との交渉や法的手続きによって、債務負担の軽減を図るための手続きのことです。債務整理には自己破産・個人再生・任意整理の手続きがあり、それぞれ要件・効果が異なります。
そこで、債務者がどのような形で生活再建を希望するのか、借金状況に照らしてどの方法を選択するのが適切かを判断しなければいけません。
特に、自動車のローンを払えない場合には、マイカーを手元に残すことにこだわるのかが手続き選択のポイントになるので注意が必要です。
任意整理なら利息をカット・元本だけの返済に切り替えてマイカーを手元に残せる
任意整理とは、裁判所を利用せずに当事者間で直接交渉をして返済計画を作り直す債務整理手続きのことです。
多くの任意整理では将来利息の支払いが免除されるので、交渉後約3年~5年をかけて完済を目指すことになります。つまり、残債の一括請求を利息負担なしで分割払いに切り替えることが可能です。
もっとも、自動車を手元に残せるか否かについては注意が必要です。
たとえば、任意整理では債務者側で減額交渉する借金を選べるので、カーローン以外の借金についてだけ任意整理をすることもできます。任意整理の対象外にされた以上は、いったんは車を失う心配からは逃れられるでしょう。
もっとも、残債の一括請求をされた後はいつ強制執行に踏みきられてもおかしくはないので、すみやかに残債の一括請求に応じなければ結局車は取り上げられかねません。
また、所有権留保付きのディーラー系カーローンについて任意整理をした場合には、残債の一括請求を分割払いに切り替えることはできますが、自動車を手元に残すのは難しいです。当初の契約通りにローンを返済していないため、所有権留保が実行されて車を引き上げられるからです。
その一方で、所有権留保特約なしの銀行系カーローンについて任意整理をした場合には、残債の一括請求を分割払いに切り替えたうえで車を手元に残せる可能性が高いでしょう。
このように、債務者の状況ごとに任意整理の適否が異なります。「分割払いに切り替えたい」「できれば車を手元に残したい」などの希望も異なるでしょうから、かならず弁護士に適切な債務整理手続きを選択してもらいましょう。
個人再生なら車のローン残債を減額してマイカーを手元に残せる場合がある
個人再生とは、裁判所を利用して借金総額を減額して分割での返済計画を作り直す債務整理手続きのことです。自己破産のように財産処分が行われることがないので、自動車を手元に残したまま返済状況を改善できます。
もっとも、ローン返済中の自動車については担保権(所有権留保・抵当権など)が設定されている場合には、残債の一括請求を受けた状態ではいつ担保権を実行されてしまうか分からない状態です。
そこで、個人再生でカーローン残債の一括請求に対応するなら、裁判所の許可を得て担保権者と 別除権協定を締結する必要があります。
車を処分せずに自己破産による免責を得ることは簡単ではないので、かならず弁護士の力を借りましょう。
自己破産なら車のローン返済義務が免責されるがマイカーを処分されるリスクがある
自己破産とは、裁判所を利用して借金返済義務を免責してもらう債務整理手続きのことです。
免責許可決定が確定すれば、原則としてすべての借金返済義務が消滅します。つまり、自動車のローン残債だけではなく他の借金返済もなかったことにできるので、借金地獄から抜け出して人生を再スタートさせたい場合に向いている手続きだと言えるでしょう。
もっとも、自己破産による免責が確定すると、借金返済義務の帳消しという形で債務者がメリットを得る反面、債権を回収できないという意味において債権者側が不利益を被ってしまいます。
そこで、債権者側だけが一方的に経済的な負担を強いられるというアンバランスを回避する目的から、自己破産では換価処分が行われます。具体的に説明すると、債務者名義の一定の財産は換価処分で現金に換えられて、各債権者に配当されるということです。
つまり、自動車のローンを滞納して残債の一括請求を受けた債務者が自己破産を利用した場合、ローン残債の返済義務からは逃れられてもマイカーの処分からは逃れられない可能性があるということになります。
自己破産を利用しても自動車を手元に残す道はある
自己破産を利用した債務者の所有財産は処分されることになりますが、「必ずしもすべての財産が処分されるわけではない」という点には注意が必要です。
すべての財産が手元から無くなってしまうと、せっかく自己破産で生活再建の糸口をつかんだはずの債務者が明日の生活さえできないという状況に追いこまれるでしょう。
そこで、自由財産と称される財産については自己破産後も債務者の手元に残せるという運用がとられています。そして、債務者が所有している自動車が自由財産に含まれる状況ならば、自己破産後もマイカーを手元に残せることになります。
自動車が自由財産に該当するか否かの判断は裁判官の判断次第です。もっとも、一般的には以下の指針を基準に自由財産の該当性が判断されるので参考にしてください。
- カーローン完済済みで、自動車の現在の市場価値が20万円以下の場合
- 法定耐用年数の6年を経過している場合
- 足に障がいがある・通院に必要など、自動車がなければ日常生活が困難になる場合
したがって、「ローン残債の支払い義務から逃れたい」「それでも車は手元に残したい」という相反する2つの希望を満たす余地は残されていると言えるでしょう。
債務者の希望を最大限叶えるためにも、自己破産を申し立てる前にかならず弁護士までご相談ください。
車のローンの一括請求が払えないからといって返済できる見込みがない借入はNG
自動車ローンを滞納して残債の一括請求を受けたときに絶対にやってはいけないのが「新たな借金をすること」です。
借入自体が悪いわけではありませんが、返済の見込みがないうえでの借入をすると、いわゆる「自転車操業状態」に陥る可能性があります。
自転車操業とは、返済のために借金をして、それを繰り返すことです。返済のための借入はその場しのぎの行為でしかなく、完済できる見込みがなければ、いずれ返済に追われてしまうことになりかねません。
借入を検討するのであれば、「借入をしても完済できるのか」を最優先に考えましょう。完済できるかが不安であれば、他の方法で滞納の問題を解消するようにしてください。
闇金のような違法業者などに手を出すのは絶対に避ける
そもそも、自動車ローンの一括請求をされた状態では、ブラックリスト入りになっている可能性があるため、金融機関からの新規借入や他社カーローンへの借り換えができないことも予想されます。
となると、違法な闇金や合法性に疑いのある取引しか頼る手立てはありませんが、これらを利用してしまうと次のデメリットが降りかかることになります。
- 闇金:違法な利息・厳しい取り立てを強いられるので今よりも厳しい借金生活を強いられる
- 違法な取引:口座買取や給料ファクタリングなどを利用すると犯罪に巻き込まれるリスクあり。将来的な自己破産が認められない危険性も高まる。
「車を取り上げられたくない」「なんとか指定期限までにローン残債を用意しなければいけない」と思いつめてしまうと、簡単に融資してくれる存在に惹かれてしまうのも仕方ありません。
しかし、長期的に見れば債務者自身で自分の首を絞めることになるだけなので、闇金などの力を借りるのではなく、かならず債務整理などの現実的な解決方法を選択してください。
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まとめ
車のローン滞納で一括請求が来た場合、それを放置すると車が没収されてしまいます。また、遅延損害金の発生や財産の差し押さえといったリスクもあるため、車のローン滞納による一括請求は絶対に放置しないようにしましょう。
支払いが難しいのであれば借入先に分割交渉をする、頼れる方法があるのであれば一括請求の金額を用意することを検討してみてください。
なお、「どうしても車のローンを返済するのが苦しい」という場合、弁護士に相談することも検討してみてください。弁護士に相談することで、車を手放さずに滞納している問題を解決するためのアドバイスをもらえます。
債務整理を依頼すれば、車のローン問題が解決に向かうため、まずは弁護士に相談することから始めるのもよいでしょう。
車のローンを滞納して残債を一括請求されたときのQ&A
車のローンを滞納して残債を一括請求されると車も引き上げられてしまいますか?
現状を放置すると車が処分される可能性は高いですが、処分方法はカーローンに所有権留保特約が付いているかで異なります。特約付きのカーローンの場合には、残債の一括請求からほどなくしてローン会社等の債権者が主体となって引き上げ手続きに入ります。その一方で、特約なしのカーローンの場合には、強制執行による処分が行われる可能性があります。強制執行の方が期間に余裕があるものの、いずれは処分されることになるので、すみやかに債務整理に踏み切る必要があると言えるでしょう。
カーローンに所有権留保特約が付いているかはどのようにすれば分かりますか?
まずはお手元の契約書をご確認ください。所有権留保特約が付されている場合にはかならず記載があります。また、車検証の所有者名義を確認するのもひとつの方法です。所有権留保特約付きの場合には名義人が購入者ではなくローン会社・ディーラーになっています。
所有権留保特約付きの車のローンの場合には債務整理をするとかならず車両が引き上げられると聞いたのですが本当ですか?
所有権留保特約付きのカーローンでも債務整理で車両を手元に残せる場合があります。たとえば、個人再生で別除権協定を締結する・カーローン以外の借金について任意整理をする・自己破産をしつつ、車を自由財産として認めてもらう方法が考えられます。もっとも、いずれの方法も要件・注意点が多いうえに、実務的にもハードルが高いものもあります。かならず弁護士に相談のうえ、適切な選択肢を探ってもらいましょう。
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