事業失敗による借金を抱えている場合、「事業を継続させつつ借金問題を解決させたい」「とにかく借金をどうにかしたい」のように考えることでしょう。また、なかには自己破産以外に借金問題を解決する方法はないかを探している人もいるかもしれません。
事業失敗による借金問題を解決する方法は、自己破産以外にもあります。任意整理や個人再生・民事再生を選択すれば、事業を継続したまま借金問題を解決することも可能です。
ほかにも、国や自治体が用意している支援制度を利用する方法もあるため、自身の状況でどの対策を講じるのかを検討することが大切です。
そこで今回は、事業失敗による借金問題を解決するための完全マニュアルをテーマに、具体的な対策について紹介していきます。
なお、万が一、事業に失敗して資力がなくなっている場合でも、まずは弁護士へ相談してみてください。事業失敗による借金問題を解決するためのアドバイスをもらえます。
早め早めに対処することで、再起を目指すことが容易になったり選択肢の幅が広がったりなどメリットは多いです。現時点で少しでも苦しいと感じているなら、弁護士へ相談することを検討してみてください。
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事業失敗による借金問題は放置せずに早期解決のための対策を講じるのが大切
事業失敗による借金問題は可能な限り早期で解決できるように対策を講じておくことが大切です。「事業失敗による借金を放置する」「借金を返せない状態が続く」といった場合、下記のようなリスクがあるためです。
- 法的措置をとられて売掛金などの財産が差し押さえられる可能性がある
- 廃業せざるを得ない状況に追い込まれてしまう可能性がある
事業失敗による借金は、個人で借入をするよりも高額になることは少なくなく、場合によっては1億円を超えることもあることでしょう。借金が高額であるために自力で返済するのは難しいと考えるかもしれませんが、返せない状況が続けば続くほど上記のリスクは生じやすいです。
ここからは、事業失敗による借金を返せない状況が続いた場合のリスクについて解説していきます。
法的措置をとられて売掛金などの財産が差し押さえられる可能性がある
事業失敗による借金を返せない状況であれば、支払いが滞納してしまうこともあるかもしれません。借金返済を滞納してしまう状況が続けば、最終的に債権者から法的措置をとられてしまい、その場合には財産の差し押さえに発展してしまいます。
差し押さえの対象になる財産の例としては、下記が挙げられます。
- 会社の売掛金
- 会社名義の銀行口座
- 有価証券
- 特許や商標
- 自身が所有する不動産や自動車
たとえば、事業失敗による借金を滞納することで差し押さえの対象になる財産としては、売掛金が挙げられます。売掛金が差し押さえられてしまえば、事業の継続だけでなく生活の維持にも支障をきたしてしまうおそれもあります。
なお、どの程度滞納をすると差し押さえに発展するのかについては、債権者がいつ裁判所に訴えを起こすかによって変わります。あくまで一般的には滞納から3か月程度とも言われていますが、3か月未満の滞納であっても差し押さえに発展することも考えられます。
廃業せざるを得ない状況に追い込まれてしまう可能性がある
事業失敗による借金問題を抱えている場合、当然ですが毎月返済をしなければなりません。返済自体は問題なく行えたとしても、月々の返済負担が大きければ、他の支払いが苦しくなってしまうリスクもあります。
たとえば、店舗を構える必要がある事業であれば、毎月家賃の支払いも必要です。事業失敗による借金の返済負担が大きいために家賃の支払いが滞ってしまえば、最終的にはその物件からの立ち退きを迫られてしまい、廃業せざるを得ない状況に追い込まれてしまうことになりかねません。
このように、事業失敗による借金問題を抱えることには、事業の継続のために必要な固定費の支払いが苦しくなってしまうリスクがあるのです。
事業失敗による借金問題は債務整理で解決につながる
事業失敗による借金は決して少額といえないケースが多いです。そのため、「自力で返済するのが難しい」という人もいることでしょう。
事業失敗による借金を返済するのが難しい場合、債務整理を視野に入れてみてください。
債務整理とは、借金問題を解決するための手続きのことです。弁護士や司法書士に依頼して手続きをするのが一般的であり、インターネットなどでは「借金救済制度」などと呼ばれることもあります。
事業失敗における債務整理としては「任意整理」「個人再生・民事再生」「自己破産」の手続きがあり、いずれも内容が異なります。
手続き
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内容
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任意整理
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返済条件を見直してもらうために、債権者と交渉をする手続き
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個人再生・民事再生
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個人再生は個人事業主がとれる手続きであり、借金自体を1/5〜1/10程度に減額できる。
民事再生は法人がとれる手続きであり、経営の行き詰った事業を民事再生法に基づき再建を図ることができる。
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自己破産
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抱えている借金がすべて帳消しになる手続き
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なお、事業失敗による借金問題を解決するために自己破産をした場合、その事業を継続することはできません。一方、任意整理や民事再生・個人再生であれば、手続き後もその事業を継続させることは可能です。
そのため、できることであれば事業を継続したいと考えている方は、自己破産以外の選択肢も検討しましょう。
ワンポイント解説
債務整理はいわゆるブラックリスト入りになる
債務整理すべてに共通していることですが、手続きをすることでいわゆるブラックリスト入りになります。その結果、新たな借り入れが難しくなるので事業継続の際には注意してください。
ブラック状態は最長5年〜7年で回復しますが、この期間は新たな借入やクレジットカードの利用が難しくなることを踏まえておきましょう。
任意整理で借金の返済負担を減額して事業の再起を目指す
任意整理とは、返済条件を見直してもらうために、債権者と交渉をする手続きのことです。どのように返済条件が見直されるかは交渉次第ですが、借金の利息部分のみをカットするなどの和解条件が一般的です。
また、任意整理後は返済が必要になりますが、3年〜5年程度で完済できるように毎月の返済額が調整されるのが一般的です。そのため、毎月の返済負担を軽減できるのが任意整理のメリットといえます。
なお、任意整理は裁判所を介して行わない手続きであるため、比較的簡単に手続きを進められるのも特徴です。利息カット程度で事業の立て直しが可能な方は、任意整理を選択されてみてはどうでしょうか。
債務が5,000万円以下なら個人再生・民事再生で事業の再起を目指す
事業に失敗して再起を目指す方は個人再生や民事再生を検討しても良いでしょう。法人の場合は、民事再生しか選択肢はありませんが、個人事業主等の場合は比較的手続きを簡単に進められる個人再生(小規模個人再生)の選択も可能です。
個人再生・民事再生の種類
民事再生は個人・法人問わず利用できる制度ですが、法人は民事再生しか選択できません。民事再生は手続きが複雑であるため、裁判所に支払う費用や弁護士へ支払う費用が非常に高額です。よって、個人再生を選択できる事業主の方は個人再生を選択された方が良いでしょう。
そして民事再生は、頭数の過半数および債権額の1/2以上を有する債権者の同意を得られなければ、再生計画が決議されません。民事再生を選択される方は、前もって債権者に働きかけるなどの対応が必要になるでしょう。
小規模個人再生とは、個人を対象とした簡易的な民事再生手続きです。再生計画の決議要件などは通常の民事再生と同様ですが、手続きが簡素化されている点に特徴があります。
個人の方は、負債の額が5,000万円以下なら、個人再生手続きを選択できます。債務総額に応じて最大で1/10まで借金を減額できます。
個人再生と民事再生は、任意整理と比べて借金を減額できる金額がとても大きく、それでいて事業を継続できるのが最大の特徴です。一方で、すべての債務が対象になってしまう点が、任意整理と比べると難点と言えるでしょう。
個人再生や民事再生をしてもブラックリスト入りになってしまうため、新たな借り入れ等が難しくなります。それでも事業を立て直したい、失敗からの再起を目指したいと思うなら、個人再生や民事再生はとても有効な手段となり得るでしょう。
参考:e-GOV「民事再生法第一節(再生手続き開始の申立)」
自己破産で事業失敗によって抱えた借金を清算する
事業に失敗して抱えた借金のほとんどは、自己破産によって清算できます。裁判所に借金の返済ができないことを申し立て、免責許可を受けると、現在抱えている債務が、原則としてすべて免除されます。
事業失敗によって抱えた借金を自己破産するメリットとしては、下記が挙げられます。
- ①借金をすべて0にできるため再起を目指しやすい
- ②取り立てや資金繰りの悩みから解放される
- ③生活に必要な財産は手元に残しておける
また、会社(法人)として事業を営まれていた方は、会社のみの破産することも考えられます。ただし、取締役が会社の保証人として設定されているケースでは、会社・個人同時に自己破産をする必要がある点に気を付けましょう。
個人事業主として事業を営まれている方は、事業用の資産も含めて、個人の自己破産手続きによって清算を行います。どうしても事業失敗による借金の返済が難しい場合、自己破産を検討するようにしてみてください。
事業失敗時の自己破産に注意事項はある?一般の自己破産との違いは?
事業失敗の借金について自己破産を申し立てる場合は、以下の点に注意する必要があります。
事業失敗による自己破産の注意事項
- 管財事件として扱われる
- 代表者も同時に自己破産をするのが一般的
- 事業の継続が難しい
事業に失敗したときは原則管財事件として扱われる
事業主が自己破産をするときは、原則管財事件として手続きを進めていくことになります。その理由は、会社員などと比べて取引先や契約関係が複雑であるため、破産管財人をおいて細かく調査をする必要があるためです。
管財事件とは
管財事件とは自己破産手続きのひとつです。管財事件になることで、裁判所は破産管財人と呼ばれる弁護士を選任し、財産の調査や処分、債権者への分配を行います。財産の調査などが行われない「同時廃止事件」と比較すると、手続きが複雑で免責許可まで1年近くかかることも珍しくはありません。
なお、管財事件には通常の管財事件と少額管財事件があります。少額管財は裁判所へ支払う予納金等を少額に抑え、事業に失敗して資金繰りが厳しい事業主や個人の方でも利用できるようにした制度です。弁護士に依頼しなければ少額管財を選択できないので、まずは相談してください。
個人事業主の場合も、事業の状況などを精査する必要があるため、原則として(少額)管財事件として取り扱われます。
管財事件の場合、手続きに必要な費用が高額になります。裁判所へ支払う予納金だけでも20万円程度(少額管財の場合)、加えて弁護士へ支払う報酬の相場が30万円〜60万円程度なので、合計が100万円近くになることもあるでしょう。
事業に失敗された方であっても、できるだけ資金に余裕があるうちに手続きを開始されることをおすすめします。
ワンポイント解説
費用の用意が難しくても弁護士へ相談してください
弁護士費用の準備が難しくても、まずは弁護士へ相談してください。分割払い等支払い方法についての相談に柔軟に対応してくれる弁護士も多いです。また、弁護士へ相談することで借金の返済が一時的に止まります。いままで返済に充てていた費用を弁護士費用に充てられれば、無理なく費用の準備ができるでしょう。
会社(法人)は代表者も同時に自己破産するのが一般的
法人として事業を行っており失敗、自己破産をされるときは基本的に法人のみの破産手続きで済みます。法律的には、会社(法人)と代表者は別人格として考えられているためです。
ただし、現実的には会社の債務に対して代表者が連帯保証人になっているケースが多いです。その結果、会社が破産することで(連帯)保証人になっている代表者に債務の請求をされることになります。この場合、会社が破産することに伴い、代表者も破産を強いられることになってしまいます。
自己破産後は事業の継続が困難になる
事業に失敗して会社を自己破産し、破産手続き開始決定がなされると、最終的に会社の法人格が消滅します。そのため、最終的には既存事業の継続が困難になるでしょう。
たとえ個人事業主であっても、自己破産をすることで追加の融資を受けづらくなり、さらに設備等も処分の対象になることから、現実的に考えて事業継続は困難です。
参考:e-GOV「破産法第78条(破産管財人の権限)」
事業失敗の借金を債務整理しても改めて起業することはできる
事業失敗の借金を債務整理した場合、改めて企業ができるのかが気になる人もいるかもしれません。
結論、事業失敗の借金を債務整理しても改めて起業をすることは可能です。「債務整理をすると起業できない」のような法律はないためです。
そのため、改めて起業することを視野に入れつつ、事業失敗の借金を債務整理することも法律上は問題ありません。
ワンポイント解説
○自己破産後は企業ができないと言われやすい理由
一度事業に失敗して自己破産をした方でも再起は可能です。ではなぜ「自己破産後は再起業できない?」と言われてしまうのでしょうか。それは、旧商法が関係しています。
旧商法では、自己破産をして復権を経ていない者は、欠格事由に該当したため、会社の経営者(取締役)になることはできないと定められていました。しかし、このことが破産者の早期経済回復の妨げになることが問題視され、会社法制定時に欠格事由から除外されています。
よって、法律的には自己破産後も改めて起業が可能ですし取締役に就任することもできます。
破産後は資金調達に苦労するため現実的に難しい
法律的に再起業が可能でも、現実的に考えると難しいかもしれません。というのも、自己破産をしてしまうことで、ブラックリスト入りになるためです。信用情報に問題がある方に融資を行うケースは少なく、ほとんどの場合資金繰りに苦労するでしょう。
債務整理をした情報は最長5〜7年経過すれば消えますが、その期間は新たな借入が難しいです。そのため、再起業後の資金繰りまで考えたうえで再起を目指したほうが良いでしょう。
事業失敗による借金が苦しいときには国や自治体の支援制度も検討する
事業失敗による借金が苦しい場合、債務整理を検討するのも1つの手です。とはいえ、債務整理にはデメリットもあるため、手続きをするべきかどうかを悩むこともあるでしょう。
その場合、国や自治体の支援制度を検討することも大切です。国や自治体の支援制度を利用することで、事業失敗による借金が苦しい状況から抜け出せる可能性もあります。
国や自治体の支援制度の例としては、下記が挙げられます。
支援制度
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概要
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再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)
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事業に失敗した経験がある起業家の経営者を対象にした貸付制度。資質や事業の見込みなどを評価することにより、再起を図るのが困難な状況に直面している場合に融資を受けられる。
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経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)
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中小企業を対象にした貸付制度。売り上げの減少などによって一時的に業況が悪化しているが、中長期的には業況が回復し発展することが見込まれる場合に貸付を受けられる。
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緊急経営安定貸付け
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一時的に売り上げが減少したことで資金繰りが困難な場合、経営の安定を図るために事業資金を借入できる制度
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たとえば、日本政策金融公庫では、事業に失敗してしまった経験を持たれている方を対象に「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」を行っています。過去に経営を失敗された方、破産をされた方でも改めてチャンスをあたえられる仕組みになっています。
貸付資金は国民生活事業で最大7,200万円、中小企業事業7億2千万円までです。資金確保には有効な手段にもなるので、資金繰りに悩まれている方は検討されてみてはどうでしょうか。
まとめ
事業失敗による借金は決して少額といえない金額になると予想されるため、返済が難しい状況に陥ることも考えられます。
とはいえ、借金を滞納してしまうと、売掛金などの財産が差し押さえられたり、廃業せざるを得ない状況に追い込まれたりといったリスクもあるため、可能な限り早く借金問題を解決するための対策を講じることが大切です。
事業失敗による借金問題を解決する手段としては、債務整理や支援制度の利用が挙げられます。まずは弁護士や司法書士に相談をしたうえで、どのような方法で事業失敗による借金問題を解決するべきかを検討するのもよいでしょう。
【Q&A】事業に失敗したときは自己破産を選択するべき?再起を目指すためにもっとも有効な手段とは?
事業に失敗したときは、自己破産をして再起を目指した方が良いのでしょうか?
失敗の程度次第では自己破産以外の債務整理手続きをしても良いでしょう。自己破産をしてしまうと必然的に事業の停止をしなければいけませんが、任意整理や民事再生なら事業を継続したまま借金を減額できます。
事業に失敗して自己破産をするときは何か不利益を受けることはあるのでしょうか?
事業の失敗による自己破産は、一般的に管財事件と呼ばれる方法で破産手続きを開始します。管財事件では、免責許可決定までの期間が長かったり費用が高額になったりなどのデメリットが発生します。詳しくは本文でお伝えしているので参考にしてください。
自己破産後も再起業は可能ですか?
自己破産をした事実があっても改めて起業できます。旧商法では規制されていましたが、会社法に変わってからは欠格事由に該当しないので安心してください。
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