不倫相手を訴えて慰謝料請求するには「不貞行為の証拠」がないと始まらない!
裁判で慰謝料を請求するには「不貞行為の証拠」が必要です。不貞行為とは配偶者と不倫相手が肉体関係にあったことを意味しており、それを裏付ける証拠がなければ、慰謝料の請求は認められません。
単なる疑いや状況証拠だけでは不十分なため、客観的かつ具体的な証拠を複数そろえておくことが重要です。
「どのようなものが証拠として認められるのか」については、疑問に思う方も多いはずです。次の項目では、裁判で有効とされる証拠の種類について詳しく紹介します。
不貞行為を立証する証拠例
不倫相手を訴えるには「不貞行為があった」と立証できる証拠が必要です。
不貞行為の証拠として認められやすい例は、以下のとおりです。
- 2人の裸の写真
- 配偶者と浮気相手がラブホテルに出入りする場面の写真や動画
- 不貞行為を認める誓約書や録音データ
- 性的関係を示唆するLINEやメールのやりとり
- ラブホテルの領収書やクレジットカードの利用明細
- 探偵事務所の調査報告書
また、裁判では1つの証拠だけで不貞行為が認定されるとは限らないため、複数の証拠を組み合わせるとよいでしょう。
それぞれの証拠例について詳しく解説します。
2人の裸の写真
配偶者と不倫相手が裸で一緒に写っている写真は、肉体関係の存在を直接しめす、強力な証拠です。
ただし実際に入手するのは困難で、取得方法によってはプライバシー侵害や違法行為に該当する可能性があります。
無理に入手しようとせず、ほかの証拠と併用して対応するのがよいでしょう。
配偶者と浮気相手がラブホテルに出入りする場面の写真や動画
ラブホテルへ出入りする場面の写真や動画は、不貞行為を推測させる証拠です。入室と退室の両方が確認でき、一定以上の滞在が記録されていれば、裁判でも評価されやすくなります。
ただし1回限りの記録では、反論される可能性があるため、複数回の記録があるとよいでしょう。違法な撮影にならないよう専門家への依頼を検討してください。
不貞行為を認める誓約書や録音データ
不貞行為を認める誓約書や録音データは、裁判でも有力な証拠となります。誓約書には、不倫の事実や期間、相手の氏名などを明確に記し、署名・押印をもらうことが重要です。
録音の場合は、会話の前後を含めて録り、日時や場所を明確にしておくと、証拠としての信頼性が高くなります。
脅迫や強要によって取得した場合は、無効になるおそれがあるため、取得方法には注意しましょう。
性的関係を示唆するLINEやメールのやりとり
「昨日の夜は楽しかった」「今度は〇〇ホテルに行こう」など、性的関係をほのめかすメッセージは、不貞行為の証拠とみなされる場合があります。
ただしLINEやメールは改ざんを疑われる可能性があります。そのためスクリーンショットだけではなく、信頼性の高い形で保管しておくことが大切です。LINEやメールのやり取りを証拠として残す場合は、配偶者のスマートフォンごと写真を撮っておくようにしてください。自分のスマートフォンで画面全体が映るように撮影し、メッセージの日時や不倫相手の名前がわかるように撮っておきましょう。
ほかの証拠とあわせて提出すると、証拠としての説得力が増す可能性があります。
ラブホテルの領収書やクレジットカードの利用明細
ラブホテルの利用履歴がある領収書やクレジットカードの明細は、不貞行為を裏づける間接的な証拠になります。利用日やホテル名が特定できれば、不倫の可能性を示す材料になります。
ただし、誰が利用したかを証明するのは難しいため、ほかの証拠と組み合わせて使用すると効果的です。
また、領収書や明細を取得する際は、個人情報の取り扱いに注意してください。たとえば、配偶者の財布やスマートフォンから無断で情報を入手する行為は、プライバシー侵害や不正アクセスに該当するおそれがあります。
証拠として活用するには、法的に問題のない方法で取得する必要があるため、不安な場合は弁護士に相談するとよいでしょう。
探偵事務所の調査報告書
探偵事務所の調査報告書は、客観的な証拠として裁判でも重視される場合があります。配偶者と不倫相手の行動や写真、接触した日時や場所などが詳細に記載されていれば、証拠としての信頼性が高まります。
不貞行為の証拠の集め方
不貞行為の証拠を集める方法には、主に以下の3つがあります。
- 自分で集める
- 探偵・興信所に依頼する
- 弁護士に相談する
それぞれ解説します。
自分で集める
不貞行為の証拠は、意外と身近なところに潜んでいる場合があります。たとえばスマートフォンの履歴やLINEのメッセージ、外出時のレシートなどから、不自然な行動や不倫を示唆するやりとりが見つかるケースもあるでしょう。
ただし、配偶者のスマートフォンを無断で操作したり、GPSで位置情報を追跡したりする行為は、不正アクセスなどの違法行為とみなされる可能性があります。
取得方法や証拠としての有効性に不安がある場合は、事前に弁護士に相談することをおすすめします。
探偵・興信所に依頼する
探偵や興信所に依頼すれば、尾行や張り込みといった手法を用いて、裁判でも通用するレベルの証拠を収集してもらえます。
配偶者と不倫相手がラブホテルに出入りする様子や、2人が接触している場面を写真や動画で記録するケースも多く、客観的な証拠として信頼性が高いといえるでしょう。
ただし、調査費用は依頼内容や日数によって異なるため、契約前に見積もりを取り、費用の内訳や報告形式を確認しておくことが大切です。
弁護士に相談する
証拠をどう集めたらよいかわからない場合や、訴える前に正確な手順を知りたい場合は、弁護士に相談するのが有効です。
弁護士は、法的に有効な証拠の基準や収集方法を熟知しているため、違法な手段に該当しないようアドバイスしてくれます。また、探偵事務所の紹介を受けられたり、相手の身元調査を依頼できたりする場合もあります。
事前に無料相談を活用し、信頼できる弁護士をみつけておくと手続きもスムーズに進められるでしょう。
不貞行為の証拠を自分で集める際の注意点
証拠を自分で集める際の注意点は、以下のとおりです。
- 違法な盗聴や盗撮は避ける
- 不正アクセスでの情報取得はしない
- 脅迫や強要による自白の取得は避ける
- 証拠の捏造や改ざんは絶対にしない
- 第三者を巻き込んで証拠を集めない
それぞれ解説します。
違法な盗聴や盗撮は避ける
不貞行為の証拠を得るために、盗聴器や隠しカメラを仕掛けるのは避けるべきです。たとえ配偶者が相手でも、本人の同意なく行えば違法と判断される可能性があります。
仮に決定的な場面を撮影できたとしても、違法に取得された証拠は裁判で認められないおそれがあります。
またプライバシーの侵害や住居侵入で訴えられるリスクもあるため、証拠集めは必ず合法的な手段で行いましょう。
不正アクセスでの情報取得はしない
配偶者のスマートフォンやSNS、クラウドサービスに無断でログインする行為は、不正アクセス禁止法に抵触する可能性があります。
たとえパスワードを知っていたとしても、許可なく操作することは違法であるため、本人の同意がない限り避けましょう。
仮に証拠が明確だったとしても、違法に取得された情報は裁判で認められないケースがあります。自分が処罰の対象となるリスクもあるため、必ず合法的な方法を選んでください。
脅迫や強要による自白の取得は避ける
配偶者や不倫相手に対して、怒りに任せて問い詰めたり、精神的に追い込んだりして自白させる行為は避けるべきです。脅迫や強要によって得た証言は、たとえ内容が事実であっても、裁判で証拠として認められない可能性があります。
また脅しや暴言がエスカレートすれば、逆に訴えられるリスクもあるでしょう。証言を得る場合は、相手が自分の意思で話した内容を、録音や書面などの形で残すことが重要です。
証拠のねつ造や改ざんは絶対にしない
証拠が十分に集まらないからといって、事実をねじ曲げたり、存在しない証拠を作り出すような行為は絶対にしてはいけません。
たとえば、実際には存在しないLINEのやり取りをねつ造したり、写真を加工して肉体関係があったかのように見せかけたりする行為は、証拠偽造とみなされます。
このような行為は、裁判での信用を大きく失うだけでなく、名誉毀損や私文書偽造などの犯罪に問われる可能性もあります。証拠として認められるのは、正当な方法で得た事実に基づく記録だけだということを念頭にいれておきましょう。
第三者を巻き込んで証拠を集めない
証拠を集める際に、家族や友人、知人など第三者に調査を手伝ってもらうのは避けましょう。協力を頼んだ相手が盗撮や盗聴、無断での尾行などを行った場合、自分も違法行為に関与したとして責任を問われるおそれがあります。
たとえ善意で協力してくれたとしても、トラブルに発展すれば関係が悪くなるリスクもあります。証拠集めは自己責任のもと、法的に問題のない方法で進めることが重要です。
不倫相手を訴えて慰謝料請求をするための条件
不倫相手に慰謝料を請求するには「不法行為」があったと法的に認められる必要があります。ただ単に親しげな関係にみえた、連絡を取り合っていたというだけでは、不法行為とはみなされません。
不倫相手の行動が不法行為に該当すれば、慰謝料の請求ができるだけでなく、法定離婚事由として裁判で離婚を成立させることも可能です。
慰謝料が認められるには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
- 配偶者と不倫相手の間に肉体関係がある
- 不倫相手が配偶者の既婚を知っていた、または気づける状況だった
- 不倫が原因で夫婦関係が破綻した
それぞれの条件について詳しく解説します。
配偶者と肉体関係がある
不倫相手に慰謝料を請求するためには、不倫相手と配偶者との間に肉体関係があることが前提となります。
不貞行為とは、配偶者以外の人と性交渉またはそれに類似する行為を指します。単に2人で食事に行ったり、手をつないだり、キスをしたりするだけでは、不貞行為には該当しません。
たとえば、ラブホテルに繰り返し出入りしていたり、自宅や宿泊先で一緒に夜を過ごしていたりする場合は、肉体関係があったと判断される可能性が高くなります。
なお、不倫相手が既婚であることを知らなかった、または気づけなかった場合には、慰謝料請求が認められないケースもあります。
不倫相手が配偶者が既婚であることを知っていた、または気づけた
不倫相手に慰謝料を請求するには、配偶者が既婚者であることを相手が知っていた、または気づける状況にあったことが条件となります。
たとえ本人から既婚者だと明かされていなくても、注意を払えば気づけたと判断されれば、不法行為とみなされる可能性があります。
たとえば「土日祝日は会えない」「家に招かれたことがない」「SNSの投稿に家族の気配がある」といった状況であれば、既婚者だと気づけたのではないかと判断されるケースもあるでしょう。
既婚と知りながら、あるいは知るべき立場にありながら不倫を続けていた場合には、慰謝料の請求が認められる可能性が高くなります。
不倫によって夫婦関係が破綻した
不倫相手に慰謝料を請求するには、不貞行為が原因で夫婦関係が破綻した事実が必要です。たとえば、以下のような状況がある場合は、夫婦関係が壊れたと判断される可能性があります。
- 不倫後に家庭内での会話がなくなった
- 同居が困難になった
- 関係が修復できないほど悪化した
不貞行為によって夫婦としての平穏な生活が維持できなくなり、精神的な苦痛を受けたと認められた場合には、慰謝料の請求が可能です。
ただし、不倫前からすでに別居していたり、長期間にわたって夫婦関係が冷えきっていたりしたような場合は、不倫が破綻の原因と認められないケースもあります。
そのような場合、不倫相手の行動が不法行為とみなされず、慰謝料請求が認められない可能性もあるため「不倫が原因で夫婦関係が壊れた」といえるかどうか、慎重に判断することが大切です。
不倫相手を訴えて慰謝料請求をする流れ
不倫相手に慰謝料を請求するには、裁判所に訴訟を起こす必要があります。ただし、いきなり訴えるのではなく、事前準備や手続きが必要です。
慰謝料請求のために不倫相手を訴える際の流れは以下のとおりです。
- 不倫相手の氏名や住所を調べる
- 訴状と準備書面を作成する
- 訴状提出
- 訴状の送達と口頭弁論期日の決定
- 第一回口頭弁論の実施
- 和解の提案
- 証人尋問・本人尋問の実施
- 判決確定
それぞれのステップについて順番に解説します。
不倫相手の氏名や住所を調べる
不倫相手を訴えるためには、氏名や住所などの個人情報が必要です。これらの情報がなければ、裁判所に訴状を提出できません。
配偶者や不倫相手から直接聞きだせない場合は、弁護士に依頼して以下の方法で調査を進めることが可能です。
- 電話番号をもとに携帯電話会社へ弁護士照会を行う
- SNSのアカウントを手がかりに、プロバイダへ発信者情報開示請求を行う
個人での調査には限界があるため、正確な情報を得たい場合は、弁護士への相談を検討するとよいでしょう。
訴状と準備書面を作成する
不倫相手を訴えるには「訴状」と「準備書面」という2つの書類を作成する必要があります。これらには、慰謝料を請求する理由や法的根拠、事実関係などを記載します。
それぞれの書類の役割や記載内容は、次のとおりです。
書類名 |
目的 |
主な記載内容 |
提出のタイミング |
訴状 |
裁判の開始を申し立てる |
請求内容、請求額、請求の理由(不貞行為の概要など) |
裁判の申し立て時 |
準備書面 |
主張や反論を補足・整理する |
不貞の具体的事実、精神的損害、証拠との関係など |
訴訟の途中(必要に応じて複数回) |
とくに準備書面では、不法行為の要件を満たしていることや、どのような精神的苦痛を受けたのかを、証拠とともに明確に記すことが重要です。書き方や内容に不安がある場合は、早めに弁護士へ相談するとよいでしょう。
訴状提出
慰謝料を請求するには、裁判所に訴状を提出しなければなりません。あわせて、準備書面や、請求内容を裏付ける証拠の提出も必要です。
訴状を提出できる裁判所は、次のいずれかです。
- 被告(不倫相手)の住所地を管轄する裁判所
- 原告の住所地などを管轄する裁判所
- 不倫が行われた場所を管轄する裁判所
請求額に応じて、提出する裁判所が異なる点にも注意しましょう。140万円を超える場合は地方裁判所、140万円以下であれば簡易裁判所に提出します。
訴状の作成は、自分でも行えますが、不備があると受理されないケースもあります。不安がある場合は、弁護士に依頼し、訴訟代理人になってもらう方法がおすすめです。
自分で作成する場合は、裁判所の書式やインターネット上のテンプレートを活用するとよいでしょう。
訴状の送達と口頭弁論期日の決定
裁判所に提出した書類に不備がなければ、裁判所は訴状を被告(不倫相手)へ送達します。あわせて、第一回口頭弁論の期日も指定されます。期日は通常、訴状が受理されてから1〜2ヵ月ほどで裁判所が決定するのが一般的です。
被告側は、期日までに訴状に対する反論を「答弁書」として提出します。答弁書が第一回口頭弁論の前に原告に届く場合もあります。
その場合は内容を確認し、認める部分や反論すべき点、反論に必要な証拠の有無などを整理しておくとよいでしょう。
第一回口頭弁論の実施
第一回口頭弁論では、原告・被告双方が訴状や答弁書の内容を裁判官の前で陳述します。原則として、原告は第一回口頭弁論に出席しなければなりません。ただし弁護士をつけていた場合は、代理で出席してもらうことも可能です。
その後の裁判の進行は、争点の内容によって異なります。不貞行為自体について争われるのか、慰謝料の金額だけを争うのかなどを整理し、裁判官が進行を調整します。
次回以降の口頭弁論は、第一回期日からおよそ1ヵ月後を目安に日程を決めるのが一般的です。
和解の提案
複数回の口頭弁論を経て、両者の主張や証拠がそろってくると、裁判官から和解案を提示される場合があります。不倫訴訟では、和解案が示されるケースも少なくありません。
和解案に両者が合意すれば、裁判上の和解が成立します。和解が成立すれば、裁判にこれ以上の時間や労力をかける必要がなくなり、判決よりも柔軟な形での解決が可能です。
一方で、和解案に納得できない場合は、これを拒否し、最終的な判決を得ることになります。
証人尋問・本人尋問の実施
和解が成立せず、判決を得る場合は、裁判の終盤で「証人尋問」や「本人尋問」が行われます。原告(あなた)や被告(不倫相手)、証人が裁判所に出廷し、裁判官や相手側からさまざまな質問を受けることになります。
たとえば、以下のような質問を受ける可能性があるでしょう。
- いつから関係があったのか
- どのような頻度で会っていたのか
- 配偶者の様子はどう変わったのか
これらの質問を通じて、不貞行為の有無や精神的苦痛の程度を明らかにしていきます。
尋問では、不倫相手と対面しなければならないため、精神的な負担が避けられません。また傍聴人の前で不倫の詳細を話さなければならない場面もあり得ます。
準備が不十分で説明がうまくできなければ、不貞行為の内容や精神的苦痛の深刻さが裁判官に伝わらず、慰謝料が減額されたり、請求自体が認められなかったりする可能性があります。証言に曖昧さや矛盾があると、相手側の主張のほうが信用されてしまうおそれもあるでしょう。
そのため、事前に弁護士と打ち合わせをしておくことが重要です。
判決確定
口頭弁論が終結してから1〜2ヵ月後を目安に、裁判所から判決が言い渡されます。
尋問のあとに裁判所から再度、和解の提案がなされることもありますが、それでも合意に至らなければ、裁判官による最終判断によって判決が確定します。
判決の内容は「判決調書」として原告・被告の双方に送達される仕組みです。判決に不服がある場合は、送達を受け取った日から2週間以内に控訴を申し立てなければなりません。n>
不倫相手を訴えて慰謝料請求する際にかかる費用
不倫相手に慰謝料を請求するには、裁判所への申し立てや弁護士への依頼など、さまざまな費用が発生します。不倫相手に慰謝料を請求するには、裁判所への申し立てや弁護士への依頼など、さまざまな費用が発生します。あらかじめ必要な費用を把握しておくことで、費用対効果を冷静に判断することが可能になります。
不倫相手を訴えて慰謝料請求する際にかかる費用は、以下のとおりです。
費用の種類 |
内容 |
裁判所に支払う費用 |
収入印紙代、郵便切手代などの訴訟費用 |
弁護士費用 |
着手金、成功報酬、日当など(依頼する場合) |
それぞれの費用の内訳や相場について、詳しく解説します。
裁判所に支払う費用
裁判所に支払う費用
不倫相手に慰謝料請求をするために訴訟を起こす場合、裁判所に納める費用として主に以下の2つが発生します。
それぞれの内容について詳しく解説します。
収入印紙代
収入印紙代は、訴状を提出する際に裁判所へ納める手数料で「民事訴訟費用等に関する法律」によって全国一律で定められています。金額は請求する慰謝料の額に応じて変動します。
請求額 |
収入印紙代 |
50万円 |
5,000円 |
100万円 |
1万円 |
200万円 |
1万5,000円 |
このように、請求する慰謝料の金額が高くなるほど、収入印紙代も段階的に高くなっていきます。たとえば、慰謝料を100万円請求する場合の印紙代は1万円ですが、200万円請求する場合は1万5,000円と請求額の増加に応じて印紙代も加算されます。
印紙代は訴訟費用の際に必ず支払う費用のため、請求額を決める際には、印紙代が発生することも見越して予算をたてましょう。
郵便切手代
郵便切手代とは、裁判所が訴訟に関する書類(訴状、答弁書、判決書など)を送付する際に使用する費用で「予納郵券(よのうゆうけん)」とも呼ばれます。予納郵券は、訴訟を起こす際に原告があらかじめ裁判所に納めておかなければなりません。
郵便切手代は、裁判所の種類(簡易裁判所か地方裁判所か)や地域によって異なります。事件の性質や被告の人数によっても変動するため、必ず提出先の裁判所のホームページや窓口で確認しましょう。
一般的な目安としては、以下のとおりです。
裁判所の種類 |
郵便切手代の目安 |
よく使われる切手の組み合わせ例 |
簡易裁判所 |
3,000〜4,000円程度 |
84円×10枚、94円×10枚、120円×5枚、500円×2枚など |
地方裁判所 |
4,000〜6,000円程度 |
84円×10枚、94円×10枚、140円×5枚、500円×2枚など |
切手が不足していると、訴状の受理が遅れる原因になります。また、被告の人数が複数の場合は、その分多くの郵券(郵便切手)が必要になります。書類を提出する前に、裁判所へ必要な金額や組み合わせを確認しておきましょう。
※参考:東京地方裁判所|郵便切手案内
※参考:大阪地方裁判所|郵便切手案内
弁護士費用
不倫相手に慰謝料を請求する際、弁護士に依頼すれば、訴状の作成や証拠整理、裁判での主張・立証など、専門的な対応を一任できます。精神的な負担を軽減できる一方、当然費用も発生するため、あらかじめ相場を把握しておきましょう。
弁護士費用の目安は、以下のとおりです。
費用の種類 |
相場(目安) |
内容 |
着手金 |
10万〜30万円程度 |
依頼時に支払う費用。結果にかかわらず必要 |
報酬金 |
獲得金額の10〜20%程度 |
裁判の結果、慰謝料を得られた場合に支払う成功報酬 |
日当・実費 |
数千円〜数万円 |
交通費、印刷代、郵送費、裁判所への同行費用など |
実際の費用は事務所によって異なるため、契約前に料金体系を確認しておくことが重要です。複数の弁護士に見積もりを依頼し、比較検討するとよいでしょう。
なお、経済的な事情で弁護士費用の負担が難しい場合は、法テラス(日本司法支援センター)の「民事法律扶助制度」を利用できる可能性があります。
この制度を利用すれば、弁護士費用(着手金・実費など)を立て替えてもらえるほか、原則無利子で毎月分割払いが可能になります。
収入や資産などの条件がありますが、一定の基準を満たせば支援を受けられるため、相談してみるとよいでしょう。
※参考:法テラス公式サイト
不倫相手を訴える場合の慰謝料請求の相場
不倫相手を訴えて慰謝料を請求する場合、離婚の有無によって相場は異なります。
状況 |
慰謝料の相場 |
離婚に至った場合 |
100万〜300万円程度 |
離婚せず婚姻関係を継続する場合 |
50万〜150万円程度 |
ただし、これらはあくまで目安であり、実際の金額は次のような要素をふまえて判断されます。
- 不倫の期間や回数
- 夫婦関係への影響(別居や家庭崩壊など)
- 被害者側が受けた精神的苦痛の大きさ
- 不倫相手の反省や謝罪の有無
- 不貞行為を裏付ける証拠の有無や強さ
そのため、同じようなケースでも慰謝料の金額に差がでることは少なくありません。請求額を決める際は、相場だけにとらわれず、自分のケースに合わせて慰謝料の金額を検討しましょう。
不倫相手を訴える前に注意すること
慰謝料請求をスムーズに進めるためには、事前に確認しておくべきことがあります。不倫相手を訴える前に注意することは、以下のとおりです。
- 求償権が発生する可能性を考える
- 慰謝料請求の時効がすぎていないか確認する
それぞれ詳しく解説します。
求償権が発生する可能性を考える
不倫相手を訴える際は、相手が求償権を行使する可能性にも注意が必要です。求償権とは、共同不法行為者(不倫の当事者2人)の一方が自己の負担割合を超えて慰謝料を支払った場合に、もう一方に対してその超過分を請求できる権利を指します。
たとえば、あなたが不倫相手に200万円の慰謝料を請求し、全額を受け取った場合でも、その後、不倫相手が配偶者に対して100万円の支払いを求めるケースもあります。結果として、自分の家庭から慰謝料を支払うことになり「最終的に手元に残るのは100万円だけ」といった想定外の展開になってしまうおそれがあるのです。
とくに、配偶者に慰謝料を請求するつもりがない場合は、求償権の存在が思わぬ出費につながる可能性があります。
このような事態を防ぐためには、不倫相手との示談交渉の段階で、求償権を放棄する旨を合意書や公正証書に記載しておくのが有効です。ただし、求償権の放棄は不倫相手にとって不利な内容になるため、交渉が難航するケースもあります。そのため、あらかじめ弁護士に相談しておくとよいでしょう。
慰謝料請求の時効がすぎていないか確認する
不倫相手に慰謝料を請求するには、時効が成立していないか確認する必要があります。
慰謝料の請求には消滅時効があり、以下のどちらかに該当すると、原則として請求が認められません。
- 不貞行為の事実や相手を知ったときから3年以内
- 不貞行為があった日から20年が経過している場合
たとえば、最近になって浮気の証拠をつかんだとしても、不貞行為から20年以上が経っていれば、慰謝料請求はできなくなります。一方で発覚から3年以内であれば、慰謝料を請求できる可能性は十分にあるでしょう。
時効が成立していると、たとえ裁判を起こしても相手に「時効の援用」を主張され、慰謝料が認められないおそれがあります。
そのため、少しでも迷いがある場合は、できるだけ早めに弁護士に相談して時効の状況を確認することをおすすめします。
お互いが既婚者の「ダブル不倫」だった場合
不倫相手も既婚者だった場合、いわゆる「ダブル不倫」に該当します。このケースでは、不倫相手の配偶者も被害者になるため、自分の配偶者が慰謝料を請求されるおそれがあります。
また、不倫相手の配偶者がすでに自身の配偶者に対して慰謝料請求をしている場合、自分が新たに訴えを起こすと訴訟が複雑化し、長期化する可能性もあるでしょう。
さらに、互いに慰謝料を請求し合う事態に発展すれば、精神的・経済的な負担が大きくなるため、慎重な判断が求められます。
配偶者との離婚を望んでおらず、関係の修復を目指している場合は、裁判ではなく、当事者4人で話し合う「四者協議」や示談による解決を選択するのも1つの方法です。
ただし、配偶者との離婚を決意しており、不倫相手に対して責任を明確にしたい場合には、慰謝料請求を進めても差し支えはありません。
不倫相手を訴えないほうがいいケース
不倫相手を訴えることが必ずしも最善の対処とは限りません。
不倫相手を訴えないほうがいいケースは以下のとおりです。
- 不倫相手に十分な収入・資力がない場合
- お互いが既婚者の「ダブル不倫」だった場合
- 慰謝料請求にかかる労力や費用が見合いそうにない場合
それぞれのケースについて解説します。
不倫相手に十分な収入・資力がない場合は訴えない方がいい
不倫相手に慰謝料を請求しても、支払い能力がなければ実際に回収できない可能性があります。たとえ裁判で支払い命令が出ても、お金が支払われなければ意味がなく、かえって時間や労力、費用だけがかかってしまうおそれがあります。
財産の差し押さえという手段もありますが、別途手続きや費用が必要なうえ、相手に差し押さえできる財産がなければ現実的な回収は困難です。
さらに、不倫相手が自己破産や個人再生を申し立てている場合、慰謝料が免除または減額される可能性もあります。
慰謝料請求には、訴状の作成や証拠集め、複数回の出廷といった精神的・時間的負担も発生します。弁護士費用や印紙代などのコストもかかるため、得られる慰謝料の金額が見合わないと感じることもあるでしょう。
そのため、訴える前に次のような点を考えてみることが大切です。
- 不倫相手に支払い能力はあるか?
- 実際に回収できる見込みはあるか?
- 費用や手間に対して見合う成果が得られそうか?
目的を明確にし、冷静に判断することが大切です。
まとめ
不倫相手を訴えて慰謝料を請求するには、不貞行為の証拠が必要です。配偶者と不倫相手に肉体関係があったことを客観的に示す証拠がなければ、慰謝料請求は認められない可能性があります。
慰謝料が認められるためには「不倫相手が配偶者の既婚を知っていた、または気づけた」「不倫が原因で夫婦関係が破綻した」「配偶者と不倫相手の間に肉体関係がある」といった要件をすべて満たしている必要があります。
証拠を自分で集める場合には、盗聴・盗撮・不正アクセスなどの違法行為にあたらないよう注意しましょう。違法に取得された証拠は、裁判で無効になる可能性があるほか、逆に自分が罪に問われるリスクもあります。
冷静に状況を判断し、正しい手順で手続きを進めることが、後悔のない慰謝料請求につながるでしょう。「この証拠で本当に請求できるのか不安」「そもそも訴えるべきか迷っている」というときは、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
不倫で訴えるときによくある質問
不倫相手に謝罪してもらうために訴えることはできますか?
不倫相手に謝罪を求めたり、刑事罰を与えるために訴えたりすることはできません。そもそも不倫は犯罪ではなく、罰則を定めた法律も存在しないためです。
慰謝料請求のように金銭的な賠償であれば、裁判によって請求が認められる可能性があります。しかし謝罪はあくまで本人の意思に委ねられるもののため、法的に強制することはできません。
自分で不倫の証拠集めをする場合に気をつけることはありますか?
自分で証拠を集める場合は、集めた証拠を配偶者や不倫相手に見せたり、気づかれたりしないよう注意しましょう。訴える前に証拠の存在が知られると、削除・隠蔽されてしまうおそれがあるためです。
たとえ不倫の事実があっても、有効な証拠がなければ裁判で慰謝料が認められない可能性があります。証拠の保管場所や日常の行動には細心の注意を払い、慎重に進めることが重要です。
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